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その日は、決して天気がよいとはいえず、

どんよりと曇っていた。

なんとなく、自分の今を映し出しているようで、

歯がゆさすら覚えていたのである。

街は、海の向こうの大国と初めて接触をした古い街で、

和と洋が混在するミスマッチ感が、

不思議な感じを醸し出していた。

観光客向けに整備されたその通りは、

表向き、江戸時代の面影を残しつつも、

中には、パスタ屋や割とセンスのいい雑貨屋が立ち並び、

都会からの客でもそこそこ飽きさせないつくりをしていた。

それでも決して賑やかとはいえず、

たまに人を見かけてもほとんどが観光客で、

地元の人の生活感を感じないところが妙に寂しさを感じさせた。

だから、その猫を見かけたときなぜかほっとしたのを覚えている。

猫にとって石畳の通りはひんやりしていて、居心地が悪いのか、

喫茶店の敷地内の人工芝の上で、ひっそりと丸まっていた。

こちらの方を見向きもせず、愛想が悪いところがムカっとしたが、

それはそれで猫らしいのかもしれない。

むしろその自己中ぶりがうらやましくすら感じる。

私はしばらくその猫の行動を追いかけてみることにした。

特にすることもなかったし、

何か目的ある旅でもなかったからだが、

下手に人間に接するより、気がまぎれるとでも思ったのだろう。

その猫は、どこかで飼われているのか

それとも野良なのか、

その場で判断できなかったが、

たぶんその両方なのだろう。

周囲には、寝どこになりそうな建物も多くあるし、

餌にも困らなさそうだと思ったのである。

数分その芝で、うたたねをしていた猫は、

私の注視に気づいたのか、

その場から逃げ出すかのように、

路地を歩きだした。

私は、遠くから”彼”(彼女?)を見失わないように後をつけていった。

ときに狭い路地に入りこんでは、

一瞬見失いそうになったが、

またどこからかあらわれてくる。

一時、馬鹿にされているかと思ったが、(いや、きっとそうなのだろう)

決して退屈はしなかった。

まるでタイムスリップしたかのような、

不思議な街並み。

生意気な白猫。

日常の喧噪から逃れるにはもってこいのシチュエーションだったのだ。


小一時間ほど、そのファンタジーに酔いしれていたあと、

一軒の奇妙なコーヒー店を見つける。

正確には、そこがコーヒー店と気づいたのは中に入る決断をした後だったのだが、

この通りの建物は一見、どれも同じ様なつくりをしていて、

遠目では、どんな店が入っているのかわからないのだが、

近くまで接近して、看板を見つけないと判断ができない。

”彼”のあとを追って、路地をうろうろしていたことが、

逆にその看板に気づくきっかけとなったようである。

最初、看板を見てもなんだか理解するのに少し時間を要した。

なにやら奇妙な文字が書かれた張り紙がしてあり、

どうやら骨董品の説明書きのようなのだが、

その骨董品の展示と、

珈琲を出す店のようなのだ。

まるで、”彼”に導かれるようにして、

私は、その不思議な珈琲店のドアを開けてみることにした。

その異世界への入り口を。


end

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