メロディック・デス・メタル(略してメロデス)とはその名の通り、典型的なブルータル・デス・メタルにメロディを増量させたサウンドを言う。Voは基本的に地を這うような低い声を出すため、ブルータル・デス・メタルと比べるとそれほど差は見られないが、バックのサウンドが大きく違うのが特徴である。
解釈は2つあって、初期ARCH ENEMYやAT THE GATESのように典型的なデスメタルにあるような禍々しさを充分に残しつつ、ツー・バス・ドラムをドカドカと激しく連打してスピード感を前面に押し出すデスラッシュ・サウンド(ツイン・リード・ギターの叙情フレーズを前面に押し出す場合はスタスタと軽快に疾走)か、もしくはIN FLAMESのようにHELLOWEENやBLIND GUARDIANなどの正統派サウンドをルーツに持ち、そこにデスヴォイスを組み合わせる、という2通りがあるが、結果的には同じことだと思って構わない。
【ARCH ENEMY】
イングランド出身のCARCASSでメロデスの基礎を作ったマイケル・アモット(G)が、弟のクリストファー・アモット(G)とともに起ち上げたバンド。初期はデスラッシュ・サウンドであったが、徐々にツイン・リード・ギターで叙情的なメロディを出すようになり、極上の叙情派メロディック・デス・メタル・サウンドを提示している。現在もメンバーを変えながら活動中。
【AT THE GATES】
この手のジャンルの開拓者と言われるバンド。ツー・バス・ドラムをドカドカと激しく連打して提示するそのサウンドは、当時リアルタイムで聴いたファンにとって圧倒されるものだった。アルバム『SLAUGHTER OF THE SOUL』はメロディック・デス・メタル史上に輝く金字塔と言われており、ARCH ENEMYのメンバーであるダニエル・アーランドソンの兄、エイドリアン・アーランドソン(Dr)のドラミングのおかげでこれほどのクオリティを体現できたとも言われている。それを体現できた理由は、当時まだドラミング技術が完全に開花されていなかったエイドリアン・アーランドソンに対し、プロデユーサーのフレドリック・ノルドストロームが「もっと腕を振り上げて叩いてみろ」とアドバイスしたことがきっかけだった。
【IN FLAMES】
イェーテボリ・サウンドの開拓者。HELLOWEENやBLIND GUARDIADをルーツに持ち、そこにデス・ヴォイスを組み合わせるという手法で独自のメロデス・サウンドを生み出した。ルーツがARCH ENEMYやAT THE GATESと違うので、一聴したときのサウンドも異なっており、跳ねるようなミッド・テンポにヴォーカル・メロディを組み合わせてじっくり聴かせる極上の叙情派サウンドが魅力となっている。現在も音楽性を変遷させながら生き残りを図っているが、バンドを起ち上げたイェスパー・ストロムブラード(G)はアルコール中毒で続けることが困難となり、現在は脱退している。
【DARK TRANQUILLITY】
IN FLAMESと同じくイェーテボリ・サウンドの開拓者で、両者は親交が深い。彼らが最終的に行きついたメロデスはパーマネントなKey奏者を加入させることだった。疾走チューンではツー・バス・ドラムをドカドカと激しく連打するが、ミッド・テンポになるとKeyによる荘厳なアレンジが飛び出し、極上の叙情派サウンドを演出している。この手のジャンルの中でも成功をものにした数少ないバンドの一つ。
【AMORPHIS】
民族叙事詩『カレワラ』をコンセプトに叙情的に描くフィンランド出身バンド。日本でメロデスというとCHILDREN OF BODOMが先に来るファンも少なくないが、実はAMORPHISの方が世界的なセールスは大きい。STRATOVARIUSとともにフィンランドを代表する大物バンド。
【SOILWORK】
当初はARCH ENEMYの典型的フォロワーだったスウェーデン出身バンド。IN FLAMESとともに2000年代に少しづつNU METALを反映させていった結果、新たなファン層は開拓できたものの、それが直接的なセールスには結び付かず、最終的に彼らの出した答えはメロデスに回帰することだった。
