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ユニテに導く未来の書

この世界が苦しんでいる最悪の不幸は、
わたしが繰り返し繰り返し言ったように、
邪悪な人々の力ではなく、
最良の人々の弱さなのである(中略)
もう自分自身で考えるべきではない、
ひっぱって行ってもらおう……。
この放棄こそ、すべての悪の核である(中略)
人間よ、立ち直れ!
目を開け、凝視せよ! 恐れるな!
きみが自ら獲ち得たそのわずかの真理が、
きみのより確かな光なのだ。
肝要なのは多くの知識を集積することではなく、
少なくても多くても、その知識がきみ自身のものであり、
きみの血によって養われたものであり、
きみの自由な努力の娘であることである
(みすず書房『ロマン・ロラン全集【18】』山口三夫訳 P143)


本書はフランスの作家ロマン・ロランの論文集『先駆者たち』である。1919年にユマニテ社から出た初版本。ロランの自筆で献辞が書き込まれている。ロランが多くの作品を出版したオランドルフ社に編集者として勤めていたアンドレ・デルプシェに贈ったものだと思われる。

本書について、ロランは序文で次のように記している。

「本書は、論文集『戦いを超えて』の続篇である。
1915年末から1919年の初頭にかけて、
スイスで執筆され発表された論説からなっている。
わたしはこれらの論説を『先駆者たち』という表題のもとに集めた。
なぜなら、この大部分は、あらゆる国々において、
戦争の熱狂と世界的な反動のなかにあって、
自由な思想と国際的な信仰とを保持しつづけえた、
勇気ある人々に捧げられているからである。
未来は、嘲けられ、侮辱され、投獄され、処刑された
偉大な『告発者』たちの名を、ほめたたえるであろう(中略)

わたしはこれらの論文を、しいて年代順に並べようとしなかった。
主題あるいは芸術的な諸理由の類別に従って、
それらを集めるほうを選んだのである(中略)

この巻と前書『戦いを超えて』とは、
この5年の歳月の間に、戦争について
わたしが書いたものの一部分にすぎない。
拡がりにおいても資料としての価値においても、
断然もっとも重要なのは、あらゆる国々の
迫害された自由な精神たちからたえず受け取った手紙や、
会話や、精神的告白などを書きつけながら、
日を追って集められたもの(※『戦時の日記』)のなかにある(中略)

これらの資料が、未来のために、
われらの苦悩と信仰との証言となれば幸いである」
(みすず書房『ロマン・ロラン全集【18】』
山口三夫訳 P111〜112)

本書は巻頭に「わたしは未来の市民として生きるのだ」というシラーの言葉を掲げている。前著『戦いを超えて』が戦争を主導するものに対する怒りの書だとするなら、本書は愚かに迷う人間を抱きしめ、押しつぶされている勇気や良心を鼓舞し、戦いを超えたところに存在する普遍的なユニテに向かって人類を導く未来の書といえるかもしれない。

本書の邦訳は、みすず書房『ロマン・ロラン全集』の第18巻に山口三夫訳で収録されている。これは新版に収められた「日本の青年たちにおくるメッセージ」も訳出した完訳である。収録内容は次の通り。

1 :Ara Pacis(平和ノ祭壇ニ)
2 :登り行くつづら折りの道
3 :虐殺された諸国民衆に
4 :永遠のアンティゴネ―
5 :攪乱のなかの一女性の声
6 :自由よ!
7 :解放者たる自由ロシアに
8 :トルストイ――自由精神
9 :マクシム・ゴーリキーに
10:マクシム・ゴーリキーの二通の手紙
11:アメリカの作家たちに
12:アメリカの自由な声
13:E・D・モレルのために
14:スイスの青年たち
15:アンリ・バルビュスの『砲火』
16:まさに死せんとする者ら、おんみに敬礼す
17:生きんと欲する者ら、おん身に敬礼す
18:ある殉難者のために――マルク・ド・ラレギー
19:西欧思想の悲劇――F・J・ボンジャン著『十二時間の物語』
20:戦争に反対するフランス精神
21:苦悩する人間――アンドレアシュ・ラッコ著
22:荒野に呼はる者の声―シュテファン・ツヴァイクの詩劇『エレミヤ』
23:プロレタリア詩人の苦悶――アルフォンス・ペツォルト
24:偉大なヨーロッパ人――G・F・ニコライ
25:ヨーロッパ人たちへの訴え
26:エルンスト・トラーへの友愛的な讃仰として
27:オーギュスト・フォレルを読んで
28:精神のインターナショナルのために
29:ウィルソン大統領への公開状
30:勝ち誇るビスマルク主義に反対して
31:精神の独立宣言


