笠原瑠璃子の真骨頂なつぶやきダイアリー

過去の記事は写真のすべての表示 からが簡単です。音楽は重なりません。 良き日をお過ごしください。感謝★

短編小説

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「そうだったの」と、私は答える。 

 この現象はほんの夢だと思えば、それでいいことだ。

…そんな気もする。観念することだ。

 今年の夏、旅好きの早苗に誘われて、チベットを旅行し

た。早苗はいたって元気なのに、私は高山病にかかり、ホ

テルでチューブを鼻に突っ込んで吸ったり、嘔吐したり、

頭痛と目眩と呼吸困難で意識が朦朧となり大変な目にあっ

たが、病院まで運ばれ点滴や酸素吸入してもらったことや、

金魚のように口をぱくぱくさせたことも、恐怖で眠れなか

った夜でさえ、今となったら夢だったのかもしれないと思

えるのだから。現実が遠のくのが早いのは、私の得意とす

るところだ。

 チベットに行く三ヶ月前、右足首を蛇に咬まれた。医者

がマムシだと納得したのはずっと後のことだったが、私は、

咬まれた瞬間にそう思った。

 真夜中だった。脱出常習犯の室内犬、リリーが玄関から

出て行こうとしたので、追いかけて道路に出たところでや

られた。体温を察知して飛びかかって来たのだろう。歯型

だけが残っていた。足はたちまちはれ上がり、脈打つよう

に痛みが襲う。あいにく家には誰もおらず、自分で車を運

転して救急病院に行くと、

「これ、マムシじゃないよ。住宅地でしょ?」

と野暮医者が言う。

「ええ、でも、間抜けにも舗装してある家の前の道路でマ

ムシから咬まれたんです」

「あのね、マムシはこの辺にはいないよ」

「じゃあ、なんですか?」

「ちょっとした虫でしょう。念のため点滴をしておきまし

ょう」

 その日は、そのまま家に帰り、翌日も病院で点滴をして、

仕事に行った。足が二倍に腫れているので、ヒールなど履

けない。草履でも無理だ。夜になって、いつものように仕

事を終え、車に乗って路上に出ると、一台のはずの対向車

が何台も来ている。

瞬間、蛇はこんな風に物が見えるのかなあと思う。

てかりがある見え方で、平衡感覚がない。

 私は、救急車でまた病院に舞い戻り、三週間の入院とな

った。

 入院して一週間は、目がやられて、肝機能が低下した。

ほとんど見えないというほうが正しかった。狭い範囲でし

か見えない。目が少しずつ回快復してからも、以前と平衡

感覚が戻らず、まっすぐ歩くことができなかった。 

「あぶないとこでしたねえ」と看護婦が言う。 

母から聞いたのだが、この体験は初めてではないそうだ。

幼稚園の頃、父と山歩きをしていてマムシに咬まれたそう

だ。

「その頃は、血清を打ってもらったけどねえ」と母が言っ

た。

 蛇に二度も咬まれるなんて、なんてことだと思う。

毒蛇といい、今夜の女といい…。

私の身に忌忌しきことがおきつつある?

