ちょっぴり不思議な小説小箱

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調教の、じ・か・ん

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「はぁ、はぁ、はぁ...」

もう限界だって

動けねぇって

心臓が胸を突き破りそうだって

勘弁してくれよマジ勘弁してよ頼みからさ

「ほらほら、そんなことでは、私に殺されてしまうわよ?」

く〜っ

ぜんっぜん聞く耳もってくれなさそう(泣)

なんで?

ねぇなんで?

なんでただの一介の極々一般的な高校生である僕が突然何の前ふりもなくあたかも都心のスコールのような感覚で、本来は高校の校舎である筈の場所で、制服を着ているところから恐らくは同じ学校の生徒だろう女の子によってとてもとてもとても簡単に安易にさっぱりあっさりぐっさり殺されそうになってるの?なぇなんで?

「なんでもないわよ。私があなたを殺そうと思ったから。それだけよ?ご不満かしら?」

不満も何も不満に決まってる

いきなり、ハイお願いします喜んで殺されます、なんて言って殺されてあげるバカはそうはいない

「いなくはないわよ?そういう潔い人って。こんな不況な世の中だもの。いやよね不景気って」

いやいやいやいやいやいや、そんな頬に手を当てて可愛らしく言われても僕は殺されるのなんて真っ平ゴメンですから。生きていたいですから。全然見事に生きていたいですから。例え平成の大不況だろうがバブル崩壊後だろうが、そん〜〜なことは全くこれっぽっちも足の小指の爪の先の垢ほども関係ないですから

「なによ?嫌なの?せっかくこの私があなたを選んであげて、かつ無償で、無償でわざわざ直接手を下そうとしてあげているのに?」

な、なんですかその論法は。なんなんですかそのジャイアニズムは。一体どうしてあなたが自分勝手に決めたことに対して、本来なら僕がお金を支払うはずなのを自分の好意でもってタダにしてあげたのよ感謝なさいなんていう話になるんですか。つか無償を強調しないでいただけますか

「あら、お金は嫌い?私は好きよ。もちろんタダも大好き。無料無代ロハフリー無賃乗車無銭飲食も大好きね」

どんだけですか、どんだけ自分に正直ですか、てか最後の二つ犯罪ですから!つか殺人なんて大罪ですから!

「知らないわよ。私は捕まるヘマなんてしないもの。正確に言うと、絶対に誰もいなくてこないところを見計らって行動に移し、あなたの死体を完璧に絶対に超絶に徹底的に完全無欠に私凄いわ褒めてあげちゃうってくらいに粉々にすり潰してからトイレにジャーっと流しといてあげるわ」

嫌だ!トイレにジャーっと流されるのなんて完璧に絶対に超絶に徹底的に完全無欠にゴメンだ!しかも、誰も来ないところを見計らってって、お前はどんなエスパーだ!

「しかも、近くのホームレスの根城となっている公園の恐ろしくキツい匂いのする正直私ではとても用を足すことなんて決してできないような、ボロボロの公衆便所の中にポイッと放り投げといてあげるわよ」

「ひどいっ!」

僕の死体になんてことするんだお前は!?

本当に赤い血の流れてる人間なのかよ!?

「ひどい?それは私のセリフね。世界全土全人類全動植物がその額と花びらで大穴を掘ってしまうくらいにひれ伏すほど美貌を兼ね備えたこの私に、まさかただの何の変哲もないと思わせておいて、実はホームレスの根城どころか昔処刑場だった公園の汚らしくて怨霊さえもたまに出るようなトイレに、あなた様一人でお行き下さいと言っている下賎なあなたの方がよっぽど酷いと思うわね」

処刑場?怨霊?近くのって言ってたから、あの公園!?そうなのって、だからそうじゃなくて、僕は言ってないですから!しかも様付けでそんな自分の死体をそんな公園のトイレにどうか投げてくださいなんて言ってませんから。つか、どんだけ自分を持ち上げれば気がすむんですか。普段から自分に対してすら尊敬語でも使っているんじゃないのかこいつは