【巻頭】
「新しい信仰――
人間的インターナショナルの
殉教者たちの
思い出に

ジャン・ジョーレス
カール・リープクネヒト
ローザ・ルクセンブルク
クルト・アイスナー
グスタフ・ランダウアーに――

彼らは 残忍な愚かさと
  殺戮的な虚偽との犠牲者
彼らを殺した人間たちの
       解放者であった」(P109)

【日本の青年たちにおくるメッセージ」から】
「日本の青年たち、
この本(※『先駆者たち』)を
あなた方におくるにあたって、
私は兄弟としての言葉を
いくつかつけ加えたいと思います。
なぜなら、ヨーロッパの文学者の私が
あなた方に言葉をかけるとき、
私はあなた方を違った人種の人々とみなすのではなく、
共同の仕事をもつ魂の兄弟とみなすからです(中略)

私たちは悲壮な闘争の時代に生きています。
この時代には、あらゆる暴力と無理解の力が猛威を揮い、
もろもろの民族や人類を闘争へと
駆りたてているように思われます(中略)

私は人類の結合(ユニテ)を信じます。
そして、私は全世界に向かって、この結合を信じる人々に、
そしてこの目的のために尽そうと欲する人々に呼びかけます(中略)

問題は、私たちがみんなで、
脅威にさられた人類を救うことにあります。
人類は不断の英雄的意志によってのみ、
成長してきたのであり、存続しているのです(中略)

一時間でも気をゆるめるならば、
私たちはすでに獲得した一切を危険にさらすことになるのです。
人類の進歩は決して保証されているのではありません。
人類は、自らを護ることができないなら、
いったん自分が脱却した野獣性に
ふたたび堕落しないとは保証されていません。
いかなる神も人類の運命を守護してはくれません。
人間たちよ、私たちだけでその警戒にあたるべきです(中略)

全地上の友人たちよ、危険の迫った人類を、
私たちの結合によって救いましょう!
人類は、自分が脱却した深淵から逃れ、
人類を待ち伏せしている虚無から逃れ――
そして、もっと高く、光明に向かい、
愛に向かって登り行くために、
もっとも勝れた人々のあらゆる力を寄せ集める必要があります。

日本の兄弟たちよ、
ヨーロッパのあなた方の兄弟は、
あなた方に手を差しのべ、あなた方に申します――
『助け合おう! 愛し合おう!』」(P113〜114)

【「Ara Pacis(平和ノ祭壇ニ)」から】
「憎しみの深淵から
聖なる『平和』よ、わたしはおんみにわが歌を捧げる(中略)

わたしがただ一人とどまるとき わたしはおんみに忠実であるだろう
わたしは 血の汚らわしい聖体拝受に あずかりはしないであろう
決して『人の子』のわが分け前を食まないだろうう
わたしは万人の兄弟だ そして一時を糧に生きている人々よ

この時間を互いに盗み合っている人々よ
わたしはあなたたちすべてを愛する(中略)

おんみは――敵対する諸力の
正しい均衡の上に建てられた 大聖堂(カテドラル)
芸術家の調和の眼ざしが
結びあわせた 色とりどりの束となって
太陽の血がほとばしる 目くるめく薔薇窓だ(中略)

おんみは歓喜の姉妹であり苦悩の姉妹
しかもいっそう聡明な妹だ
おん身は歓喜と苦悩の手をとる
こうして。二つの流れは一つの明るい運河に結ばれ
二つの白いポプラの生け垣の間に 大空を映す(中略)

悩みは過ぎて行くだろう そしてわれらも――
しかしおんみのみ ただおんみのみは永遠だ

兄弟たちよ われらは結合しようではないか
そしてわがもろもろの力よ わが引き裂かれた心のうちで
相拮抗する力よ おまえたちもまた和解せよ!
おまえたちの指と指とを組み合わせ 
舞い踊りつつ前身せよ!」(P117〜119)