女に出会って数分も経っていないのに、また先のことが

読めるような気になっている。

前方を歩く、女の着物の柄の白い部分がうす青く光って

いる。

車は壊れていないとあの女は言った。

「すべては、女の仕業にちがいない」

 ルイという女は、私を車のところで待っているだろう。

こうなると、どんなことをしてもこの訳を聞かかねばな

らない。

 私が車まで行くと、女はしゃがんで花を摘んでいる。髪

飾りがきらり光る。束髪のひさしを張り出し、高く結ぶス

タイルで髪を結っっている。

「姉さん、この花知っているでしょう?」

「知らない」

「あら、姉さんの好きだった花よ。シマカンギク」

「そう」

「悲しいけど、覚えていないからいいのよね…」

 女は、そう言いながら私に黄色の花を手渡した。

 車のドアを開けてキーを回すと、なにごともなかったよ

うにエンジンは掛かった。

ラジオから先ほどと同じ出演者の声がする。

 女は、助手席に静かに座った。

「今日が最後だから」

 低い声で呟く。

 女は、私に道を指示しなかった。精神感応で伝達してい

るかのようだった。 

私は、山に向かって静かに車を出した。

 車の中に、月明かりが射し、甘い匂いが漂う。懐かしい

ような気がする。

「私は、いつの時代が前世だったの?」

「明治五年生まれ。誕生日は三月。東京に暮らしていた」

「私はなにをしていたのかしら?」

「それは知らないほうがいいと思う」

 女は、静かに答えた。

「じゃあ、私はいつ死去したのかしら?」

「明治二十九年の十一月」

 今度は、すらりと答えた。

「生まれは、五年。ということは、私は二十四歳で死んだ

ということね」

「ええ。私が最後まで姉さんの手を握っていた」

 女の声が現実を帯びている。

「病気だったのね?」

「姉さんは、肺結核に冒された」

「私は、幸せな生活をしていたのかしら?」

「私は姉さんじゃないからわからない…。姉さんは、失恋

と生活難に苦しんではいた。だけど、精一杯生きたと思う。

姉さんは、栄光の絶頂にあったときに逝った」

「わけがわからないわ。生活に苦しんでいて栄光の絶頂?」

「私は、姉さんに一度だけ会いたかった」

 女はそう言って、私の手を両手でしっかりと握った。

 車は、止まっていた。

 目の前は、深い森が広がっている。森の先には家はなさ

そうだ。やはりこの女は狸か狐なのだろうと思った

瞬間、睡魔が私を襲う。

 気が付いたときは、私は自分のベッドで寝ていた。そっ

と足を動かすと、愛犬リリーがいつものように足元で寝そ

べっている。

 慌ててベランダから駐車場を覗いた。

車は所定の場所にちゃんとある。

「なんだ、夢か」と嬉しくなる。 

 ぐっすり寝たのだろう。体の疲れが取れている。

秋晴れのすがすがしい朝だ。

 今日の午前中は、月一度の短歌の会の日だ。石松先生に

夢の話でもしようと思った。

 新聞を読み、軽く朝食を済ませてからリビングの掃除だ

けをして、車に乗り込んだ。

 サイドブレーキを下ろす時に、やわらかいものに触れた。

「あっ」

 そうでないことを祈る。

 私は左下を見ないで運転する。

 車を降りる際にもそれを見ないようにして、バッグだけ

を手探りで引っ張った。

 ドアを開けたところに、タイミングよく石松先生が笑っ

て立っていた。

「千夏君、山にでも行ったんですか。野生のシマカンギク

ですね」

 先生の声を聞いた途端、私は足の力が萎えて、へなへな

となって、先生にしがみついた。

「あれ、千夏君も人に抱きつくことがあるんですね」

私はかまわず、「先生、水を下さい」とかすれた声を出

した。

 先生の家の上がり口で水を一気に飲み干し、

「先生、山の蕎麦屋の話、本当ですか?」

「あれれ、千夏君は意外に純真なんですね。僕のつくりご

とです。僕のひそかな妄想のようなものです。いけなかっ

たですか?」

 私は、上がり口でしばらくじっと座っていた。

「今日は、短歌の会は失礼します」と言いながら、ものに

憑かれたように、その足で私は図書館への道を車を走らせ

ていた。

 私は、ひっそりした図書館の机の上で突っ伏して泣いて

いた。

 本名なつ・奈津、夏子ともいう。明治五年三月生まれ。

六人兄妹の次女として東京に生まれ。肺結核に冒され、妹

にみとられて二十四歳で死去。

 ひとしきり泣いた。

 体をひきずるようにして、家に着く。

 夫が出張から戻り、キッチンで肉を焼いている。

「神戸牛は、焼け方から違うね、千夏も食べるだろ? 今

回は、田辺のおじさんがわざわざホテルまで届けてくれた

よ。スペシャルだと思うぞ〜」

 私は、夫の背後にぴたりよりそった。

「おいおい、なんだよ、」と夫はおどけながら、「あっそ

うだ、書類を届けてくれたぞ、キッチンテーブルの上に

あるよ。僕が今までに見たことない女性だったなあ…、

出版社に勤めているようでもなかったしなあ…」

 私は、テーブルに目を移した。変哲もない茶封筒だ。

