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現在、ロシアは、新型戦略原子力潜水艦プロジェクト955「ボレイ」級に搭載する新型SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)「ブラヴァー」を開発中です。
http://blogs.yahoo.co.jp/rybachii/folder/1041877.html

周知のように、この「ブラヴァー」は、もともと「ボレイ」級に搭載する予定だったSLBM「バルク」の開発が中止された為、代わりに開発された弾道ミサイルです。

しかしながら、日本では、このSLBM「バルク」に関する情報は、ほとんど知られていません。
せいぜいが「3回連続でテストが失敗した駄作」というイメージしか有りません。

「バルク」に関する詳細な情報を知るには、ロシア語のサイトを見るしか有りません。


例えば、2000年5月12日付の『独立軍事評論』(独立新聞)に、「バルク」を開発した「マケーエフ名称記念国立ロケットセンター」のミサイル開発主任ウラジーミル・デグチャリへのインタビュー記事が掲載されています。

http://nvo.ng.ru/armament/2000-05-12/1_blueness.html
【「シネーワ」は、海上から飛び立つ】

この中で、デグチャリ氏は、R-39UTTkh「バルク」(Р-39УТТХ"Барк")について語っています。

要約すると、

・「バルク」計画への資金割り当てが不充分だった為、満足に試験を行うことが出来なかった。

・ミサイルの熟成には時間が掛かるし、資金難で開発自体が遅延しているのにも関わらず、ロシア海軍司令部は「バルク」開発を急がせ、1994年、1997年、1998年に行なった試験は全て失敗した。

・ミサイルの設計・開発作業は、73パーセント程度までしか出来上がっていなかったのに、1998年、国防省とロシア海軍は突然開発中止を指示した。

・ミサイルの試験は、最低でも11回は実施する予定だったのに、最初の3回が実施されただけだった。
あと8回の試験を行なえば、信頼性のあるミサイルに仕上げる自信は有った。

・確かに、最初の試験は3回とも失敗したが、アメリカの「トライデントII」だって、試射のうち3回は失敗しているし、私達が以前に開発したR-39だって、発射試験中に計6回失敗している。
それでも私達は、R-39を信頼性の高いミサイル複合体に仕上げた。
その事は、1998年、北方艦隊のタイフーン級原潜からR-39ミサイル20発の一斉発射に成功した事で証明されている。
この様子は、近くに居て監視していたアメリカ海軍も目撃し、我々の技術の信頼性を目の当たりにしている。

といったところです。



R-39UTTkh「バルク」(Р-39УТТХ"Барк")の開発は、1986年にスタートしました。
УТТХは、"Улучшенными Тактико-Технические Характеристики"
(改良された戦術・技術特性)の略です。

ベースとなったのは、タイフーン級戦略原潜(プロジェクト941)の弾道ミサイルR-39(タイフン)です。
つまり、「R-39の戦術・技術特性を改良したミサイル」という事になります。
(上の5枚目の図面の左側がR-39、右側がR-39UTTkh)

この新型弾道ミサイルは、NATOでは「SS-N-X-28」と呼ばれました。
国際協定使用呼称はRSM-52V(РСМ-52В)でした。


「バルク」開発の動機は、R-39が失敗作だったから・・・では無く、
アメリカが1980年代に開発し、1990年に実戦配備した「トライデントII D-5」です。

アメリカの前作「トライデントI C-4」は1979年より実戦配備されましたが、このミサイルの最大射程は7,400km。
R-39(8,300km)よりも短かいものでした。

しかし、R-39が完成した後に開発がスタートしたトライデントIIは、最大射程10,000kmを越えると予測されました。
(実際には12,000km)

それで、トライデントIIに対抗する為、最大射程10,000km以上の潜水艦用ミサイルの開発が要求されたのです。


「バルク」は、発射重量81t、最大射程10,000km以上、弾頭重量3,050kg、弾頭部には最大で10個の戦闘ブロックを搭載可能というスペックになる筈でした。


前作R-39は、主要コンポーネントである第一段ロケットをウクライナで、その他の部分をロシアで製造していました。
ソ連邦解体後、ウクライナからのコンポーネント供給は絶たれました。
それは、R-39の生産を継続できなくなる事を意味していました。

この為、タイフーン級に搭載する新たなミサイルとしても、バルクの開発を急ぐ必要が生じました。

タイフーン級1番艦TK-208は、オーバーホールの為、1989年にドック入りしましたが、この時、搭載ミサイルを「バルク」に換装する為の近代化改装も合わせて実施される事になりました。

