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永遠にこない始発電車

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週末の土曜日。

早朝、4時過ぎ。

おぼつかない足取りを

なんとか動かして、

上野駅のホームまで辿りついた。

始発は4:42。

まだ30分近くも時間がある。

ほんとに久しぶりに飲んで、食べて、遊んだ、

そんな週末だった。

それでもなぜか空しく、

気が晴れることはなかった。

最近いつも頭のどこかで、

何かが引っ掛かってているものがある。

それが、何かうすうすわかっているはずなのに、

心のどこかでいつも否定してしまう自分許せないでいた。

朝の山の手線上野駅のホームは、

さすが人もまばらなせいか、

いつもよりも広く感じられた。

ホームの先端は一点に集約されていて、

まるで巨大なトンネルのようでもあり、

雨交じりの吹きすさぶ風は、

冷たい鍾乳洞を思わせる。

終着はどこまでも遠く、

決して辿り着かないかのようだ。

楽しい夜は一瞬で終わり、

一人、始発電車を待つのは永遠に感じられる。

今週は人生の中でももっとも大切な週だったはずだ。

そう思っていたのに、勝負にでれなかった。

意気地がなかった。

自身がもてなかったのだ。

何もしないことが一番の後悔につながることは、

誰よりもわかっていたはずなのに。

結局、束の間の快楽に身を任せ、

自分の本心から逃げ出してしまった。

このままずるずるしていてはいけない。

そんなことを言い聞かせつづけて、

一体どれぐらいたったのか。

未だこない、電車にいらつきながらも、

ぶつける相手もなく、

ただただ、待ち続けるしかなかった。

・・・・・

fin

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2028年、Tokyo。

俺は、地上54建ての高層マンションの42階で、

一人暮らしをていた。

部屋には、PCが5台。

それぞれに2台のモニターが設置されている。

うち一台のPCと、付随する2台のモニターは、

テレビと日常作業用に使用している。

他の4台のPCと8台のモニターは取引用と

取引の情報用に使っている。

俺は一日のうちの20時間を

これらの端末とモニターの前で過ごす。

残りの4時間は、食事と睡眠、

そして一日の内で唯一楽しみにしている

晩酌に費やされる。

晩酌は主にウィスキーがメインだ。

最近、スコッチの珍しいのが手に入り、

寝る前のこの時間の楽しみが増してきた。

睡眠時間は3時間。

俗にブラックアウトタイムと呼ばれるこの時間は、

取引が少なく、なんとか眠りにつける時間帯なのである。

部屋の窓は大きく、バルコニーがない代わりに、

壁全体から空調の心地よい風が吹いてくる。

1年中ほぼ同じ温度に保たれていて、

体感温度としての季節感には欠ける。

だからと言って、窓から見える景色にも

季節感と呼べるものは感じない。

急速に進行した温暖化の影響で、

もはや日本には四季と呼べるほど、

一年間の気温の差がなくなってきているからだ。

もちろん、夏は暑く、冬は涼しいのだろうが、

俺にはわからない。

もうかれこれ3年は、この部屋から出ていないからだ。

数十年前なら、こういう状態を”引きこもり”と呼んだのだろうが、

現代においてはさほど珍しいことではない。

それに俺は、ニートでもひきこもりでもない。

ちゃんと仕事はしている。

俺の仕事場はこの部屋であり、

このPCとモニターがその仕事の道具だ。

俺は一日20時間、このマシンの前に座り、

一日平均数千万は稼いでいる。

外出をしていないからといって、

身だしなみに気を使っていないということもない。

テレビ電話で人と会話するのは日常茶飯事だし、

それだけに毎日髭もそり、洗顔クリームでケアだってしている。

シャツも定期的にクリーニング出している。

惜しむらくは、気を使っているのは上半身だけで、

映像に映らない下半身は褒められたものではないが。

買物は全てネットで済ましている。

活字媒体は既に衰退しているため、

新聞や本もすべて電子媒体で済んでしまう。

そのため部屋は随分と殺風景なものになってしまっているが。

一応知的な人間を自称している自分としては、

本棚のない部屋というものには、しばらく慣れずにいたものだ。

肝心の俺の仕事は何かって?

