フォトノベル

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全5ページ

[1] [2] [3] [4] [5]

[ 前のページ | 次のページ ]

イメージ 1

21世紀半ば。

資本主義の担い手は、

人から高度な人工知能たちの手に移っていた。

人の欲望を糧として成長する資本主義の構造は、

時に暴走を引き起こし、

やがて崩壊する。

それが単なる好不況の波というものでは収まらないところまでいくと、

最終的には国家や地域の破たんまで招いてしまう。

かって、物欲を満たす程度の時代であればまだよかったのだろうが、

生きていくうえで必要とされる以上の欲望を満たそうとすると、

その欲求は、もはや人のコントロールできないところまで膨れ上がる。

それに気づいた人間たちは、資本主義の機能、

とりわけ投資関連の機能を人工知能を搭載した高性能コンピューターに

担わせることとしたのである。

とくに優秀な人工知能には、

かって20世紀に超一流の投資家のみに与えられた称号、

”Wizard=魔術師"を与えた。

彼らは世界中にコピーが配られ、誰もが知る存在となる。

いつしか彼らはこう呼ばれるようになった。

"Erectric Wizard=電子の魔術師"、と。


後編に続く

過去への憧憬

イメージ 1

東京都千代田区神田鍛鍛冶町。

JR神田駅から数分歩いた、

線路下の壁面にその落書きはあった。



普段はビジネスマンなどの賑わうこの街も

土曜日ということで人通りはほとんどなかった。

近年再開発が急速に進行し、

都内の町並みもずいぶんと変わったが、

このあたりはまるでタイムスリップでも

したかのように古い趣の建造物が残っている。

明治維新以降の文明開化の時代から

早くに近代化建築物の建てられたこのあたりも

100年以上が過ぎ去り、すっかり時代の流れから

取り残されてしまったかのようだ。


だが、それだけにこの街には未だ人の匂いが残っている。

そしてこの壁も。

このレンガ造りの壁とそこに書かれた解読不能の文字。

レンガとカラースプレーというのも

時代のギャップを感じさせるが、

今やこの2つとも過去の遺物となっている。

そこには確かに人がレンガを積み上げ、

そして月日が流れて、誰かが文字を書いた。

人の存在がイメージできる、そんな場所に思えたのだ。

一年中温度差のあまりかわらない空調と

よく行き届いて清掃された現代のビル建築に比べ、

時間と人を感じさせるこういったものには、

不思議と足をとめてしまう。

まるで、遥か未来の考古学者にでもなったように・・・・・。

イメージ 1

神田神保町古書店街。

その独特のカビ臭さは、時に訪れるものを迷宮への誘う。

皆、まるで本に引き寄せられるかのように

自然と吸い寄せられてしまう。

私もその一人だった。

メトロ改札から、岩波ホールに近い出口を出て、

お茶の水方面に足を向けると、

その個性的な書店の立ち並ぶ通りに行き当たる。

通りは、知る人ぞ知る有名古書店の看板で溢れ、

中には、本の虫に取りつかれた一種独特な個性を

感じさせる人々が、熱心に本を探している光景が見られる。

そこはもはや異空間ともいえる雰囲気を醸し出していて、

あまり近寄りたくはない感じすら受ける。

私は、しばらくその異世界を遠目に鑑賞しながらも、

次第に自分自身もその世界に引き込まれていくのを

ひしひしと感じていた。

看板の立ち並ぶ表通りから、

大手書店のビルに向かう裏通りに入る途中に

その入口はあった。

迷宮への入り口だ。

さして探している本があるわけでもなく、

ただ待ち合わせまで時間を持て余して私は、

その異空間に入るための門に吸い寄せられていた。


To be continued

無意識の迷宮

イメージ 1

はあ、はあ、はあ。

もうどのくらい走りつづけているのだろう。

3時間くらいだろうか?

それとも3日くらいか?

いや、30分くらいかもしれない。

相次ぐショックの連続で

俺の頭は混濁しっぱなしだ。

時間の間隔なんてとっくに麻痺している。

昼と夜の区別もつかず、

今現在どこにいるのかもわからない。

俺をこんなにしたショックな出来事が

なんなのかさえ、

もはや思い出すことができないでいる。


袋小路。

いや、追い詰めているものの正体がわからなくなっているのに、

はまったもなにもない。

それにまだ、逃げ道はわずかだが残されている。


少し疲れたな。

それでも後ろを振り返ることは許されない。

なぜだがわからないが、

それだけはできない、そういう気がする。


それにしても、

俺は何処に向かっているのだ?

