詩人星ひかるのブログ

ようやく芥川賞に向けてスタートしました。最短コースの2011年前期に受賞となるか……!

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タイトル  詩集『父の散歩道』
 
                                              星 ひかる
 
            < 五 >
 
 
それは朝 出勤前
私は あなたの散歩道を歩いています
四季を感じることのできる 散歩道です
 
四月には 桜が咲き
五月には つつじが咲くのでしょう
六月には 紫陽花ですか
七月 八月には 緑濃い散歩道です
 
私は 下を向いて歩いていました
母からいつも 胸を張って前を向きなさい
と怒られるくらい
私は 下を向いて歩くのが癖で 常でした
 
そこに 牡丹餅の如く
一羽の雀が落ちてきたのです
 
鳥というのは
雀にしろ カラスにしろ 白鳥にしろ
天空より地上に その身体を移動するときには
舞い降りるもの と思っていました
 
でもそう それは舞い降りるという表現が
使えないほどに 哀れな雀の姿だったのです
 
羽を痛めているのか
地面を這いつくばり
ばたばたと そしてばたばたと
グルグルと そしてグルグルと
同じところを廻っているのです
 
でも 出勤前で先を急ぐ私は
この雀に なにもしてやれません
このまま放っておけば 犬か猫の餌食となるだけです
 
私は そっと掬い上げ 木の繁みに隠しました
雀はもう 鳴くこともできないくらいに弱っていました
 
 
私は 会社からの帰り道
またあの雀の落ちてきた場所に立ち寄りました
死んでしまっているのなら
土の中に還してあげよう
せめてもの 供養になればと思ったのです
 
私は 今朝方 あの哀れな雀を隠しておいた繁みを
かなりの範囲に及んで 探しました
でも雀の姿は どこにもありませんでした
元気を取り戻して また飛び立ってくれたのか
やはり 犬か猫に囚われてしまったのか
 
私は あの雀になにもしてやれなかった
この事実だけが残りました
 
 
お父さん あなたならきっと
助けてあげられたでしょうに
 
 
虚無感だけが残りました
私は この先 どこへ行くのでしょう
 
 
暮れかかる空に 一羽だけ雀が飛んでいるのが見えます
彼なのでしょうか
彼であってくれれば どんなにか嬉しいことでしょう
 
私は 一本の太い桜の木に触れてみました
心を無にして
目を瞑ってみました
耳も澄ましてみました
 
 
                        2010年7月6日作

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