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日本ではほとんど相手にされないエクストリーム系のバンドについて書きたいと思います。この手の音楽の本場はアメリカです。
エクストリーム系とはモダン・へヴィ・サウンドを導入すること以外に特に決まりきった要素はなく、おもにグランジ/オルタナ系を導入したバンドも少なくない。この手の音楽は原点が曖昧で、人によってはPANTERAだとかSLIPKNOTだとか、意見が大きく分かれるものの、中にはKORNではないかという意見も実際にある。
● PANTERAというバンドについて
1981年結成。テキサス州ダラスでドラマーのヴィニー・ポール(本名:ヴィンセント・アボット)とギタリストのダイムバッグ・ダレル(本名:ダレル・アボット)の兄弟によって結成される。1982年にPANTERAにバンド名を改名後、レック・スブラウン(B)が、1987年にフィル・アンセモ(Vo)が加入する。
音楽性は70年代ブルース・ハード・ロックにあったもので、特にBLACK SABBATHのような重心の低いサウンドを取り入れることでのちに知られたバンドであるが、当初はDEF LEPPARDのようなポップ・サウンドの典型であったため、おもにNWOBHMにカテゴライズされるような音楽性を提示していた。
1988年、通算4作目となる『POWER METAL』をリリース。70年代ハードロックに、スラッシュメタルの導入を試みた結果、バンド史上で最も重厚なサウンドとなった。これを機にフィル・アンセモ(Vo)が鋭いヴォーカルを聴かせるようになり、のちにグルーヴ感が強調されたサウンドを提示するようになる。
1989年、MEGADETHにダイムバッグ・ダレル(G)が誘われるが、兄のヴィニー・ポール(Dr)もまとめて加入を要求したところ、デイヴ・ムスティンはこれを拒否したため、加入には至らなかった。1992年、通算6作目となる『VULGAR DISPLAY OF POWER』によってフィル・アンセモ(Vo)はハイトーン・ヴォイスを捨て、ハードコア系の歌唱を聴かせるようになる。この時期からダレルはダイムバッグ・ダレル、レックスはレックス・ブラウンと名乗る。
いわゆる日本でPANTERAといえば…というイメージそのもののサウンドがこれ。全米チャート第44位を記録する。その後、元ハードロック・バンドらしくIRON MAIDENやBLACK SABBATHとともにヘヴィメタル・フェスティバルMonsters of Rockに出演する。
この成功後にアルバムは売れるものの、彼らは地に落ちることとなる。通算7作目のアルバムは全米・濠でチャート1位を記録するも、音楽雑誌Kerrang!におけるヴィニーのイラスト描写に対する不満をめぐって、ヴィニーとダレルは雑誌記者と殴り合いの喧嘩を起こす。さらに6月末には、アンセルモがライブ中にステージへ上がるファンを止めたガードマンに対して暴行をしたとして起訴される。翌日彼は5000ドルの保釈金を払って保釈された。1995年アンセルモが酒とドラッグにのめり込むようになり、パーマネントなバンドPANTERAはそっちのけでサイド・プロジェクトにのめり込むようになる。1996年7月13日アンセモがヘロインの過剰摂取により心停止。一命はとりとめたものの、メンバーとの溝には亀裂が生じることとなった。
2000年、通算9作目となる『REINVENTING THE STEEL』をリリース。これが最終作となる。2003年サイドプロジェクトに注力するアンセルモとPANTERAの活動継続を望むアボット兄弟の溝が決定的になり、解散する。
ダイムバッグ・ダレルとヴィニー・ポールはDAMAGEPLANを結成するも、オハイオ州にあるナイトクラブでのパフォーマンス中に、PANTERA解散の原因がダレルにあると逆恨みした観客によって射殺される。残されたヴィニー・ポール(Dr)は2006年にHELLYEAHを結成する。
● 後続のバンドMACHINE HEADについて
かつてグルーヴ・メタル・バンドと呼ばれたほどPANTERAに追随するバンドとして有名なアーティストで、1991年結成。2003年にグランジ/オルタナ・ブームが終焉を迎えるとともに契約を解除される。彼らが復活したのは奇しくもSLIPKNOTがデビューした後だった。
こうしたアーティスト群の音楽は70年代ブルース・ハード・ロックにあったLED ZEPPELINやBLACK SABBATH、そしてDEF LEPPARDのようなNWOBHMのサウンドを徐々に重くしたことから”へヴィロック”と呼ばれている。サウンドがなんとなく重いからなんでもかんでもへヴィメタルというわけではないことに注意したい。
さらに、ロックだというからには楽器の奏法もロックが基本である。へヴィメタルのように速弾きを多用したり、ギター・ソロやキーボード・ソロをフィーチュアすることなく、リズミカルに重いサウンドを出すのが特徴である。典型的なのはSLIPKNOTを聴けばそれが一目瞭然であろう。
恐らくであるが、へヴィメタルがロックを基礎としていると誤解している人は、このモダン・サウンドの奏法のことを指しているものと思われる。そして、この奏法が今現在までに使用されているのはこのサブ・ジャンルだけであり、疾走感が強いへヴィメタルにこの奏法はほとんど使用されない。
