Accidents Will Happen

初心者による、謡と仕舞のだめだめ稽古日誌。

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するめの足は

年末は27日に餅をついた。今年は4臼。搗くと言っても、搗くのは「もちっこ」という餅つき機である。蒸すのはせいろで、搗くのは「もちっこ」である。3臼は白い丸餅にし、1臼はよもぎの丸餅にした。ミヨコおばちゃんが手伝いに来てくれたが、手より口が忙しく、手際が悪いので母にガミガミ怒られていた。これはいつものことなので、怒るほうも怒られるほうもレクレーションのようなものである。私はニヤニヤしながらそれをみていた。白餅は最後に少し余らして、おろし餅ににした。


29日は仕事納めだった。午前中に全員で掃除をし、午後からは正月飾りをした。正面玄関ロビーの飾りつけは、私と営繕のオジサンの役目である。営繕のオジサンは人懐っこくて、頼みごとをすると快く引き受けてくれる。お礼にとデスクの中の常備菓子をあげると、無邪気にほおばりながら次の仕事をするのである。そのオジサンが、情けなさそうな顔をして私に話しかけてきた。

「みてくれよ、これ・・・」

オジサンが手にしている段ボール箱を覗くと、中にはお神酒を入れる白いとっくりが一対入っていた。正月飾りの鏡餅の横に飾るとっくりである。これが、粉々に割れていた。今年片付けるときの養生が甘かったらしい。

「なにこれーーー!!」と、無残な様子に驚いて思わず大きな声を出してしまった。すると、わらわらと人が集まってきてみんな段ボールの中を覗きこみ、「縁起わるい」と大騒ぎしだした。「どうりで今年はいいことがなかった」とかいろいろ言う。確かに、今年はこの職場はいろいろアクシデントが多かったのである。すると、ワントーン明るい声が聞こえた。

「違いますよ。それは身代わりです。悪いことがあったかもしれないけど、これが身代わりになって割れたんです。」

なんというポジティブシンキング。声のした方向を見ると、年末の挨拶回りにきた出入り業者の営業マンだった。「そうかーみがわりかー」集まった連中は安心した様子で散っていった。私はこのこじつけに、営業マンの営業魂を見た気がした。


割れてしまったとっくりは、高さ15センチ程度のものだった。特殊な大きさらしく、ホームセンターや仏具店では、神棚用の小さなものしか扱っていない。ちなみに、仏具店で神具を扱っているのは私には驚きだった。最後に、結納で使う道具を専門に扱う店に聞くと、神具を専門に扱っている店を紹介してくれた。


紹介してくれた神具店は小さな商店だった。狭い店内に所狭しと神具が並べられている。並べてあるというよりは、詰め込んであるというほうが適当かもしれない。狭い店内の真ん中に、おおきな神輿があり、神輿と同じぐらいの七福神の乗った宝船の大きなショーケースが置かれ、天井からは神社でお賽銭を投げた後にガラガラと鳴らす太い綱が垂れ下がり、それを「御神灯」とかかれた真っ赤な提灯が取り囲み、壁には神棚のサンプルがずらりと並び、反対側の壁には大小様々の神棚に飾る道具が並べられている棚があった。大小様々のおいなりさんや狛犬や蛇の置物もある。床には、酉の市の熊手や、納品用のお守りの束が入った段ボールが乱雑に置かれ、足の踏み場もない。その店内の狭い空間で、この商店の30代夫婦と、その夫婦のどちらかの妹と、夫婦の母親が膝を突き合わせて初詣用の破魔矢をせっせと作っていた。


目的の大きさのとっくりを包んでもらっている間、私はとくと店内を観察した。すると、とっくりが並べている棚の上に、半紙に墨で「瓶子」と書いてある。このとっくりの正式名称は「瓶子」、つまり「へいじ」なのか。「瓶子」という文字を見た途端、平家物語の「鹿ケ谷の陰謀」をはたと思い出した。これが倒れて、これを割ったのかぁ。私は納得して店を出た。


「瓶子」を持って職場に戻ると、営繕のオジサンが「するめは?」と聞く。そうだ、するめを買うのをすっかり忘れていた。例年だと、鏡餅と瓶子をするめを乗せた三方が3つ並ぶのである。

「今年はするめは無しにしましょうよ。ロビーがするめ臭くなるし・・・」

瓶子の買い出しで疲れてしまったので、私はまた買い出しに行くのが億劫だったのでそう答えた。しかしオジサンは頑として聞き入れてくれない。するめがないと絶対だめだというのである。仕方ないので私はしぶしぶまた買い出しに出かけた。


買ってきたするめは、3つ入って一袋になっているものだった。いつもは1つだけ三方に乗せるのだけど、今回は袋の開かずそのまま3つとも三方に乗せてしまった。袋から出して飾ると、ロビーが正月じゅうするめ臭いからである。


通りかかった同僚が「これなら臭くないですね」と話しかけてきた。


「でも、これじゃ営繕のオジサンはがっかりするかもしれないですね。」
「なんでよ?」
「今年の正月明けに、するめが胴体だけになっていた事件知りません?」
「そういえば・・」
「あれね、営繕のオジサンなんですよ。」
「??」
「ここを通り掛るたびに、1本づつ食べていったらしいです。口からするめの足が出ていたらしんですよ。」


なるほど、それであんなにするめにこだわったのだろうか。そうなると、オジサンの楽しみを奪うのはちょっと気の毒な気がしてきた。松の内がすんだら、するめは袋ごとオジサンに進呈しようか? しかし、通り掛りに一本づつ食べるのがいいのかもしれない。盗み食いは楽しいのかもしれないな。

閉じる コメント(2)

お正月の準備もいろんなことがあると、結構楽しいものですね♪
実家のネコはするめを自分のものしていました(汗
どうぞ、健康に気をつけて、新しい年をお迎え下さい!

2009/12/31(木) 午後 11:11 [ ししまるさん ]

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ししまる奥さん、あけましておめでとうございます。ことしもよろしくお願いいたします。
するめは大好物の松前漬にしたいところですが、ネコにはかないませんね〜。

2010/1/4(月) 午後 11:20 スコス


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