 私は、その茶封筒をそっと開けた。

 中には、一枚のセピア色の写真と、昨夜、妹がしていた

髪飾りだった。

紙切れには≪一夜の夢、誄より≫と記されていた。

私は、妙に神妙な気持ちになった。

 夫がステーキをベランダのテーブルに運びながら、「あ

のさ、彼女は、着物を着たきれいな女性で、ちょっとそ

そられるような美女でさ、」と、おどけて言いかけた時、

人差し指で夫の口を塞いだ。

 夫は、「やきもちやくなら、彼女ともう一度会ってから

にしてくれよ」と、上機嫌でナイフで肉に切れ目を入れた。

ジューシーな肉からじゅわっと肉汁が出た。

 私は切ない気分になる。

 その夜は、満天の星。

 二人でワインをしこたま飲んだ。テーブルのローソクが

ありがたかった。際限なく泣ける気分だった。

 本当に切なかった。

 セピア色の写真は、たぶん私と誄だ。

 誄の顔はすぐわかったが、私の顔は今と違う。だけど見

たことある顔だった。

そんなはずはない。本当にそんなはずはないはずだが、

写真はそれを告げていた。

でも、もうずっとずっと過去のことなのだ。体は借り物

かもしれないけど、私はナツのような人間ではない。魂は、

すべてを忘れるというけれど、そうでなければ生きてはい

けない。誄は私に何を言いたかったのかは、一緒にいた時

には、以心伝心で理解できた。だけど、今となったら、も

う一度、誄に会って話をしたい。切にそう思う。

 私はベランダの手すりにワイングラスを置いて、大きく

深呼吸をした。

 私は、テーブルの上の茶封筒から髪飾りを出して、手で

さすった。べっ甲のカンザシだった。

 誄の「姉さん」という声が心の中で渦巻く。

 写真の私は、右手に風呂敷を抱えていて、なんだか生意

気な感じだった。

 誄という女が私の妹だったということを、私は信じた。



「やっぱり」

予測通りに運ぶってやつだ。こういうときの感てやつは、

嫌になるくらい当たる。ましてや、私は未来が見える?

そんなあほな…。緊張しているときは、そういうことは起

きないというのが私の中では定番だ。

 それに、たいてい、いいことが起るときは、勘が働かな

い。 

「このあたりは唯一、携帯電話は役に立たないところです

よ」と石松先生が言ったので、私はおもしろがって、自分

の携帯で確かめて、

「この携帯で、圏外の文字を見たのは初めてですよ」と言

ったことがあったのを思い出した。

 あわてて何度かエンジンを掛けなおしたが、びくともし

ない。どうしよう。私は車に関して、まったく無知だ。

 携帯を手にしたが、やはり駄目だった。

「一台くらい車は通るだろう。手を振って助けてもらうし

かないな」

とりあえず、バッテリーが上がらないように、ラジオを

消して、ライトを消した。

 沼のほうに明かりが見える。

 小さい光だ。何だろうと思っていると、蛍だ。

蛍を見たのは何年振りだろうか。青白い光を発光器から

点滅させ無数に飛んでいる。

 ゲンジボタル、ヘイケボタル。蛍は夏に水のきれいな場

所に飛ぶのではなかったか。

「秋蛍ってやつがいるのだろうか?」

 蛍は久しぶりだ。孝浩と付き合っている頃、さあ今から

蛍を見せてやるからなと、部屋の明かりを消してずぼんを

下ろし、ライターでガスを光らせた。くだらないことを思

い出す。

 しばらく、上下する光に見とれていた。

 いつもこの辺りに蛍が舞うのだろう。知らなかった。普

段は気が付かないことが、停止することによって見えるこ

とがあるのだ。

 夜の静寂のなかで蛍を見ていると、日常のことなどどう

でもよくなってしまう。

 別世界だ。

 見えないだけで、別世界は他にもあるのかもしれない。

日常は、同じことの繰り返しで無意識にこなしている動作

が多い。

 いつの間にか、車が止まっていることなど忘れかけてい

た。時計は十一時を指している。そんなに時間は経ってい

ない。そっとキーを回す。やはり掛からない。

それにしても車が一台も通らないというのも珍しい。

ラジオをつけると、若い子たちの駄弁りが流れてきた。

「ん? そんなことないだろう? いい男だったら、絶対

口説かれたら寝ちゃうだろう?」

「えーっ、そんなことないってばあ」

「え、じゃ俺とは?」

「もう、誰ともそんなことしないのお」

「あ、じゃ、ミッチー、まだ膜あるんだ」

「うん。あるよ、何枚も」

 どうでもいいような話が流れている。非常時だというの

に、「アホ」と思いながらも聞き入ってしまう。

 車で数回しか通ったことがないので、定かではないが、

この先に、民家があった気もする。

そういえば、石松先生がここから少し登った山腹に、週

刊誌に大々的に取り上げられた手打ち蕎麦屋があると教え

てくれた。

他県からも客が来るくらい美味しいと評判だけどね、ど

うも変なんだよ、そこの女房は、モスリンの着物を着てい

るんだがね、いつ行っても右前に着てるのよ。変でしょ?

