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 菅直人首相は、2011年4月29日に開かれた衆院予算委員会で、深刻な状態が続く福島第一原子力発電所の事故の責任について、「一義的には東京電力にあるが、原発を推進してきた国の責任は免れない」と、国の責任を認める発言をした。
 
 福島第一原発事故によって大気中に放出された放射性物質は国土を広範に汚染し、原発施設から海洋に漏れ出した汚染水は福島県の漁業を壊滅させたばかりか、海流に乗って広がり環太平洋諸国などから海洋汚染に対する損害賠償を求められる恐れも否定できない。
 原発事故の責任は東京電力にあるが、長期にわたり原発事故の損害賠償など巨額の債務を抱える東電を支援するために2011年8月3日、原子力損害賠償支援機構法が参院本会議で民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決、成立した。
 
 【主な内容】
  • 原発事故の損害賠償は一義的に責任のある東電が行う。
  • 機構が東電に対して、賠償のための資金支援を行う。
  • 国にも原発事故の責任があり、必要があれば機構に対して公的資金を投入する。
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  この方法では担保されない多くの問題点があり、以下に示す。
  1. このスキームでは外国からの損害賠償請求に、国が対応しなければならなくなる。
  2. 原発事故の収束、廃炉が東電任せでは、周辺地区との連携がとれず復興が遅れる。
  3. 事故賠償が東電任せでは、企業の論理で押し切られ、賠償の足切りにつながる。
  4. 料金算定の基本となる電気事業法の総括原価方式がある限り、リストラは進まない。
  5. リストラを進めず、公的資金注入を求め、国民負担が増大する。
  6. 経営環境の悪化を理由に、電気料金値上げを求め、利用者に負担増を迫る。
  7. 電力自由化を進めるための、発電、送電、配電の分離が進まない。
 原発事故の収束や事故賠償が東電任せでは、復興のブレーキとなったり、被災者に泣き寝入りを迫り、国民に負担増、利用者には料金値上げを突きつけることになる。それが企業の責任の取り方になり得るか、その批判は直接政府に向けられることになる。
 更に、今後、日本は海洋汚染で世界から国際賠償で訴えられるおそれがある。アラスカ沖やメキシコ湾の原油による海洋汚染でも損害賠償請求が行われ実際に支払われている。
 
 原発事故の賠償には、賠償額に相当する資産の確保が必要である。第一議的責任が東電にあるとすれば、2010 年 4 月に米国で発生したメキシコ湾原油流出事故の湾岸賠償請求処理基金(GCCF)と同様の、政府や東電の手を離れた第三者機関によって運営される福島第一原発事故損害賠償基金を創設し、政府試算の賠償額の 2 倍にあたる 8 兆円相当の東電資産を繰り入れ、迅速かつ公平に賠償が履行されるべきである。
 
 今回の放射能汚染で、上杉隆氏は、各国が日本に海洋汚染による巨額の国際賠償を求めるとの取材内容を報告していた。それによると、日本を除く環太平洋の20か国が5月に、事故後の「4か年プラン」を立てる会議を設置した。表向きの理由は、海洋の放射能調査だが、実態は、4年後に海産物などによる放射性物質の体内濃縮が分かったときに備えたものだという。そして、日本に対し、国連海洋法条約やロンドン議定書の違反行為で1か国当たり20兆円以上の賠償を求める準備をしているとしている。
 
 その巨額賠償に備え、慶大大学院教授の岸博幸氏もダイヤモンド・オンラインで日本の対応について「野田政権は東電破綻処理を急げ―このままでは日本は中国やロシアからの巨額賠償請求の餌食になる」と提言している。 
 また、金融アナリストの脇田栄一氏もBLOGOS(ブロゴス)で「戦後賠償より重い負担」と紹介している。
 JcastNewsの原発事故で国際賠償数百兆円? 外務省「請求の話は聞いたことがない」では、外務省のコメントで紹介している。
 
