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◆平成28(2016)年4月8日 読売新聞 東京夕刊
広がる療育「放課後デイ」 発達障害など対象 民間参入
◇安心の設計
障害のある子どもが放課後や長期休暇中に利用する「放課後等デイサービス」(放課後デイ)が急速に広がっている。制度が始まった4年前から事業所は激増し、サービスも多様化。発達障害児向けプログラムなどに取り組むところも多い。しかし、その一方で、質にばらつきが大きいとの指摘もある。
◇利用11万人超
「『頑張って』はどんな言葉かな?」「励ましの言葉!」。小学生4人が元気良く答えた。ここは大阪市北区の放課後デイ「Leaf(リーフ)梅田教室」。障害者の就労支援などを行う企業「リタリコ」(東京)が今年1月に開設した。発達障害の子どもへの対人コミュニケーションや学習の指導に力を入れる。
週2回通う、広汎性発達障害の小学4年の男児(9)は、「最近、国語が得意になってきた」と笑顔。母親(45)も「言葉が増え、表情も明るくなった。自分にもできる、と自信がついたんでしょう」と喜ぶ。以前は気持ちをうまく表現できず、ストレスで家をはだしで飛び出すなどしたが、そうしたことも減ったという。
放課後デイは児童福祉法に基づく通所サービスで、2012年4月に始まった。「生活能力の向上」などが目的で、放課後をひとりで過ごしがちな障害のある子が、ほかの子と交わる場でもある。利用するときは市町村に申し込む。療育手帳や身体障害者手帳は必ずしも必要ない。自己負担は原則として費用の1割だ。
この放課後デイが急増している。制度開始時には、従来の児童デイサービスから移行した事業所を中心に2540か所だったのが、15年12月には7378か所に。利用者も5万1678人から11万6954人に増加した。増加の背景には発達障害が早期に発見されるようになり、ニーズが高まったことや、民間参入がある。昨年3月時点で、事業所の4割が営利法人によるものだ。
大津市の「なないろ」も、民間参入例の一つ。代表の大和幸子さん(51)は住宅メーカーで10年間働き、福祉の経験はなかった。発達障害と思われる職場の後輩が人間関係で苦しむのを見て、「力になれないか」と障害を学ぶうちに起業を決意し、昨年実現させた。発達、知的障害の15人が通う。「能力を社会で生かせるようきめ細やかに支援したい」と考え、おもちゃのお金で買い物の練習をするなど工夫した取り組みを進めている。
◇選択肢多く
サービスが多彩になり、利用者の選択肢も増えた。
大阪府内4か所で放課後デイを開く「チットチャット・スポーツ塾」は、障害者のスポーツ指導に長年携わる森嶋勉さん(52)が運営。手先が不器用だったり、スポーツ経験が少なかったりする発達障害の子らに、バランスボールやマットなどを使うプログラムを提供する。
「ルールや対人関係も学べるスポーツは障害児の療育に役立つ」と森嶋さん。個性に応じた指導で“待機児童”が出る人気ぶりだ。
◇質の格差課題
しかし一方で、障害が軽い子を選んで受け入れる事業者やアニメのビデオを見せるだけの放課後デイもあるとされ、質に格差が広がったことが指摘されている。
悪質なケースもある。堺市では一昨年、事業所の管理者が、児童に自宅の犬小屋を掃除させていた事例があった。大阪市でも児童をトイレに閉じこめるなどの虐待が発覚し、市は事業者指定を取り消した。こうした現状から、厚生労働省はサービスのガイドラインを作り、今年3月には自治体に指導の徹底を求めた。
「障害のある子どもの放課後保障全国連絡会」の事務局長、原田徹さん(47)は、「大切なのは地域で生活する上で必要な支援。営利目的で子どもの福祉が置いてきぼりにされてはならない」としている。
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