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いつもと、違う
最初は、正直、戸惑った
いや、嘘だ
今もずっと、戸惑っている
戸惑うどころか、ドキドキしている
いやもう、訳分かんないくらいだ
視線が固まるし
舌は乾くし
瞬きだって、いつもよりずっと早い
でもだけど、それも仕方ないことだ、と観念する
だって左腕には、その、キミの、腕の感触があって
それだけでもドキドキものだが、今日は、さらに、二人きり
いつもなら、下校途中は友達連中と一緒
仲良く笑って
仲良くダベって
仲良く下校する
それが普通
それがいつも通り
でも、今日は、違う
もう徹底的に、違う
全部がひっくり返ったってくらい違う
だって、今日は
二人きり
キミと、俺が、二人きり
本当は、もう一人女友達が一緒にいたのだが、その、途中で...帰ってしまった
最初は、なんで?なんて呆けたが
途中、キミが突然腕を組んできたものだから、それに驚いて
その少し後に、そういう意味かよ、なんて、理解して
まったく、おせっかいな話だと思...
いや、嘘だ
素直に、ありがたいと思う
『キミと、俺が、二人きり』
もう、言うまでもないことだが
俺は彼女、仁美のことが好きだ
仁美は、同じ中学、同じクラスの、隣の席の女の子
メガネをかけた、明るくて、笑顔の可愛い女の子
最初は、何とも思っていないつもりだった
ただのクラスメイト
そんな理解で良かったのだと思う
でもそれも、実際のところは分からない
もしかしたら、嘘だろそんなのって思っていた、一目惚れって、奴なのかもしれなかったから
まぁ自覚がなかったから、分からないといえば分からないのだけど
それは、ある日のことだ
あれは邂逅だった...なんてカッコつけた言い方すらしてもいいと思う出来事が起こる
ある授業中、俺はボ〜っとしていた
目は開いていて、耳も聞こえるが、意識ができていない、そんな状態だった
ある意味、無意識と言えるのだろう
その時だ
気づけば俺は、仁美と目があっていた
気づけば俺は、真横の席にいる、仁美を、見つめていた
目が合った瞬間に目を見開いて、急激に意識が戻ったけれど、もう驚いた
本当に驚いた
驚天動地ってくらい驚いた
めちゃめちゃビックリしていた
キミは、何?どうしたの?みたいな顔をして笑っていたが、俺の内心は大混乱だった
表情にこそ出さなかったが、もう頭がパニクっていた
いや、すぐに顔に出てきて、顔があっという間に赤くなっていた
俯いて誤魔化したが、もし、あの瞬間に先生に当てられていたら、確実にみんなの笑いものになっていたという自信がある
まぁ、幸いにして、大丈夫だったけど
とにかく、あれ以来、俺は仁美のことを意識した
ちゃんと自覚的に、意識した
ただ、あまりに意識しまくってしまくって、もう明らかに不自然だったんだろうと思う
多分本人にも、周りの奴らにもバレバレだったんだろうとも思う
でも、それはもう後の祭り
もうどうしようもなかったんだってあの時はさ
でも、怪我の功名なのか、そこから俺たちは、仲良くなっていった
仁美とだけということではなく、近くにいた連中全員と
心中は微妙に複雑なんだけどね
ともかく、みんなで仲良くなっていた
みんな一緒に行動し
みんな一緒にそれぞれの家に行き
みんな一緒に買い物にも出かける
そんな友達同士になっていた
もちろん、というか、俺はまぁ、彼女ばかり、見つめていたのだけれど
しかし
或いは、そして、なのか
今日
今日、ついに、仁美と...二人きり
他の連中は、誰もいなくて、俺と仁美だけ
二人だけの、下校
二人だけで、俺の部屋に行く
そんなシチュエーション
意識すんなって方が無理だ
てか、意識し過ぎて、仁美の顔が見れない
話とかは、ギリギリ何とかできたけれど、でも、意識が別のところに行き過ぎる
頼むから、落ち着いてくれよ俺って奴はよ
そんなこんなで、ぎこちなく
やたらめったら危なっかしいけれど
何とかかんとか、俺たちは家へと辿り着くことと相成った
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