Accidents Will Happen

初心者による、謡と仕舞のだめだめ稽古日誌。

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イメージ 1作:井上ひさし
演出:鵜山仁
キャスト:辻萬長・中川安奈・木場勝己・森奈みはる・久保酎吉・河野洋一郎・大原康裕・栗田桃子・前田涼子















2月8日(木)、地元のホール、ハートピア春江にて、こまつ座地方公演。


半日で勤めを引けてから、リカちゃんと待ち合わせ。リカちゃんは12月末で仕事を辞めて、ただいま家事手伝い中の身である。まずは2時間程ランチした。べらべら喋り倒しながら、前菜、パスタ、メインの子羊、デザート盛り合わせ、エスプレッソをたいらげる。もっと居座りたかったのだけど、2時半ごろ店から追い出された。仕方がないので、近くのジョーシン電気に行き、マッサージ機とジョーバの機械で腹ごなしした。ジョーバの機械は太ももの内側に効く感じがする。久しぶりに物欲がムラムラと沸いてくる商品である。もっと価格が下がるまで待とう。そのあとホール近くのミスドに行く。期間限定ドーナツのポスターに写る千秋サマ(玉木宏)にクラクラしつつ、満腹なのでコーヒーだけ注文。ここで会場時間まで暇つぶしした。


会場のハートピア春江のホールは、小規模の公共施設でよくあるような、床が平らな多目的ホールだった。ホールに入ると、客席前半分はパイプ椅子がずらりと並べられている。後ろ半分は、可動式のひな壇の客席である。私達の席は5列目だったので、平らな床に並べられたパイプ椅子のほう。席に座ると私たちは思わず目を合わせてニヤニヤしてしまった。

「これは危険やね。」
「うん、かなり危険やね。」
「男性が来たらアウトやね。」
「座高が高い大女だって危ないよ。」

傾斜の無い客席である。前に大きい人が座ったら完全に視界が遮られ、3時間近く人の頭ばかり見ながら過ごすことになってしまう。どうか座高の低い小柄な人が、私たちの前に座りますように。


しばらくして「あああ〜〜〜」と、リカちゃんが笑いの混じった、ヘナヘナな叫び声を小さくあげた。私達の願いは天には届かなかったのである。3列席の席、2列前の席、そして前列にと、視界の先を一直線に並んでガタイの良い男性達が座っている。しかもデカイのはその男性達だけで、それ以外の人たちは小柄な人たちばかり。ああ、演劇の神様、私達は何かお気に触ることを致しましたか? 平日に仕事を休んでまで芝居を観にきた私がいけなかったのでしょうか? それとも無収入カジテツの身でありながら、2,100円のランチを臆することなく注文するリカちゃんがいけなかったのでしょうか?


幕が開き、セットがあらわになると、事態はより深刻なことが明らかになった。一直線の男性達の頭で、板の上が全く見えないのだ。立っている芝居ならまだ見える。しかし今回は劇中劇の稽古シーンで、全員が板に座り込んでの芝居が多い。私達は少しでも視界の隙間を見つけようと、つねに身体を左右に動かしていた。


今回の「紙屋町さくらホテル」は、何度目の再演になるのだろう。昨年8月の紀伊国屋ホールでの再演とは、また演出は変えたという話だ。キャストはほとんど変らない。アメリカからの引揚者神宮淳子役が、中川安奈になったぐらい。話は、昭和20年原爆投下3ヶ月前の広島が舞台。天皇の密使として日本中の戦況を調査していた海軍大将が主役。広島で偶然「紙屋町さくらホテル」に辿りつく。ここは移動演劇隊「さくら隊」の宿舎となっていた。このホテルで、かつての新劇の有名俳優や、主人公の海軍大将、ホテルの従業員、さらには特高刑事、陸軍のスパイまでもが、2日後に大観衆の前で公演予定の「無法松の一生」の芝居作りに巻き込まれてゆく。