【CARCASS】
イングランド・リヴァプール出身バンド。この手のジャンルの基礎を作ったバンドとして知られるが、当初は典型的なデスメタルからスタートし、少しづつ開拓していく間にIN FLAMESやDARK TRANQUILLITYなど北欧のバンドに押されてしまった感が否めない。再結成を実現した後に彼らが提示したそのサウンドは奇しくも正統派サウンドにデス・ヴォイスを重ね合わせるという、IN FLAMESがデビュー当初から実践を試みていたサウンドであった。
【THE HAUNTED】
北欧スウェーデンはイェーテボリ出身バンド。AT THE GATESの解散後にアンダース(G)とヨナス(B)のビョーラー兄弟を中心に結成されたバンドで、デスラッシュ・サウンドをそのまま引き継いでいるが、よりソリッドなスタイルが特徴。
【WITCHERY】
北欧スウェーデン出身のデスラッシュ・メタル・バンド。これまでにエンペラー・マグス・カリグラ(Vo:元DARK FUNERAL)やシャーリー・ダンジェロ(B:ARCH ENEMY)など、各メロデス界隈の方面でのメンバーらと深い親交がある。
【ETERNAL TEARS OF SORROW】
「永遠の悲しみの涙」というバンド名通り、Keyによる荘厳なシンセサイザーとツイン・リード・ギターによる溢れだす叙情メロディが魅力のフィンランド出身バンド。彼らの音楽はシンフォニック・デス・メタルと言われているが、実際その手のジャンルにある音楽で、個人的にお気に入りバンドの一つでもある。しかし、現在はシンフォに偏っているためか、古参のファンからはあまり良い評価を得ていない。
【KALMAH】
北欧フィンランド出身のメロディック・デス・メタル・バンド。特にETERNAL TEARS OF SORROWと親交が深く、両立しているメンバーも少なくない。
【NORTHER】
CHILDREN OF BODOMの典型的フォロワーとしてファンを魅了したフィンランド出身バンド。音楽もCHILDREN OF BODOMに追随するようにモダン・へヴィ・ロックに変遷したが、2012年に解散が発表された。
【ARMAGEDDON】
マイケル・アモット(G)の実弟クリストファー・アモット(G)がARCH ENEMY在籍時から始動させていたプロジェクトだが、ARCH ENEMY脱退に伴って本格的に始動させることとなった。
【NIGHTRAGE】
FIREWINDのガス・G(G)やDRAGONLANDのオロフ・モルク(G)などといったメロディック・パワー・メタル・バンドの有名ギタリストが関わっていたことで知られるバンド。南欧ギリシャのテッサロニキ出身だが、凄腕プロデユーサーのフレドリック・ノルドストロームが直々にプロデュースを買って出たのを機にメロデスの聖地スウェーデン・イェーテボリに拠点を移し、精力的に活動している。
【DIMENSION ZERO】
IN FLAMESに在籍していた当時グレン・ユングストローム(G)の作曲する楽曲がバンドのカラーに合わなくなっていたため、それを活かすために結成されたバンド。ブラスト・ビートを織り交ぜたデスラッシュ・サウンドが特徴。
【CEREMONIAL OATH】
HAMMERFALLを結成する前にオスカー・ドロニャックが活動していたバンド。彼はこのバンドではギターの他にヴォーカルも兼任し、メンバーはIN FLAMESで活動するピーター・イワースの実兄アンダース・イワース(G)、ベースに当時IN FLAMESで活動していたイェスパー・ストロムブラードと豪華布陣で、一時期はIN FLAMESのアンダース・フリーデン(Vo)がヘルプで参加したり、またAT THE GATESのトーマス・リンドバーグ(Vo)もゲスト参加したものの、音楽性が叙情的ではないメロデス黎明期にあったためか、セールス的に恵まれなかった。
【GARDENIAN】
現IN FLAMESの二クラス・エンゲリン(G)がかつて加入していたバンド。かつては、のちにFIREWINDで名を挙げることとなるアポロ・パパサナシオ(Vo)も在籍していた。2004年初頭に解散し、2012年に再結成を果たした。
