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2013/2/17 17:47

 ABE首相は「Asset Bubble Economy」首相──。前回の2006年の登板時にも話題になった、安倍晋三首相の資産バブル志向。まずは株式市場に流れ込んだマネーが次に目指すと見られているのが、不動産市場だ。

 オフィスビルの大量供給が懸念された「2012年問題」をこなし、賃料にも下げ止まりの兆しが出ていたタイミングで「ABE首相」が登場。政府・日銀による「2%物価上昇目標」が掲げられた。

 「物価が2%上がる世界では地価は20%上がる」。ドイツ証券の不動産担当の大谷洋司シニアアナリストは断言する。右図は六大都市の市街地価格指数と消費者物価指数(CPI)の動きを重ねたもの。確かにそんな関係が浮かび上がって見える。

 すでに兆しはある。「あの物件がエグジットしたぞ」。最近、業界内で話題になったのが、東京・渋谷の道玄坂に立つビル。00年代初め、ある企業が売却。その後、証券化されて不動産投資ファンドの間で度々売買されてきた物件だ。リーマン・ショック後は損切りの連続だったのが、ようやく過去1〜2年に仕込んだ業者が益出しに成功したという。

 バブル期に存在感を示した「ザ・セイホ」も不動産への関心を取り戻しつつある。明治安田生命保険は昨年11月、250億円強を投じてアークヒルズ仙石山森タワー(東京・港)の区分所有権を取得した。第一生命保険(証券コード8750)も昨年、5年ぶりに都心部の賃貸マンション3棟を購入した。

 アベノミクスの「本丸」とも言える不動産市場。そのあちこちで語られ始めた潮目の変化は、どこに向かうのか。最前線を探訪してみよう。



■都心から郊外へ「ミニバブル」気配

 映像やアニメなど「サブカルチャーの街」として知られる東京都中野区。JR山手線の外側に位置することもあり、東京23区の中では事業所の数が少ない区とされていたが、再開発をきっかけに様変わりしている。

 JR中野駅北口から5分ほど歩くと、公園に隣接した2棟の大型オフィスビルや商業施設が姿を現す。東京建物(8804)などが開発し、2012年春に開業した「中野セントラルパーク」だ。

 開業当初は都心部で大規模オフィスの完成が相次いだ時期とも重なり、テナント集めに苦戦した。それでもキリンホールディングス(2503)を皮切りに栗田工業(6370)、NKSJホールディングス(8630)など大手企業が相次ぎ入居を決めた。現時点で12社、貸床面積(約12万平方メートル)の8割を超える契約が内定している。東京建物の福居賢悟取締役は「早期のフル稼働を目指したい」と話す。

 最大の特徴は1フロアあたりの床面積が約5000平方メートル(南棟)と、都内のオフィスで最大級の広さを誇ること。壁や仕切りを排除した「大部屋」によって従業員同士のコミュニケーションを活性化する効果が期待できるという。賃料は「新宿のオフィスよりも高い水準」(福居取締役)だが、駅から近いうえ、分散していたオフィスを集約することによって全体のコストを削減できる点も評価されているようだ。

■ビル大量供給が一巡

 アピールするのは建物の性能やコストの優位性だけではない。ニューヨークのマンハッタンにある都市公園「セントラルパーク」を意識。開発エリアの中心部にある公園には無線LANを備え、屋外で打ち合わせできるデッキを設けるなど、周辺環境との一体感も演出した。

 山手線の内側から外側へ──。東京では不動産需要が郊外にしみ出してきた。背景には都心部のオフィス需給が引き締まってきたことがある。

 米系不動産大手のシービーアールイー(CBRE)によると、東京の「グレードAビル」の空室率は12年10〜12月期に8.8%と直近ピークの同年4〜6月期から1.5ポイント低下した。オフィスの大量供給が一巡したうえ、耐震性など性能の高いオフィスへの需要が底堅いためだ。前沢威夫シニアディレクターは「13年は新規供給が少なく空室率は6%台後半〜7%台に改善、賃料は5%程度上昇しそう」と予想する。

 昨年12月には旧日本長期信用銀行本店ビル(東京・千代田)が米モルガン・スタンレー系のファンドから、ケネディクス(4321)・東急不動産(8815)・日本政策投資銀行の3社連合に約500億円で引き渡された。不動産低迷の象徴だったビルは約300億円で建て替えられ、17年に開業する。

 投資マネーも郊外に商機をうかがう。住宅投資に特化する不動産投資信託(REIT)のケネディクス・レジデンシャル投資法人(3278)は川崎市のJR武蔵中原駅の近くにある賃貸マンションを購入した。駅からの距離は徒歩約10分と特別近いわけでもなく、築年数も22年と新しくもない。それでも直近の稼働率は97%に達する。

 武蔵中原駅周辺は、富士通や沖電線など企業の本社や工場が集積し、もともと社宅や寮が多いエリア。10年に隣接する武蔵小杉駅でJR横須賀線に乗り換えられるようになった。武蔵小杉は再開発が進んで地価や賃料が上昇した。一方「武蔵中原の賃料はまだ値ごろ感があり、ファミリー層が借りやすい」(田中晃執行役員)。

 「首都圏の地価は今後、間違いなく上昇する」と言い切るのはマンション開発会社リッチライフ(横浜市)の石田薫社長だ。潮目の変化を感じるのは金融機関が不動産融資に前向きになっているからだ。「不動産開発の資金をぜひ借りてほしい。投資目的でもいいですよ」。石田社長のもとには年明け以降、銀行からこんな打診が相次いで寄せられているという。

■よみがえる過去の記憶

 日銀の統計によれば、国内銀行の不動産向け融資残高は昨年12月末まで3四半期連続で前年同期を上回った。07年前後に首都圏の不動産価格が上昇する「ミニバブル」があったときもその2〜3年前から銀行の不動産融資は膨らんだ。

 石田社長は「カネ余りを背景にREITやファンドへの転売を目的に不動産を取得する業者が増え地価が上昇した」と当時を振り返り、似たような状況が今後2〜3年以内に再来する可能性が高いとみる。

 昨年末、東京建物の子会社が組成した不動産ファンドの「ジャパンコアファンド」。不動産ファンドの運用期間は一般に3〜7年と言われているなか、このファンドは5〜10年に設定した。ファンドに投資しているドイツの大手年金は短期的な売買で利ざやを稼ぐのではなく、賃料収入による利益確保を目指している。腰を下ろして日本の不動産に投資する意志の表れだ。バークレイズ証券の橋本隆マネージングディレクターは「今後、この流れはより明確になっていくだろう」と話す。

 現役世代の所得水準が低迷していることも不動産需要が郊外に向かっている理由になっている。リッチライフの石田社長は「(自社がターゲットとする)4500万〜5000万円台のマンションを山手線の内側で建てるのは難しくなってきた」として、台東区や世田谷区など、地価にまだ値ごろ感がある山手線外側で土地の手当てを急ぐ。

 昨年末、一建設(3268)をはじめとする低価格の戸建て住宅メーカーの6社が経営統合を発表したのも、地価の上昇が引き金だ。6社は首都圏郊外で好立地の住宅用地を巡り激しい争奪競争を繰り広げていた。だが、土地の値段が上がったからと言って住宅の販売価格を引き上げれば、顧客は離れる。6社は統合によって土地の奪い合いに終止符を打ち、利益の確保を図る。

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