【「登り行くつづら折りの道」から】
「一年来わたしが沈黙を守っているのは、
『戦いを超えて』において表明した信念が
ぐらついているためではなく
(それはさらにいっそう堅固である)、
聞こうとしない人々に語ることは
無益である、と確信したからである。
ただ事実だけが、悲劇的な明白さをもって語るだろうし、
ただそれだけが、頑固と虚偽の厚い壁、
光を見ないようにと人々の精神がとり囲まれている厚い壁を、
うがつことができるだろう。

けれどもわれわれは、あらゆる国の兄弟たち、
自己の精神的な自由と理性と信仰とを
人間的連帯において守りえた人たち、
圧迫され苦しみながらも、
沈黙して希望を失わないでいる魂たちの間で――
この年の終りに、互いに愛情と慰めの言葉を
交わさねばならない。血まみれな夜のなかで
光がなおもきらめいていることを、
光はかつて消えたことがなかったし、
今後も消えることは断じてないだろうといことを、
示そうではないか!(中略)

わたしの仕事は、
ヨーロッパの相敵対する兄弟たちに、
彼らのもっている最悪のものではなく、
彼らのもっているもっとも良い点を
思いおこさせることである」(P120)

「現在の光景は、
人間理性に疑いをいだかせるようにできている。
進歩への信仰の上で
満足げに眠りをむさぼっていた大多数の人たちにとって、
この覚醒は耐えがたいものであった。
いきなり彼らは、
怠惰なオプティミスムの過度の不条理から、
底なしのペシミスムの眩暈へと飛躍するのである。
彼らは手すりに寄りかからずに
人生を見ることに馴れてはいない(中略)

人間は、自己の安息を乱す、
うるさい光景を思い出すのを好まないものである。
しかし、世界の歴史において、安穏はまれであった、
そしてもっとも偉大な魂たちは安穏から生みだされたのではない。
怖れおののくことなく、怒り狂う波が通り過ぎて行くのを見つめよう。
歴史のリズムを聴くすべを知る者にとっては、
すべてが、最善のものと同様に最悪のものも、
同じ事業に協力しているのだ(中略)

人々の良識や善意や、
道徳的な勇気や人間性に期待しなければならないとすれば、
未来について絶望する理由はいくらもあるだろう。
しかし、前進することを望まず、
あるいは前進できない人々をも、盲目な力が押しやり、
ほえる獣群のように、『一致(ユニテ)』という
目標に向かって前進させているのである」(P121〜122)

「勇気をもて、世界の兄弟たち!
どうあろうとも、われわれにはなおも
希望をもついくつかの理由がある。
人々は、望むと否とにかかわらず、
われわれの目標に向かって進んでいる――
それに背を向けていると自ら思い込んでいる人たちさえが(中略)

すべてがわれわれの理想のために働いている、
それを打ち壊そうとやっきになって叩いている人々さえが。
すべては一致(ユニテ)に向かっている――
最悪のものも最善のものも」(P124〜125)

【「虐殺された諸国民衆に」から】
「不幸な民衆! 彼らよりも悲劇的な運命を
想像することができるだろうか!……
決して相談はされず、つねに犠牲にされ、
戦争へと追いつめられ、断じて欲したのではない
罪悪を強いられるのだ……(中略)
民衆は永遠にあざむかれ、永遠に殉難者となり、
他人の誤りのために犠牲となっている……。
彼らの知らない理由や、彼らにはなんの関係もない
賭のために挑戦が交わされるのは、
彼らの背をこえた上方においてであり、
彼らが(そのどちらにも同様に)参与していない、
観念や巨額の金の戦いが行われるのは、
ふんづけられた血みどろな彼らの背の上でなのである。
そして、ただ彼らだけが、
犠牲にされている彼らだけが、決して憎まない。
憎しみは、彼らを犠牲にしている者どもの心にしか存在しない(中略)

不幸をわたしは未来に見る。
いくたの苦しみののちに、
いつわりの希望の当てがはずれ、
空しい犠牲の無意味であったことを認めて、
惨めさに疲れきった民衆が何に、だれに、復讐しようかと
盲目的に探し求めるだろう宿命の日がやって来るのを、わたしは恐れる。
そのとき彼らもまた不正におちいり、
過度な不幸によって、彼らの犠牲の不吉な後光にいたるまで
はぎ取られてしまうだろう(中略)
われわれはきみたちが救われることを欲する、
われわれはそれを欲している!
だがきみたちも同様にそれを望まねばならない(中略)

