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たからもの シグアミ

私がシグアミを書くとしれっと当たり前のようにくっついてて
ついでに同棲生活送ってる前提になるんですけどなんでなんでしょうね?




ちょっとした昼下がりのこと。

アミティはシグの姿を見失い、家中を探し回っていた。


「シグー、どこー?」


返答は無い。うーんと唸りながら、記憶をさかのぼって彼の行き先を考える。

お昼は確かに一緒にご飯を食べた。

その後は後片付けをして、そして気づくとふらっと姿が見えなくなって……

呼びかけても返事が無いのはそれはつまり。


「……お昼寝?」


思案しながらシグの部屋の扉を叩く。返事は無い。

数秒待ってドアノブに手を掛ける。鍵はかかっておらず、何の抵抗も無く開いた。


部屋の机には魔法の勉強と思わしき形跡の紙が数枚散らばっていて、

そしてベッドには。


「…………すぅ」


シグが寝息を立てていた。

勉強の休憩中だったのだろうかと考えつつも、

吸い込まれるようにアミティはそこに引き寄せられ、

ただなんとなしに、ぽすっとその隣に座る。

しばらくシグの寝顔をじっと見つめるアミティだったが、

昼下がりの白い陽光が差し込むその場所はあまりにも心地よく。

程なくして彼女もベッドに横になる。


「……いいにおい」


森の翡翠のような涼しい空気に包まれる。

そして眼前には親しい少年の寝顔。

安らぎに満ちたその感触に、アミティは少し甘えてみたくなってしまった。


「ちょっとだけなら……起こさないよね?」


ベッドに横になったままもぞもぞと距離を詰め、シグの胸元へと顔を埋める。

硬い胸板が当たる。ごつごつしていて、本来なら恐らく気持ちいいとは言えないはずであろう感触。

けれどシグに身を委ねたその感覚はとても安心できて、心地良いものだった。

あとはもうちょっと包まれるような感触があれば、と考えていると。


「……ん」


顔は見えないが、身じろぎしているのがわかる。


「ごめん、起こしちゃった?」

「だいじょうぶ。元々そんなに寝るつもりじゃなかった」


そう言いながらシグはアミティに腕を回す。

ちょうど欲しいと思った感触。その温もりに抱かれ、アミティはふふっと笑みを零す。


「ありがと」

「……?何が?」

「なんでもないよ」


もっとよく感じたくて、もう少しだけシグに身を委ねる。

普段は気づかない、自分との違い。

赤い左腕はもちろんのこと、普通の右腕も細さに反して意外とがっちりしていることに気づかされる。


「……かたいね」


そっと触れて、確かめる。上手にピアノを奏でるように。

抱かれたまま、指一本ずつを動かして、腕の先から根元へとなぞっていく。


「そんなにおもしろい?」

「うん。シグの身体、すっごく丈夫でしっかりしてて、強くて。」

「そう?……嬉しい」


顔が見えないけど、喜んでるのがわかる。包まれてる感触が、ぎゅっと少しだけ強まったから。

それに応じて、自身ももっとくっつく。

こうしてシグをもっと感じていたい。目の前に居る、大好きな男の子の身体に包まれていたい。

けれど自分ばっかりこうしてもらってるのもちょっとだけずるい、だから。


「お礼、しなくちゃ」


するりとシグの腕から抜けて、手を伸ばす。


「お礼……?」

「シグにしてもらったように、あたしも同じことをしたいなって」

「良いの?」

「もちろんだよ」


そっか、と笑うと、シグは頭部を近づけ、アミティに身を委ねた。

アミティもそれに応え、シグに腕を回し、包み込む。


「……。やわらかい」


それは胸元のことだけでなく、おなかや腕や抱擁、その全てを指していた。


「あたしもシグみたいに強い身体だったら良かったんだけどなぁ」

「ううん、これが好き」

「そう?……嬉しい」


嬉しくて、シグがしたのと同じように腕の力がぎゅっと強まったのを無意識に感じた。

それに応えるように、シグもアミティがしたのと同じように彼女へ触れ、その身体の違いを確かめる。

そうやって幸せな時間が、ゆっくりゆっくりと過ぎていく。


「ねえ、アミティ」

「なあに?」

「アミティは、そうやって抱きしめてて、どんな感じがする?」

「うーん……」


自分の行為を意識してみる。

目の前に大好きな人が居て、腕を回して抱擁して。

それは包み込んでいるようで、けれど手放せない何かを持っているようでもあって。


「宝物を、守っているみたい」

「同じだ」

「ふぇっ?」


腕の中で、シグが楽しそうに笑っているのを感じる。


「アミティを包み込んだときも、同じ気持ちになった」

「同じ……?」

「こうしていると。
 目の前に居るアミティのことが大切で大切で仕方ない気持ちになって、
 どうしようもないくらいに一緒に居たくなる」


シグもアミティの方へと腕を回し、抱擁する。


「……宝物」


密かに恥ずかしい気持ちと嬉しい気持ちが混ざったまま、アミティも応える。


「……うん。シグも、あたしの宝物だからね」


大切だという気持ちと離れられないという気持ちが伝わりあって、

あたたかいものが心に溢れる。


「こういう気持ちにぴったりな言葉、あたし分かった気がするんだ。」

「……もしかして、それって」

「そうだよ。きっとこれが、」



"愛しい"、っていうことなんだね。



似合わなくても、今のお互いにぴったりな鮮やかな言葉。

その気恥ずかしさと喜びに、

二人に笑顔が花咲いた。



おしまい


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