それにね、時々すっと居なくなるの。それでも大将は女房

を探す風もなくてね。山からやってきて住みついたと狸を

猫かわいがりしてるのよ。抱っこして口移しで餌をやった

りね。なんだか意味深だと思うよ、と話した。

「それって?」

「うん、たぶん。あの女房は稀に見る美人だが、僕が思う

に、狸か狐だな。旦那のほうはれっきとした人間だ。おも

しろいだろう? 千夏君は蕎麦好きだから、一度は行って

ごらんよ。この世のものとは思えないくらい美いから。そ

のうち地図を描いてやるよ」

「そんな狐か狸がやってるような店、一人じゃ嫌だなあ」

「なにをやるにも一人ってのがいいのよ。その店、看板が

ないからね。車を山道に止めて、そこから細い道を歩いて

登っていかなければいけないよ。道に迷って辿り着けない

日もある。帰り着けない日もあるんだけどね…、」

「石松先生は、お酒に酔って道に迷っているんでしょう?」

「行きは正常だよ、酔ってないよ」

「蕎麦に惹かれて、怖い思いをするってわけですね」

「そういうことだけどさ、蕎麦だけじゃないよ。その日に

よって違うのよ。メニューもないしね。山女や、カワモズ

ク、竹の子料理は突き出しで、酒がまたいける。じゃがい

も饅頭や芋餅も出してくれるよ。この前登ったときは、池

沼に自生しているじゅん菜を出してくれてね」

「じゅん菜ってどんなのです?」

「スイレン科の多年生水草で、夏に水面に紫紅色の花を咲

かす。のちに卵形の果実を結び、若芽と若葉は食用として

珍重されていてね。茎と葉の背面に 寒天様の粘液を分泌

するから、食感はぬめぬめしている。あ、その店、昼間行

ってもだめだよ、夕方からしかやってないからね。それか

ら、懐中電灯は、必需品だよ」

ま、石松先生は、変わり者で、話も上手い。眉唾だろう。

山歩きをして、最近はキノコの研究をしている。その店に

行くと、珍しいキノコを食べさせてくれるそうだ。

「毒キノコじゃないが、これがまた、専門家の僕が見たこ

とのないキノコなんだよ」と、言っていた。

 私は、道沿いに民家があるかどうか、歩いてみることに

した。そうでないと、山で一晩明かすことになる。まさか、

今の時代に追いはぎはいないだろう。出るとしたら、幽霊

か、それこそ狸か狐だ。

トランクにゴルフセットを入れていたが、そこまでする

とやりすぎだ。念のため、バッグに携帯電話とがあること

を確かめ、途中で手の大きさの石を拾った。ジッポーに火

を点けたが、その必要はなかった。道の両脇がくっきり見

える。

 空を仰いで、月夜だったことに気が付いた。

満月に少しだけ欠けている。

 十分ほど歩いた。

 民家の明かりは見えてこない。

携帯は以前として圏外で、文明の社会からワープした気

分だ。ラッキーにも、主人は出張中だ。心配させずに済む。

連絡をしないと、文句たらたら言われるところだ。

 風がでてきた。木々の音がする。空気がきれいなのだろ

う。満天の星が広がっていて、今にも降ってきそうだ。

これ以上進むと、車まで戻るのが難儀になる。

半ば野宿を覚悟した。夜が明けたらどうにかなるだろう。

通勤の人の車も通るはずだ。

 私は、バッグからセーラムを出して火を点けた。

 その時だ。

後ろから声がした。

 どきりとする。瞬間的に身構える。

 そして、やっぱりと思った。

 女の声だ。

 振り向きたくない。

 いや、振り向かなくても私には見えている。着物を着た

右前のあいつだ。

あいつ?

そうだとしても、妙に怖くない。

 もしかして、こういうことが起きるのではないかと心的

現象が教えていた。そればかりか、教室を出るときから、

こうなるように仕組まれていたのかもしれないとさえ思え

る。

でも、何故私?

 私は、ゆっくり声のした方を振り返った。

 女は、思ったより近くに居た。真後ろだ。 

 彼女は、ぺこりと頭を下げた。

 拍子抜けして、私も思わず頭を下げる。

 月の光が女の顔を照らしている。きれいな顔だ。涼しい

目もと、小さくつぼんだ口、日本人形のような髪型。

 本当に石松先生が言っていた通りなのだろうか。

 何を話したらいいのか。頭の中を駆け巡る。初めて会う

のに、なんだか昔からの知り合いのような気楽さだ。

「どうして、真夜中にここにいるのですか?」

 私は、辛うじてそう聞いた。

「あなたに会うために来たのです」

 女は、鈴を転がすような様な声を出した。

 私は、何故だか、ほっとした。

「あんたいくつになるのさ? いいものあげるから、わた

いについてきな」という台詞じゃなくてよかった。

そう思っている自分が可笑しくもある。

こうなると、話は早い。

私は、いちかばちか聞いてみた。

「何故、私なの?」

 女は、もう一歩だけ私に近づいた。

 そしてまた鈴のように澄んだ声で言った。

「私の姉だから」

 私はだまって頷いた。

 いったい、こういう展開ってあるのだろうか?