2000年以降に特にアメリカで多く誕生した音楽が、へヴィロックをさらに重厚でブルータルにしたモダン・へヴィ・ロックや、ハードコアとへヴィメタルを組み合わせたメタルコアであった。こうしたバンド群が誕生したのは北欧メロディック・デス・メタルで、特にIN FLAMESやSOILWORKの影響が大きいとされている。また、一方でCHILDREN OF BODOMのように欧州からアメリカに本格的に進出したアーティストも少なくない。
● モダンへヴィ/エクストリームメタルの中で絶対に知っておきたいアーティスト
SLIPKNOT/IOWA(2001)
20世紀終末〜21世紀初頭に突如現れた猟奇的集団。9人のメンバーという大人数で、ギター、ベース、ドラムの他にはサンプリング音を出すメンバーと、パーカッションと呼ばれる巨大ドラムでの強烈な打撃音によって低い音を出している。ギターの演奏よりもむしろリズム感のある打撃音をフィーチュアしているため、モダン・へヴィ・ロックの典型である。Voはブルータル・デス・メタルが由来。
TRIVIUM/ASCENDANCY(2005)
マシュー・キイチ・ヒーフィー(Vo&G)が山口県岩国市生まれの日系人だとして話題となったバンド。当初はMETALLICAのフォロワーとされていたが、メロデスのような歌唱も聴かせたため、メタルコアにカテゴライズされることもあった。モダン・へヴィ・サウンドを取り入れながら典型的なメタルコアでもないため、エクストリームメタルの一つとして数えられている。
AVENGED SEVENFOLD/CITY OF EVIL(2005)
当初は”アメリカでデビューしたジャーマンメタル”として話題となったバンド。メタルコアの要素も持ち合わせていたが、確かにツイン・リード・ギターによる叙情的なフレーズはBLIND GUARDIANそのものでもあった。モダン・へヴィ・サウンドが色濃くなっていくとともにスピード・ダウンしてメジャー感が増していく。
CHILDREN OF BODOM/HATE CREW DEATHROLL(2003)
当初はメロディック・デス・メタルやメロディック・ブラック・メタルにカテゴライズされていたフィンランド出身バンド。北欧にある叙情派ネオクラ風味に加えてモダン・へヴィ・サウンドを導入するとともにメジャー感が増していく。
特にこれらのアーティストはHR/HMが好きであれば絶対に知っておきたい。これらのアーティストの間に似ている要素は微塵もなく、それぞれ独自路線を開拓して大物バンドとして成長していった。
● 大物バンドに追随するアーティスト
LINKIN PARK/HYBRID THEORY(2001)
DJを含めたメンバーから繰り出されるリズミカルなサウンドによって当初は”ラップロック”と呼ばれたバンド。アルバムは世界中で売れたためか、ここ日本でも大きな話題となった。
KORN/FOLLOW THE LEADER(1998)
モダン・へヴィ・ロックの祖とされるバンド。アメリカに多く存在するアーティストに多大な影響を与えた。
DISTURBED/INDEISTRUCTUBLE(2008)
アメリカ合衆国・イリノイ州シカゴを拠点に活動するバンド。オジー・オズボーンから「メタルの未来」と賞賛を受けた。初期はラップメタルを提示したこともあったが、現在はハードロック、オルタナ、ニューメタルの要素を持ち合わせている。
HATEBREED/SUPREMACY(2006)
コネティカット州出身バンド。一部のマニアの間ではSLAYER人脈にあるバンドとして知られており、彼らはスラッシュ/メタルコア寄りの音楽性で独自路線を開拓した。来日経験も豊富で、特にLOUD PARKにも出演している。
STONE SOUR/COME WHAT(EVER) MAY(2006)
SLIPKNOTのコリィ・テイラー(Vo)とジェイムズ・ルート(G)を中心に結成されたバンド。活動開始はSLIPKNOTより前の時期であるため、サイド・プロジェクトではなく、パーマネントなバンドとして活動している。
LAMB OF GOD/WRATH(2009)
アメリカ合衆国・バージニア州リッチモンドで結成されたバンド。音楽的にはグルーヴ感のあるへヴィ・ロックで、他にはデス、スラッシュ、メタルコア。オルタナなど、様々なジャンルからの影響が見られる。
NORTHER/CIRCLE REGENERATED(2011)
当初はCHILDREN OF BODOMに続くメロディック・デス・メタルとして期待されたフィンランド出身バンド。この手のアーティストとしては世界でもトップクラスとしてマニアの間で話題になったが、活動が上手くいかず解散に至った。
DARKANE/DEMONIC ART(2008)
当初は新たなメロディック・デス/スラッシュ・メタルとして期待されたスウェーデン出身バンド。徐々にモダン・へヴィ・サウンドを取り入れるようになる。
これらのアーティストは日本で話題になったバンドもいれば、中には見向きもされなくなったバンド、すでに解散してしまったバンドと、様々な道を歩んでいるが、音楽的には何とも言えない魅力にあふれていた。どのアーティストも母国でのチャートで上位にランク・インを果たしているのが興味深い。