「当然でしょう?この私様こそが全人類全生物を統べる真の王なのだから、全人類全生物は、私様の奴隷として生きられて幸せと言って死んでいくのが本望というものよ。故に私様を敬いなさい、この奴隷!」

「横暴だ!」 

お前が真の王だなんて、そんな世界一瞬で滅びるわ

「退屈ね。奴隷番号68臆42,731,453番。この私様が恐れ多くも退屈していらっしゃるのだから、奴隷らしく命がけで、芸の一つでもお見せ遊ばせなさいな」

本当に自分を褒め称えた!ていうか僕奴隷?しかも全人類で後ろの方?というかその臆の位の後の番号、つまりはゴミとして死ねっていうことですか!?

「あら、そうね。それはまずいわね。せっかく私が殺してあげようとしているのだもの。せいぜい脱兎のごとく、阿鼻叫喚すら鼻で笑っちゃうくらいの悲鳴を上げてもらわないとつまらないわね」

つまるつまらないの問題なんですか、というか逃げたウサギがそんな恐ろしい悲鳴なんてあげたりするもんか!もちろん僕だって上げるつもりはない!

「ふぅ、お喋りも飽きてきたわね」

「って、今までの全部がただの暇つぶしだったんですか!?」

「そうよ。あなたは奴隷、下僕、BLの受けでマゾなのだからが、主たるこの私の命令があれば、その身を持って娯楽を提供するのは当然のことよ」

「何か変なのが混じってる!」

絶対嫌だ!

なんて嫌過ぎる身の使われ方だ

って、こいつ何気にそういうのに興味があるのか?

「あるわ。しかもディープなのが好き」

「言い切った!」

勇者!

「ということで、マゾ奴隷君。往生なさい」

「誰がマゾ奴隷か!それに往生なんてしてたまるもんか!」

「そう。でも関係ないわね。だって...」

そう言って彼女は、ナイフを無造作に、極々自然な風に持ち替えた

「あなた、一秒後に死ぬんだもの」

あ、マズい...

マズいマズいマズい...

この直感は、本当に、ヤバ過ぎ...

他でもないこの僕の直感が告げている

ヤバくて痺れて身が凍るような、死を目前とした戦慄だ

「っ!」

すぐさま左横にとんだ

体を捻りながら、思いっきり全力の横っ飛び

「あっ...」

そして、僕の『直感の通り』に彼女は、とても真っ直ぐに直線にその細い体でもって飛んできて

そう、まさに飛んできて

僕の目では理解できないようなスピードで飛んできて、ナイフを僕の腹に突き刺そうとしていた

でも

「また...」

僕は、まだこうして生きている

いや、本当なら、本来なら、彼女の実力を持ってすれば突き刺せたのだろう

僕程度の相手なら、そんな直線の動きでも十分に殺せると思ったのだろう

けれど、僕は避けた

彼女の予測を上回って避けた

いや、これは正確に言うと回避ではない

避けたというより、避けておいた、ということになる

彼女の動きのスピードに対抗できる訳のない僕が、後手に回って殺されないなんてことはあり得ない

だから、相手が動くよりも早く、けれどあくまでも相手とは、一瞬の誤差程度しかない間に先に動く

僕の限界以上を引き出した瞬発力

そして、自分の動きうる最小限の動作を持ってして

僕は相手の攻撃を先回りしたのだ

ここまで、何度とない彼女の殺人攻撃を食らわずにいたのは、そういうことである

「なら、こうね」

あ、ダメだヤバい...

またも僕の直感がそう告げる

来る、しかも連続で...

2度目までは何とか交わせる

でも、3度目は、もう不可能!?

「くそぉっ!」

なんて現実

もう僕の命は、後たったの数秒で消えてなくなるのか?

もう訳の分からないまに殺されて、この人生を終えるのか?


1度目

腹がなぎ払われる


どうして、こんなところで死なねばならないのか

僕はまだ、彼女だってできてやしないんだぞ?

それなのに、どうして僕が!?