 思わず彼女の足元を見た。ちゃんとある。

赤い鼻緒が付いた草履に、指が見える。

私は、消えている煙草に火を付け直した。

 はっかの味が喉を通る。

 どうやら現実のことのようだ。

 女は、ふっふっと、笑った。

「姉さんは、煙草を吸うとき昔からそうしていた」

 笑うと、かすかに笑窪がある。

「そうって…」

「左手を腰に当て、首を左にちょっと傾け、顎を出し、い

ばった格好をする…」

「あなたの姉さんのとき、私の名前はなんと呼ばれていた

のかしら?」

「姉さんはナツ。私はルイ」

「へええ、どういう漢字なの?」

「姉さん、立ち話をするより私の家で話しましょう」

 そう言って、女はにこりと笑う。女の手が私に触れた。

ひんやりした華奢な手だ。

「家って、山の家?」

 私は、そう言ってから、しまったと思った。

はめられているのかもしれない。

「姉さんの車で山腹まで行きましょう」

「あいにく、車は壊れてしまったの」

「そんなことはないわ。大丈夫」

 女は、車のある方へ歩き出した。

すべて御見通しだ。駆け引きはきかない。

女は、私の少し先を歩きながら、時々私を振り返りなが

ら、にこりとする。

 戸惑いながら、私の頭は混乱していた。

すべてが分からない。不自然だ。だけど、まったく違和

感がない。抵抗する気持ちも涌かないのだから、なるよう

にするしかないだろう。

迷いながら、女の後を歩いていると、自分の体がふっと

地面から浮いたような気がした。

体が妙に軽い。

私は心のなかで般若心経を唱えた。

 前世に私の妹だったら私に悪いようにはしないだろうと

思った途端、ルイという女は、

「姉さん、私たちの父は役人だったのよ」と、振り返った。
誄という女(るいというおんな)





始まった瞬間はよく覚えている。

その時、塾の生徒を待っていた。

私は、ここ十年、夜は英語の学習塾をしていて、夕方の

六時から夜の十時までは教室にいる。

金曜日の六時からの生徒は、私の最も苦手な高校三年生

の芳江だ。「理解できた?」「はい、先生」「ええ、とても」

と、鼻にかけた声を出し、いちいち上目使いに私を見るの

で、優等生だが、どうもいけ好かない。

彼女の来る日は、ちょっと憂鬱な気分になる。

 六時過ぎに、芳江がドアを開けた。

二年以上買い替えていないビニール製のスリッパが、い

きなりパチンという音を立てたので、私はどきりとする。

芳江がふてくされた態度で、靴箱の一番上段からスリッ

パを床に落とし、自分の靴を履いたまま足を思いきりあげ

て、六段目の棚に収めている。

制服のスカートを短くたくし上げているので、パンツが

丸見えだ。

それから彼女は、学校鞄を机の上に置き、無造作に中か

ら月謝袋を出して、机の上を滑らせ、手裏剣を投げるよう

な手つきで私の方へ回転させた。

「やってられない」と私は思う。

 小学生に一人、私の目の前で月謝袋からお金をわざわざ

出して数え、「今日ちゃんと勉強するから、ここから千円

もらっていい?」と言う子もいたりする。

この手の生徒は珍しくない。しかし、月謝袋を投げて渡

すとは、ひど過ぎる。野放し状態だ。

というより自尊心を傷つけられて、腹が立つ。

「ちょっといいかしら? 月謝袋を鞄に仕舞ってくれる?」

「はあっ?」

「いいから月謝袋を鞄に戻して、もう一度やり直してくれ

ないかしら? 月謝袋を投げて渡すのは失礼だと思わない?

