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久しぶりの書評である。

本を読んでいないわけではないが面白いとか為になると思える本に最近出会わなかっただけである。

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オハイオの片田舎、雪の中に墜落した飛行機の中に残された480万ドル(100円換算で4億8千万円)。

一緒にお金を発見したのは主人公のハンクと兄とその友人の3人。

ほとぼりが冷めた後に山分けするだけの簡単な計画(シンプル・プラン)。

そして雪が降り彼らが飛行機に近づいた痕跡さえも消され計画は完璧に完結すると思われたが・・・

お金の秘密を守るろうとハンクの人生はどんどん狂っていくのだ。

ハンクの犯す犯罪はハンクとその妻しか知ることなくある意味完全犯罪なのだが肝心のシンプル・プランは大失敗に終わる。彼らは残りの人生をある意味抜け殻として生きていかなければならないのだ。

ストーリー・テラーの第一人者ともいえるスティーブン・キング絶賛のこの物語、最初は淡々と話が進んでいきなんとなく停滞感もあるのだが読み進んでいくうちに物語に引き込まれてしまいあっという間に終章を迎える。これがデビュー作とは思えない緻密なプロット、随所に仕掛けられた伏線。

願わくば最初からこれを原書で読んでいれば韻の踏み方とか言葉使いとかもっとその凄さに触れられたかも・・・

単なる犯罪小説として何にも考えずに読んでも引き込まれるが、ここに流れている主題は人間というものを考えさせられ深い。

「人間は斯くも静かに狂い始める」

我々は自分の境遇をいろいろな理屈を並べて正当化し無理やり満足している。

平凡な人生、手に入らないと諦めた夢、大志。刺激のない、愛の感じられない、不自由な結婚生活、自分の能力を認めてくれない会社、学校、友人関係・・・・

だがささやかな夢やちょっとしたうれしい出来事で満足を感じる人生。

本当はそうなりたい自分を無理やり押さえ込んでうらやましい境遇に法律や倫理を持ち出してあれこれ難癖付け自分は幸せなんだと自分で思い込んでいる。人によってはその状況に慣れきって自分で自分を無理やり納得させていることすら忘れてしまっている。

そして大半の人はその状況が大きく変わることなく人生を終えるのだろう。

でも、目の前に自由に使えるお金があるとしたら、愛を分かち合ってくれる新たなパートナーが現れたら・・・・たぶん人は静かにそして急速に狂っていくのだと思う。

そしてそれが人間の人間たる所以なのではないだろうか。

このシンプル・プランは犯罪小説であるとともに人が諦めていた夢をかなえられると知った瞬間からどういう風に狂って行くのかを迫力ある素晴らしい筆致で描いた人間小説でもある。

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