2度目

上半身に縦一線


神様、恨みますよ

僕に、こんなどうしようもない最期を与えてくれて

きっと、下水の汚物の中から、僕は未来永劫あなたを恨み続けます

ええ、恨みますとも

恨まずにいられるもんですか


そして3度目

「うっ!」

「終わりよっ」

もう体が動かない

全身を急激に変則的に動かし過ぎて、その瞬間に、僕の体で動かせるところが一つとしてなくなっている。いや、あと体を捻る事はできるが、それは攻撃を避ける術にはならない

こんな状態では、もはや人類の誰にも避けることも、交わすことも、先回りすることも出来ない

後は、心臓を貫かれて終わり

それだけだ

もう、僕の一生がそれだけで終わる

そんな辛過ぎる現実に、僕はもう、目さえ開けていられなかった

ザンっ

そして...

僕は、死にました

「って、あれ?」

はて、どうしたんだろう

痛みがこない

死んだはずなのだから、もしかしたら痛みはないものなのかもしれないが、ほんの僅かな痛みすらない

死ぬのって、こんなもんなのだろうか?

意外とあっけない

不思議に思い、恐る恐る目をしばたかせながら、少しずつ開けていく。すると

「うおっ!」

死ぬほど驚いた

あ、いや、もしかしたら死んでるのかもしれないけど、とにかくそれくらい驚いた

だが、もしこれ以上いいリアクション気味に驚き過ぎていたら、僕は暗闇に落ちていた事だろう

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」

「あら、残念。目玉もちゃんと残ったわね。運がいいわ、あなた」

「おおおお、お前、なななな、な何を...」

「何を?何をというけれど、あなたは見て分からないのかしら。それともあなたの目は節穴か義眼だとでもいうの?だったら遠慮なく潰してあげたのに」

いや、義眼であったら、まぁ十万歩くらい譲っていいかもしれないけれど、節穴だったなら、それでも目玉は目玉なのだから失明してしまうことだろう。というか潰さないでもらえますか...

「だ、だから、この、俺の眼前に、もうちょっと前に顔を倒したら確実に目が切り刻まれてしまうような位置にある、このナイフだ...」

「そうね。その通りだと思うわ。あなたの蛆虫並みの脳みそとみみず並みの視力によれば、ええ実にその通りと言わざるを得ない状況を、この私も、ええ仕方なく、仕方なく詮方なく、本当は嫌なのだけど認めざるを得ないことを、まぁ私って寛大ねと思いたくなるくらいの温情をかけた上で、はぁ、なんてため息を吐きたくなるところを、我慢せずに認めてあげようと思わなくもないかし、ら?」

長い!長過ぎる!今にも僕の目が本当にミミズ以下の視力になってしまうかも知れないというのに、わざわざ敢えて長く話すお前に、さっきから抱いていた以上の殺意を抱きたくなるくらいに長い!というか、僕の脳みそは蛆虫並みでもないし、視力だって1.5はある。そもそもミミズに視力があるのか?いや、それにお前ため息を我慢してないし、我慢しようともしてないし、てか最後何気に疑問系で終わってますよね?

なんて、僕もついつい長めのツッコミを入れたくなるのを我慢して、ってなんで僕が我慢してるんだよ?と思いながらも言葉を続ける

「だ、から、つ、つまり、ナイ、フを、このナイフを、お、下ろして、もらえ、ないか、なと」

「ダッカラッツッツマリッナイッフヲッコノナイフヲッオッオロシテッモラエッナイカッナト?あなた、この私も知らないような妙で変で難解な国の言葉を知っているのね。バカだと思ったわ」

ワザとだっ!

分かりやすいくらいにワザとだっ!

しかも、最後に感心したわ、とかではなく、バカって言いやがったっ!

「いい加減にしろ!ナイフを下ろせ!目を切り刻むな...まないでください...」

「あら、そう。そう言っていたのね。全く気づかなかったわ」

悪びれねぇやつ...

