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アメリカの情報誌『NewsWeek』の日本版で、AFI(アメリカン・フィルム・インスティテュート)が選出した偉大なアメリカ映画ベスト100という特集があった。
過去1998年に最初の選出があり、今回はその2回目の選出についての記事で、実際の発表は2007年にあったとか。
98年度の記事もなんとなく立ち見をした記憶があるのだが、今回は珍しく購入してみた。
アメリカ映画というのは、興行至上主義の作品をあれだけ制作するくせに、アカデミー会員たちは妙に政治的にも思想的にもバランス感覚に長けていて、アカデミー賞だけは、それなりの作品を選出しているように私は思っている。
このAFI(アメリカ映画協会)も、そこらへんの感覚は有しているようで、今回選出されたベスト100も、それなりのバランスの良さで、なるほど〜と思える作品が多いような印象を受ける。
だがしかし、個人的には何でこんな駄作が?と思えるものもあるし、その逆の何であの名作が入ってないの?も当然ながら存在している。
ベスト100について、ここで全部触れるわけにはいかないので、主観のみをフル稼働して、この記事について書いてみたいw。
まず、ベスト10なのだが、詳細は本誌を読んで頂いたほうが良い(笑)とも思うが、アメリカ映画のベスト1といえば、ほぼ毎度この作品『市民ケーン』である。
もう、日本映画でNo1と言えば、黒澤明の『七人の侍』と答える人が大多数(勿論異論もあるだろうが)というのと似ていて、アメリカのアカデミックな方々が選出するアメリカ映画のNo1は、何十年経とうが『市民ケーン』なのである。おそるべし、オーソン・ウェルズ。
2位は『ゴッドファーザー』。3位は『カサブランカ』。
もはや説明不要の名作だし、個人的にも大好きな作品のため、この選出に異論はない。
で、4位は意外なとこで『レイジング・ブル』が入っている。
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スコセッシ作品の中で、なぜにこの作品が最上位なのかは個人的に大いに疑問があるところで、『タクシードライバー』の方が全然良いように思うのだが…。
スコセッシ監督は、大作を撮るとどうもまとまり過ぎちゃうと言うか、こじんまりとし過ぎてしまうように思えて、あまり好きではない。
小作品(『ケープ・フィアー』なんて最高のB級映画である!)を撮らせると、けっこう良いのだが…。
まぁ、相棒とも言えるデ・ニーロが良すぎるのかもしれないが…。
さて、ベスト10はそれ以外は誰しもが納得しそうな作品が並んでいる。8位の『シンドラーのリスト』はどうなの?とも思えるが、アメリカ社会におけるユダヤ人の比率などを考慮すれば、まぁあの順位も納得なのかもしれない。個人的にも好きな作品ではあるし、批判をするような作品でもないのだが、スピルバーグの社会派作品は一方通行の視点がどうにも気になる性質で…。
最も気に入らなかったのは、『アメリカン・ビューティー』が選出されていなかったこと。
個人的にここ数十年の中で最も完成度の高い映画だと感じていた作品だけに、選出されないことに少々驚いている。監督のサム・メンデスがイギリス人だからか?そもそもアメリカ中流の現実をリアルに描きすぎたからかは不明だが、あの名作を外すとは…。
同じく『ローマの休日』が入っていないことにも疑問が残る。女性誌などが取り上げる映画特集では必ず上位に顔を出す人気作品だが、どうして入らないのか…。エンターテイメントだけでなく、映画史からみても偉大な作品のように思うのだが…。
奇才デービット・リンチ監督の『エレファント・マン』なども選外。まぁ『ツイン・ピークス』をはじめとする大多数のリンチ作品はちょっと毛嫌いする人もいるだろうし、評価もしづらいのだろうが、『エレファント・マン』とかは、忘れてはいけない作品のような…。
『グラディエーター』も選外だったが、『プライベート・ライアン』(71位)よりは、良い作品ではないだろうか…。リドリー・スコットのNo1は『エイリアン』か『ブレードランナー』という評価が一般的なようだが、私は『グラディエーター』も大好きなのだが…。
あとは、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』『ドライビング・ミスデイジー』などの問題作品も選外。どちらもアメリカという国(の歴史)をしっかりと見つめる傑作だと思うのだが、『タイタニック』(83位)より下という評価なのか…。
変わりどころとしては、スパイク・ジョーンズ監督の『マルコビッチの穴』なども(当然ながらw)選外。『スモーク』などのハリウッド臭のまったくしない良作も選外。
と、あれこれ書いてはみたが、なるほど〜とうならせる選出もあるにはある。
11位『街の灯』はチャップリンの名作中の名作。前回発表時は76位だったというので、まぁ健全な批評が行われた証なのだろう。43位『真夜中のカウボーイ』はアメリカンニューシネマの傑作だが、こういうところで日の目を当てないと案外忘れられてしまう作品のように感じるのでナイス!である。キューブリック作品では『博士の異常な愛情』をちゃんと選ぶあたり、センスの良さを窺わせるし、『ジョーズ』『ロッキー』といった小作品にもしっかりとスポットを当てている。
と、AFI選出100を眺めていると、やはりアメリカ映画もそれなりの質を保っているな…と感じる。
日本映画でベスト100を作ってみたいものだが、かなり時代が偏ってしまうのではないか…。
人気、興行面だけではなく、アカデミックな視線でしっかりと批評を加えていくという、映画文化のようなものが案外しっかりとしている分、アメリカ映画はバランスが保たれるのだろう。
68位からの並び、『許されざる者』『トッツィー』『時計仕掛けのオレンジ』『プライベート・ライアン』って…(笑)。
どれもこれもジャンルは異なるのに、確かに世に残る作品だし、いかにもアメリカって感じの作品から、まぁキューブリックなだけにちょっと違うという突っ込みもあろうが、こんな作品もあるんだ?というような作品まで、実に幅広く、選出されている。
映画は、楽しみで観るという人もいれば、かなり本気で薀蓄たれるために観るという人もいるだろうし、私のように子どもの頃から映画ばっかり見ていたという者もいれば、めったに観ないという人もいるだろう。どんな人が見ても良いと思うという価値基準が、ハリウッドの価値基準だと一見思えるのだが、実はそうでもない基準がかなりあって、M・スコセッシもD・リンチもどちらかと言えば作家性の強い監督も存在している。
それらが玉石混交状態で名作と駄作を世に送り続けるのが、ハリウッドスタイルなのだろう。
そんなところで、日本映画でもマイベスト100を今度考えてみようと思った。
1位はやっぱり溝口かな〜。いや黒澤かな〜…。
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