民衆よ、結合せよ!
あらゆる人種の民衆たち、
より罪あるものも罪少なきものも、
すべて血を流し苦しみ、
不幸において兄弟である人々よ、
許しと更生において兄弟であれ!(中略)
無数の兄弟たちの死において、
きみたちの深い一致(ユニテ)を知らねばならない」
(P131〜132)

【「永遠のアンティゴネ―」から】
「われわれのすべて、
男性にも女性にも可能なもっとも有効な行動とは、
人から人へ、魂から魂への個人的な行動、
ことばによる、範例による、全存在による行動です。
このような行動を、ヨーロッパの女性たちよ、
あなたがたはじゅうぶん実行してはおられません。
今日あなたがたは、世界を喰い滅ぼしている災禍をはばもうとし、
戦争に反対しようと努めておられる。
それはけっこうです、しかしあまりに遅すぎます。
あなたがたは、戦争が勃発するまえに、
男たちの心のなかでこの戦争に反対することができたし、
そうしなければならなかったのです。
あなたがたは、われわれに及ぼすあなたがたの力を、
じゅうぶん知ってはおられません。
母親、姉妹、妻、女友だち、恋人たちよ、
あなたがたが望みさえすれば、
男性の魂をつくりあげるのはあなたがた次第なのです(中略)

まず、あなたがたのうちに平和をつくりだしてください!
あなたがたから盲目的な闘争本能を引き抜いてください。
あなたがたは、戦闘に加わらないように。
戦争をなくするのは、戦争に対して戦争をすることによってではなく、
あなたがたの心を戦争から守り、
あなたがたのうちにある未来を火災から救うことによってです。
戦い合っている人たちが交わすすべての憎しみのことばに対して、
全犠牲者への慈悲と愛情の行動をもってお答えください(中略)
その明敏な憐れみぶかいまなざしが、
われわれに自分の不条理について
顔を赤らめさせるような証人になってください!
戦争のさなかにおいて生きた平和となってください」
(P133〜135)

【「トルストイ――自由精神」から】
「偉大な人格はそれ自身の内に
一つならずの魂を包蔵していて、
これらすべての魂は
そのうちの一つの魂のまわりに寄り集まっている」(P141)

「今日、英雄主義よりもまれなもの、
美よりもまれなもの、神聖よりもまれなもの、
それは自由な良心である。あらゆる強制から自由であり、
いかなる偏見からも自由であり、
すべての偶像、階級や身分や民族のすべての独断(ドグマ)、
あらゆる宗教から自由であること。
自分の目で見つめ、自分の心情で愛し、
自分の理性で判断し、影とはならぬ――
すなわち一個の人間たらんとする、勇気と誠実さをもつ魂。
この範例をトルストイは最高度に示した」(P141)

「『人間が悪を避けねばならないのは』と
彼(※トルストイ)は言う――
『モーセやキリストが、隣人や自分自身に対して
悪をするのを禁じているから、というのじゃないのだ。
この悪を自分や隣人に対してすることが、
人間の本性に反することだからなのだよ(中略)
権威に導かれるままになっているかぎり、
わしらはお互いに敵視することをやめないだろう』」
(P142〜143)

「この世界が苦しんでいる最悪の不幸は、
わたしが繰り返し繰り返し言ったように、
邪悪な人々の力ではなく、最良の人々の弱さなのである。
そしてこの弱さの源泉はいくぶんか意志の怠惰に、
個人的な判断を怖れることに、道徳的な臆病さにある。
もっとも勇敢な人々も、その束縛から解き放たれるやいなや、
他の束縛にふたたび身を投げいれてあまりにも満足している。
彼らは一つの社会的迷信から解放されるとすぐ、
自ら新しい迷信の車に自分をつないでしまう。
もう自分自身で考えるべきではない、
ひっぱって行ってもらおう……。
この放棄こそ、すべての悪の核である。
各人の義務は、それがもっとも優れた人々でも、
もっとも確かな人々でも、また最愛の人たちであっても、
他人には、自分のために善悪を決めてもらおうとまかせないで、
それを自分自身で探し、もし必要なら、
断固たる忍耐力をもって一生涯それを探し求めることである。
暗(そら)んじて、オウムのように
他人から教えこまれた一つの真理全体よりも、
自分自身の力によって獲得した半分の真理のほうがいっそう尊い。
なぜなら、目を閉じて採用したこのような真理、
服従による真理、自己満足による真理、奴隷根性による真理――
このような真理は、一つの虚偽にしかすぎないのである。

