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ヒロイックサーガ

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世界は滅ぼされつつあった

多くの国々が、魔道機械と呼ばれる謎の兵団に焼き尽くされていた

人間達も必死で抵抗するものの、あまりの戦力差になすすべもなく敗北を重ねていた

10年以上の敗北の歴史

それと同じ年数の殺戮の歴史でもある

しかし突如、その戦況は、瞬く間に覆されることとなる

不思議な力を有する青年と、三人の魔術師

たった4人の英雄の登場によって







「アルケイディアっ!!」

奴が、俺の視界に入ると同時に、みんなは奴の周囲3方から奇襲をかける

「トリプルレイアンドバースト!!!」
「ダイアモンドエッジ=ボム!!」
「F・I・S=トライアングル=ダブルクロス!!!」

その三つすべてが最上級魔術

しかも相乗

これほどの魔術ならば、いかなる魔力防壁をめぐらしても、突破できないはずはない

現に、以前までは突破不可能とされていたアルケイディアの防壁がゆがみ始めている

これならいけるかっ

「ぐ、ぐぬぬ!」

だがその見込みはあまりに甘過ぎた

魔人王

その俺たちに比べれば、3倍以上はある体躯も

その名を冠していること自体も、決して伊達などではない

「その、その程度の奇襲などに私がぁぁぁっ!!」

バンッ!!

はじかれたっ?

「これでも無理なのですか!?」
「おいおいまだ足りねぇのか!?」
「うそでしょ!?」

見込みが甘かったとはいえ、信じられないという思いは消せない

現代はおろか古代においてすら、禁呪とされてきた相乗魔術

しかも、数ヶ月に及び修練を重ねてきた3人同時攻撃を、奴ははじききったというのか

「だけどっ!!」

そう

仮に突破できなくても、弱りきっている今の防壁など

「たああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」



この俺の剣

魔人殺し・降魔刀

そして、蒼き光の刃・クラウ・ソラスの双撃に断ち切れぬ壁など

ガッシャーーーーーンっ!!!

「な、!?」

ただの一つも、ありはしないっ!!

「なっ、バカなっ!!」

信じられないというようなアルケイディア

だが事実

お前自慢の防壁はなくなったっ!!

そして無論!

ズバァァっ!

この接近戦の好機において、無防備になった敵を逃すほど、俺は甘くなんてない!!

「ぐをおぉぉぉっっっっ!!!!!!」

だが

「ちぃっ!やっぱり浅い!」

奴の体には肉体がない

その身のほとんど全てが魔力によって構成されている

聖剣・魔剣の類ならば、それでもダメージは与えられるが致命傷にはなりえない

かつ、傷はすぐさま魔力により補填されてしまうなんておまけ付き

ほとんど反則だ

先の戦いにおいても、その最悪な反則を前に、全員が瀕死という事態にまで追いこまれている

あれから、だいぶ修練を重ねたとはいえ、その魔力差はまったく変わっていない

いや、いくら修練を重ねたとしても奴の魔力に追随することなど不可能だろう

そもそも最初から全力で当たる他ない俺たちと、例え傷を負ったとしても大した意味をなさない相手との間には、どうあっても超えられない壁がある

それゆえの全力による短期決戦

それがギリギリ

それだけが、俺たちに残された、唯一の勝利への道だった

「畳み掛ける!ライル!ガラ!エリス!相乗魔法剣行くぞ!!」

「「「了解っ!!!」」」

三人同時の返事を聞いた上で、俺は降魔刀の柄を破壊する

そしてすぐさま、降魔刀の魔力核をクラウ・ソラスに喰わせた

これにより、聖と魔の融合が完成される

相反する力の相乗は一時的に爆発的な力を発揮する

愛用の刀を失うのは惜しい

だが、その程度の代償を一々気にしてなどいられない

さらに同時に、自分自身も開いた左手に魔力を込め始める

これは布石だ

俺たちの最終目的は、まだ遥か先

しかも事が、全て思い通りに行くとは限らない綱渡り

しかし、これしか

これしかっ!

俺たちの思い描くその道しか、勝利はありえない!

ライル達も同じくして、魔法剣詠唱を開始する

それは、自分たちがもっとも得意とする属性

ライルは光

ガラは土

エリスは、炎と水と雷の三種同時

「光の粒子よ。降り注ぎて、かの聖剣に勝利の栄光を与えん!!」
「大地よ!その内に眠りし全ての力を、今こそ我らが聖剣にささげよ!!」
「火よ水よ雷よ!私の全ての魔力もって命ずる!サクヤ有す聖剣に六法の力を!!」