それに、スリッパは上から落とさないで、しゃがんで静か

に床に置くものよ」

「わたし、月謝袋も投げてないし、スリッパも落としてい

ませ〜ん」

「なに言っているの。いい加減にして頂戴」

「先生、おかしいんじゃないですか?」

 芳江は、ぎろりと私を見た。そして、何事もなかったか

のようにテキストを開き、平然としている。

 まったく今の子はなってない。家庭教育はどうなってい

るの。芳江の親は二人とも学校の教師だ。人の教育をする

前に自分の娘の教育をしてくれよと思う。

 所詮、勉強を教えるということも、金をもらっている以

上、商売か。

しかとする芳江に、私は不機嫌な気持ちを抑えながら、

シャープ・ペンシルを動かしている芳江の問題用紙を眺め

ていた。

「二番の答えは間違ってるよ」

「え? 私、まだ一番しか書いてません」

「だって、You are to blame to damaging my car.って、

書いてるじゃない。そこは、be to blame forをつかうのよ」

 芳江は、またぎろりと私を見た。

「あなた、自分の間違いを言われるのそんなに嫌なの?」

「先生、塾なんか閉めて、霊能者になれば。私は、自分が

したことは認めてもいいけど、言いがかりをつけられるの

はムカつくし、だいたい先生は私のこと好きじゃなかった

んでしょう。だから、私の亡霊を見るんです」

 芳江は、すっくと立って玄関まで行き、靴を履いた。

 私は、充分に状況が呑み込めないまま、芳江の行動を見

つめていた。

 ドアが閉まり、芳江の言葉を噛み締めていた。

では、芳江がスリッパを落とし、靴を履いたまま下駄箱

に靴を突っ込み、月謝を私に投げて私によこしたのは、何

だったのだろう。幻覚なのだろうか。それとも、人がやり

たいと思うことが事前に見えたというのか。

 芳江は、今二番のところをシャープ・ペンシルでなぞっ

ている。

目を開いて、もう一度見直したが、やはりそうだ。彼女

は、出て行ったのではなく、下を向いたまま、私の向かい

にいる。

見てはいけないと目を伏せる。無視が一番。

芳江は目の前から消えたはずなのに、問題を埋めていた。

 私の頭は混乱する。あまりのことに、私は吐き気を催し

た。むかむかを抑えながら、次の生徒のレッスンを終え、

外に出ると、秋風が吹いていて、いつもの向かいのおいし

そうな焼き鳥屋の匂いがまた吐き気をさそった。

「ちぇ、季節は最高なのに、最低の気分」と言える元気も

ない。

このところどうもよくない。なんだか、そんな予感はあ

った。よくないのは、体の調子だけだと思っていたが、ど

うやらそうではないらしい。

芳江に「先生、最近おかしいんじゃない?」と言われた

時、本当は、はっとしたのだ。

 薄々は感じてはいたが、また私に何かの力が加わり始め

ているのだ。

 最近、3Dを見るときのように焦点を軽く合わせると、

レストランのテーブルクロスとか洋服の柄が立体的に見え

て、気分が滅入ることがあった。

 それから、何も考えないでテレビを見ていたり、景色を

見ていると、物体の陰で見えないはずのその後ろが見える

ことがあった。透けて見えるのだ。木の後ろの花、テレビ

の後ろにあるコード…。

 はじめは、「えっ?」「へーっ」「なんで?」

 そういう感じしかなかった。だからと言って、特別怖く

はなかった。テレビの後ろに回って実際に何があるのか確

かめたことはあったが。

一頃、3Dに夢中になったことがある。なかなか見える

ようにならない人もいるようだが、私は至近距離からなら

一瞬にして立体図を浮かび上がらせることができる。

 足を骨折して入院したとき、「三次元の世界でも見たら?」

と友人が3Dの本を持ってきてくれたのが最初だ。

 しばらくしたら、すぐ飽きたが、最近また目がよくなる

とか、集中力がつくとかで、本屋に並ぶようになっている

ようだ。

ある日、考え事をしながら、無意識のうちにスリーダイ

メンションを見るときのように目の焦点を合わせていたら

しい。

ふと気が付いたら、人間が二重に見えだしていた。

 私たちの認識する空間には、連続体の広がりの次元が三

つあるということなのだろうが、それを意識するのは、決

まって私が構えていないときだ。

「あら、千夏ちゃん今日はお休みなの?」と、近所のおば

