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NWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オヴ・ブリティッシュ・へヴィ・メタル)とはイギリスで1979年前後に勃興したムーヴメントのことを言う。略してエヌ・ダヴリュ・オー・ビー・エイチ・エムと読んで良いのだが、実際に”これがNWOBHM”だよ!とハッキリ断定できる音楽性は存在しない。
理由は、音楽性が最も混在しているジャンルだからだ。私自身、本当の意味でNWOBHMだと言えるのはIRON MAIDENとDEF LEPPARDぐらいのものだと思っているのだが、このバンドがどうして…?というようなアーティストが混じっているケースも少なくない。
【IRON MAIDEN】
このジャンルの筆頭格にして、言わずと知れたへヴィメタルの王者。音楽性は正統派へヴィメタル。勘違いしてほしくないのが、別にIRON MAIDENが嫌いだということでもなければ、見下しているわけでもない。ちゃんと敬意は払っているつもり。そもそも、そのような態度であればわざわざCDを買ってレビューなどするはずがない。
【DEF LEPPARD】
このジャンルの筆頭のひとつ。音楽性はハードロック、グラム・メタル、といったところで、へヴィメタル・バンドでないのは明らか。IRON MAIDENと同じNWOBHMに入っているのに、音楽性がこんなにも違うのだから不思議。
【SAXSON】
同じくこのジャンルの筆頭のひとつ。音楽性はこのジャンルでもわりとソフトな方で、最初は典型的なハードロックであったが、6作目となる『CRUSADER』からLAメタル・ブームに乗ってハード・ポップ路線に走った結果、アメリカ進出の失敗とともに人気が低迷していく。10作目の『SOLID BALL OF ROCK』から徐々に原点回帰を目指すが、以前のような人気を取り戻すことはなかった。そうした経緯から、音楽性はハード・ポップにカテゴライズしてもおかしくないはずで、むろんながらへヴィメタルと呼ばれるサウンドとはかなり距離がある。ちなみに、私がCDで聴けるソフトな音楽の限界はここまで。
【ANGEL WITCH】
典型的なNWOBHMのイメージがあるものの、そこそこのスピードと適度にほんのり漂う哀愁、キャッチーなコーラス、ヘタウマ・ボーカル(つまりヘタクソ)とあってか、何を取ったらこのバンドの魅力が表現できるんだ!とシャウトしたくなるアーティスト。
【DIAMONDHEAD】
私はなぜこのバンドがNWOBHMに入っているのかよく分からない。音楽性はハードロック/へヴィメタルというハッキリしないジャンルだが、のちにMETALLICAやMEGADETHに影響を与えたバンドだけにスラッシュ・メタルにカテゴライズされたとしてもおかしくはないだろう。
【SAMSON】
ご存知、のちにIRON MAIDENに加入するブルース・ディッキンソン(Vo)が在籍していたバンド。音楽性はハードロックなのだが、何を取れば彼らの魅力になるのかよく分からない。それほどまでに成功とは程遠かった。ポール・サムソン(G)は2002年に他界した。
【PRAYING MANTIS】
ウィキペディアには叙情正統派へヴィメタルと書かれているが、ここがウィキペディアの正確性に欠けるところで、実際にはメロディアス・ハード・ロックに入っていてもおかしくないほど叙情的で哀愁のあるハードロックを提示しているため、本国よりも日本のファンに愛されている。彼らがNWOBHMに入っているのは1979年前後にデビューということと、イギリス出身だから取りあえず入っているのだろう。
【VENOM】
サウンドの感触はどう聴いてもスラッシュメタルやブラックメタルにカテゴライズされるような音楽なだけあってか、ブラック・メタルの原点とされている。彼らのセカンド・アルバム『BLACK METAL』というタイトルからブラック・メタルというサブ・ジャンルが誕生したことはわりと有名な話。
【RAVEN】
ジョン・ギャラガー(Vo)によるロブ・ハルフォード(JUDAS PRIEST)ばりの超絶ハイトーンが特徴であるところから正統派へヴィメタルを想起させるが、実際にはスラッシュメタルの原点だった。1983年当時まだ無名であったMETALLICAをオープニング・アクトに従えてツアーを敢行していたこともあった。