しかもこいつ...命令口調だったのを、人睨みで正させやがった

怖えぇ女だ

いやもう十二分に、一億二千万分に怖いけれど

「まぁ、いいわ。感謝尊敬し、お上に対して思う存分へりくだりなさい。そうしたら下ろしてあげる。三枚に」

「止めてくださいお願いしますどんなことでもします下僕にでも何でもなりますからどうにか魚のようになんて捌かないで下さいっどうかどうかどうかどうかどお〜かっお願いしますっ!!」

もう本当に勘弁して欲しい

どうやら生きていることは分かったが、どうしてここまで虐められなくてはならないのだろうか

もう、いっそ死にたい気分である

「そう。ええ、いいわ。了承しました。こんな素晴らしい善行なんて、滅多にお目にかかれないのだから、心の奥底からあたかも神様のご光臨のようにありがたく思いなさい」

彼女はそう言って、ようやく僕の目玉は解放してくれた

そこでようやく、地面にへたり込むことができる

もうずっと緊張しっぱなしだったのだから、疲れて当然だ

というより、こいつ相手にツッコミし過ぎて疲れた

あ、そういえば、さっきのザンッって紛らわしい音は何と思って後ろを見ると、そこにキレイな穴が空いている

ナイフで、穴...

恐ろしい奴

「それじゃ、今日はこれも使わないわね」

「え?」

そう言って、そのナイフ自体も、袖口(袖口っ!?)に隠した

「お、おい、もしかして、見逃してくれるのか?」

「ええ、あなたは殺さないことに決めたわ」

「そ、そうか。そいつはありがたい」

まさに命拾いである

九死に一生を得たとはこの事を言うのだろう

生きてるって素晴らしい

「じゃ、じゃあ...」

後はさっさと立ち去るだけだ

確かに殺意は消えているようだし、これなら全速力で走れば、追いつかれることもないだろう

そしたら、真っ先に警察に駆け込んで、この殺人女を逮捕してもらうことにしよう

何、相手はナイフ一本

しかも一人

いかなる手誰の殺人鬼とて、銃器で武装した警察に適うはずもないのである

へへっ、ざまぁみるがいい

国家権力なめんなよって具合である

そう思い、力の抜けた足を踏ん張り、何とか立ち上がってその場からさっさと立ち去ろうとする

「ちょっと、待ちなさい」

ビクゥゥッ!!

「は、はい!?僕は別に警察になんて駆け込んでお前を逮捕してもらってざまぁみろへへへっ国家権力なめんなよなんて思ってないぞ!?」

「............」

「うあ゛」

まずい

「下僕。あなた、そんなことを考」
「いえ決して、心から決して、僕はあなた様に生かしてもらった奴隷である身ですから決して決してそんな大それた、大仰な、あたかも神にバチを与えるような不遜なことなんてこれっぽっちも、ええミジンコの脳みそほども思ってませんですはい」

って、どうして僕は、ここまでへりくだっている、というか、こんなにも卑屈な態度をとっていなければならないんだよ!

「あら、分かっているじゃないの」

で、こいつはこいつで満足そうだし

きっと、遺伝子レベルのサド野郎に違いない

「サディストではあるけど、野郎ではないわね」

「お前はエスパーなのか!?」

心の声に言葉で返すなよ!

人外すぎるだろうがそれ!

「あら、おかしいわね。もう随分と前から以心伝心だったような気がするのだけど」

「それは...気のせいだ」

そう

この世には考えてはいけないことがある

自分たちの世界が、単なるお話の世界だなんて、そんな幻想が世の中にあってはいけないのだから

「って、誰と誰が以心伝心か!お前となんて、一瞬足りと繋がっていたくないわ!」

「まぁ、なんてことを言うの?恐れ多くもこの私と、一瞬でも、例え先っちょだけでも繋がっていたかもしれないことを、光栄に思わない人間がいるというのかしら」

「って待て!もうこの際、以心伝心でもいいから、一瞬飛び出てしまったその言葉を、仮にも女の子なんだから、もう二度と使うな約束しろ!」

ラブホに入った男の常套句じゃあるまいし

「仮にも?ですって、こう見えても私の頭の先っちょからつま先の爪の先っちょまで、全てが女の子であることを、あなたの、私の爪の先っちょの垢のもういらない細胞の、さらにその欠片の先っちょにすら満たない程度の大きさしかない脳みその持ち主であるあなたに、仮にも、だなんて言葉を先っちょほども使って欲しくないわね」