ゴールはあるのだろうか。

足を止める場所はあるのか?

このまままっすぐ進んでいいのか?

何処かで曲がるべきじゃないだろうか。


意識が朦朧としてきた。

頭の中でさっきから、

サザンの『I am your singer』のサビが

リフレインしている。

ということは、少なくとも今は2008年の夏なのか。

・・それにしてもあの曲はひどい。

同じ歌謡曲調なら、『Hotel Pacific』でやったし、

自己模倣にもほどがある。

それでも頭に無意識に流れてくるというのは、

さすがというべきか。


・・・・そんなことは、どうでもいい。

今考えるべきは、

俺を追い詰めているもの正体と

俺が逃げている先に何があるのかということだ。


よくよく考えたら、

”I am your singer"と”Hotel pacific"は全然違うな。

なんかどれも同じに聞こえる。

サザンの曲は、ほぼ全曲知っているつもりだけど、

最近曲と曲の区別がつかなくなってきた。

詞も自作の使いまわしが多いしな。

やっぱりサザンは、popsより純粋なロックの方がいい。


おっと、こんなことを考えている場合じゃなかった。

長時間一人でいると、どうでもいいことを

ひたすら考えてしまうから始末が悪い。

ともかく落ち着いて、自分の記憶をほじくり返すんだ。

確かあれは、先週の金曜日・・・・・


そう、何かを思い出しかけたその時、

俺の意識は途切れはじめ、

次第に何も感じなくなっていった。


fin

知識の街その1

イメージ 1

神保町古書店街。

世界最大ともいわれる本の街。

数年ぶりに訪れたこの街は、

ネット社会の進んだ現在においても、

変わらぬ独特の雰囲気を残したままだった。

本屋の世界は、

商店街などの小さな書店が衰退する一方、

大都市の大型書店の出店は多く、

一種日本経済の縮図の様相を見せているが、

そんな大型書店でも見つからないような本が、

この神保町には数多くある。

そして、何よりサイバースペースにはない、

本独特の匂いが、この街には残っている。

古くなった紙が放つ、一種カビたような異臭。

ある古書店に足を踏み入れた途端感じるその異臭は、

始めは、先に進むのをためらわせるものの、

次第にその無限の知識にあふれた部屋の空気に、

魅入られて、心地よく感じられてくるのだ。

書店の各階にいる店員は、店主らしき人以外は、

意外と現代風の格好をした人間が多かったが、

店内で本を物色する客には、やはりこの街らしい

雰囲気をかもしだしている本の虫たちが多くいた。

彼らが求めているのは、

”本”という紙媒体に詰まった知識と感動である。

紙と印刷用インクと綴じ具用糸のみで作られたその

メディアに無限の世界を感じている人々である。

私はしばし、その知識の異空間とそこを楽しむ人々を

鑑賞して楽しんでいた。

かって、ピーター・ドラッカーは

”これからは知識労働の時代だ”といったが、

IT技術の進歩は、その知識を情報というデジタル信号に代え、

本当の知識を世界から隠してしまった。

一方で、情報化社会をリードする”グーグル”には、

世界中から最高の知識労働者が集まり、

いまやメディアにおいて世界を支配してしまっている。

グーテンベルグによって世界中の人々に共有された”知識”は、

ラリー・ペイジらによって、”情報”に変換されてしまった。

だが、日本においてもコンサルタント会社への転職が、

ひとつのステータスともてはやされるように、

知識もしくは知恵の労働への需要は高まっている。

ほんとの知識が覆い隠されるなか、

その知識を使いこなせる一握りの人間たちが社会を動かす時代。

そんな時代にあって、

ここ神保町には、未だ本物の知識を求める人々がわずかだが

残っていることを感じると妙な安心感に包まれるのだ。

そんなことを思えば、多少の異臭に鼻を付かされるぐらい、

どうってことない。

ここは、知識の街なのだから。

To be continued

全5ページ

[1] [2] [3] [4] [5]

[ 前のページ | 次のページ ]


.
udy
udy
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について

過去の記事一覧

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

ブログバナー

Yahoo!からのお知らせ

よしもとブログランキング

もっと見る

プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事