3人が3人、その全てを、今ここで最大限に発揮する

「よしっ!きたっ!!」

三人の魔力がクラウ・ソラスに集まり始める

これこそが秘奥義

数ヶ月に及ぶ修練の成果である

しかし、3人の魔力は、まだ集まり始めたばかり

クラウ・ソラスに降魔刀の核を食わせたおかげで、その許容力は半端ではない

その全力にまで達するには、どうやら10分以上かかる

だが、実はそれも曖昧

なんといっても、始めての試み

無論、他の剣では何度となく同じことをやってきた

体を限界まで追い込んで

幾つもの名のある剣の数々を代償にして

時には命すらも天秤にかけて

故に、この場において失敗などという道理は、断じてありはしない

しかし

それでもこの聖剣、クラウ・ソラスでは初めてのこと

他の剣と同じく、この秘奥義にかかれば、クラウ・ソラスとて粉砕は免れない



そもそも、クラウ・ソラスで試すわけにはいかない

そんな練習

そんな高望みが、俺にできるはずも無い

とはいえ、ぶっつけ本番の一回限りはつらいのも揺るがぬ事実

まして10分

知りうる限りでは最強の我が聖剣

そして予想通りながら、この剣の限界は、代償としてきた名剣達を遥かに凌駕していた

「はぁぁぁぁっ!!」
「ぬおおおおっ!!」
「あぁぁぁぁっ!!」

ライル達もまた、ただひたすら魔術展開に集中している

他のことに意識を削げはしないだろう

つまり

「おのれ...おのれえ…おのれえーーーーーーーっ!!!」

最悪の場合は、この10分

この科学王であり、魔人王でもあるアルケイディアを

たった一人で

たった一人で、かつ、みんなを守りながら、相手にしなければならないことになる

なんという無謀

そんなものは到底ありえはしない幻だ

「ふざけた真似をおおおおお!!」

激昂する魔人

しかもその手には、すでに相乗魔術の連弾が編まれ始めている

「まとめて消し飛べえええぇぇぇぇっっ!!!!!」

「くっ!!」

思わず歯を食いしばってしまう

なんて腹の立つ思考回路なのだろう

早過ぎる

早過ぎるのだ

しかしそれは、この場においては、それは確かに効果的な方法だった

先ほど奴の防壁を弱めたのも相乗魔術であれば

今、俺達を消し飛ばさんとするのも相乗魔術

逆の立場になれば、これほど恐ろしいことはない

そんな相乗の、まして連続弾を向こうにするとなれば、まともな防御などありえない

「無駄に冷静なっ!!」

俺は迷うことなく、真っ直ぐに奴の懐に飛び込む

奴の術の完成=俺たちの敗北

ならば、術の完成より先に、その術式を直接打ち砕く以外の方法など今はありえない

「くっ!!」

しかし、間に合うか

距離的にはギリギリ

だが、やってみせるっ!!

しかし

「こぉぉの私をぉぉおお!!甘く見るなぁーーーーーーー!!!!!」

その状況の悪化に戦慄した

せざるを得なかった

アルケイディアの激昂とともに、瞬間的に奴の魔力が高まっていく

もうあと刹那で、その滅びの魔法式が完成してしまうほどになっていた

(間に合わない!?)

