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ここではかつてアメリカでブームになったグランジ/オルタナについて説明する。まず、知っておいて欲しいのは「グランジ/オルタナはHR/HMではない」ということから理解しなければならない。それを素直に受け止められなければ話にならないし、これからの説明も分からないものになってしまう。
【グランジとは】
オルタナティヴ・ロックの一つ。ロック音楽の一つであってHR/HMではない。さらに、ローマ字表記すると「grungy」となって”汚れた””薄汚い”という形容詞が名詞化した「grunge」が語源となっている。このジャンルで最も人気を得たアーティストはNIRVANAである。このNIRVANAが、当時へヴィメタルが主流だったアメリカにおいてロックチャートを塗り替え、一種のブームとなった。
【アメリカ・シアトルで勃興した】
グランジはアメリカ合衆国・シアトルで勃興したジャンルである。よって、他のアーティストでも早々と取り入れていたバンドは数多いと思われるものの、私が知る限りでHR/HMの有名アーティストの中で最も早くグランジ/オルタナを取り入れていたのはQUEENSRYCHEであった。
これらの作品が失敗作であったことは、私のように順当に聴いてきた人なら分かるはずだ。彼らはプログレ・メタル・バンドでありながら人気を得ている主な理由だと思われる肝心のメロディを捨て、当時ブームになっていたグランジ/オルタナの要素を取り入れてきたのだ。
私だってグランジ/オルタナを毛嫌いしているわけではない。要するに、ことHR/HMにとって肝心なものをすべて捨ててしまったのだ。誤解してはいけないのが、特にHR/HMの世界観について思い込みを捨て去らなければならないということ。
アメリカに限ったとしても例えばイングヴェイ・マルムスティーンのようにハーモニックマイナー・スケールを多用したネオクラ奏法、またIMPELLITTERIのように恐ろしいほど光速の速弾きを主体とした様式美サウンド、進化を続けるDREAM THEATERのようなプログレ、一方METALLICAやMEGADETHのようなスラッシュ・サウンドや、またSLAYERのようにデスラッシュ・サウンドを提示するアーティストも存在する。ちなみに、そのSLAYERはバンド名のごとくでSLAY(首切り)とER(人)を合わせてSLAYER(首切り魔)となる。
このように英語は合理的でその様子を表す言葉が多い。よって、特にHR/HMを聴く際にはこういった語源にも注意したい。それさえ分かっていればハードロックとへヴィメタルは同じ音楽だという間抜けな言い分はできないはず。それはデス界に君臨するOBITUARY(死亡記事)や、CANNIBAL(肉を食べる人、共食い)とCORPES(死体)を足したバンド名のCANNIBAL CORPES(肉食死体、共食い死体)も同様。
このようにハードロックとへヴィメタルでさえ世界観がまったく違うのだから、先ほどに示したグランジ(汚い様)とはまったく別物であることは明らかである。よってHR/HMではない、と結論付けたのである。
実際、グランジ/オルタナの世界観はどちらかというとパンクやヒップホップに近い。なぜかというと、1970年代以前のパンクや、1980年代のハードコアを母体に持つからである。
パンク由来のビートと、ハードロックのリフ主体を軸とした楽曲が多いのも特徴で、アメリカのビジネス雑誌『ビジネスウィーク』によると「バンクのようなDIY哲学とBLACK SABBATHの暗いギター・リフによる結婚」と表現している。確かに影響はLED ZEPPELINやAC/DCを口にするアーティストも少なくないが、一方でハードロックやグラムメタルを忌み嫌うバンドも少なくなく、特にNIRVANAとGUNS N' ROSESが長年対立構造にあったことは音楽マニアの間で有名な話。
【グランジ/オルタナの要素を取り入れたHR/HMバンド】
● QUEENSRYCHE
グランジ/オルタナを取り入れて失敗した代表格。90年代の彼らのサウンドは、私のようなれっきとしたHR/HMマニアにとってガッカリさせられるものだった。実際、本国アメリカでも人気を得ることはできず、アルバムの売り上げは1タイトルにつき1000枚〜5000枚ぐらいがいいところだった。
● PANTERA
90年代以降の彼らしか知らない人はへヴィロックのバンドとして知られていることと思われるが、もともと彼らはDEF LEPPARDのパクリバンドだった。徐々に重いサウンドを開拓していくが、彼らの音楽をへヴィメタルと言わない理由はここにある。一時はスラッシュメタルやグラムメタルなどを試みたこともあったが、のちにへヴィロックと呼ばれるサウンドはグランジ/オルタナでも説明したように「BLACK SABBATHの暗いリフとパンク哲学の融合」が由来である。よってこの手のサウンドが好きで、90年代のネオクラやプログレを好まない、あるいは話題に至らない人は裏を返せば”70年代ハードロックしか聴いたことがない”という事実を浮き彫りにしているのである。彼らの作品も死ぬほど聴いた。
● SLIPKNOT
メンバー9人全員がマスクを被った猟奇的集団。おもにPANTERAにあったへヴィロックのサウンドをブルータル・デス・メタルと融合し、90年代にあったへヴィロックとは一線を画すモダン・へヴィ・ロックと呼ばれるジャンルを開拓した。へヴィメタル由来のギター・リフの疾走感を持ち合わせながらも、一方でパーカッションを含めた打楽器集団による大地を揺るがすほど低いサウンドを特徴とする。彼らがリリースする作品も好きだった。
● LINKIN PARK
日系アメリカ人の血を引くマイク・シノダ(篠田)を擁するバンド。マイク・シノダは真ん中の右にいる。左から4番目。ヒップホップ由来のラップ調のある楽曲も提示するところが彼らの最大の特徴。この頃はかなり好きだった。
● STONE SOUR
グルーヴ感のあるへヴィロックを主体とするだけあって、誤解を恐れずに言えば、21世紀に入ってPANTERAに最も近いサウンドを提示しているのはこのバンドではないかと思われる。ただ、一方でヴォーカル・メロディも充実しており、決してPANTERAと同じような音楽を提示しているわけではない。90年代にして先駆者であるはずのPANTERAが即刻死亡に追い込まれ、一方このSTONE SOURが生き残った主な違いとしては、そのヴォーカル・メロディにあったものと思われる。やはりデス/ブラック以外の音楽においてはメロディが肝心であることが浮き彫りになる結果となった。
ここではあくまでよく知られているアーティストを出してみただけです。今度LOUD PARKがあったり、特にアメリカのアーティストのライヴに行く時でもグランジ/オルタナの要素を含んだ音楽を提示するバンドは少なくないので、こういったことに注意しながら参戦してください。せっかくだから知らないよりはある程度知ってから行った方が面白いと思います。さらに、それさえ分かれば21世紀に入ってアメリカに犇めくアーティストが面白いように理解できるようになると思います。いつまでも30年近く前のアーティストを出すしかないような痛い人間にはならずに済むでしょう。
そういった「70年代ハードロックの要素あるアーティストしか知らねーよ、および30年前〜40年前の歴史的うんちく」は当サイト及び私ではなく、入門者・初心者向けにやって下さい。知らない人だったら真に受けると思いますが、ただ、根拠のない自己主張は好まないし、あまり褒められるものではないですね。
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