そんなことをいちいち説明している暇なんで俺にはないんだ。

ひとついえることは、俺の取引相手は世界中に散らばっていて、

朝は、シドニー・シンガポール・東京・上海・ハノイ・ムンバイ。

午後は、イスタンブール・パリ・ブリュッセル・ロンドン。

夜から深夜にかけては、N.Y.を中心とした北米。

一日かけて世界を一周する。

それが俺の仕事の大変なところなんだ。

だから説明を求められても困る。

それだけで、一日が終わっちまうからな。

とにかく俺は忙しいんだ。

寝る暇もないくらいにな。

えっ、今まで、一体いくら稼いだかって。

そんなの、忘れちまった。

とにかく俺は忙しいんだよ。

少しでも気を抜いたら、やられちまう。

1分1秒が惜しいんだ。

何だって、スコッチは美味かったかって?

そういえば飲むのを忘れていたな。

確か、あれを買ったのはいつだったけな。

あれ、そういや今西暦何年だっけ。

何月何日だ?

いや、そんなことはどうだっていい。

それより今日の上海の指数は?

東証の前場はどうなってる?

いや、今はN.Y.タイムだったか。

FRB議長の講演があったっけかな。

俺は勝ってるのか、負けてるのか。

明日のトピックスは?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

んっ、何だ、モニターが変だ。

何も映らないぞ。

レートはどうなった。

下がったのか、上がったのか?

・・・・・・・・・・。

プツン。

fin

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六本木にある高層ビル。

地下鉄に直結するこのビルの2Fは、

様々なレストランが立ち並んでいた。

鮨屋から、イタリアン、アジア料理に、

無国籍料理なんてものもある。

その一角、一店のイタリア料理店。

店員は、イタリア人らしき男と

日本人のウェイターが2人。

店は平日のためか割と空いていて、

6人ばかしの団体客がひと組大声で、

なにやら議論していた。

そこに1組の男女が真向いで

席についている。

2人は小食なのか、

時間がないのか、

コースではなく、

それぞれパスタを一品ずつと

バケットを1組頼んでいた。

食後にはコーヒー。

なぜか、ワインを頼めないことを残念がっている。

女はトマトソースのパスタ。

男は、ボルチーニを頼んでいた。

会話からは彼らの関係はよくわからない。

どうやら同じ職場の同僚のようだが。

職場の話。

人間関係の話。

映画の話。

映画の話では、最近みた映画の話で

若干盛り上がっているようだ。

なんでも香港の有名映画監督が、

初の英語版の作品を撮り、

つい最近公開されて、

彼の作品についてあーだこーだ言い合っている。

あまり、白熱した議論にはなっていないようだ。

男はなにかにおびえているように口数が少なく、

話題はいつも女のほうからだった。

2人の食事は、どこか滑稽で、

パスタ1つを何十分もかけて食べている。

その間も他愛もない話は延々と続いていた。

後輩のニックネームの話。

去って行った部下の話。

自宅でのパスタの作り方。

アフターの過ごし方。

恋愛観。

そして、

My Bluebrrry Nights。

碧き光の桜並木

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2008年、3月28日。

その日は、散々な一日だった。

私は、港区のネット系証券会社で、

コールセンター業務に携わっているのだが、

その部門は24時間のシフト制で、

遅刻なんて許されない。

にもかかわらず、

朝から、お決まりの人身事故だとかで、

メトロの東西線は20分も遅れるし、

そのせいで乗り換えの日本橋では、

いつも以上の混雑で(ただで際混んでるのに・・)、

列車を一本待つはめになるし、

おかげで会社を遅刻してしまうはめになった。

確かにこれだけならいつもように

上司に叱られて終わりなのだが、

その日はいつもと違った。

いつもように上司に呼び出された私は、

”あー、またいつもの小言かなあ”