人間よ、立ち直れ!
目を開け、凝視せよ! 恐れるな!
きみが自ら獲ち得たそのわずかの真理が、
きみのより確かな光なのだ。
肝要なのは多くの知識を集積することではなく、
少なくても多くても、その知識がきみ自身のものであり、
きみの血によって養われたものであり、
きみの自由な努力の娘であることである。
精神の自由、これこそ至上の宝である」(P143)

【「マクシム・ゴーリキーの二通の手紙」から】
「人生の範例としての過去の偉人たちから、
わたしはいささか身を遠ざけています。
彼らの大部分は、わたしを失望させました。
彼らを美学的には称賛しますが、
あまりにしばしば彼らが示す、
不寛容や熱狂(ファナティズム)は必要ないのです。
彼らが仕えていた多くの神々は、
今日、危険な偶像となってしまいました(中略)
わたしは過去を愛し称賛しますが、
しかも、未来が過去をのり超えることを望むのです。
未来にはそれが可能です。そうしなければなりません」(P147)

【「アメリカの作家たちに」から】
「自由であってください!
外国の手本に服従なさらないように。
手本はあなたたちの内にあるのです。
自分自身を識ることからお始めなさい。
それが第一の義務です。
あなたたちの合衆国を構成している多様な個性たちが、
芸術において、誠実に、全的に、
誤って独創性を求めず、あなたたち以前に
他の人たちが何を表現したかを考えず、
そしてとりわけ世論を恐れず、
あえて自己を確立するがいい。
あえて自分自身を、奥底まで凝視すること。
じっくり。黙々と。よく見ること。
そして見たものを、あえて言うことです。
この自己への集中は、自分の利己的な人格のなかに
閉じこもることではありません。
それは自己の根を民衆の本質のなかに浸すことです。
民衆のいくたの苦悩や熱望を感じ取ろうとお努めなさい(中略)
庶民階級は、芸術への無関心によって
時にはあなたたちを苦しめるでしょうが、
彼らは自己を表現することができないから、
自己を知らない啞なのです。
彼らの声となってください!
あなたたちが語るのを聞いて彼らは、
自分自身を自覚するでしょう。
あなたたちは自分の魂を表現することによって、
民衆の魂を創造するでしょう」(P150)

「あなたたちは一日の出発点にいるのです。
あなたたちを妨げる過去はありません。
あなたたちの後ろには、
ただ一人の偉大な先駆者の
大洋のごとき声があるばかりです。
この先駆者の作品は、
未来のあなたたちの作品の
ホメーロス的な予感のようです――
その人こそ、あなたたちの師、
ウォルト・ホイットマンなのです」(P151〜152)

【「アメリカの自由な声」から】
「スイスのジャーナリストに対して感じる主な不満は、
戦争の勃発以来、われわれのまわりで起こっていることについて
不完全にしか報じてくれないことである(中略)
友がわれわれの知らないさまざまなことを見ることができ
知ることができる立場にあるなら、
彼がそれをわれわれに知らせないでおくのを
責める権利がわれわれにはある。
彼がわれわれにしていることは誤りである。
なぜなら、こうしてわれわれを間違いに導くからである」
(P152〜153)

【「E・D・モレルのために」から】
「勇気のある人はすべて、真理の人はすべて、
祖国を重んじるものです」(P164)

【「シュテファン・ツヴァイクの詩劇『エレミヤ』」から】
「勝利よりも豊饒な敗北がある。
そして歓びよりも輝かしい苦しみが」(P221)

「エレミヤ――平和は一つの行動だと、
そしてあらゆる行動のうちの行動であると
おまえは考えないのか? 日日おまえは
嘘つきどものあぎとから、また群集の心から、
それをもぎとらねばならないのだ。おまえは、
万人に反対する一人としてとどまらねばならない……
平和を欲する者は永遠の戦いのなかにいるのだ」(P223)

「戦争が始まった。
群集は知らせを待っている。
彼らはむだ話をしているが、
自分の気に入ることばをすばやくくわえとったり、
そんなことばを自分たちの欲望のままに変形したりする。
そして勝利を欲しては、それがすでに得られたと空想するのだ。
実にしなやかな技法でツヴァイクは、
いかにして漠とした風聞が
群衆の幻覚にとらわれた魂のなかにひろまって行き、
たちまちにして真実よりも確かなものとなるかを示している。
人々は口から口へとあらゆる詳細を伝え、
偽の勝利について事こまかに話し合う(中略)
試練から何も学ばず、むやみと勝利に酔いしれている、
民衆のばかげた高慢さを目前にして、
彼(※エレミヤ)は新しい威嚇をもって民衆を鞭打つのだ」
(P224)

