取調べは毎日警察署の中の取調室で行われたが、留置所からたかが5,6メーターしか離れていないのに、いちいち手錠と腰縄を付けられ、壁に手を突いて四つん這いのような格好をさせられ身体検査をさせられる。嫌がらせ以外の何物でもない。屈辱感を与え「心を折る」のが目的だろう。取調べの刑事というのがまた愚かで、「あなたには黙秘権がある」と言っておきながら、山城さんが黙っていると「なんで黙っているんだ」と怒鳴るのだ。
また勾留期限がきて「やれやれこれで拘置所に移れるぞ」と思っていたら、どっこいまたもやテキは恥知らずな手を使ってきた。今度は「アンタの共犯者を捕まえたから、共犯者の取調べが終わる迄は留置所からは出られない」と言うのだ。こうやって次から次と時間を置いて「共犯」とやらを捕まえ「事情聴取」してれば、何ヶ月だろうが何年だろうが留置場にぶちこんでおける。そのうち精神でもオカシクなればしめたもの、ということだろう。どこまで汚い卑劣な連中かと腸が煮える思いだった。
警察の「でっち上げ」はこれで最後かと思ったらとんでもない、まだ続いた。今度は辺野古基地建設への抗議でブロックを積んだ行為が、「威力業務妨害」に当たると言ってまたまた逮捕状。これ以外にも「米兵を小突いた」「右翼を押倒した」などなど・・言いがかりはキリがなく続いた。こうしてやっと、76日も経って警察の留置場から拘置所に移った。
拘置所に行って「これでやっと屈辱的な警察での取調べから解放される」と思ったのだが・・歯が痛くても治療してくれない。悪性リンパ腫(癌)を患っているのに、医者の所へ連れて行ってくれない。「あなた癌なんだろう。早く自白して外に出た方が良いよ」という脅迫である。拘置所へ行けば家族とも仲間とも会えるはずなのに、なぜか「接見禁止」が続いた。しかも私への激励の手紙や葉書が山のように届いていたのに、一通も見せなかった。保釈の日に渡された。
接見禁止も、時計を置かないのも、カーテンで閉じ込めるのも、手紙を渡さないのも、医者に診せないのも、部屋が汚く狭いのも、すべて勾留されている者の「心を砕く」ための手口だ。それにしても中国・北朝鮮じゃあるまいし、この「人権ゼロ」状態の酷さは何なのだ? 公判が始まる前日に釈放されたのでは、弁護士と十分な裁判の準備もできないではないか。
異常な長期拘留の目的・・どうやら公安は、基地反対運動のメンバーについての情報が欲しかったようだ。警察が現場で撮影した映像を見せては「これは誰だ、どこの組織の者だ」「アンタと一緒にブロック積んでるのは誰だ」「高江で、あんたの隣で話してるのは誰だ」としつっこく山城さんに聞いてきた。え「共謀罪法案」がまだ成立してない段階なのに、「アンタの演説に拍手した」「目配せをしてる」、これは「賛同」「協議」だから「共謀」だと言っていた。恐ろしいことだ。今ならきっと「共謀罪」で逮捕するだろう。もちろん山城さんは黙秘したが。こうして山城さんは癌の体でいながら医者にも診てもらえず、152日(5ヶ月)という異常な長期拘留となった。
<なぜ悪名高い“人質勾留”が続くのか>
人権無視のこの「勾留」だが、いくら世界から非難されても止めようとしない。警察による不正捜査・不祥事・裏金・犯罪でっち上げが続くなか、09年には「厚生省・郵便不正事件」という検察特捜の大失態による冤罪が起きた。世間の警察・検察に対する風当たりが強くなり、「国民の人権を一切認めない日本の司法」を見直さなくてはということになり、遅ればせながら「取調べの可視化」などが取り入れられ「刑法改正」がなされたが、この「勾留」についてはまったく議題に上がらず。
なぜか? なぜ裁判官は検事の請求する「勾留」を、そうも簡単に認めてしまうのか? 法律オタクのお勉強秀才エリートだが、いささか世間知らずの浮世離れした役人でもある裁判官には、留置場や拘置所で24時間監視されたまま何十日も拘束されることがどれだけ苦痛か、まったく想像力が働かないらしい。「23日? たいしたことないじゃない」・・そんな感覚なのだろう。度し難い鈍さ!