「お前は一体どんな天邪鬼だってんだ!!」

連呼するにも程がある

別に淑女であれと言うつもりはないが、あからさまなのは頂けない

それに、言動といいこの意地っ張りなところといい化け何とか語に出てくる、戦いのつく地名姓のヒロインみたいな奴だ。デレ要素も萌要素も皆無だが

「あら、それを言うならあなたこそ、化物何とかに出てくる、思わず名前を噛みながら呼んでしまいたくなるロリコンでツッコミ役の主人公に似ているわね」

「おいこら、せっかく名称を伏せているのを、よくあるバラエティーみたいに2つ連続でその名称を出してバラすな。あと、これについての詳しい話は却下だ。一応付け加えておくと、僕はロリコンじゃない!」

それに僕は、その原作者を贔屓にしてるんだ。それをあんまりお前に話して欲しくない

「あらそう、殊勝な事ね。これだけキャラをパクっておいて」

「やかましい!」

だから、世界には自分たちが触れてはいけない事があるんだ!

「って、そういえばさっきお前、僕の脳みそをバカにしただろ!?言っておくけど僕はバカじゃないからな!」

「強引な舵取りね。とってつけたようだわ」

「だからやかましい!」

「事実だもの。気にすることではないわ」

「気にするよ!」

「にしても下僕君?」

「そこで突然自然に無視すんな!あと、その呼び方も今すぐ止めろ!僕には刷辺 永貴(するべ ながき)って列記とした名前があるんだ!」

「するべ、ながき?...ええ、分かったわ。永遠に貴きslave ということね。いい名前ね。あなたにピッタリじゃない。これ以上ないと言うほどの素晴らしい名前だわ。初めてあなたを褒めてあげる」

「お前、人の名前を、永遠の奴隷として認識しやがったな!」

「あら、違うわ。貴い、が抜けているじゃない。つまり私という美しく気高く尊ぶべき存在に永遠に従僕し続ける奴隷の名前、というのが正しい認識ね」

「もっと最悪だろうがっ!!」

「ところで、スレイブ君。改めて一つ聞いてもいいかしら」

「ものすごい不本意なあだ名がついたっ!」

「先ほど、先っちょ、について、気にしていたようだけど、あなた、そういうことに興味があるのかしら?」

な、何っ!?

「な、なんだよ。どういう意味だよ。てか、だからそういう隠語的な言葉を使うのは止めてくれ頼むから」

あるよ

あるに決まってるだろ

こちとら色々と抱え込んだ不遇の男子高校生だ

「いえね?もしかしてもしかすると、私はあなたのために一肌脱いであげても良いかしら、なんて善意を、図らずも思ってみたものだから」

「なっ!?」

なんだそれ

どういう意味だ?

一肌脱ぐ?

この殺人女が!?

一見は確かに、こいつが自分で言うほどの絶対性を持っているとは思わないけれど、けれどそれでも確かに僕の知りうる限りでは、確かに美しいという形容を使う事を、憚らないわけではないような容姿をした、しかも同じく高校生の女の子だ。だがしかしでもそれでも、今こいつの言葉は、一体どういう意味に...

「私の知り合いにね。とても格好のいい、しかも男好きな男性、つまりゲイがいるのだけど、あなた、そのカッコいい彼と、一晩共にしてみる気はないかしら。そうしてくれると私が嬉しいわ、とそういう意味なの」

「弄ばれちゃう!?」

分かってたよ!

こんな展開なんだって分かってたよ僕

それより、誰が男に抱かれたいなんて思うんだよ!

僕は完璧にノーマルだ!!

