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第125回直木賞受賞作。

10年以上前に妻をなくし息子と暮らしている仕立て屋淳蔵と、彼を取り巻く人々の、過去から現在までの恋愛と生き様を紬のように縦横複雑に織り込んだ恋愛小説。

作者はあとがきで「成功不成功は別にしてまさに静思果敢な恋愛を描こうとした」とある。

「職業や収入ではない。どんなに立派なものでも着物に合わない帯がある、帯に会わない着物がある。愛にも領分ってものがあるって思うんだ・・・」そして淳蔵は同じ領分にあると感じる佳世との愛の生活に向かって行く。

静思果敢な恋愛かどうかは別にしてこういう恋愛もあるのだろう。だが自分ならば、佳世のような女性は「女」としては見るかもしれないが恋愛の対象としては見ることができないと思う。どんなにあでやかであろうが、つややかであろうが、綺麗であろうが、所詮彼女は私にとっては「その程度の女」にしか映らない。そしてそのような女を同じ領分の相手として選ぶ淳蔵にも共感できないのである。彼はきっとこの愛でも今までやってきたことと同じ事を繰り返すのではないかという気がする。いずれいまた見たくも無い醜い場面を見ざるを得ないのではないか。いびつであり、外に向かわず、心の高揚とか爽快感が感じられない恋愛である。淡々とした文章だからそれほど浮き出てこないが個々の男女関係や人生を吟味して見ると相当に歪んだな世界であり歪んだ恋愛である。そういう恋愛に思慮深く向かって行くことが作者の言う静思果敢なのであろうか。

この作品には喜怒哀楽が無い。楽しいことを描いていても、嬉しいことを描いていても、悲しいことを描いていても、すべて同じ情感で伝わってくるという意味である。男女の交わりも酒屋での食事も同じようなリズムで同じようなテンポで同じような色調に感じられるのだ。佳世の描く花の絵がどれも哀しく感じられるように。

それでも400ページを飽きずに読ませるというのはやはり作者の筆力であり、直木賞受賞の大きな理由なのだろう。個人的には奥田英郎の『邪悪』の方が直木賞の大衆性に優れていると思うが。

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むっちゃ笑える精神科医・伊良部一郎シリーズ。「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」に次ぐ第3弾。前作「空中ブランコ」は直木賞受賞作。
「オーナー」「アンポンマン」「カリスマ稼業」「町長選挙」の4編からなる。

相変わらず伊良部一郎には笑える。人をおちょくるだけでなく(本人はまじめかもしれないが)、結構人からもおちょくられたり、弱みがいろいろあって人間味に溢れていて憎めない。また、マユミも独特のキャラクターだが今回はパンクロックのギタリストとしての姿も現し、ますますパワーアップしてきている。注射打たれてもいいから(ブドウ糖だし)一度白のミニの生足と胸の谷間を拝んでみたい。

今回は「オーナー」ではどう読んでも読売新聞のナベツネが、「アンポンマン」ではホリエモンが、「カリスマ稼業」では黒木瞳、川島ナオミ、これはちょっと意見が分かれるかもしれないが桃井かおりのような人物がリアルに出てきてこれはこれで笑えるが普通の人の普通でない心理をじっくり描く奥田英朗としてはちょっと手抜き?見たいな感じがなくはない。しかし、そういった登場人物でなければいえないようなマスコミ批判を登場人物を隠れ蓑にして言う手法や心理描写はさすが奥田英朗であろう。

もひとつ言わせてもらえば、前作まではきちんと話のけつを拭いていたのが今回はなんとなくつじつま合わせ的に終わっていたのは僕だけの感想だろうか。ナベツネやホリエモンや黒木瞳が、もとい、なべまんやアンポンマンや白木カオルが話の終わりで突然変異のようにいい人になっちゃうんだよね。それともこれが伊良部一郎だからこそなせる業なのか?

作が進むにつれて、伊良部医学博士の秘密?も少しずつ明らかになったりしてこの先が楽しみである。

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第130回芥川賞受賞作。

クラスに溶け込めない長谷川初実(ハツ)と蜷川智(にな川)の、ファッションモデルのオリちゃんをきっかけとして始まる交流の記録だが、別にそんな状況設定はこの物語でどうでもいいような気がする。要はハツの思春期にありがちな矛盾だらけの心象が書きたかったんだと思う。

周りの流れに溶け込めず周りの誰もが幼稚で馬鹿に見える、そういうハツ。素直になれない、みんなと仲良くなれない、でも仲良くなりたい、そして時に衝動的に湧き出てくる凶暴性。

ハツもにな川も別にいじめにあって孤立しているわけではない。にな川はオリちゃんにどんどん入って行き内向化していく。それは孤立することを予感した彼の逃げの手段かもしれないが。

ハツはハツで仲間に入ることが恥ずかしく馬鹿ばかしくて孤立を選んでいる。時には自分の主張をしたりするが、結局それが自分だけの論理だということは彼女も気付いているし、回りも気付づいている。文中で先輩からこう言われる。「あんたの目、いつも鋭そうに光っているのに本当は何も見えてないんだね。一つだけ言っておく。私達は先生を。好きだよ。あんたより、ずっと。」そして、周りが本当は心から楽しんでいることが判るけどそれでもそうと認められない。