「消えろ…カタストロフ=デス=イクスティンクトぉぉぉぉぁぁぁぁっ!!!!」

魔術が開放される

しかもそれは、3種の相乗

属性は、災厄とさえいえる、悪夢と死と滅び

その連弾型

威力は計り知れないにも程がある

発動すれば、この城なんて、一瞬で消し飛んでしまうだろう

実際、奴の周囲から魔力があふれ出し、その崩壊が始まりつつあった

魔力生命体だからこそ可能な、絶望したくなるほどの破滅的な魔術

もうあとは、それが爆発すればジ・エンド

俺たちの敗北だ






だが

「魔術式滅殺陣、一の型」

俺ならば、さらにその上を行ける

「水月」

その短い言葉だけで、世界が一瞬にして反転する

月世界

世界は魔力によって侵食され、月の王たる、この俺の世界へと変わり果てていく

そして結果、俺と奴だけが、湖に浮かぶ月の中心で、ただ呆然と立ちつくしていた

「な、なんだこの術式は!?」

慌てるのも無理はない

これは奴の知らない魔術

いや、そもそも魔術式ではない

これは、かつて悪魔とされた一族の、対人間、対魔術式結界陣

俺の体に流れる、悪魔の血によって発動する、失われたはずの空間侵食術

この陣式こそが、先ほどよりの布石

左手に溜めていた魔力を発動させた結果

そして、喜ぶべきことに、ここまでは俺たちの思い描いたシナリオ通りでもある

正直、奴の反応が早く、しかも最初から辺り一帯を消し飛ばすとは思っていなかった

故に、こうして発動に足りうるほどの魔力が溜まるかどうかがギリギリで焦ったのだが

「間に合ったな」

事は、こうして成しえたのである

「バカな…….バカなバカなバカなバカなバカな!」

混乱しつつあるアルケイディア

まぁ無理もないのかもしれない

魔力研究に没頭していた科学者が、自分の知らない魔術を見せられたのだ

狼狽もしよう

「なぜ私の術式が消える!!なぜだなぜだなぜだなぜだあぁぁっ!」

もう、その言葉通りだ

この陣式は、俺が対象とした存在の魔力を根こそぎ奪い去るもの

それが例え、いかに巨大な魔力であっても我が物とすることのできる醜悪な力

つまり

「俺たちの勝ちだ」

その右手には、鈍い青色の剣

その内には、計り知れない力が蓄えられている

ここに、相乗魔法剣、クラウ・ソラスは完成した

また、その完成と同時に、月世界はまばゆい光とともに消え、いつのまにか元いた奴の城に戻っている

その役目を終え、一瞬にして霧散したのだ

「礼を言おう。アルケイディア」

奴の魔力のおかげで、思ったよりも遥かに早く剣が完成した

無論、その属性は、すでにライル達により属性に書き換えられている

俺の陣式によって純粋な魔力となってしまえば、染め上げてしまうのは簡単なのだ

「さぁ、クライマックスだ」

クラウ・ソラスを掲げ、最後の時を待つ

だが

「......ふ」

「...どうした」

「ふ、ふふふ、ふわっはっはっはっはっ!!ふわあっはっはっはっはっ!!!」

「............」

「何だその剣は!そんな鉄くずで私を倒せるとでも!?」

漫然と笑い続けるアルケイディア

なるほど

そう見るか

…まぁ、確かにわからないでもない

今のクラウ・ソラスには、先ほどまであったはずの魔力の猛りはない

いや、もはやそれは、ただの鉄の塊とさえいえるのだろう

「やれやれ、大層な術まで使っておいて、その結果がその程度の鉄くずだというのか?」

バカらしいと、吐き捨てるアルケイディア

そうだな

確かに俺にとってもバカみたいな話だよ

バカらしくて、自分を哀れみたくなるくらいにはさ

「気にするな。お前が知らないだけだ」

「ふんっ」

そんな俺の皮肉にも、奴は負け惜しみととって、隠すことなく嘲笑っている

確かに

今のこの剣は、奴の言う通りにただの鉄くずだ

ただそれだけでは、何の意味をなさないナマクラでしかない

だが当然

それには理由というものがある

語るにも語れないような、そんな下らない理由が

「おい、アルケイディア」

「ふん、どうした愚か者よ」

「いやなに、大したことじゃない。最後に言って置きたいことがあるだけだ」

「最後、だと?」

「ああ、そうだ」

そういって、俺は剣を構えたまま、奴をにらみつけ言い放つ

「そのまま見ていろ。そしておののけ。今までお前が葬ってきた命の数だけ、圧倒的で絶対的な恐怖を味合わせてやる」

そう

こいつによって、世界は滅びかけ

人間だけでなく、あらゆる命が奪われてきた

しかも、その理由があまりに独善的な、科学技術の発展

魔力と科学の融合における災厄

いや

でもそんなのは、実は関係がないのだろう

そもそも、自分の国を滅ぼされ

俺を育ててくれた家族すら奪われた悲しみ

そんなもの、結局は大した理由になどなりえないのだ

そんなこと...当の昔に分かっていたはずなのに

「...........」

だが、そんなものはただの感傷だ

今この場においては、その復讐心が勝るべき!

