私小説

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第11話-日常・前編-

『加藤さん、何かニュースがあったんですか。』

おかしい、急激にドルが上昇している。

2008年1月22日。日本時間22時20分。

N.Y.時間にして朝の8時をすぎたころか。

昨日は、米国休日ながら、アジア・欧州

ともに株価が大きく下げ、それにつれて

ドルは対円でも売られる展開だった。

いわゆる世界同時株安という奴だ。

何か大きなサプライズが無い限り、

こんなことは起きないはずだ。

『FRBが緊急利下げを発表した。0.75bpsだ。』

加藤さんは、目の前の情報端末をみて

すかさず答えてくれた。

そういうことか。確かに市場には以前より

FRB、米連邦準備理事会で緊急MTGが

開かれ、現在の4.25%の金利水準からの

引き下げを期待していた。

噂は本当だったのか。

だが、期待通りの展開ならばこの流れは瞬間的なものだ。

利が乗っているドルの買いポジションもそう長くは持てない。

私は、少しずつ現状のポジションの手仕舞いを始めた。

目の前の端末の数字を追いながら、タイミングを探す。

決して満足いく手仕舞いではなかったが、

この数十秒の間にそこそこの利益を手にすることができたはずだ。

その後思ったとおり、50ポイントほどの上昇の後は、

相場は再び下がってきた。一応、成功を収めたということか。

それにしても、0.75bpsとは。FRBも思い切ったことをしたものだ。

来週に定例の理事会を控えているというのに、

同時株安の翌日に大胆な手を打ってきた。

それだけ市場は危機的状況にさらされているということか。

もちろんまだ終ったわけではない。

1時間後には、連休明けのN.Y.株式市場が始まる。

今週は忙しくなるな。

眠いなどといっている場合ではない。

果たして、体力的に持てるだろうか。

そんな不安をよそに、目の前のプライスボードは

その変化を再びはやめ始めていた。

つづく

*人名は仮名です。

第10話-窓から差込む光-

イメージ 1

人に話したら、もしかしたら笑われるかもしれない。

だが、最近とくに感じるのだ。

日常のほんのささいなことが、

思った以上に楽しいということを。

たとえば、写真の風景のような

ウィンドウに差込む朝日に

思わずシャッターを押してしまう。

風景を楽しんでいるというよりも、

そんな小さな変化に素直に感動している

自分をほっとけなくなるのだ。

やっぱりおかしいだろうか。

だがこれって、

旅行で海外や見知らぬ地方にいった後、

うちに戻ってくるとなぜか落ち着くように、

常に変化にさらされる毎日を送っていると

自然と見慣れた、当たり前の風景にほっとするのに

似ている気がする。

秒刻みで流れてくるニュース、

視界からもれることのない企業広告の数、

電子のスピードで変化する株式指標。

情報化社会の著しい進展は、

私たちに情報を摂取しない暇を与えてくれない。

だが、窓のスキマから差込む朝日の光は、

私の脳の中の僅かなスキマにも入り込んで、

一瞬、情報の嵐から救い出してくれるのである。

つづく

第9話-逆行する人波-

夜勤の仕事は、終るのはいつも翌朝7時半頃。

一日の業務の締め作業を終えて、

無事、早朝出社の人間に引き継げれば

帰ることができる。

つまり、一般的に皆が会社に来る時間に帰るのである。

それは、会社を出て、駅の改札に向かえば、

朝の通勤ラッシュの人波に逆らって歩き、

電車に乗るときは、大半の乗客が降りたあとに

乗るという、少々奇妙な体験を強いられることでもある。

毎朝、ラッシュでお疲れの人にとっては、

羨ましいなどといわれるかもしないが、

最初の頃は、何かもの悲しい気分にさせられたものだ。

自宅の最寄駅に着き、家路を帰るときなどは、

駅に足早に向かう人々の流れに逆行しながら、

一人疲れた顔をして歩いているのだ。

これを悲しいといわずしてなんと言おうか。

だからといって、今すぐこの状況を変えたいとか

思っているわけではない。

これは確かに、奇妙で悲しいことだけれども、

これから仕事に向かう人たちを横目に、

『ああ、これからですか。ご苦労様です。』

などと、ひそかに優越感に浸ってもいるのである。

まあ、とにかくも今後もしばらくは

朝夕逆転生活は続いていく。

これはこれで、楽しいことでもあるのだ。

つづく

スクランブルエッグの作り方。

溶いた卵に味付けして、

熱したフライパンに投入。

後は、ぐしゃぐしゃかき混ぜるだけ。

堅さはお好みで。

私はとにかく半熟が好きだ。

普通と少し違うのは、

溶いた卵にパルメザンチーズを混ぜること。

こうするとなめらかになって口当たりがよくなる。

今日は仕上げに、バターを溶かした。

時間は、日も落ちた午後5時半頃。

本日よりしばらく夜勤勤務になるので、

これはいわば朝食代わりである。

金融市場での業務を生業とする者にとって、

別に珍しいことではない。

それにおそらく今日は米市場が”キング牧師の誕生日”

だとかで休日らしく、それほど忙しくはないだろう。

自慢のスクランブルエッグは、今日も上手くいったようだ。

半熟部分が絶妙で、光輝いていた。

それをトーストの上に乗せて食べるのが私流である。

卵のオープンサンドウィッチ。

私の何週間にもわたるナイトライフもまもなくオープンする。

つづく

幕間-飲み屋にて-

ある下町の小さなダイニングバーでのひとコマ。

若い男女2人が、店の男の店員を交えてなにやら議論していた。

2人はどうやらカップルというわけではなく、

同じ仕事場の上司と部下という関係らしい。

男は、28才。

女は20代前半のようだ。

男は店の店員から店長と呼ばれていたから、

仕事は何かのショップ運営で、

女はさしずめバイトの店員といったところか。

少なくともこのバーの店長ではないことは知っている。

記憶はうろ覚えなので、以下の会話には幾分脚色がある。

男 『俺は、かわいいと思う女性とつきあいたい女性っては別だよ。』

女 『えー、なんですか、それ。よくわかりませんよ。』

店員 『それって、やりたい女と付き合う女性は違うということですか。』

男 『だってさ、付き合うってことは、その”やる”時間より、
   
   一緒に普通に過ごす時間のほうが長いわけでしょ。
   
   それに俺は、付き合うことに対しては精神性みたいなの

   求めちゃうんだよね。』

女 『やっぱり、何言ってるかわかりません。』

会話の内容自体は、なんともたわいのないもので、

いわば、男女の恋愛観の違いといえるものだった。

だが、店員にしてみれば男の恋愛観は、

決して男性の一般的なそれとは違うと思ったらしく、

その後議論は3つ巴の様相となってしまったのである。

女のほうは、ほんとに分かってないのか、

分かってないフリをしてるだけなのか、

いまいちよく理解できないのが歯がゆい。

小さい飲み屋では、こういう類の会話は日常茶飯事で、ありきたりではある。

でもなぜか飽きないのが不思議だ。

よく人間の悩みの半分は恋愛に関するもので、

あとの半分は仕事やその他もろもろのことだと言われる。

だから、こういう席での会話はたいてい、

仕事か恋愛かのどちらかになるのが当たり前なのだろう。

ただ、人の話を横で聞いてると、

ときに、自分のことにオーバーラップしてきて、

酔いが回るのが早くなるのは、勘弁してほしいけどね。

おわり




只今新章準備中・・・


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