こまつ座の芝居はたいてい楽しい場面が多いのだけど、今回も芝居の稽古シーンがとても楽しかった。全員が芝居に取り付かれ、滑稽な試行錯誤を繰り返しながら、立派に芝居を創り上げてゆくのである。しかもその過程で、弱いものは弱さを克服し、諦めていたものは人生の意味を見出す。芝居は休憩を挟んで前半と後半に分かれている。前半はどうしても説明的な場面が続くのでやや退屈するのだけど、後半は無駄になる台詞はひとつもないほどの切迫感。特に、国語学者が教え子「ツダ君」の手帳を読み上げたとき、客席は水を打ったように静まり返った。


ところで、来たるべき「さくら隊」の最期は決まっている。ラストシーンに向けて、隊員が幸せそうに演じるのを見ていると、逆に私自身がその最期を意識せずにはおれず息苦しくなってきた。そしてラストシーン。海軍大将が客席から舞台に向かって手を振るとき、背景の真っ青な空、その青空に影を落とす原爆ドームの骨組、うすい遮幕の向こうで微笑む隊員達、隊員達の歌声により、彼らの現在のかけがえのない幸福が、3ヵ月後の悲劇を覆い隠すように浮かび上がるのだ。息苦しさから一気に開放されるような感覚。お見事な幕切れ!


戯曲の凝縮度から受ける印象は、井上ひさしはこの芝居のなかで、言いたいことはすべて言っちゃっているんじゃないかということだ。言葉の強さ、敗戦後に失われてしまうかもしれなかった日本語の危機、国体護持にこだわるあまり最悪の事態を回避できなかった悔恨。ひとつの芝居にこれだけ盛り込むことができるものなのか。


と、頭ではじゅうぶんに感心しつつも、じつは半分ほどしか芝居に入り込めなかった。それは、ほとんど前の人の頭で遮られた視界にストレスを感じていたせいか、それとも神宮淳子役の中川安奈の線が弱くて、彼女の強さ感じさせなきゃいけない場面が中途半端だったからか、あるいは全体にこなれたすぎた演技がするすると進んでしまって、味気なかったからか。自分でも良くわからない。


さて、最期にちょっとひっかかったことがある。特高刑事は、劇中劇の稽古の最中に、徐々に態度を軟化させてゆく。いっぽう陸軍のスパイは巻き込まれながらも、最後まで頑なだ。ところが敗戦と同時に手の平を反したように進駐軍の一員となっている。彼が特別計算高く、器用な性質だからとでも言えばいいだろう。しかし、不器用で純朴で、陸軍の言うがままに本土決戦も辞さない覚悟でいたおおかたの人たち、とくに情報不足で戦地から引き揚げてきた下級軍人の目には、敗戦後に一変した世界はどのように映ったのだろう。今まで自分が信じさせられていたものが完全に否定され、どうしていいか判らなくなるのじゃないかな。ここら辺を、新作「私はだれでしょう」は突いているんじゃないかというのが私の予想なんだけど、観た方はいかがでしたか? まあ、明日観に行くので、それまでのお楽しみということで。まだバラしちゃ駄目よ。

閉じる コメント(3)

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サンジ>ホントだ・・・ラジオ名人寄席の人になっとる・・・

2007/2/20(火) 午後 11:37 スコス

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「戯曲の凝縮度から受ける印象は、井上ひさしはこの芝居のなかで、言いたいことはすべて言っちゃっているんじゃないかということだ。」ホントそう思いますよ。中川安奈ちゃんはやっぱダメでしたか。一応すごい人の孫なんで、役的にはピッタリ(明治以降の日本演劇史を辿るというこの芝居のもう一方のテーマにね)なんですけど、如何せん、芝居のセンスを受け継いでないようなので・・・。新国立の杮落としの映像DVDで売り出してないかなー。あれってホントに凄かったんですよ。

2007/2/21(水) 午後 1:06 yuuoo2004

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この芝居を見たあとだと、「箱根強羅ホテル」は焼き直しに感じますね。今思えばですけど。中川安奈さんは上品なんですよね。あの役は生命力が強そうな人が良かったなと思うんです。あと、役者さん達が馴れきっているような印象も。新国立の杮落としですか。森光子の出ているやつ、是非とも見てみたいですねー。

2007/2/23(金) 午後 1:03 スコス


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