詩・脚本

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 最近、お風呂で本を読むのがマイブームです。

 ご飯食べながら本を読むのも好きで・・・ほんと、サイテーのお行儀なんですが。(自分に子供が出来たらやめないといけませんね・・・)お風呂で本を読むようになったきっかけは、昔から体温を測ると平熱が35.0〜35.3度で、「生きてんの?」と言われるぐらいの低体温症だったのを改善するため。湯船に20分以上浸かるのが大事!と本に書いてあったので、読書していれば時間を忘れて浸かっていられると思い、去年の冬から始めました。

 お風呂の中で読むとなると、難しくて「う〜ん」と唸ってしまうようなものだと、のぼせてしまいますので、余り頭を使わなくて済むものとか、すごく感覚的なものとかに限られます。

 私は「詩」というものは殆ど読まないのですが、お風呂で読むには詩集とかちょうどいいなあ、と思い、大好きな江國香織さんの選詩集である本書を買ってみました。

 江國香織さんの小説やエッセイは、生活感とか大事にしているところも良いし、冷たいひんやりした気持ちよさと温かくほんわりした感じが同居していて、大好きです。そういう江國香織さんが選んだ詩集なので、穏やかなきれいなことばのものが多いのかなあ、と思いきや、結構過激で情熱的な詩が多くて、ちょっとびっくり。江國香織さん自身も冒頭でこう言っています。

 たぶんかなり無秩序な、無論ひどく偏った、
 でもどう見ても力強いアンソロジーです。
 力強すぎるかもしれません。

 日本語の響きが美しい三好達治の「いにしへの日は」、粋な言葉使いとリズム感のある佐藤春夫の「家出人人相書」など、日本の詩にも良いものがいくつかありましたが、私は、ジャック・プレヴェールの情熱的な詩や、ウンベルト・サバの孤独だけど力強い感じの詩が特に好きでした。

 「ある散歩のあとで」 ウンベルト・サバ 須賀敦子訳
  
  丘まで、あるいは、海岸通りに、
  うつくしい夕方、ふたりで
  散歩にでかけると、
  みなの目には、ぼくらの
  絆は、ごくむつまじくうつるのだ。
  多くの血であがない、多くの
  変則な歓びも訪れる、ふたりの暮しだが、
  連中の気に障るなにもない。
  ふたりは、みなに優しいし、おだやかな
  市民だし、目ざすのはいいぶどう酒一杯。
  ただ、胸中には金切り声がひびき、
  旗が風にはげしくはためく。

  祭日には、ぼくが人気ない町はずれを選ぶのが、
  少々、奇妙なくらいで、あとは
  レストランの庭で夕食をとる、
  まったくふつうのふたりにすぎない。
  もう自由をなつかんしんでる夫と、
  焼きもちをやいている妻と。
  他の人たちとはっきり違う点など、 
  友よ、ほとんどないのさ。

  芸術と愛という
  逆なふたつの運命をこころに
  秘めたぼくたちだが。

 詩の文化というのは、やっぱり海外のものかしら、日本には短歌と俳句という美しい形式があることだし・・・本当は、美しい海外の詩は是非原文で読みたい、語学力が許すものならば・・・と思うのですが、中々果たせず。でもいくら訳詩が美しくても、原文の語感やリズムはまた違うだろうしなあ、と思うと、辞書片手にでも試してみたい気になります。

 最後に、一番好きだったロバート・フロストの「絹の天幕」という詩をご紹介。

 彼女は真昼の野辺に張られた絹の天幕のようだ
 夏の日射しの中で微風がすでに
 露を乾かし、絹の張りがゆるむと、
 張り綱の中で天幕は軽やかに揺れている、
 また ささえとなる中心の杉の柱は、
 小尖塔を天に向け
 そのこころの確実さをあらわしているが、
 一本のひもにも頼っていないように見える
 厳密には何にも支えられていないのだが、
 数かぎりない愛と思いやりの絹のきずなで
 それを取り巻く地上のすべてのものに結ばれているのだ、
 そして ただ夏の気まぐれな大気の中で
 わずかにそれか一つのきずながつっ張ると
 ほんの少しの束縛に気づくのだ。

 詩のことは全然わからないので、お薦めの詩人や詩集などありましたら是非是非教えて下さいませ。

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 著名な写真家エルンスト・ハースの写真を、一枚一枚の絵葉書に見立てて、旅に出た男が愛する女に届けるラブレターを、池澤夏樹の透明で美しい言葉が紡ぎます。写真集と詩集を兼ねたような、不思議な一冊。

 エルンスト・ハースの写真は、自然や町の景色を、ヴィヴィッドな色彩で切り取ったもので、ちょっと不思議な印象を残すものばかりが選ばれています。それに、池澤夏樹が自由なイマジネーションを加えて、男がさらっと旅先で見たことや感じたことを書いたような手紙に仕上げる。イマジネーションはすごく飛躍していて、実際の写真の映像とは全く違っていますが、池澤夏樹のしんとした文章を読んでいると、写真がまるで違うストーリーをもったものに思えてくるから不思議。子供が雲のかたちや、満面の星空を見上げて、型にはまらない奇想天外な生き物や物語を描き出すような、そんな自由奔放で力強い想像力に満ちています。

 具体的に色々ご紹介したいところですが、写真が無いのでやめておきます。

 本当は写真とセットで紹介したいけれど、シンプルで美しい文章の余韻だけお伝えしたいので、少々引用。

「最初の手紙」

 最後に空港できみの手を握って、抱き合って、別れた後、飛行機に乗った時、離陸して高く高く上がり、群青の成層圏の空を見た時、ぼくはこの星が好きだと思った。それから、どうしてそんな気持ちになったのか、ゆっくりと考えてみた。飛行機の中って、時間がたっぷりあるからね。そうして、ここがきみが住む星だから、それで好きなんだって気がついた。他の星にはきみがいない。

 愛する人がいる大地を離れ、空高く舞い上がってみて初めて、愛する人がいるその大地そのものを愛しく思う、美しいけれど切ないような真実があるような気がします。

「心のガラス窓」
 
 ぼくたちはみんなピカピカの傷一つないガラスを心の窓に嵌めて生れてくる。それが大人になって、親から独立したり、仕事に就いたり、出会いと別れを重ねたりしているうちに、そのガラスに少しずつ傷がつく。時にはすごく硬い心の人がいて、そういう人が大急ぎでそばを走りぬけると、こっちの心にすり傷が残る。夜の空から隕石のかけらが降ってきて心の窓にぶつかってはねかえることもある。少しずつ傷の跡が増えてゆく。
 でもね、本当は、傷のあるガラス越しに見た方が世界は美しく見えるんだよ。花の色は冴えるし、たった一本の草がキラキラ光ることもある。賢く老いた人たちがいつもあんなに愉快そうに笑っているのは、たぶんそのためだろうとぼくは思う。歳をとるって、そういうことじゃないかな。だから元気を出して。バイバイ

 使われている写真は、実際は、摺りガラスの写真ではなくて、細かい銀色の雨の向こうに色鮮やかに美しいブーゲンビリアが咲いている景色を写したもの。細い線のように降り注ぐ雨のせいで、花も葉もぼやけていて、それが摺りガラス越しに眺める景色のように見えます。男の手紙を読んだ後では、細かい心の傷ですら、柔らかくて美しいもののように感じられます。
 
 からだもこころも疲れた時に、読み直してみたくなる本です。
 

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