【TANK】
1989年にいったんは解散したものの、1997年から再始動を果たしたバンド。2013年にバンドは分裂した。
【TYGERS OF PAN TANG】
のちにTHIN LIZZYやWHITESNAKEなどで活躍するジョン・サイクス(G)がかつて在籍していたバンド。バンド名はマイケル・ムアコックによるファンタジー小説のひとつ『メルニボネのエルリック』のストーリーに登場する魔法使いたちのペットのトラが由来となっている。
【DEMON】
バンド名からしていかにもであるが、ライヴではヴォーカリストが棺から登場し、ゾンビや怪物めいた衣装に身を包むなど、特に聖飢魔IIを彷彿させるオカルティックな演出をしていた。音楽性は典型的なブリティッシュ・ハード・ロックで、意外なほどにメロディアスな印象を受ける。
【SATAN】
マニアの間では1982年の『KISS OF DEATH』の7インチやオムニバス参加曲で評価されたバンド。のちにBLIND GUARDIANにカヴァーされたのも納得の正統派パワー・メタルに通じるサウンドを展開した。ちなみに、ギターのスティーヴ・ラムゼイはSKYCLADを結成することとなる。
【GIRL】
のちに渡米してL.A.GUNSを結成するフィリップ・ルイス(Vo)と、のちにDEF LEPPARDに加入するフィル・コリン(G)をはじめ耽美的な風貌でも話題となったバンド。メタリックなエッジを備えつつもグラムっぽいキャッチーさもあるそのサウンドは典型的なNWOBHMとは一線を画す音楽性であった。
【WHITE SPIRIT】
現IRON MAIDENのヤニック・ガーズ(G)が在籍していたことでも知られているバンド。音楽的にはキーボードを多用してDEEP PURPLEやURIAH HEEPを彷彿させるオールド・ウェイヴなハード・ロックの遺伝子を受け継ぐサウンドを展開していたため、当時のヤニック・ガーズ(G)はリッチー・ブラックモア(G:DEEP PRPLE〜RAINBOW他)のパクリ扱いとして受け取られていた。
【GRIM REAPER】
1979年にニック・ボウコット(G)が中心となって結成されたバンド。いったんは解散に追い込まれたものの、2006年に再結成を果たした。
【WITCHFINDER GENERAL】
1979年ストアブリッジにて結成されたバンド。アルバムのジャケットのアートワークからも一目瞭然なように、特にBLACK SABBATHの影響を受けたおどろおどろしい暗黒の世界観を特徴としている。
【DARK STAR】
いわゆるNWOBHMの真髄は7インチ・シングルで、1曲だけヘヴィ・メタル・ディスコで話題になって、消えていったバンドも多く、彼らはその典型。素性は上級メタラーの一部の人にしか知られていない。
【GASKIN】
叙情的なメロディにドラマティックな展開を備えたサウンドはBURRN!の広瀬編集長を筆頭に多くのマニアを唸らせたが、アルバム一枚のみで急激に失速。良い曲を継続的に量産できない、あるいはアルバムのクオリティを複数枚に渡って維持できないというNWOBHMの特徴を体現してしまった典型的な存在。彼らも一部の上級メタラーでなければ知る機会は少なかった。
【GIRL SCHOOL】
バンド名通りメンバーが女性のみで構成されたバンドで、女性のHR/HM界進出を後押ししたバンドでもある。嬢メタルやガールズバンドなどの祖とされる。
と…こんなものではないだろうか。一番ソフトな音楽はSAXONで、最も激烈なのはVENOMだと思われる。中ではPRAYING MANTISもソフトな部類に入る方なのだが、SAXONの変遷ぶりは半端なく、ぶっちゃけて言えばDEEP PURPLEから一気にJOURNEYあたりにシフトしたようなもの。
音楽的にはどれも魅力のあるサウンドばかりなのだが、どれが自分に合った音楽なのかは慎重に考えなければならないという意味でも、選びにくいジャンルかもしれない。特に有名だからという理由だけで聴いているアーティストも少なくない。
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