2,3日でいいから一度自分で体験してみたらどうだ。ついでに、おっかない刑事や居丈高な検事による「取調べ」もぜひ経験してもらおう。そうすれば、普通の感覚の常識的判断ができるようになるだろう。だが、絶対にそうはならない。なぜ? 検察官も裁判官も、一流大学出て難関の司法試験に合格したエリート官僚同士だし、検事の「勾留請求」が容疑者の人権を踏みにじるモノだとしても、逆らってわざわざ波風立てるより「はい、OK」と認めた方が仕事もスムーズに行くし、裁判所所長のオボエもめでたくなり出世の早道・・だからだ。
あ、先に書いた「厚生省郵便不正」冤罪事件だが、逮捕された局長の村木厚子さんも、勾留中は家族・友人・役所の部下同僚との接見面談は一切禁止。畳二畳の閉鎖空間に閉じ込められ、自由は一切奪われてもちろんプライバシーはゼロ。「この状態は、ウソの自白を引き出すには大変都合の良い手法だと感じました」と、村木さんは後に「刑事司法制度部会」で発言している。実際のところ、この冤罪デッチアゲ事件で取調べを受けた村木さんの部下10人のうち半分の5人が、なんとウソの自白をしているのだ。
それでも警察検察は「人質司法ではない、そんなものは存在しない。勾留は適正である」と言い張る。有罪判決が確定するまでは容疑者はすべて無罪という前提で扱われる、という「推定無罪」の原則があるはずなのだが「どこの国の話かね?」って感じだ。日本も中国と同じ(笑)? 「証拠探すより取り調べで自白させる方が楽ちんで早い」からと、相変わらず自白を引き出す「落としの名人」頼みという時代錯誤をやっている。山城さんの件でも“泣き落とし”の検事がいた。
「裁判員裁判」になっても、日本の刑事司法の悪しき伝統「自白偏重」(自白は証拠の王様)はどっこいサバイバルしている。密室で容疑者をいたぶり、追い詰め、脅したり、なだめたり、すかしたり・・そうして「自白させる」快感?は、そう簡単には手放せないのだろう。自白重視だから「勾留」が必要なのだ。要するに警察検察の捜査能力が、いかに低く拙劣かということだ。
<他国ではどうか>
例えば、アメリカのトランプ大統領側近(本人も関与か)による「ロシア疑惑」だが、モラー特別検察官による取調べが始まっている。容疑者(すでに起訴・訴追されているから被告)のポール・マナフォートの場合だが、留置場・拘置所で勾留されるどころか、のうのうと自宅で暮らしている。彼こそ選挙対策本部長だったから、シロートから見ても「証拠隠滅の恐れ」は大いにあるだろうし、それこそ「他国に逃亡する恐れ」さえ充分にある。それでも保釈金さえ払えば自宅で自由に暮らせるのだ。もちろん遠出は控えなくてはいけないし、パスポートもFBIに預けてはいるが。
この何と言って良いのか分からない彼我(日米)の違いはナニ? 大統領選挙に勝つため外国の諜報組織に不正不法行為を依頼したトンデモ国家犯罪の容疑者はのうのうと自宅で暮らし、有刺鉄線一本切った平和活動家はやりもしない容疑をかけられ延々豚箱に152日もぶち込まれる・・何なのだこの落差は? 結局、国民の「人権感覚」の違いということか。
相撲だの不倫だのに明け暮れている「ワイドショー」とやらで、こういう問題を取り上げるようにでもなれば、悪しき慣習である「人質司法」も改められるだろう。そうなれば米兵犯罪の取調べも、米軍が日本の警察検察に任せるようになるかもしれない。要するに日本人の「民度の低さ」が原因ということだ。アメリカ・イギリスでは「起訴前保釈制度」がある。見習ったらどうだ。日本のこんなイジメ嫌がらせの「懲罰的勾留」など、世界標準からはほど遠く殆ど「中国基準」と言うしかない。
ジュネーブにある「欧州人権理事会」において、日本この「人質司法」について・・日本では相変わらず代用監獄制度が続いている。自白偏重も少しも改善されていないし、司法関係者の意識改革が全く見られない・・とケチョンケチョンだ。恥を知れよ、法務・司法関係者!
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