「はっ、何を言っているのだ貴様は。まぁよい。貴様こそ消、え....な?」

また笑おうとでもしていたのだろうが、それが出来ずに、途端にその表情を変えた

どうやら、自分の身に何が起きているのか理解できないのだろう

「な、んだ、これ、はっ!?」

奴もようやく、その身の周囲の異変に気づく

いや、その周囲の変化はまさに一瞬だ

おそらく奴も、本当にたった今、気づくより他になかったのだろう

そこには純白の花々

その白き花たちが幾重にも舞い降り、あたかも雪世界といえる幻想的な光景を作り出していた

しかも、その雪の花の描く軌跡によって作られた白い魔糸により、アルケイディアはその身を、身動き一つ取れないまでに絡め取られている

「うご、か、な、い、だとっ!?」

そう

それこそが、たった今展開が完了した陣式の効果

陣の中にある魔力を、問答無用で凍結するという結界能力

結界ということでは、先ほどの「水月」と似ている

「水月」は発動する直後の術式を、強制的に魔力に変換し、かつ我がものとする陣式だ

その陣式は手中で描かれ、一定の魔力を陣ごと地面に放つことで発動される

一人の魔力でも十分に発動可能な陣式の一つ

ちなみに付け加えると、これはクラウ・ソラスの完成とは関係がない

さすがに、その程度のためにあんな苦労をした訳ではない

では、この陣式は何か

「二の型、雪花、成功したな」

そう、みんなに問いかける

「ああ」
「おう」
「...うん」

そう

これは4人により、4方を囲んだことによる陣式

名を「雪花」

雪世界において、対象を拘束し、かつ、その魔力を強制凍結させる結界術

普通の人間にこんなものを使っても、せいぜい一時的な魔術使用の制限をかける程度にしかならない

しかし、魔力生命体であるアルケイディアならば、この効果は全身麻痺以上の意味を持つことになる

最初の4方攻撃は、その奇襲それ自体が目的なのではなく

クラウ・ソラスに魔力を集めることだけでもない

俺たちのシナリオ

それは、奴の周囲全体に陣を張り巡らせること

それこそが、俺たちの真の目的だった

「ふざけるなっ!!」

またも激昂するアルケイディア

「この術は、血統による術だ!それを貴様ら全員が使えるはずなどありえん!!」

ほう

さすが魔人王

この陣式の正体に感づいたか

しかも、先ほどよりも流暢に話せるところを見ると、すでに奴なりの陣式への対抗を構築しつつあるのだろう

「ああ、その通りだ」

だが、ありえないことなんて、世界にはよほど少ない

不可能を可能とするのが人間なのだ

それに貴様も科学者のはしくれなら、そんなことは言葉にすら出来ないはずだろう

ちなみに、その答えは実に簡単なことだ

俺の血をそのまま、みんなに強制移植すればいいだけのこと

確かに通常なら拒絶反応を引き起こす危険性もあるだろう

しかし、それを可能とする技術が、俺にはあった

ただそれだけのことだ

悪魔に伝わる秘術の数々

それが、今回のことに限らず、俺を助けてくれた

いや

俺を英雄にまで押し上げた他でもない全て

本当の父と母の形見

悪魔である俺を、今までずっと支えてきてくれた絆の形

「いい加減話しすぎた。そろそろ終わりにしよう」

奴としては、時間を稼ぎ、身を拘束する陣式の対応策を完成したかったのだろう

だが

時間稼ぎについては、俺も同じこと

そしてたった今、俺自身に対しての、クラウ・ソラスからの魔力侵食が完了した

「目覚めろ、クラウ・ソラス。青き深淵に眠る魔を呼び起こせ」

その言葉と同時に、クラウ・ソラスからおびただしいまでの黒い光が放出される

禍々しい

そんな言葉こそが的確な、聖剣であるものの輝き

「む?」

そんな光に、アルケイディアの顔つきが変わる

だが、いささか受ける印象が違ってもいる

どうやら科学者として興味があるもののようらしい

「それはもしや、魔の開放か」

「そうだ」

「ほう、で、どうするのだ?そんなものを生身で扱う気か?使えるのなら実に興味深いが」

「まさか」

そう

さすがに、そんなことはできない

そんなことをすれば、一瞬にして体が朽ちてしまうだろう

アルケイディアのような魔力生命体であれば可能かもしれないが、今の俺にそんな体はない

故に

だからこそ、時間稼ぎが必要だった

あれほどに手間をかけ、アルケイディアを凍結し

お互いに普通に話せるだけの静寂を有し

その時間において、ひたすらに自分自身を魔に染めることに徹した

全ては

奴を完全に消し去るために

そして俺が

真の悪魔へと変貌を遂げるために

「デモンズ・アヴェンジャー」

これが最後の言葉となる

この言葉により、俺は、敵を消し去るまで決して止まることができなくなる

いや、このアルケイディアを相手にするとなれば

戦いが終わったとしても、今ある理性なんてものは残らないかもしれない

太古の昔、我を失った悪魔が、世界の全てを破壊し尽くしたように

それこそが俺の一族が、悪魔と称された理由

かつて、世界を滅ぼさんとし

そして、自らさえ滅ぼした、哀れな一族

他には類を見ない特殊な秘術により栄え

悪魔のような化け物に、その身を変貌させることで衰退した一族

俺は、そんな馬鹿げたものになろうというのだ

臨界にまで高められた魔法剣を有することで、悪魔といって過言でない力を発揮させ

全てを破滅に導く究極の災厄

そんな化け物は、一族の中でもさらに希少

だがそれ故に、その血と肉、魔力は、大事に厳重に守られてきた

悪魔は滅びたとされているにも関わらず、今俺がこうして存在しているのはそのためだ

おそらくは、そろそろ奴もこの陣式を突破し、自由の身となるだろう

そこからは、もう人の戦いなどではない

例えるなら、そう

神域の戦いだ

ズキイイイイイイイイッ!!!

「うがあっ!」

突然に激痛が走った

しかも全身

まるで、肉体のその全てに剣を突き刺されたかのような死の代弁

「ぐごっ!」

その死は、治まることがない

正直、予想以上だ

むしろ、その痛みが増すばかり

だが、それだけじゃない

それだけのわけがない

「うごおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………..」

筋肉が隆起していく

骨が浮き上がる

肌が乾く

心臓が暴れ出す

血が沸騰する

魔力が猛る

力がみなぎってくるぅっ!

「うがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

俺は

俺は

俺は

俺は

俺は

俺は

俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は
俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は
俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は

「...俺が」














「ぐががああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」





それが、悪魔が光臨した瞬間だった

あれから10時間以上

私は

私たちは

信じられないような光景を目にしていた

ええ

これが

世界の終わり

そう言葉にしても、何の違和感もないと思う

その戦いにより、アルケイディアの城は、ほぼ全てが破壊されて、黒く濁った空がむき出しの状態になっている

私たちは、自分たちの周囲に防壁を張り巡らし、その戦いをただ呆然と眺めていた

天高く繰り広げられる戦いは、もうどこまでも壮絶極まりないものだった

行き交うその、相乗魔術すら超えた魔力の応酬

拳を交し合えば、それだけで爆裂する大気

私たちの想像を超えた長期戦

アルケイディアとの戦いにおいては、とにかくスピードが要求されていた

敵との魔力差は、それほどに絶望的だったからだ

故の短期決戦のはずだった

しかし、それを10時間

しかもお互いに、全力で魔力をぶつけ合っての10時間

もう私たちでは、到底計り知れない戦いだった

これでも私、エリス・フレシングは、数え切れないほどのモンスターと戦ってきた

植物系・獣系・物質系・エレメント系

果ては、ドラゴンなんてものまでも相手に戦い、そして勝利した

中には、悪魔のような形をしたものとも戦ったこともある

全てが命がけだった

ほぼ毎回、多大な犠牲が払われた

人間はそれほどに脆弱で弱い生き物なのだ

しかし、それでも勝利で終えていたのは、ひとえに人間に持つ知能の高さ故だったと思う

戦略、戦術、人員配置に物資管理

相手の弱点を探るための隊の選抜

その地の環境や、天候、もっとも適した時間帯等々

とにかく頭を使って知恵を搾り出しつつ、その場の敵を倒してきたのだ

戦略等を考案してきた私にとってその連戦は、揺るがぬ誇りとも呼べるものだった

しかし

こんなものを見てしまっては

今までの全てが無意味なんじゃ、なんて思わざるを得なくなっていた

なぜなら、その攻撃には何の工夫もない

本当にただの力任せ

ただ圧倒的な力と、ただただ無尽蔵な魔力のぶつけ合い

もう無茶苦茶すぎる

あまりに無茶苦茶すぎて、思考が追いついていかない

これが、本物の悪魔と魔人の戦いなのか

おそらく本来、これは神代まで遡らなければ、見ることも適わないほどの戦い

しかし私は、それを

そんな神々の争いを、今ここで

この目に、はっきりと映していた






「ぐぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

世界が揺れる

その怒号だけで、世界が滅ぶのではないかとすら思われた

その声の主も、十分に世界を滅ぼしてもおかしくない姿かたちをとっている

全身が黒い肌の、背中には漆黒の翼の広げた

頭、肩、腕に肘に膝、それ以外のあらゆる所に角だとか棘だとかが生やし

口からも長い牙さえも覗かせた

まさに悪魔のような風貌

まさか、あれがあのサクヤだなんて、とても信じられなかった

対する、巨体ではあるが、ローブを身に纏っただけのアルケイディアの方がよほど人間に見えてしまうほどだ

しかも、その眼光には、唯一つ

怒りという感情だけが

ううん、違う

敵を殺したい、敵を葬りたい、なんてそんな恐ろしい本能が浮かんでいるのだ

「そんなの、似合わないよ。サクヤ」

そんな呟きは彼には届かない

サクヤはもうどこまでも悪魔なのだ

どこまでもどこまでも、私の知っている彼ではなくなっているのだ

「サクヤ...」

私の手の中には、サクヤから貰った一本の短剣

これがあれば、仮にサクヤが完全に悪魔化して暴走したとしても止めることができるという悪魔殺しの限定武装

神代の秘宝とも呼ばれる古の宝剣

「ぎゃははははははははははははははははははははっ!」

笑い声ともとれるサクヤの咆哮が響く

心から戦いを楽しんでいる...そんな声

そんな絶叫とともに、サクヤの右腕が振るわれた

その手には、聖剣であるはずのクラウ・ソラス

だが今は、もう

とてもそんな風には呼べないだろう

真っ黒な光を放つ魔剣

禍々しいまでの黒い刃

むしろ悪しき滅びの剣とでも呼んだほうがしっくりくる

そんな恐怖の幻想

それが縦一線に動いた瞬間

空気が、いや空間が裂けてしまう

なんてデタラメなんだろう

果たして、ただの人間にそんな真似ができるのだろうか

あのアルケイディアが、剣線そのものは何とか回避するものの、その裂け目に吸い込まれそうになってしまうほどだ

そして当然、そんなチャンスをサクヤが逃すわけがない

サクヤは、再びクラウ・ソラスを構え、トドメとばかりに、あのアルケイディアすら完璧に凌駕するほどの魔力を剣に込め始めた

だが、それでもアルケイディアはひるまない

「なああああめるなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

空間の裂け目をまるで無視するかのように、その両手に、サクヤと同等か、それ以上の魔力を放出し始める

その二つは、この5時間ですでに圧倒的な魔力量に呆然としていたのが、バカらしくなるほどのものだった

もう一体この二人は、何なのだろう