さんがマーケットでレタスを選びながら私に声をかけた。

すると、おばさんのすぐ後ろに、同一人物のもう一人のお

ばさんがニンニクを選んでいて、別の行動をしているのだ。 

私は、一瞬「えっ!」と思うが、やはり、「へーっ」「な

んでよ」「まさかあ」と思う。そして、ぼんやり、その出

来事が通り過ぎるのを待つ。

 たいていそういう時は、頭の中が空白になって、冷や汗

がじわりと出る。そして、絶対に半信半疑になるのだ。

「そういうことはないよね?」「うん、ない」という具合

に自分で自分を納得させてしまうのだ。

 その後、私はレジの列に並んだ。レジの女性は、籠から

商品を出しながら、バーコードを読みこませていた。する

と、レジの女性の背後に、もう一人の同じ女性が、料金を

受け取って、つり銭を渡している。

しかし、それにはっきり気が付いたとき、いきなり頭痛

がして、しゃがみ込んだ。

後ろに並んでいた人が「どうかしたのですか?」と顔を

覗いた。

 私の番がきた。私は精一杯の気持ちで挑戦してみること

にした。レジの女性の背後にいる女性が言う金額を渡す。

すると、レジの店員は、はっきりとした声で、「まだ計

算中です」と言う。

 計算が終わってレジが示した金額は、後ろの影が先ほど

言った金額と同じだった。

私の半信半疑は、その日に現実となった。

次に起こることが、現在とだぶりで見えるのだ。

そんなことを人に言えるはずがない。気味悪がられて、

たちまち仲間はずれだ。

はてなマークが空中に浮かぶ。

 ショックだ。これから同じことが起きたら、後ろの奴は、

未来の影なのだと認識するしか方法はない。

道理など解き明かそうとするほうが間違っている。理解

などしたくなかった。私は、科学者でも超能力者でもない。

証明できないことは、理解するのを拒否すべきだ。

しかし、その日を境にぱったりそういうことは起きなく

なった。ほっとして、憂鬱な日々に陽が射してくれたと言

ってもいい。

それでも、しばらく用心していた。だが、いつのまにか

警戒をしなくなっていた。

 十年も前のことだ。

しかしまた、今、それが違う形で起きたのだ。それは、

芳江によってまた惹き起こされた。

 芳江が答案を書く前から、彼女の答えが見えていたのだ。

 私は寒々とした気分で塾の階段を下りた。

駐車場に、私の車だけがぽつんとある。

 車を出して、しばらく走ったところに格安で、無農薬の

野菜を売っている八百屋がある。

十時過ぎだというのに、めずらしく今日は電気が明々と

点いている。

店の前に車を止めて、りんごとなしを買う。ツバメが営

巣して、忙しそうに雛に大きなミミズを運んでいた。

「おや?」日本には春飛来するのではなかったか?

「おじさん、ツバメって、今の季節でしたっけ?」

「ああ、そうだよ。これが来ないと商売繁盛しなくてね。

心待ちにしていたら、三週間前に来たよ」と、嬉しそうな

顔をした。

今日は、入れ歯をちゃんと入れているせいか、十歳は若

く見える。

「いつも遅くて大変だね。あれには内緒だよ」と、隠すよ

うに、缶コーヒーをくれた。

 あれというのは、妻のことだ。おじさんに女房がいたの

だろうかと思ったが、お腹が空きすぎて、そんなのはどう

でもよかった。りんごをかじりながら運転した。

 三十四号線に出ると、工事中のサインが表示され、廻れ

とある。

 なに言ってるの? メインロードだぜ。

家に帰るには、この道しかない。いや待てよ、反対側か

ら山越えするしかない。

 夜更けに帰宅する時間は、朝からの疲れがどっとでてい

て、不機嫌で、早くシャワーを浴びて、ゆっくりしたいと

気が焦る。

「もお、全く嫌になる」

仕方なくUターンした。

 繁華街を抜けて、人里はなれたところから山道に入ると、

ひんやりとした空気が車内に流れ込んだので、ぞくりとす

る。

「なにも出てこなければいいけどな」

私は対向車が来るのを気にしながら、アクセルに力が入

る。

この山道は狸や狐がいると聞いたことはあるが、怖いの

はなんと言っても人間だ。

 ライトをハイビームにする。去年の夏に植物研究家の石

松先生と鷺草を見に来た沼地のところまで来て、嫌な予感

がする。

 ガソリンゲージを確かめる。よかった。まだ半分以上は

あると思った時に、車がストリ、停止した。


              

