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人権擁護委員会設置における問題  \?\᡼\? 1  \?\᡼\? 1
 
(注)国連人権委員会決議1992年3月3日1992/54附属文書(経済社会理事会公式記録1992年補足No.2(E/1992/22)第Ⅱ部第A節)、総会決議1993年12月20日48/134附属文書

 国内機構の地位に関する原則(パリ原則)は、人権擁護を目的とする国内機構(人権擁護委員会)の権限と責務を規定している。その中では、人権侵害行為が認められた場合に行うことができる機構独自の調査や措置など実質的な責務は明記されていない。
 あくまでも、『政府、議会及び権限を有する他のすべての機関に対し、人権の促進及び擁護に関する助言を与えるという立場から、調査で得られた情報に基づき、意見、勧告、提案及び報告の提出と、公表を決定することができる。』、その他に『国際人権条約と国内の法律等の調和並びに条約の効果的な実施を促進、国が国連の機関や委員会等に提出を求められている報告書に貢献、国連及び他の国連機構の組織への協力、人権の教育や研究のためのプログラムの策定を援助、情報提供と教育を通じ国民の認識を高める。』というものである。
 
構成並びに独立性及び多様性の保障
 
 ところが、構成並びに独立性及び多様性の保障の中に、『そのメンバーの任命は、選挙によると否とにかかわらず、人権の促進及び擁護にかかわる(市民社会の)社会的諸勢力からの多元的な代表を確保するために必要な担保をすべて備えた手続に従った方法でなされなければならない。』とあり、
 具体的には、『人権と人種差別と闘う努力とを責務とするNGO、労働組合、例えば弁護士会・医師会・ジャーナリスト協会・学術会議のような関係社会組織や専門家組織、哲学又は宗教思想家、学者、議会などの代表等を参加させる。』となっている。
 
 ここで問題なのは、人権と人種差別と闘う努力とを責務とするNGO、労働組合などの中に、怨恨を持つ被害者、偏見や先入観で判断する者などが入ってしまう恐れがあり、報復の応酬を合法化する恐れがあることだ。さらに、今回の政府案では、委員の国籍条項を設けておらず、将来の外国人地方参政権を有する者の参加を想定しており、地方都市などで外国人住民比率が高くなり、特定の思想的傾向を持つ外国人が多数人権擁護委員に任命された場合の不都合などがある。
 
活動の方法
 また、国内機構は、その活動の枠組みの中で、
    1. 構成メンバー又は申立人の申出により、その権限内の問題を自由に検討する。
    2. 権限の範囲内の情況を評価するのに必要であれば、いかなる者からも聴取し、いかなる情報や文書をも入手する。
    3. 特に、機構の意見及び勧告を公表するため、直接又は報道機関を通じて、世論に働きかける。
    4. 定期的に、また必要な場合はいつでも、正式な招集手続を経た上、すべてのメンバー出席の下に会合を開く。
    5. 必要に応じてメンバーによるワーキンググループを設置し、機構の機能の履行を補助するために、地方又は地域事務所を設ける。
    6. 管轄を有するか否かにかかわらず、人権の促進及び擁護の責務を有する組織(特にオンブズマン、調停人及び同種の機構)との協議を継続する。
    7. 国内機構の活動の拡充において非政府組織が果たす基本的な役割を考慮して、人権の促進及び擁護、経済的、社会的な発展、人種差別主義との闘い、被害を受けやすい集団(特に子ども、移住労働者、難民、身体的・精神的障害者)の擁護並びに専門分野に取り組んでいるNGOとの関係を発展させる。
準司法的権限を有する委員会の地位に関する補充的な原則
 国内機構に対しては、個別の情況に関する申立てないし申請を審理し、検討する権限を与えることができる。国内機構の扱う事件は、個人、個人の代理人、第三者、NGO、労働組合の連合会及びその他の代表制組織が持ち込むことができる。この場合、機構に委ねられた機能は、委員会の他の権限に関する上記の原則を変更することなく、以下の原則に基づくことができる。
    1. 調停により、又は法に規定された制約の範囲内で、拘束力のある決定によって、また必要な場合には非公開で、友好的な解決を追求すること。
    2. 申請を行った当事者に対し、その者の権利、特に利用可能な救済を教示し、その利用を促進すること。
    3. 法に規程された制約の範囲内で、申立てないし申請を審理し、又はそれらを他の権限ある機関に付託すること。
    4. 特に、法律、規則、行政実務が、権利を主張するために申請を提出する人々が直面する困難を生じさせてきた場合には、特にそれらの修正や全面改正を提案することによって、権限ある機関に勧告を行うこと。
 活動の方法では、『調査等ではかなりの強権を持つことが出来るが、その他については、報道を通じ、政府、議会及び権限を有する他のすべての機関に対して為した意見や勧告を公表し、世論に働きかける。また、地方又は地域事務所を設け、人権の促進及び擁護の責務を有する組織との協議や人権関連NGOとの関係を発展させる。』 というものだ。
 準司法的権限を有する委員会の地位に関する補充的な原則では、『国内機構(人権委員会)に対して、個別の情況に関する申立てないし申請を審理し、検討する権限を与えることができる。』 とし、それを義務付けてはいない。

 政府案では、調査は強制を伴わない任意調査としているが、援助、調整、説示、勧告、通告、告発、要請、調停、仲裁等の準司法的権限を付与している。これは、立法・行政・司法の三権分立を定める日本国憲法に違反する。

 現在、警察・検察・裁判所いずれの組織にも問題があり、司法の崩壊とも言われている。そのような状況下で、国民の人権を擁護する目的で設置するとは言え、新たに国民に対して法の執行をする機関が追加されるなどあり得ないことである。それ以前にすることがある筈だ。恣意的な冤罪防止のためにも司法に民主主義を担保するシステムの導入が必要である。

 人権委員会を設置するなら、前出の民主主義を担保するシステムの一部として導入することも可能である。そして、その役割は、『政府、議会及び権限を有する他のすべての機関に対し、人権の促進及び擁護に関する助言を与えるという立場から、調査で得られた情報に基づき、意見、勧告、提案及び報告の提出と、公表を決定することができる。』 機関とし、実際の業務は、行政・司法の役割に委ね、地方業務は従来通り法務局を窓口とし、準司法的権限の部分は裁判所に委ねるべきである。

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