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霧雨が降っていた 少女は、電灯で黒光する石畳をしなやかな足取りで裏通りを抜けて パン屋さんの斜向かいにある大きなクリスマスツリーの見える広場まで来た パン屋さんから少し歩いたところに緑のノッカーのある家がある リビングのカーテンが開いていることを願った つい先ほどまでの霧雨は粉雪になり 風がことごとく赤いマフラーを舞い上がらせ 頬を撫でながら流れた 少女は何度もマフラーをきつく巻き直した パン屋から流れてくるパン焼きの香ばしい匂いが そんなに遠くない過去、心通う人たちと囲んだテーブルの上のパンプキンスープ、ローストチキン、フルーツケーキを思い浮かべてかすかに微笑んだ それにしても少女は、なぜだか緑のノッカーのある家を覗くのが大好きだった 暖炉の前には、おじいさんの可愛がっている黒い猫が座り おじいさんが薪をくべている姿が見えた 一人暮らしのおじいさんは、たいてい猫に話しかける おい、今日は何日かい? そろそろクリスマスツリーを飾る時かい? おまえは、何がほしい? 何が食べたい? カーテンの側には、きちんと整頓された机があり 数冊の本と、いつも笑っている男の子と女の子の写真楯 床には黒い猫の皿 おじいさんの椅子の上には膝掛けがあり その横にはギターがあった 何の変哲もない部屋 いつものおじいさんと黒い猫の姿 その姿を見る度に、何か訳の分からない痛みを少女は感じた ……変化というものの恐怖、変化しないという退屈、そのどちらも…… 少女は、10歳になったばかりで 人生の荒波に放り出されたばかり これからの少女の人生に たくさんのあたたかい心ある人たちとの出会いがありますように 師との出会いがありますように 彼女の純粋な精神がどんな時でも汚されず 未来への夢と希望がしぼみませんように 恐怖に足がすくみませんように、勇敢な自分の強さを忘れませんように 美しい心のつぼみがきちんと花開きますように Merry Christmas
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