つまり何が起きても何をやってもなんか文句があるしなんかすっきりしない。そしてそういうことが積もって時々誰かを無性に傷つけたくなる凶暴性が表に出てくる。そういう時期があったあった。理解不能な青春時代。

でも、それがなんだ?って言うのが僕の感想。上手くいえないんだけどちょっと文章の上手い大人びた高校生の作文みたいな感じかな。

あとはハツが第一人称で書かれているんだけど、一人称で語られる事柄から浮かんでくる人物像がなんとなくのんびりした人物像に感じられるし、周りが感じているであろうイメージとずれていて違和感感じる。こういう自分が思っている自分像と周囲がイメージする人物像に大きなギャップある人いるんだよね。そういう人のことを周囲の人は「変わった人」って表現したりするんだけど、もしかしてハツはその手の変わった人なのかも。

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この作品の主人公は高校生の次郎。彼が性的に(そしてそれに伴って心も)青年から大人へと脱皮するまさにその瞬間の物語。

音楽教室の晶子さん、お母さん、そして同級生の芙美子との性体験を描いている。

お母さんのときはまた次郎の妄想かと思ったけど、本当だったんだ。文中に書いてあるけど本当に結構あるんだろうかね。

因みにタイトルの触角とは男のアレのこと。

次郎と晶子の会話「・・・それに俺は遊びで女とは付き合わない」「遊びでも真剣でも、やることは一緒じゃない」というくだりに、「ウン、確かに一理あるかも。テニスだってプロみたいに真剣にやるより遊びでやるほうが楽しいかもしれない。ということはあれも真剣にやるより遊びでするほうがお気楽で楽しい?うーん?」なんて考えたりして。

同級生の芙美子ちゃん、外人っぽい容姿とスタイルでそれだけでもいいんだけど、いろんな物事に対する包容力が強くてなんにでも「かわいい、うふっ」とか言って、ホントに愛らしい。花村版「青春の門」第一章?
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最近めっぽう暇である。何せ仕事をしていない。時間が十分にあるとそれはそれでまた使い方が雑になる。そういう危機感を抱きながらあっという間に3ヶ月。なので、これを機会に直木賞、芥川賞受賞作をすでに読んだものも含めてもう一度読めるところまで読んで見ようかと。ついでに最近始めたこのブログに書評として残しておこうと。ということで、図書館なんぞに行って見たりするのだが、公立図書館って、ホントに便利だ。買って読むのが本当に勿体なくなる。ニートは絶対図書館通いすべきだ。

という前置きはさておいて、今回は第130回芥川賞受賞作の一つ『蛇にピアス』(金原ひとみ)である。最初読んだときはそのどぎつさだけに煽られる形ですらすらと読んだ・・・感想それだけかよ!みたいな感じだったが、今回は割りとじっくりと読んで見た。因みに僕は基本的に読むのが遅い。

舌にピアスを入れだんだんとその径を大きくして最後に舌の先を切って二股にした蛇男ことアマ。
両耳にかなり太い(1センチ近い)ピアスを数個し、彼氏(のような)のアマの蛇舌と刺青を持とうと心に決める主人公ルイ。

人間って心でも体でも一度刺激的なことを体験するとそれ以上の刺激や痛みを求めてしまうものなんだろうな。それが耳のピアスであり蛇舌であり刺青でありセックスでありアブノーマルであり恋愛でありSMであり猟奇殺人であり。刺激を最後まで突き詰めるとその先には死しかないのではないかとこの小説を読んで思う。

いったん所有してしまうとそれが当たり前になって手に入れる前の興奮や欲求はもうない。ほしくて仕方のなかったブランド品でも手に入れば自分のもので、コレクションの1つに成り下がってしまう。結婚もそうだ。一度自分のものになると以前の輝きが失われてしまう。結局、所有も刺激と同じで今以上の刺激を求めてしまうんだろうな。

所有しようとして所有し切れなかったからこそアマに対する愛情が続く。一方で、アマを殺したかもしれない男との生活。背中に入れた龍と麒麟の刺青に眼を入れることでまた新たな物を所有しようとする。すべてが更なる刺激なのだ。しかし、蛇舌への欲求、すなわち蛇舌を所有しようとする欲求はなくなる。行き着くところは死しかない状況での一時の休息。そしてぬぐいきれない生きて行くことに対する諦めと哀しみ。

僕はここまでのアブノーマリティーは無理だ。身体改造も筋トレ、マラソンして体つき変えるのがせいぜい、恋愛における心と体の刺激もノーマルで十分反応する(と思う)。筋トレして、マラソンして、体つき変えるほうが時間かけてじっくりやらなきゃいけない分だけ根性いると思う。こんなこと考えているうちはこういう世界には行かないんだろうな、きっと。

それにしても、この作者、こういう作品書くのに人生において相当高い代償払ってきたんだろうなと思うのは僕だけだろうか。

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