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いまさら、夏の暑さの話したって最近の寒さじゃ想像もできない。
だから、寒くなったころの話をする。
暇は3日で慣れるっていうけど、
何カ月も続けてりゃ、慣れるなんてもんじゃない。
それが当たり前!を通り越して、苦痛になってくる。
だから何かしなくちゃ、とにかく行動しなくちゃって気になる。
でも体がついていかない。
暇と楽に慣れすぎちゃって、思うように体が動かなくなっちゃうんだ。
ハローワークに失業給付の申請に行った9月のこと。
若い職員さんが、説明会で言っていた。
『失業期間中は、とかく私生活が乱れがち。規則正しい生活を維持してください。
せめて、朝早く起きて、毎日髭は剃ってください。』って。
こいつ何言ってんだって、最初は思ったけど、
実はものすごく大事なことだって、やっぱり後で気づいた。
だから、朝は早く起きれなかったけど、
髭だけは毎日剃るようにした。
終いにゃ、髭がすぐ伸びるのが気になって、1日に何回も剃るようになった。
おかげで、時折面の皮を傷つけて、転んでもいないのに擦り傷みたいのができてしまったほどだ。
嘘じゃない。本当の話だ。
まるで、潔癖症の人が毎日何回も石鹸で顔を洗うように、
おれは毎日何度も髭剃りを顔にあてていたというわけだ。
ほんとどうかしている。
予定のない日は、自室でネットの求人広告をぼーっと眺めたり、
どうでもいい動画サイトに夢中になっていたりしたのだが、
気がつくと右手には、髭剃りが握られていたのだ。
知らない人がみたら、こいつ自傷癖(そんな日本語あったっけ?)
があるんじゃないかって思うかもしれない。
でもこれは自傷じゃなく、自生癖(こんな日本語がないのは間違いない)だったんだな。
社会から逃げ出さないために、
社会で生き残っていくために、
臆病なおれに対する唯一の抵抗だったんだ。
ちなみに、握っていたのはシェイバーなんかじゃなく、
いわゆる剃刀っていうやつだった。
ほんと誰にも見られずにすんで良かったと思うよ。
まあ、こんなことが夏も終わって、木々が色付き始めるころから、
木枯らしが吹き荒れるころまで続いていたんだ。
実に楽し・・、いや苦しかったね。
ようやく変化が表れ始めたのは、
11月も半ば、もはやシャツ1枚じゃとても居られない季節になってからだった。
・・・・・・・・・・・・・・今回ここまで
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