● 欧米で孤軍奮闘するアーティスト
MARILYN MANSON/THE GOLDEN AGE OF GROTESQUE(2003)
1990年代後半〜2000年代前半にかけて話題となったアーティスト。アンチクライストを掲げており、悪魔崇拝として有名かつ危険人物としても知られており、特にコロンバイン高校銃撃事件が起きてからは見向きもされなくなった。しかし、復活後には音楽性を軟化させて全米チャート第1位に食い込んでいる。
CREED/HUMAN CLAY(1999)
アメリカ合衆国・フロリダ州タラハシー出身バンド。本作は全米初登場第1位を記録。全英チャートでも第29位に食い込んだが、これほどの話題性をもってしても日本では見向きもされなかった。これにより、日本ではグランジ/オルタナ嫌いのHR/HMマニアが少なくないという事実が浮き彫りとなる結果となった。
THE BLACK DAHLIA MURDER/NOCTURNAL(2007)
ミシガン州デトロイト出身バンド。典型的なモダンへヴィ/エクストリームメタルというわけではないが、メロデスやブルータル・デス・メタルの他にスラッシュメタルなど様々な音楽的要素を持っている。
GODSMACK/IV(2006)
アメリカ・マサチューセッツ州ローレンス出身バンド。グランジ/オルタナの他にインダストリアル・ミュージックの要素を併せ持っている。
MUDVAYNE/THE NEW GAME(2008)
アメリカイ・リノイ州ピオニア出身バンド。オルタナの典型で、日本では見向きもされなかったが、全米チャート第2位の前作に続いて第15位を記録した。
NICKELBACK/DARK NORSE(2008)
カナダ出身にしてグランジ/オルタナの典型的バンド。全世界で4,000万枚以上のアルバム売り上げを記録し、特に本国カナダで人気を博しているが、グランジ/オルタナが敬遠されやすい日本ではさっぱり売れなかった。
PROTEST THE HERO/FORTRESS(2008)
カナダ・オンタリオ州を拠点に活動するバンド。メタルコア、ハードコア、プログレの要素を持ち合わせている。
RED/INNOCENCE & INSTINCT(2009)
アメリカ・テネシー州ナッシュビルで結成されたバンド。クリスチャン・オルタナティヴ・ロックとして知られている。
STAIND/THE ILLUSION OF PROGRESS(2008)
アメリカ・マサチューセッツ州スプリングフィールド出身バンド。グランジ/オルタナの典型で、本作は3作連続で全米チャート第1位を記録したのち全米チャート第3位を記録したが、これほどの作品をもってしても日本では話題にならなかった。
STORY THE YEAR/THE BLACK SWAN(2008)
アメリカ・ミズーリ州セントルイス出身バンド。パンク/ハードコアの要素を持っており、典型的なHR/HMとは違うような気がするものの、彼らの音楽は魅力にあふれているが、本国のセールス自体がほとんど記録に残っていないほど恵まれなかった。
TOOL/LATERALUS(2001)
ネガティヴ志向のグランジ/オルタナにあって、明朗な世界観を打ち出した躍動感のあるへヴィメタル寄りのサウンドが特徴となっているアメリカ・ロサンゼルス出身バンド。本作は本国で初登場第1位を記録したが、彼らを知るHR/HMマニアはほとんどいないであろう。
このように、欧米ではかつて話題となったものの、日本では完全スルーされてしまったアーティストも少なくない。そもそも、日本人という人種を考えた場合、歌謡曲の上にフォーク音楽が流行しただけあって、フォークの発祥地である北欧フィンランド、スウェーデンやデンマークなど叙情的なメロディを前面に押し出すアーティストを好むファンが多く、アメリカの場合は超大国にして人口が3億人という大人数のわりには10万人当たりのバンド数が少なめであり、浸透しにくい。恐らく、全米チャート1位になったアーティストをその辺に歩いているアメリカ人にひたすら尋ねたとしても、知っている人はほとんどいないであろう。
また、アメリカには他のサブ・ジャンルのアーティストも存在するので、この手の音楽だけがアメリカのHR/HMバンドというわけではない。よって、日本にアーティストを輸出した際にネオクラやプログレ、あるいはスラッシュやメタルコアなどのアーティストと激しい競争になり、なかなか生き残ることが出来ないのが現状である。そういう意味では、ファンが思っているよりかなり苦戦を強いられたはずだ。
ここで挙げた以外にも魅力のあるアーティストは実際、存在するが、人によっては「誰それ?」という返答でしか応えることができないのが現状で、中にはハリウッド俳優の活動の傍らバンド活動を精力的にしているアーティストも見受けられるものの、二兎を追うものは一兎をも得ず、と言われるように俳優業でも音楽業でも中途半端だからこそ金銭面のために両立せざるを得ないという考え方もある。
しかし、これらのアーティストには音楽的に毛嫌いできないバンドも数多く、どうしても応援し続けたくなる魅力を放っているバンドはいくつか存在するため、こういったアーティストに関しては支持し続けていきたい。
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