「(※エレミヤの言)
人々よ、あなたたちに不幸あれ!
あなたたちはあらゆる風のまにまにただようのだ。
あなたたちは戦争との姦淫罪を犯したのだ。
今は、果実を運べ! あなたたちは剣をもてあそんだのだ。
今、その切れ味をあじわうがいい!」(P230)

【「偉大なヨーロッパ人」から】
「平時においては、真の愛国者とは、
自己の祖国における善きものを愛し、
悪しきものに対して戦う人間である。
しかしこのように行動する人は、
われわれの時代では、
祖国の敵としてとりあつかわれる。
今日了解されている意味における愛国者は、
祖国の善悪をともに愛し、
祖国のためには悪をもしようと身構えている。
そして彼を運び去る群集の流れのなかで、
彼は熱狂して悪をなすのである。
個人が無力になればなるだけ、
ますますその愛国主義は熱狂的となる。
集団的暗示作用に抵抗することができず、
彼はそれに情熱的な魅力を感じさえするのだ。
なぜなら、弱い人間はみな支えを探しもとめ、
他の人々と共に行動していれば
自分はいっそう強いと信じるからである」(P257)

【「エルンスト・トラーへの友愛的な讃仰として」から】
「E・G・グンベルの《虐殺の二年間》が、
1918年11月9日から1921年までになされた
暗殺の一覧表を作っている。この時期、暗殺の数は
329件にのぼり、そのうち15件は共産主義者によるもの、
314件は反動によるものである」(P280)

「他の人たちを圧しつぶすような苦悩そのもののなかに、
偉大さの泉を汲むのは高貴な心情の特性である。
まるで彼らの魂は、より高みへ達するために、
自らの打ち倒された肉体を踏み台とするかのようだ」(P280)

【「精神のインターナショナルのために」から】
「もし今日、謙譲が似つかわしい人々がいるとすれば、
それは知識人たちである。この戦争において
彼らの果たした役割は恐るべきものであったり、
許すべきではないだろう。たんに相互の無理解を減じるため、
また憎しみが広がるのを制するために何もしなかったばかりか、
ほとんど例外なく、憎しみと無理解を広げ
激化するためにあらゆることをしたのである。
一方からすれば、この戦争は彼らの戦争であった。
彼らはその破壊的なイデオロギーでいくたの人間の頭脳を毒した。
自分たちの真理に確信をもち、高慢で執念ぶかい彼らは、
彼らの精神のさまざまな幻影の勝利のために
無数の若い生命を犠牲にした。
歴史は断じてそれを忘れないだろう」(P292)

【「精神の独立宣言」から】
「『精神』労働者たち、この5年来、
交戦諸国の軍隊、検閲、憎悪によって分断されていた、
世界中に散らばっている仲間たちよ、
国境が再開されようとするこの時点において、
われわれの兄弟的結合――しかし、
以前に存在したものより強固な、
いっそう確実な新しい結合をつくりあげるために、
われわれはあなたたちに訴える」(P302)

「立て! これらの妥協から、
これら屈辱的な同盟から、これら隠された隷属から、
『精神』を救い出そうではないか!
『精神』は何の召使いでもない。
われわれこそ『精神』の召使いなのである。
われわれにはそれ以外の主人はいない。
『精神』の光明を持ち運び、それを守り、
この光りのまわりに迷える人々を集めるためにこそ、
われわれは生まれている。われわれの義務は、
一定の視点を維持し、夜のなかの諸情念の渦のただなかで、
北極星を指し示すことである」(P303)

「われわれが尊敬するのはただ一つ、
自由な、国境なく、限界なく、
人類や階級の偏見のない『真理』だけである。
もちろん、われわれは『ユマニテ』(人類・人間性)に
関心を失いはしない! われわれは『ユマニテ』のために、
だが『ユマニテ』全体のために働く。
われわれは諸国民衆を知らない。
われわれが知っているのは『民衆』そのものである
――唯一無二の、普遍的な――
悩み、戦い、倒れ、つねに立ち上がり、
自分の血にまみれた険しい道の上を
つねに前進していく『民衆』――
すべてが等しくわれわれの兄弟である、
万人からなる『民衆』である」(P303)


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