どこにそんな力を溜め込めるというのだろう

もう、何も分からない

何一つ理解したくないくらいだ

「ぎゃはあああっ!!!」

「ぬおおあああっ!!!」

互い、今の私からすれば、もう無限とさえいえる魔力を放ち合う

その衝突に、大気が凄まじい音とともに激しく振動する

「きゃっ!」
「うっ!」
「おおっと!!」

その波動が大地をも大きく揺り動かす

あちこちで地割れがおき、嵐のような突風が私たちに襲い掛かる

もう二人の戦いに地上が、耐え切れないのではないかとさえ思えるほどだ

「ぎゃはははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」

「うぐおおおおおおおおああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

でも、そんなことお構いなしに戦い続ける両者

もうこの二人の戦いこそが、世界を滅ぼしてしまうのかもしれなかった

こんなこと

こんなことのために

「くっ!」

そう考えてしまうと

私は

胸に中の短剣を、さらに強く握り締めずにはいられなかった

どうしようもなく、やるせなくなった

どうしようもなく悲しかったのだ

別に私たちは、世界を救うために戦ってきたのではない

そもそも、私たちは、そんな聖人君子などではない

むしろその逆のようなもので

私たちはただ、国を滅ぼされたことや家族を奪われたことに怒りを覚え

あるいは、単純に名声やお金なんかのために必死になり

憎い

許せない

認められたい

贅沢がしたい

欲望を叶えたい

そんな思いのためにここまでやってきてしまったのだ

ううん

でもそれだって、二次的なもの

それらは結局、本当の願いを叶える手段でしかない

私たちはただ

そう

ただ

ただ...

ただ幸せになりたかった

幸せになりたい、ただそれだけだったのだ

それだけのために、ずっと戦ってきたのだ

いつもいつも、笑顔でいたかった

いつもいつも、笑っていたかった

それなのに

それだけなのにっ!

「どうしてっ!」

「ねぇ、どうして、こんなことしてるのっ!?」

「ねぇ!」

「ねぇ!」

「ねぇ答えてよ!」

「ねぇってばっ!」

「サクヤっ!!」

「サクヤぁぁぁ」

「サクヤァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

そう、私が精一杯の声を張り上げた瞬間

凄まじいまでの光が世界を包み込み

両者の戦いは

音の消えた静寂の中で、その終わりを告げていた

『ヒロイック・サーガ』







「…ぁ」

不意に、目が覚めた

先程まで本を読んでいたはずなのだが、いつの間か、座ったままで眠っていたらしい

「ふぅ」

ほんの僅かに息を漏らしながらも、そのままの体制で窓の外を眺める

そこには広大な緑の丘があり、空には大きな雲が浮かんでいた

穏やかだった

平和だった

平凡だった

のんびりとしていた

安らかだった

私、エリス・フレシングの人生の大半は、そんな暮らしで彩られている

別段贅沢ではないけれど、物に困ることは、たまにしかないくらいの、そんな暮らし

それはせめて、もう少し買い物が便利だったらいいのに、なんて思いはあるけれど

まぁ、そんなわがままを言っていても始まらないだろう

「ふぅ…」

何気なく、壁にかけられたロッドを見やる

あれを使わなくなってからもう随分経った

いつだったか、私の子供たちが、そのロッドを見て、何度となく聞いてきたことがある


「ねぇ!お母さんって世界を救った英雄なんでしょ!?すごいな〜」

「ホントだよ!えっと私もね、絶対にお母さんみたいになるんだ〜!」


なんて

それもいい思い出だ

まぁ、私としては、英雄なんかより、他の普通の生き方を選んでほしかったのだけど

「懐かしいわね...」

そう

確かに昔、そんなことがあった

アルケイディア、なんていう科学と魔力の発展のみを考え

世界に独善的とののしられ、世界を破滅させようと目論んだ魔人王

私たちはそんな敵を倒すために協力し、それを打ち倒した

そんな、世界なんてものを救ってしまった4人の英雄のお話

「ふふっ」

つい笑ってしまうほど信じられない

それでも、本当のこと

今でも思い出すことがある

みんなからすれば、あの頃こそが、私にとっての一番のエピソードになるに違いない

数々の冒険とつらい修練の日々

国をなくし

家族をなくし

それでも、復讐のためと努力を続けていたあの頃

敵を倒せ

敵を殺せとせがまれて

仕方なく、最終決戦に挑んでいたあの日

もっとも、そんなのは私にとって、どうしようもなく面白みのないことで

できれば避けたかったくらいの事で

本当は

ええ、本当は

仲間と一緒に世界を周るのが楽しかった

楽しそうな、幸せそうな、嬉しそうな

そんな、みんなの顔を見るのが好きだった



花を見て微笑んで



海で遊ぶ子供たちと一緒に遊び



お祭りの中、大きな炎を眺め



雪道ですべる彼を見て、それをみんなして笑って

それが

そんな日常こそが、私たちの本当に望んだエピソード

「母さん!ニュースニュース!!」

勢いよくドアを開け、飛び込むように入ってくるワイズ

まったくもう、この子は昔から本当に変わらない

元気さと無鉄砲さだけで世の中を渡ってやしないかと心配になってしまう

「ワイズ、あまり驚かさないでちょうだいね。ビックリして心臓が止まっちゃいそうだわ。あと、ノックもちゃんと、ね?」

「あ、ごめん母さん、っでもホンットに凄いニュースなんだって!もうきっと驚いて腰抜かしちゃうくらいにううんもっとだな。驚いて成層圏まで飛び上がっちゃうくらいにビックリで、そりゃもう驚天動地で四面楚歌で色即是空くらいなビッグ大ニュースなんだよ母さん!」