とうなだれていたのだが、

内容は全く別の話だった。

なにやら、午後に来年度からの人事異動の辞令が

でるとかで、その内示の件で話があるとのことだった。

どうやら私は別の部署に異動になるらしい。

正直いってショックだった。

そりゃ確かに満足いく貢献ができているとは思っていないが、

直に顧客とのやり取りを交わせるこの仕事が、

それなりに気に入ってもいたのだ。

新しい部署は、今のフロント系の部門よりは、

もう少しバック寄りの、

口座開設を主に受け持つ部門のようだった。

どうやら私はあまり評価されていなかったらしい。

結構一所懸命やってきたつもりだったのだが、

所詮会社なんてこんなもんなんだろうな。

本人が思うほど、会社は私のことなんて見てくれてはいない。

期待するだけ無駄なのかもしれない。

んっ、これって何か似たようなことが前にもあった気がする。

2週間前のことだった。

私は、それまで2年間付き合っていた彼氏に別れを告げられていた。

”君は、いつも仕事の話ばっかで、ちっとも僕のほうを見てくれない”

確かそんなことを言われたのだった。

その時はあまりのショックで、

彼が何を言っているかわからなかったが、

今にして思えば少しわかるような気もする。

まあ、今更気づいてももう遅いのだが。

あーあー、ここんとこホントついてないことだらけだ。

なんか、呪われているのかしら、ホントに。

こんなブルーな一日は終日続き、なんやかんや異動の準備などで、

会社を出たのも22時過ぎになってしまった。

会社の入っている六本木のビルは、

地下鉄の駅に直結していて、

いつもなら地上にでることなんてそうそうない。

だけど、その日はなぜかこのまま帰るのもしゃくな気がして、

改札には向かわずに、

そのままビルのエントランスを出た。

別にどこか行く宛てがあるわけではない。

ただ、もうこの窮屈な鉄の空間から一刻も早く出たかっただけなのだ。

週末ということもあり、外はそれなりに人通りがあった。

とはいっても時間が時間だから、

もう皆楽しい食事も終えて家路につこうかというところだろう。

道行く人は、ほとんどがカップルばっかりで、

私をよけいにイライラさせた。

その光景を目にするまでは。

通りには既に桜の木が満開の花を咲かせていて、

木に括りつけられたライトで、

なんともいえない幻想的な光景を作り出していた。

そこは周囲のネオンと重なって、

なぜか碧い光を放っていたのだ。

なんと美しいのだろう。

私はなぜか不思議な気持ちに駆られ、

それまでの嫌なこと全てを忘れていた。

見上げた先には、東京タワーが赤く光り輝いていた。

いつも見慣れた光景のはずなのに、

その日は何か特別なもののように思えた。

少し私は、自分の足元ばかり見すぎていたのかもしれない。

これからはもう少し遠くに目を向けてみよう。

まずは手始めに・・・・

そう思って私は、携帯を取り出し彼の番号に手をかけた。

fin

夜桜

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東京都港区の一角。

六本木と赤坂の間にある、

城山ヒルズにその桜はあった。

夜遅く、22時を少し過ぎた頃だっただろうか、

いつものように仕事を終えた私は、

いつものようにそのまま何の感慨もない

地下鉄に乗り込むことをせず、

ふと夜道を歩いてみることにした。

理由は特にない。

ただ何となくそうしたかったのだろうと思う。

週末とはいえ、もう夜も遅い。

終電にはまだ時間があったが、

大抵の店はラストオーダー間近で、

人通りはまばらだった。

もともとこの城山ヒルズ自体、

普段から人通りの多いとこではない。

それだけに、ライトアップされた

桜の木は、実に目立った。

温暖化などと言われながらも、

寒さの厳しかった今年の冬を

乗り越えた桜の木は、

一見貧弱なたたずまいに見えながら、

どことなく生命力に溢れている様に感じる。

出会いと別れ、

成功と失敗。

幾度となく、

くじけそうな気持ちにさせられた今冬。

久しく、上を見上げることなど忘れていた。

見通しの立たないこれからの自分の行く末に、

不安だけが覆いかぶさってくる。

信じることに疲れかけていた私にとって、

この一本の桜は、

そんなことなど些細なことに過ぎない

のだと語りかけてくるようだ。

fin

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