笠原瑠璃子の真骨頂なつぶやきダイアリー

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 新年を迎えようとしている。
 窓の外に、雪が音も立てず落ちている。温度計はないが、零度以下であろう。こんな物音ひとつしない世界があっただろうかと改めて感じるくらいの静けさである。静寂に包まれた空気の波動だけがじっとしている私の細胞に少しずつ入り込んでいる。透き通った
寒さ、お炬燵に差し込んだ足先だけにほんわりと温かさが伝わってくる。先ほど入れてもらったコーヒーがもうふるぬくい。







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 七時になったころ、お風呂を頂き、精進料理を済ませた。
 宿坊は、寺院で僧侶が生活する場所であり、高野山の町に宿坊はざっと百十三、僧侶の数は八百人以上と聞く。いつのころからかは知らないが、コンビニエンスストアが一軒だけあり、街並みは寺に囲まれ、その並びに数珠屋や高野豆腐を食べさせてくれる食堂や小間物屋がある。まさしくお山に参るという言葉がしっくり来る場所である。いつもは日帰りのお参りにしているが、縁あって今年の師走は宿坊に留まることになった。宿坊は初めてではない。精進料理の「五味、五法、五色」は、それぞれの宿坊ごとで工夫を凝らされていて焼き物、揚げ物、酢の物、豆腐類、汁物が出る。色と味のおもむきが遜りの精神を思い起こさせる。
 寒中、町中を歩くと衣を羽織った僧侶としばしばすれ違い、高野山大学に通いながら宿坊で修行している寺生さんたちが早朝に素足で凍てつく長い廊下を雑巾がけに励まれている姿を目にする。








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 寺の境内の砂に梵語模様を描かれてる。薬師如来や不動明王、阿弥陀如来の守護梵字を眺めるのも楽しみの一つである。明け方の勤行はたいてい六時から。本堂に向かうとすでに灯明が点き香が漂っている。お参りする前に塗香で心身を清めると、しだいに自分の体温によって香りが立ち上がり、得も言われぬ落ち着いた気持ちになる。寺に生まれたこともあって、どの寺の本堂に座わらせていただいても言葉では言い表せない黄泉の世界との繋がりがあると思っている。死生観の曖昧であった子供の頃とはまた違った自分だけの世界もかけがえのない時間になっている。

 そういう時間を持つために毎月決め事のように大阪難波から極楽橋への電車に乗り、ケーブル駅への連絡橋をくぐり高野町へ出かけている。もう一つの目的は、高野山から更に上にある標高千二百六十メートルの立里荒神へのお参りがある。数えてみると、この師走で二十八回目、冬の高野は、これで三度目になった。最初の頃は、高野山までの距離が難儀に感じられたが、春夏秋冬の高野山の佇まい感じながら歩くのがいつの間にか習慣の一つになった。
 






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 記憶をさぐると、昨今お参りする人たちの数が急に増えたような気がする。震災以後休日はかなり多いと寺生さんが言っていた。最近では、ガイドさん付きの観光バスもひっきりなしで、信仰の場の霊場と観光地との微妙なアンバランスを感じる時もある。
 霊場は、仲間と連む場所ではなく、仏と語り、嘘をつけない場所である。やはり霊場として静かで美しい所作の伴う場所であってほしいのが理想だろう。

 宿坊の部屋に入れ直したばかりのコーヒーから湯気が立っている。
 夕刻から降り出していた雪は漆黒に白。依然として天からまっすぐにやわらかい様相で落ちている。もう深夜近くの時刻。山間の雪の落ちる静かな宿坊で師走を迎えられ、ぼちぼちと原稿を書けることを感謝しながら、年の締めくくりに相応しい場所だとしみじみ思っている。







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みなさま、あと数時間で新年ですね。
来る年がみなさまにとって善き年になりますよう心から祈ります。
2014年もどうぞ宜しくお願いします。












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