「そう。答えないということは、脈はあるのね」

「今までモノローグ相手に会話していた人が!?」

「あら、そんなの知らないわ。秘書が勝手にやったことよ」

「お前は政治家か!!」

最近、そういう事を言う人がいなかったと思ったのに、仮にも政権交代したばかりの首相が、今更そんなステレオタイプを言うとは思わなかったくらいの衝撃だ

「とにかく!僕は普通に女の子が好きなんだ。断じて男色家なんかじゃない!」

こいつのBL妄想になんて巻き込まれてたまるか

「そう。それは残念ね。絵的に私も絡んであげようかしら。なんて思いもなくはなかったのだけど」

「参加してくれたんですか!?」

ちょっと惹かれる

「嘘よ。そんな戯言にまで一々ツッコミを入れないでくれるかしら、ドン引きよ。セクハラで脅して騙して訴えて搾り取るわよ」

「もう心身ズタズタ!?」

なんて女だ

こいつ殺人鬼どころか、世紀の大悪人じゃないか

ダメだ、もうさっさと帰ろう

こんな奴をこれ以上相手にしていたら、僕が過労死してしまう

どんな無茶苦茶な振りにもボケにもツッコんでやるもんか

「じゃ、僕は」
「では、スレイブ?さっさと付いてきなさい?」

「...........」

はて?

何かいま、妙な言葉が聞こえたような

気の、せいだよな?

「ほら、スレイブ。私の荷物がクラスに置いたままになっているから、さっさとそれを取ってきなさいな」

「............」

「スレイブ?何をボサッとしているの。これ以上私を待たせると、厳罰に処すわよ」

「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待ってくれ。そのスレイブってのが僕の呼称であることも不快なんだけど、それより何で僕が、お前の荷物をわざわざ取りに行って、それをお前の変わりに運ばないといけないんだ?そもそも付いてきなさいって何!?」

「何を言っているの?当たり前じゃない。あなたは私の下僕なのだから、それくらいやるのが当然の務めというものでしょう」

「だ、だから、どうして僕がお前の下僕なんだ?いつそんなとんでも恐ろしいことになったんだっ!?」

「いつって、ついさっきあなたが自分で言ったんじゃないの。下僕にでも何でもなりますから捌かないで、と」

「え、あ、あれ?あれなの?いや、だってあれは一種のノリで言っ」
「そんなことはどうでもいいの。私は『私があなたを殺さない』ということの代わりに、『あなたを奴隷として下僕として扱うこと』を対価として受け取ることを『了承』したのだから。つまりこれは一つのちゃんとした契約なのよ」

「文書は?印鑑は?」

「口頭でも契約は契約。そもそも印鑑なんて必要ない信用契約よ」

「なら、クーリングオフは?」

「私との契約は、私の中で8日前ということになっているわね。つまり却下よ」

「時間遡ってる!?」

どこの詐欺会社なんだよお前は!

「いいから、さっさと荷物を持ってきなさいな。クラスはA組よ」

「だ、だだだだだだだから!僕はお前の奴隷でも下僕でもスレイブでもな...くもないような気はしますが、この首元のナイフは、その、しまって頂けると、ひじょ〜に助かるのですが」

「あら、思わず袖口から飛び出してしまったわね。さすがは私、見事なタイミングといっていいわ」

「...うぁ」

まったく、反応できなかった

僕の、直感がまるで働かなかった

さっきまでは本気でもなんでもなかってことなのか?

つまり、殺そうと思えば、最初からいつだって殺せたと?

ダメだダメだ!

全っ然ダメだ!

彼女と僕とでは圧倒的な差がある

もし本気で逆らったら、一秒後には首が胴から離れているかもしれない

「分かったなら、私の荷物を持ってきなさい。理解して?あなたにうみねこの主人公のような知的推理なんて不可能なんだから」

「やかましいっ!って...くっ......はい」

再びナイフを突きつけられて(鼻っ柱に)そう返事をした瞬間

僕の中の何かが、音を立てて崩れ去って、トイレに流れていったような気がした

確かに、今の僕に、黄金の魔女に立ち向かう勇気も度胸もありはしない

「では、本題に入りましょう」

「いやあの、いきなり本題とか言われても困るんですが」

僕は、彼女の自宅(高級マンション、自前らしい)にて、彼女の肩を揉んでいた

全然、凝ってなんていないのだけど、やらせることがないのがもったいなかったらしい

なんてガメつくてケチな女王様だ

「つか、掃除洗濯食事の用意、アイロン掛けに本棚の整理までやらせておいて、他に何があるってんだ。いい加減にしてくれって」

さすがに重労働過ぎる

もう、さすがにこれ以上動きたくないぞ

「ええ、それについては、私が喜んでいることを末代までの誇りとして永遠に語り継ぎなさい。もっとも家事のできない下僕なんて、その場で切り捨て御免にしていたところだけれど」

江戸武士!?