 翌年。五月になって最初の日曜日だった。大きなダンボール箱が二箱届い

た。

里子がしゃがんで、土のついたじゃが芋と人参を触りながら、「神様ってい

らっしゃるのね」と呟いた。それは、自分だけの胸に留めるような低い声だ

った。後ろ向きなので、濱田にはよくは見えないが、里子は、エプロンで顔

を押さえていた。

「差出人の名前はないけど…」

よく見ると、それは、一つが玉ねぎ、もう一つがじゃが芋と人参の入った

箱だった。

 その時、俊介が音を立てて走って来て、「小柴さんから電話」と叫んだ。

 濱田は、その一瞬で、すべてが理解できた。犬山だ。小柴も差出人のない

ダンボールの箱を今しがた受け取ったのだ。

濱田は、俊介に「居ないと言え」というジェスチャーを送った。小柴の感

極まる声を聞くと、電話口で泣いてしまいそうだった。

 濱田は、勝手口にあった突っ掛けぞうりを履いて、外へ出た。目の前がゆ

らゆらと揺れて霞んだ。そして、彼の足元に熱いものが落ちた。

空は青々と広がり、流れていく風が心地よい。塀越しに、向かいの自転車

屋のおやじが、「ちわ」と挨拶をしたので、ドキリとした。見られまいと、顔

を伏せた。

すると、よく茂った赤いいツツジの根っこに白いものが落ちている。濱田は、

そっとそれを拾った。葉書だった。郵便受けから落ちて、風が運んだのだろ

うか。

湯煙の上がる蔵王温泉の旅館の絵葉書を、ゆっくりとひっくり返した。

「前略 心配をかけました。元気です。かみさんと一緒です。小柴と犬山に

も宜しく伝えて下さい。いつか、また会おう」

須郷の字だ。昨夜の一雨で、インクが滲んでいる。消印は山形だった。

小柴に電話したい衝動に駆られた。家に入ろうと、向きを変えると、掃除

機をかけている里子の姿が見えた。

濱田は、もう少し、この時間に浸っていたいと思い直した。そして、もう

一度、庭の方を向いて、空を仰いだ。


FIN

短編小説「朧月夜」九

七十歳の半ばになるのだろう。最後に会ったのは、かれこれ二十年も前の

犬山の父の告別式の日だった。

「いやあ、お久しぶりです、お元気でしたね」と、不安を隠して言うと、犬

山の母はすまなさそうに立ち上がって、深々と頭を下げた。

「あの、こんなことをお伝えすることは筋違いなんですが、利彦の一番親し

い友人でいらっしゃる濱田さんに、どういうことなのかとお聞きしたいと思

って、出掛けて来ました。利彦は、何か濱田さんに話していたでしょうか」

 背筋がひやりとした。

「いえ、もう帰省する頃だと思って、僕は心待ちにしていたところです。犬

山に何かあったのですか?」

「それが、実は、利彦は二週間前に帰って来たのです。私は、いつもの帰省

とばかり思っていました。それが、一週間経っても帰らないので、東京には、

いつ帰るのかと聞いたら、もう、帰らないよと言うんです。私はびっくりし

て、そしたら、いまからどうするつもりなのかと聞いたんです。利彦は、私

をじっと見ながら、百姓するよ。母さん土地ほったらかしで、荒れ放題だろ

うって。なんだか訳が分からなくなって。利彦は、リストラされたんでしょ

うかね」と言って、犬山の母は、ハンカチを目に当てた。

「じゃあ、濱田さんには、利彦は何も言っていないんですね。私たちは百姓

で苦労をしましたから、あの子には苦労させたくなくて、大学を卒業して、

会社に入ってくれることだけが望みだったのに、こんなことになって。どう

したらいいかと考えあぐねて、濱田さんの事務所におじゃましました。あま

り気にせんで下さいね。驚かせましたね、すみませんでした」

犬山の母は帰り際、気の毒そうに、「あの、濱田さん。利彦には、私がこ

こに来たことは、黙っていてくださいね、お願いします。勝手を言ってすみ

ませんね」と、再び、深々と頭を下げた。



 濱田と小柴は、大濠公園のベンチに腰を掛ける。

 濱田の話を聞いてから、小柴は、「なあ、生きることってキツイな」と言

ったっきり、目の前で泳ぐアヒルを見つめた。

そして、「俺たち、一度に二人無くしてしまったなあ」と、また口を開く

と、今度は男泣きに泣いて、ばつが悪そうに、「すまん、笑うな」と言った。

二人は、缶ビールを手にしていたが、ほとんど口はつけなかった。

 その日は、台風の去った翌日で、まだ明るいのに、森の向こうにぼんやり

月が浮かんでいた。

「朧月だな」と、濱田は胸の中で呟く。

 小柴と別れてから、京子の店で、一杯だけ飲もうと思った。繁華街を過ぎ

て小さい路地に入ると、痩せた猫が濱田の足元に擦り寄って来た。妙に侘し

い感情が込み上げてきた。小柴が泣いたのを初めて見たからだろうか。

バー「紫」のドアを開けようとしたら、白い紙が風にあおられひらひらし

ている。ライターの灯りで見ると、小さい字で、「都合のため、閉店します。

皆様ありがとうございました」と記されていた。

 京子の顔が浮かんだ。小柴の「もう、二度と会えないんだろうな」という

言葉が蘇ってきた。濱田は、京子の店の二軒隣のカラオケバーで、バーボン

を三杯立て続けに飲んだ。

 地下鉄に続く地下道を下っていると、暑さと酔いでぐらりとくるような気

分に襲われた。下りきったところで、芋虫のように丸っこくなって体を横た

えたじいさんに突き当たりそうになった。濱田の爪先が当たったのだろうか、

じいさんは、むっくり起き上がって、顔を見据えて、濱田の胸の辺りを指さ

して、カカカと笑った。野武士のような顔だった。

 家に帰ると、俊介がボリュームを最高にして、ラップ音楽を聴いていた。 

「おい、おまえ、将来どうするんだ」

「なんだよ、いきなり。母さんは、風呂だよ。明日は日曜だろう、三人で海

にでも出かけたいね、だってさ…。もうクラゲがいるよ」

「そうか。それよりおまえは、ちゃんと授業を受けているんだろうな?」

「まあね。でも、大学卒業したってちゃんと就職できるとは限らない時代だ

からね。俺、大学院に残ろうかと思ってるよ」

「なんだ、司法試験はどうするんだ?」

「親父の頃のように、六法全書を暗記して紙まで食べる時代とは違うよ」

「どういう意味だ」

「複雑怪奇ってこと」と言いながら、息子は自分の部屋に上がって行った。

「なにが複雑怪奇だ。格好つけやがって…」

横になると、ぐらりと酔いが回った。

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