|
タイトル 詩集『父の散歩道』
星 ひかる
< 四 >
母の小さな 温かい手のひらが
私の頬を包みました
母は下を向き 震えながら
「帰っておいで 戻っておいで」
遠く離れて ぼろぼろになった私を見た母は
堪らなくなったのです
お父さん 一緒に居たあなたの目には
どう映っていたのでしょうね
口を真一文字にして
あなたは 私の心を読もうとしていたのです
優柔不断な 煮え切らない 私の心を
「お母さんに心配をかけるな」
なんとも皮肉なことです
二度目のこの怒り
二十五年振りに吐かれた あなたの怒号
たった二度のあなたの逆鱗
その二度が二度とも 同じ言葉でした
この二十五年の歳月が ひとつも時を刻んでいなかったとは
私の濁った鼓動だけが 刻まれて
私は生き続けてきたということなのだ
その歳月を 埋めるために
この私は いま生きているのです
2010年6月21日作
|
全体表示
[ リスト ]



