笠原瑠璃子の真骨頂なつぶやきダイアリー

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「立寒椿と母」

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お寺の境内の片隅に見事に咲く椿の木があった。

 立寒椿と呼ばれるその木は、八メートルもある立派なもので、毎年冬になると赤色大輪の花をつけていたという。








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祖父母が、母の手を引いて、その寺に引っ越して来た時、うらぶれたその寺の境内に赤一色に染まった庭を見た。母は幼く、時は、昭和の初めだった。


 母は、まだ幼かったので、その花の名前も知らなかった。
 山沿いのその寺の境内は、大きな銀杏の木が一本と、その寒椿だけがあったと聞く。冬枯れの境内に、その赤色は、めらめらと燃えているように見えたと、母は言う。


 
 母は子供心に、なんと寂しいところに来たのだろうかと感じたそうだ。
 そのお寺は無住で、ふすまは破れ、吹きさらしの様子を見せていた。
 ただ、その光景のなかで、その椿の赤だけが、心に残ったのだ。



 





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 母は祖父母に聞いた。




「何というお花なのですか?」
「つばきと言うのです」


「きれいなお花ですね」
「そうですね。でも頭から落ちるお花なのですよ」
「どうしてですか?」
「さあ、どうしてでしょうね。まるで赤い絨毯のようですね」
「ほんとうに、きれいです」




 



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 母の人生はこうやって始まった。
 昭和の戦争の激動期のなかでも、その椿は、毎年見事に咲いたという。
 


 絵心のある母は、毎冬に咲く椿を何枚もスケッチをしている。
 母のスケッチブックを捲ると、椿の花のスケッチもあるが、ほとんどが庭に落ちた赤い花びらの絵が多い。それほど母の心には、花びらの絨毯に惹かれるものがあったのだと思う。







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 母は一度、戦争中に身内を戦死させた衝撃から失明をしている。
 そして、今、母はほとんど視力がない。
 

 一週間前のことだった。
 母がぽつりと私に言った。


「境内の寒椿は、もう赤い絨毯になっているでしょうね・・・」
 私は、「もうすぐ、赤い絨毯になるでしょうね・・・」と、答えた。

 母は、口を閉じたまま、ベッドで頷いた。




「本当にきれいな椿でしたね」


「そうでしたね」
「あなたは、最近、あそこに行きましたか?」
「行きましたよ。お参りをしてきました。椿がとてもきれいでした」

「大きい木でしたね。もう百年くらいになるでしょうか・・・」
「そのくらいになるでしょうね・・・」

「あの木は、おばあちゃんは嫌っていました。頭からころりと落ちるから縁起が悪いと・・。でも、私はとても好きですよ。あの赤い、赤い絨毯が風にひらひらと地面すれすれに音も立てずに流れて行くさまを、絵に上手く書けないものかと、娘時代によく思っていました」



「風に飛ばされるのですね」
「花びらですよ。花びらが地面すれすれにね・・・」






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 私は、病室からエレベーターの中まで、息を止めていた。




 風に飛ばされる赤い、赤い花びら・・・
その花びらが風に舞うのを見たことが私にも何度もある。



 その立寒椿は、父が他界するちょっと前にお寺の大改築があり、切り倒されてしまった。そして、その椿が切られた時、母が言った言葉を覚えている。
「昭和が終わったのだもの、仕方ないわね・・・」


 母は、病院のベッドで、あの美しい椿の絨毯をふと思い出したのだ。



 私も目を瞑れば、あの赤い、赤い絨毯を思い出す。


 エレベーターが開いて、現実が私に立ち向かって来たけれど、切ない夜だった。その夜、私は、懐かしいふるさとの赤い、赤い椿の花びらの絨毯に包まって眠っている、深い深い夢を見た。



椿よ
何をかをいわんや

わたしの心の
深いポケットのなかを
まさぐらんや







文・瑠璃子







【椿】




忘られし
セピアの写真



あなた
新妻
ひっそりと
いとしき人に
寄り添いし



結い上げのうなじの
ほんのりと
まこと
かぐわしき
愛らしさ



春浅い
あなた
ほほ染めし
うすももいろの椿になり



春待つ
胸の
おくゆかし



椿として
いとしき人の
あしもとに



静かに
落ちる
こころいろ



音たてず
椿として
あしもとに



花びら
散らす
思慕のいろ




イメージポエム・瑠




http://blogs.yahoo.co.jp/rurikokasahara/33307066.html
★過去の【椿】の詩です。










プロフィール
ヴァイオリン:穴澤雄介★千葉県出身。筑波大学付属盲学校高等部本科音楽科、同専攻科音楽科卒業。2008年8月1日、CD「あの木に寄りかかって2008」発売。他にも5枚のCDをリリースしている。オリジナル曲からジャズ・ラテン・アイリッシュから童謡など演奏スタイルは広範囲に及ぶ。第25回浅草ジャズコンテストバンド部門にて金賞受賞。第1回東京サミット音楽コンクールデュオ部門で審査員賞など受賞多数。10月にはギターの望月雄史氏とのデュオアルバム「Noche&Monte」発売。
http://blog.livedoor.jp/takagimasao







http://25.tok2.com/home/hanahanahana/anazawa.mp3
ボューム調整は右です。再生は左▲です。
【演奏】ヴァイオリン・穴澤雄介★ギター・望月雄史
【曲名】リベルタンゴ






★音楽が聴けない方がいらっしゃると思います。メディアプレイヤーの
設定が各々、パソコンによって違うからだと思います。
設定は、http://blogs.yahoo.co.jp/rurikokasahara/38388484.html
の記事に掲載しております。どうぞ宜しくお願いします。





ご協力★ブログ「花*花*花」
http://blogs.yahoo.co.jp/jakki0947



このブログは、最大文字で編集しています。
パソコンの表示から文字サイズを「最大」にして頂ければ
きちんと整列した文字になると思います。
最近ブログが重くて開きにくいと言われています。私もたまに行けない
ことがあります。^^すみません。
宜しくお願いします。良き一日でありますように。
   





★瑠璃子のメモ

ゆっくりと訪問コメントをさせて頂きます。寒くなってまいりました。みなさま風邪などひかれません様、ご自愛下さい。









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