「あらあら、それは楽しみね。どんな大ニュースなのかしら」

それにしてもこの子は、どこでそんな言葉遣いを覚えてしまったのだろう

心配どころか不安になってしまうわ

「えっとね?今連絡があったんだけどさ。エリアルの奴がファングドリアの海魔、ヴォルケイドを討伐したんだってさ!!」

「あら、あの戦艦を50隻以上沈めたっていうあの竜を?」

「そ〜〜おなんだよ!ヴォルケイドっていやあれだよ?50隻沈めたってっだけじゃなくてっさ、アングレイス、ラナリア、ブレイドリアとかで散々民間船を襲っててさ、もう被害者的には、数千人とまで言われてて、その上、討伐に出た名のある戦士や魔機兵大隊すら全滅させたってくらいに近隣諸国を荒らしてたっていう海の中の癖に雷なんて帯びた反則急の怪物なんだよ。一部地域ではその、雷を蓄えたらしい輝く鱗で彩られた外見の美麗さから大海の宝竜なんて謳われてるんだけど、あ、知ってる?鱗一枚で100万ガルトもするんだよ、てのはともかく、中にはマニア的に追っかけてる奴がいるっていうドラゴンなんだけど、そんな奴をエリアルってば、たった一人で、しかもあいつらしいっつか、わざわざ水中戦挑んでそれでも勝っちゃうっていうんだからすげぇよね!」

「あらあら、ホントに凄いわね。さすがエリアルちゃん」

きっとあの子の事だ

装備やら何やら、全てを準備万端の上での戦闘に望んだのだろう

それは恐らく自分個人の準備に限ったものではない

数隻の艦との連携によって、敵発見と同時にその周囲に魔機による防壁を展開

完全に包囲した上で叩く、そんなところかしら

あの子は昔から、下準備下調べを完璧にした上で動くタイプで、戦闘データやら何やら全てを集めて分析し行動に出たに違いない

でも、戦闘に限って個人プレーが多いというか

妙な勝気さを持ってるものだから、戦闘はきっと一人でやってしまったのだろう

というよりも、巨獣相手に一人で戦ってみたかったのかもしれない

しかも、相手のもっとも得意とする環境で戦いたがる悪い傾向がある

その上、海中だのに、きっとあの子らしく得意な風系魔術で仕留めたに違いないのだ

まったくもう

いくら体術が得意で、魔術と魔機の力で、全能力を引き上げているといっても無謀過ぎる

そもそもあの子、自分が女の子だということを分かっているのかしら

お顔やらスタイルはモデルさんみたいなのに

はぁ、教育を間違えたかしらね...

「あ、それでさ、あいつ、今度帰ってくるって、母さんに自慢したいんだよ絶対。あ、でもどうせこの戦術でどう?とか、母さんと張り合いたいってのもあるのかな?てか無理だって、んな無茶苦茶な戦い方、戦術なんかじゃないっての。あいつただのバカだもん」

「こらこら、そんなこと言っちゃダメよ?それは確かに私の考案した戦略や訓練方法には、適してないけれど、あれはあれでガラ准将の教えどおりなんだから」

ガラ准将

かつての私の仲間で、4英雄の一人

今では新人の育成に徹している根っからの熱血軍人さんだ

ちなみに、このワイズは、そんなガラのことが苦手らしい

「ガ、ガラ准将の?一騎当千型?最後まで続く集中力と無限の気合と根性で乗り越えやがれ精神?勘弁してよ、んなの時代遅れにも程あんじゃん」

「あ、そんなこと言って、今度ガラに話しちゃうわよ?」

「うぇぇぇ!!止めてよお願いだよ絶対言わないでよ!俺、何か知んないけどあの人に目ぇつけられてる気がするんだからさ〜」

「ふふふ、どうしましょうか?」

「ひぇぇぇ…考えただけでも怖いよ。きっと捕まったら一ヶ月徹底合宿だよ!気合と根性で1tの柱を持ち上げながら国内一周全速力コースだよ!ひぇぇぇぇっ!こえぇぇぇぇぇぇっ!!」

あらあらガラったら、そんなことさせてるの?

それで、ちゃんと生徒さん付いてきてるのかしら?

まぁ、確かにエリアルちゃんなら、とっても合った練習方法だと思うけれど

あの子、熱血なもの好きなのよね、なぜか

あ、でもワイズも実は合ってるんじゃないかしら

接近戦だけなら、あのエリアルちゃんに勝ってるくらいなんだから

...というより、ガラってまさか、自分で見本を見せてないわよね?

この前、腰を痛めたって聞いたけれど...