★これらの識者らによる巨額賠償の話は、どこまで本当なのか・・・
 
 外務省は、「確認できていないが、アジア大平洋地域の20か国弱で、IAEA(国際原子力機関)の支援を得て、低濃度汚染水の放出による海洋への影響を各国が調査するプロジェクトが行われることになり、IAEA が2011年6月8日に発表し、日本も入ることになった。プロジェクトは、あくまでも放射性物質の濃度を調べるための技術協力の場であり、海洋汚染の賠償金が話し合われるような場ではない。」
 
★原発事故による海洋汚染が国連海洋法条約違反になるか、賠償請求の可能性は・・・
 
 外務省の海洋室では、「この点について、過去に問われたケースがなく、今回も対象にならない可能性があるとした。そもそも、汚染防止のために実行可能な最善の手段を用いて自国の能力に応じて必要な措置を取ることが194条でうたってあるだけで、違反への罰金規定などはない。」とするが、国際原子力協力室では、「IAEAのプロジェクトとは別に、各国内での賠償請求の議論はありうる。」としている。
 
 冷静に考えれば、実際問題として、原発を有する国にとっては、当然に同様のリスクは存在する。従来の原発事故や核実験においては、国家間の賠償問題に至ったケースはなく、そこまで至ることはないだろうと言う意見もある。しかし、海外からの損害賠償については、一定の範囲でブロックできるようにしておくことが国益に適うことは間違いない。
 2010年1月19日、日本航空は東京地裁に会社更生法の適用を申請し、受理された。負債総額は2兆3221億円、事業会社としては戦後最大の経営破綻、企業再生支援機構も支援決定を発表しており、同社は支援機構をスポンサーとして再生を図ることとなった。
 
今回の福島第一原発事故後の東京電力についてはどうすべきだろうか?

 東京電力の場合は、日本航空とは違い、最優先の事故賠償責任の履行義務と事故を起こした原発と福島第二原発の廃炉の義務を負わなければならない。この役割は民間の一営利企業に任せられる問題ではなく、その義務を完結させるための組織や資金を東京電力から分離し、役割を担える組織に移管しなければならない。
 
Ⅰ、賠償資金の確保
 福島第一原発事故に対する第一議的責任を負い、福島第一原発事故損害賠償基金への東電資産8兆円の繰り入れる。この東電資産8兆円の福島第一原発事故損害賠償基金へ の拠出は、現金資産、換金可能な債権及び施設・不動産の所有権を基金に移転し、基金が換金した後に確定する。
 
Ⅱ、原発事故収束と廃炉のための「バックエンド事業団」の創設と資金確保
 福島第一原発事故は未だ収束を見ず、県や周辺自治体とも連携を保ちながら、事故の収束と最終的な廃炉に至るまでの役割を担う組織としてバックエンド事業団を創設し、それに要する費用として2兆円を東京電力から分離移管する。
 
Ⅲ、東電の生き残り戦略
 東京電力は、結果的に、福島第一原発事故損害賠償基金へ拠出して残った確定資産総額が、企業経営上、大幅な債務超過となり必然的に破綻が確定することになる。この破綻処理は会社更生法の適用以外にはあり得ない。
  1. 株式は100%減資し上場廃止。
  2. 無担保社債はデフォルトに(債務不履行、社債残高:5兆円)
  3. 一般債権(債務不履行、銀行借入残高:4兆円)
  4. 従業員給与の減額、ボーナス・退職金カット。
  5. 企業年金支給額の減額
 東電は、Ⅰ及びⅡの資産分離により、従来の地域独占の電力会社として存在することは困難になり、発電、送電、及び配電などのスマートオペレーション、そのいずれを切り離しいずれの部分に活路を見出すのかを選択することになろう。それによって全国的な電力の自由化に弾みが付くことになる。

2012年4月7日 facebook note より

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