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今年何度目かの東京での雪の日、
克は、独り渋谷の街を歩いていた。
目的は、明日のデートに備えて、
春物のジャケットを買うためだった。
にもかかわらず、この雪。
昨日から今朝にかけて、
少量の雨が降り続いていたのは確かだが、
日が高くなるにつれて、次第に目に見えるほどの
大粒の雪に変わっていった。
克の仕事は、都内のシステム関係の会社で、
克はそのサポート関係の部署に所属していた。
最近は、夜間サポート要員に割り当てられていて、
今日も朝7時まで、寝ずの番をしていたところだったのだ。
だから本来なら、そろそろ自分の部屋で今夜に備えて寝る時間だった。
にもかかわらず、こうして渋谷までくんだりきているのは、
全て明日、土曜日のデートのためだった。
何か月ぶりかのデート。
克はがらにもなく、緊張していた。
髪の伸び具合が気になって、
いつもより早く、カットしにいったり、
ひげやまゆ毛の形状がことさら気になったり・・・。
そんなんだから、たとえ克の嫌いな雪が降り注ごうとも、
寒さで、春物より冬物のコートのほうがほしいなどと思っても、
それ以上に、明日の自分の姿のほうが優先されるのだった。
どうやら俺は、えらく楽しみにしているようである。
-そんなそぶりをできるだけ表にださないよう、
コートを深くかぶって、神宮前の交差点へ急いだ。
end
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