「あ、そうそう。帰ってくるっていえば、一つ言い忘れていたわ。ウィズとアリアも近いうちに帰ってくるそうよ。ふふふ、嬉しいわね。最近みんなして、帰ってくるだなんて言ってくれるだもの」

「ん?そりゃそうさ。俺たちの家はここなんだから。えっと?ってことは、クリフ、ガルシア、レンドリッタ、ホルス、ザイルにカズ、でウィズ、アリアだね。あ、クリフとホルスの奥さん、それとレンドリッタの旦那さんも来るんだっけ?」

「ふふふ、そうね。でも、これだけ人数が来るのならパーティでも開いちゃおうかしら」

いい考えだわ

久しぶりに腕が鳴る

あ、でもだったら、たくさんお買い物しないといけないかしら

それに、少し早めに準備を始めたほうがいいわね

「パーティっ!?いやいやいやいやいやいや、いいよそんなの。ていうか何のお祝いなのさ。別に誰の誕生日とかでもないぜ?」

「なんでもいいじゃない。みんなして各地の魔獣、怪人、ドラゴン、中には復活しそうだった魔王まで倒しちゃってるのだから。むしろこれでお祝いしないほうがおかしいわ」

「いや、そんなのどうでもいいと思うけどな。そんなの年中なんだし」

「ん〜〜...でも、やっぱりしてあげたいわ。私」

「あ〜...でもな〜......うん、分かった。だったら俺も手伝うよ。これでも細かい仕事も力仕事もなんでも一通りできるつもりだし、それに今は長期休暇中だしね」

「あらそう?助かるわ。じゃあ、二人でやりましょうか」

「ああ。任せといてくれ...と、あ、やべ。この後、トキ叔父貴に呼ばれてたんだっけ。そろそろいかないとまたどやされちまうっ!」

「あら、そうなの?だったら早くお行なさいな。それとエリアルのことありがとうね」

「いやいや、んなの大したことでもないでしょ。むしろ子供の義務だって、あ、それじゃ行って来るよ」

「ええ、あの子にもよろしくね」

「了解」

そう言って、今度は静かにドアを閉めてから出ていくワイズ

でもきっと、また騒がしくやってくるのだろう

ずっと変わらずにそうだったのだから

「ふぅ...」

それにしても、最近また戦闘が激しくなってきている

何か、悪い予兆なのかもしれない

きっとガラが張り切っているのもそのせいなのだろう

そういっても、今の時代には魔機がある

よほどのことでもない限り、大惨事にはならないはずだ

「魔機、か」

見回せば、あちらこちらに魔機がある

ライトやテレビにエアコン

私は扱えないけれどパソコンなんてものまである

そんな魔機の登場で、世の中は随分と楽になった

戦闘面においては、死者が随分少なくなったし

普段の生活についても、どんどん便利になってきている

世の中は、なんて目まぐるしいものだと感心してしまうほどだ

その原型はアルケイディアの科学技術にある

魔機は、彼の城や他のアジトなどに放棄されていたのを利用したもの

私たちにとってそれは、見事なまでにオーバーテクノロジー

最初は大変だったけれど、今はこうして魔機という形で確立している

アルケイディアの技術、というのが気になりはするけれど、それはそれ

世の中が進歩していくこと自体は悪いことはない

それに、例え悪く使うものがいても、その流れを止めることは出来やしないのだろう

魔機と言えば、ライルは今頃どうしているのかしら

最近連絡を取り合っていない

実は、魔機については、4英雄の一人でもあるライルが第一人者

元々、彼があのアルケイディアとの戦い(今は魔人戦争なんて呼ばれているけれど)に加わったのも、その科学技術を解き明かすことにあった

当時、彼がいなければ、ここまで魔機が発展することもなかったのだろう

「う〜ん、どうせまた、何かいい発明でも思いついたのかしらね」

そうだとすれば、当分研究室にこもりきりになるだろう

あの人は昔からそんな感じなのだ

あ、でも、魔術教練についてもちゃんと考えていかないと不味いのではないかしら

ライルは教練にも携わっていたはずだし

私はもう引退したけれど、魔術や魔陣については、その教員数は少ないと聞いている

もしかしたら、私の現場復帰なんてこともありえるかもしれない

「ん〜、でも、さすがにもう大丈夫よね」

すぐさま思いついた推論を打ち消す

なにせ、今はあの子たちがいるのだ

私たちの自慢の子供たち

このクラウ孤児院の出であり、戦闘や魔機のエキスパートである彼らが

しかも嬉しいことに、私の考案した戦略や修練方法を今だに採用してくれているらしい

もちろん、私自身もそれについては自信を持っているのだけれど...

いや、そもそもガラが張り切り過ぎなのだろう

いい加減元気過ぎるのも困ったものだと思う

「さて、と」

そろそろ私も出かけることにしよう

今日は、とてもいい天気である

さぞかし夏の風が気持ちいいだろう

今日も、とてもいい日になりそうだ

なんて思いながら、壁に掛けてある大きな白い帽子を手に取った

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