「バルク」実戦配備前の海上発射試験を、TK-208で行なおうというわけです。

タイフーン級は、1990年代以降、順次オーバーホール時期を迎えてドック入りする為、この時に「バルク」への換装工事も行う計画(プロジェクト941U改装)が立てられました。

タイフーン級6隻の当初の「バルク」換装スケジュールは、以下の通りです。

TK-208:1988〜1994年
TK-202:1992〜1997年
TK-12:1996〜1999年
TK-13:2000年以降
TK-17:2000年以降
TK-20:2000年以降

しかし、ソ連邦解体後、TK-208の修理と近代化の作業は、資金供給が滞った為、停滞しました。

「バルク」開発への資金供給も滞り、発射試験は、1993年11月、1994年12月、1997年11月19日にロシア北部アルハンゲリスク州のネノクサ(セヴェロドヴィンスクの西側)の陸上発射台から実施されましたが、3回とも失敗しました。
(上の写真1〜3枚目は、「ネノクサ」海軍ミサイル射撃センター)


1998年、当時のロシア海軍総司令官ウラジーミル・クロエドフ提督は、「バルク」の開発中止を指示しました。
最低でも11回は実施される筈だった発射試験は、3回で「強制終了」し、4回目以降の発射試験を行なう機会は、永遠に奪われました。


この経緯を見る限り、「失敗作」「駄作」と決めつけるのは早計かつ軽率であると言わざるを得ません。

もしも、開発を継続していたならば、実用化に漕ぎ着ける可能性は十二分に有ったでしょう。


換装すべきミサイルを得る機会を失ったタイフーン級は、1998年、R-39ミサイル20発の一斉発射試験を実施、成功しました。
R-39は失敗作では無かった事が、改めて証明されたのですが、既にR-39の寿命は尽きようとしていました・・・

2004年、最後に残った10発のR-39が廃棄されました。

閉じる コメント(4)

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ご無沙汰しております。
Su-33の後方レーダーに関する質問ではお世話になりました。

いつも楽しみに貴ブログを拝見させていただいております。

「バルク」の開発中断にいたる経緯について大変興味深く閲覧させていただきました。

http://nvo.ng.ru/armament/2009-12-11/8_bulava.html?insidedoc
http://nvo.ng.ru/armament/2009-12-04/2_red.html?insidedoc
独立軍事評論のこちらの記事などでも「バルク」の中断と「ブラヴァー」の現状と課題について取り上げられておりましたが、今にして思えば「バルク」の開発を継続していれば、上記記事での問題の多くは生じなかったのかと、言っても詮無きことではありますが思ってしまいます。

それでは失礼いたします。
寒さ厳しい折ですので、ご体調にはくれぐれもご留意ください。 削除

2009/12/17(木) 午前 1:22 [ LM ] 返信する

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いつもながら、貴重な情報をありがとうございます。「バルク」については、A・ポルトフ氏の本でもさらっと触れられているだけだったので、色々と目からウロコでした。
ワタシなんか、同じく開発中止になった「グロム(巡航ミサイル)」と、時折ゴチャにするようなレベルの低さなもので(^^;。
(「グロム」はどうやら2種類あるらしいのが、余計にややこしくて)

1990年代といえば、ロシア海軍(というか、ロシアそのもの)にとって最も苦しい年代でしたが、バルクも発射テストが94、97、98年とかなり間隔が開いているところに、当時の苦労が忍ばれます。
当時としては考えあっての決定だったのでしょうが、今のブラヴァーの四苦八苦を見ると、バルクの開発中止が本当に妥当だったのか、考えさせられますね。

2009/12/17(木) 午後 7:31 [ bygzam_ma08s ] 返信する

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>LM様、御無沙汰しております。
開発計画が継続されていれば、今頃は、実戦配備に漕ぎ着けていた可能性が高いでしょう。
(プーチン閣下が政権の座に着けば、予算は増額されるだろうし)

ただ、仮に「バルク」が実用化されていれば、その大重量(81トン)と、更には、ボレイ級原潜は、「バルク」装備の場合は12基しかミサイルを搭載できない点がロシアの専門家の批判の対象になったかもしれません。

2009/12/18(金) 午後 10:51 [ 高町紫亜 ] 返信する

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>bygzam_ma08s 様、どうも。
まあ、考えあってと言うか、
「(1990年代末の時点で)実用化が近いトーポリ-MをベースにしてSLBMを作れば、安上がりで高性能のミサイルが出来ますよ」
というモスクワ熱技術研究所の「セールストーク」に引っ掛かったらしいですが。

2009/12/18(金) 午後 10:52 [ 高町紫亜 ] 返信する

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