て、いつの間にかまた僕、命の危機だったの?

マジっすか

というか、いや、家事一般できて、ホンっっっトに良かったぁ...

さすがに、ボリュームのある精進料理、だなんてと言われたときは、んなもん作れるか!と、肝を冷やしたものだが、ネットで調べつつ、誤魔化し誤魔化し見よう見まねで何とかどうにか作りきった(自分を自分で褒めてあげたい)

ともかく、学校から彼女の部屋(初めての女の子の部屋!)に強制連行されたわけだが、そこに待っていたのは、生活感ゼロ、皆無の部屋(初めての女の子の部屋だった筈なのに...)である

散らかっているわ汚いわ洗濯物が溜まっているわあちこちにコンビ二の箱やらお菓子の袋が積み重なって点在しているわで、もう見るもおぞましい光景が広がっていた

先ほどはやらされたと発言したが、どちらかというと、もう奴隷だのなんだのより、そんな部屋のあり方に我慢が出来ず、命令されるよりも先に、僕の方が耐え切れずに行動に出てしまったのだ。本当にまるでどっかの主人公みたいな話だった

「気にしないで、スレイブはそのまま私の肩を揉んでいればいいの。勝手に話すから、それを一言一句、句読点の位置を間違えることなく、あとでノートに書き取って置けばいいわ」

「出来るかそんな真似!つか句読点まで要求するなよ!不可能だろ!?僕は完全記憶能力者なんかじゃないんだ!」

「完全記憶能力者、つまりサヴァン症候群のことね。情報・文面としての記憶は出来るのだけれど、応用力、想像力がない、或いは何かしらの欠落を自身に内包した人のことね。ほら、昔、雨の男を英語に訳した名前の映画があったでしょう。そんな会話もろくに出来ないような可愛そうな人のことよ。そのウイルスの棘くらいしかない脳みそが一つ賢くなって良かったわね」

「だから脳みそ関連の話をするな。僕はバカじゃない。お前もあの高校に通っているなら、あそこの偏差値の高さくらい知ってんだろう。それに、あの名作映画を、旅行のときはいつも雨が降っているみたいな不幸な人みたいな安易な表現で呼んだり、あの人の生涯をそんな哀れすぎるみたいな風に呼ぶのは止めろ!」

「あなたにとって、高校入学時の偏差値なんてずっと昔の話でしょう?きっと、自分のレベルに見合っていない授業にあっさりとついていけなくなって、ああ〜、一個ランクの低い高校にしとけば良かった。そうすりゃ今頃楽勝でモテモテで、大学推薦だって余裕で通っちゃうくらいで、今みたいに落ちこぼれてなかったんだろうな〜、なんてあり得もしない別次元のことを思っているのでしょう?ちなみに私は、雨の男の人と是非、ラスベガスに行って散々勝ちまくって未来永劫の巨万の富を作りたいと思うわ」

「だから、僕は少なくとも落ちこぼれじゃない!あと、お前がもしベガスに行ったとしても、カジノはそう甘くないし、そもそもあの人がお前みたいな悪人とつるんだりするかよ!あの二人の兄弟愛をバカにするな」

「あら、たかだか学年368人中159位だなんて、まるで中途半端が服を着たあなたが、鏡を見ながら自分で自分の絵を当社比2倍のルックスを夢見ながらも、実際は、10分の一程度の出来栄えを描いてしまうような笑える存在であるあなたに対し、368人中1位であるこの美貌と才覚に溢れたこの私が、中性子にすら満たないあなたの脳みそについて論じてはいけないというの?ちゃんちゃらおかしいわね。それと私は、雨の男の人だろうと何だろうと、映画の序盤当初の兄弟関係の通りに、自分の思うがままにさせる自信があるわ。だって私は神様だもの」

