|
バー「note」は、けや木通り沿いの贅肉落ちて瀟酒なビルの三階にあります。
螺旋状の胸突き階段を上っていくと、、、(一体として仙境にでも続くのかしら?と怪しむこの険しい階段を見て、引き返した一見の客もあっただろうと思われるのです)いつも扉の隙間からジャズが漏れてます。
「ブルースは自己主張が強過ぎるけど、ジャズは控えめですから、お客様の会話を邪魔しません」と人の良いオーナーの野上さんが以前語っていたのを、ふと思い出しました。
野上さんは、彼の偉大なるジャズピアニストの Mal Waldron の生家の留守を預かって3年間暮らした事があるそうです。
そうした縁があって、亡くなる数ヶ月前にMal Waldronが 、あの螺旋状の胸突階段を上って、わざわざ野上さんに会いに来たと言うので
驚きました。
そして偉大なるピアニストは、noteに置いてあるピアノを弾きだしたそうです。
Mal Waldronの思い出話を語る時、きまって野上さんの三寸は熱くなって、時には感極まって涙を流すことさえあります。
また野上さんは小説が好きで、、と云うよりも、文章によって自ら何かを表現する事や、文脈を鑑賞するのが好きなのです。
だから「泉鏡花の文章が特に好きです」と言う先から、書棚を漁って鏡花の本を出して来ては、忙しく項を翻して「此処の下りが良いでしょう?」と、これまた熱く語り出すのです。
僕はそうした野上さんが好きなのです。
そして昨夜は、こうした貴重な3年間の体験を通じて感じたモノを、文章にして表現したいと野上さんが熱く語るので、文芸サイト「マチともの語り」の編集長と、作家の川獺さんを紹介する為に訪れたのです。
Mal Waldronの追悼を鏡花風の筆舌に乗せて、野上さんが熱く語るなんて、考えただけでも今から楽しみです。
「玲瓏明透なる哉、その音色、物外の神韻を伝え来る君よ。澆季混濁の俗界に背きて、孤々立々として独り仙境に逝き給ひぬ。
今、倏忽にして巨星わが眼の裡に在りて清浄界に座して永久に光は消えず。
然りとは雖も、生前その容を見るに飽かず、その聲咳に触れるを厭わず、我、君なき今を奈何せむ。」
|