【SCAR SYMMETRY】
北欧スウェーデン出身のバンド。バンドのメンバーであるほぼ全員が他のバンドでも並行して活動している。
【SOLUTION .45】
かつて元SONATA ARCTICAのミッコ・ハルキン(Key)が参加していたことや、STRATOVARIUSのロルフ・ピルヴ(Dr)がメンバーとして名を連ねていることで知られる北欧スウェーデン出身バンド。他に有名アーティストが参加していることでも話題となったが、メンバー全員がこのバンドとは別のメイン・バンドやプロジェクトを抱えていることもあってか、活動はかなりのスロー・ペースである。メンバーの脱退や活動停止まがいの空白を経て地道に活動している。
【FLESHGOD APOCALYPSE】
イタリア出身のシンフォニック・デス・メタル・バンド。従来のブルータル・デス・メタルやテクニカル・デス・メタルに、オペラティックな
Voやクラシカルなギター・ソロを導入し、シンフォニックメタルに由来するメロディアスかつシンフォニックな要素とブルータルかつテクニカルな要素が融合している。
【AMARANTHE】
DRAGONLANDの活動で知られるオロフ・モルク(G)がメジャー感のあるソプラノ・ヴォイスを持つ女性Voのエリゼ・リードと、クリーン男性Voのジェイク、さらにデス・ヴォイス担当というトリプル・ヴォーカルの変則的布陣で大きな注目を集めたスウェーデン・イェーテボリ出身バンド。音楽も他のメロデス・バンドとは大きく異なっており、正統派サウンドにテクノ/トランス系のサイバーなKeyアレンジが最大の特徴となっている。疾走感もまたARCH ENEMYやAT THE GATESとは違い、まるでメロディック・パワー・メタルを演奏しているかのようなメロディ主体の疾走感が独特のサウンドを生み出していると言っても過言ではない。
【BLACK EARTH】
北欧スウェーデン出身にして初期ARCH ENEMYのリ・ユニオン・プロジェクト。新曲はなく、現在のところは既発曲をライヴで披露するのみとなっている。初期のファンにとってはヨハン・アクセルソン・リーヴァ(Vo)とクリストファー・アモット(G)が在籍するのが、何より嬉しいだろう。
【BARREN EARTH】
北欧フィンランド・ヘルシンキ出身のAMORPHISを脱退したオーリ=ペッカ・ライネ(B)とキャスパー・マーティンソン(Key)を中心に結成されたメロデス/メランコリック・プログレッシヴ・メタル・バンド。他にはKREATORの活動で知られるサミ・ウリ=シルニヨ(G)やMOONSORROWの活動で有名なマルコ・タルヴォネン(Dr)など豪華な顔ぶれ。音楽性は本家AMORPHISとやや違っており、基本的にブルータルでありつつプログレ的展開も交えているのが特徴。
【INTO ETERNITY】
カナダ出身のメロディック・デス・メタル・バンド。メロデスの他にはプログレ的展開が盛り込まれているなど、器用な面を持っている。
【HATESPHERE】
北欧デンマーク・オーフス出身のデスラッシュ・メタル・バンド。1992年の結成当初はCAUTERIZEDという名前で結成され、その後NECROSISというバンド名を経て2000年に現バンド名に変更した。結成当時のメンバーはクラウス・ニールセン(Vo)、フランツ・デイン(G/B)、イェスパー・モエスガード(Dr)の3人であった。
【MORS PRINCIPIUM EST】
北欧フィンランド西スオミ州・サタクンタ県ポリ出身バンド。バンドの中心メンバーであったヨリ・ハウキオが脱退した2006年以降にギタリストの入れ替えが激しくなった。
…などと、このようにメロデスはバンドの個性が大いに生かされたアーティストが多く、また、そこが魅力的なサブ・ジャンルでもある。私のように90年代HR/HM世代であれば得意とするジャンルだという人も少なくないはずで、メロディック・パワー・メタル、ネオクラシカル・メタルとともに、90年代HR/HM世代に好まれたジャンルでもある。いわゆるリアルタイム期や青春時代を満喫させてくれたサブ・ジャンルだといっても過言ではないだろう。