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知り合いの社長さんから年末頂いた本2冊のうちの1冊。太宰治の中期の作品を集めた短編集である。

最近は映画などの話題もあり、太宰ブームだとか。初めて読むわけではないが、印象に残ったのは黄金風景、畜犬談、きりぎりす、風の便り、水仙などの作品。

畜犬談は主人公がいかに自分は犬嫌いかということを滔々と独白調に語るのだが、文章のあちこちに主人公の犬好きが現れていて「オメ〜、ホントは犬好きじゃね〜かよ!」と思わず言いたくなるユーモアたっぷりの笑える作品。好きなものを素直に好きといえない著者の天邪鬼でシャイな性格が現れている。

太宰は対極的な価値観、例えば倫理と欲望、秩序と破壊、協調と孤高、愛と憎しみ、富裕と貧乏などなどこういったものの間を行ったり来たりしながら一方に行き着くと他方が自分にとって正しいことのように思えてまた反対方向に自分を導き行ったらいったで元居た所が本来あるべき姿に見えてまたそっちを目指すと言うような自分を探しを続けながら終わりのない旅に疲れてしまってこの世を去った作家だったと思うのだが、この短編集では彼のそんな性格がはっきりと確認できるように思う。

また、今までに自分がしてきたことに対する贖罪を求める気持ちが強いのも彼の特徴だと思うのだが黄金風景や水仙にはそれもよく現れているように思う。

分別付かずに激情に駆られたり、何の気なしにしたことが後になって妙に心に重く罪悪感として圧し掛かってくるというのは誰にもあることであろうが自分のあるべき姿をまじめに考える人ほどそこから逃れたい、そういう自分を抹殺したい、救われたい、癒されたいという気持ちが強いんだろうなと思う。

僕もそういう系統の人間だと思うが、太宰治という作家はそういう気持ちが極端に強い人だったんだろうな。

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