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貝になった人がいる
唇をかたく閉ざして
そして人間のことばを忘れていった
人間の熱い心を残しながら
 
海の底で 人は暮らした
たえず生まれようとするものに
取り巻かれて 生命は水から
立ち上がっていったのだと 人は
 
当たり前のことを思いながら
人間のことばのかわりに
えもいわれぬことばを 胸に
 
刻みつけていった はじめから
あって おそらく終わりまであることば
人は そんなことばそのもとなりながら
 

クリスマス・イブ

クレヨンで描いたもみの樹
リスがオーナメントの星をかじっている
スっぱいね イエス・キリストが生まれた日は
マタ生まれてくるといいね
スズの音(ね)が鳴る 天の川銀河のかなた
イミもなく生まれたひとなどいない
ブキヨウな人ばかり集まって メリー・クリスマス

野いばらが足にからみ
悔のように痛い朝
僕は目に見えるもの 見えぬ
ものの境に踏み迷う…
 
…何も語りたくはない 語れば
存在を失うような夜の続きを
歩いて来た 散り落ちる
白い花・・山鳩は鳴きやまぬ
 
まなうらの白い道 過ぎる
ものは遠くに過ぎ去った
僕は孤りぼっちではなかったと
それらは囁きながら過ぎて行った
 
何処へ行く道だろう 淋しさの
雲のように湧く朝 他者の中に
明日があると気付いたのは 知りそめた
ひとりへの愛を知りそめた道…

月のうさぎ

月のうさぎに手をのべて
あなたがとらえようとしたものは
月のうさぎを信じていたころの
ぼくのたましいの光(かげ)
 
あなたはまるで月のうさぎを
あやすようなかっこうをして
遠ざかってゆくのだけれど
 
それは反対にこころと心とが
近くなってゆくあかしのよう
月のうさぎに 手をのべて
 
ぼくがとらえようとしたものは
まさしくあなたの 月のうさぎを
信じていたころの魂の光なのだから

星の光

自分を捨ててゆけば ほんとうの
自分を得ることができるの
凛と咲いている野アザミの
花よ 教えておくれ
 
自分を殺していけば ほんとうの
自分を生きることができるの
野アザミの花にまつわる
蝶よ 教えておくれ
 
自分は何にでもなれる
だから自分でいられるの
野アザミに降りそそぐ星の
 
光はもう何億光年も前に
滅んでいるのだとしたら 人は
自分以外のものに出会えないね
 
死んだのちも 生まれ変わっても
 

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