「お、お前という奴は...」

本当はぜんっっっぶに

ぜんっっっっっっっっっっっっぶにツッコミを入れたい

何で俺の学年順位をしっているんだとか

自分の愚かさを絵に描くようなピエロでもないとか

中性子ってどんだけ僕の脳みそは小さいんだよ、いや小さくないなんて決してとか

あの人まで、下僕扱いするだなんて、お前いい度胸しすぎそろそろ危ないってとか

全部が全部に何かしら言い放ちたいのだけど、さすがに自分を神様扱いまでされてしまうと、その言う気も失せてしまった

「それはつまり、私を神として崇め奉るということかしら」

「だから、都合のいい時だけモノローグにツッコミを入れるんじゃない、つか、本題ってのがあるなら、そろそろ入ってくれよ頼むから」

僕はもう疲れたよ

何だかとってもだるいんだ

「スレイブ!下僕であるあなたが、この私に命令する気!?」

「い、いや、だからそんな心底驚くなよ!って分かった!分かったから!謝る!謝るから!いや、その、ええと、あなた様のお話を是非、この卑しい私めにお教えください!だから!だからそのナイフをお仕舞い下さい。お願い奉り申し上げます!どうかっ!」

「...ふん、まぁそこまで言うのならいいでしょう。ただ次から自分を呼ぶときは、卑しい下僕とお呼びなさい」

「なっ、く...はい...」

くそっ、抗えないっ

一度、崩壊してしまったアイデンティティーなど、もはや戻らないとでも言うのだろうか

それに、あろうことか主従関係が成立し、もう僕自身ではひっくり返せないような立ち居地になっている

これじゃ完全に下僕そのものじゃないか

「ええ、その通りね」

「くっ、こいつは...もういいよ!さっさと...本題にお入りくださいませご主人様ぁっ!」

「ふふ、ええ、少しは分かってきたじゃないのスレイブ。ああ、でも、これでようやく本題に入れるわね。長かったわ」

「...自分で先伸ばしにしてたくせに」

「黙りなさい、この豚畜生が!」

「畜生!?」

ついに家畜ですか?

「ふん、とにかく本題よ。ええと、あなた、これから殺人集団に襲われる事になるから注意なさいね」

「...........」

ん?

今、何と?

何だか、とてつもないことを、さらっと言われたような

「聞いてるの?もし聞き逃していたら切って焼いて塩コショウで味付けしてしまうわよ?」

「いやいやいや、聞いてる聞いてる、そんなポークソテーになんてしないでくれマジで、俺はそんなことやっても食えないぞ?...けけ、けど、その確認のため、もう一度仰って頂けないでしょうかご主人様、どうか、どうかお願いします」

まさかね

まさかそんな

あんなの、聞き間違いだよね?ね?

頼む!そうだと言ってくれ!

「はぁ...全く、仕方のない下僕ね。いい?ちゃんと、その腐りきった耳でもしっかりと聞き取りなさい。あなた、これから殺人集団に襲われる事になるから注意なさいね、と言ったの」

「............」

うそ

いやいやいや嘘だ

嘘に決まってる

んな、殺人集団って普通ありえないって

そうさそうさ嘘だ嘘

ふぅ、ついバカみたいに焦っちまったよ

いや、俺ってば正直だよね

「本当よ」

「............」

「これ以上誤魔化すようだったら、このままだと殺人集団の前に、私に殺されるわよあなた。というか、あなた、この私が嘘なんて低俗な真似をすると思って」

「............」

いや、それはするだろうあんた

「あなた...死にたいの?」

「わわっ!嘘!嘘です!卑しい下僕にとって、主君たる神たるあなた様が、嘘をついているなんて、決して決して思ってませんって!ホントです!ホントですよ!?」

「そう、ならいいのよ」

「え?でも、いやいやいや、なにそれ。ねぇ、それってホントにどういうこと!?」

「はぁ...」

「ちょっと!その頭の悪い子ってこの世に本当にいるのね。不憫だわ。みたいな顔とため息は止めろ!」

「あら、以心伝心ね。さすがは私の下僕。そのまま精進なさいな」

「いや、嬉しくないし!って、だからそうじゃなくて、いや理解は出来てないのは本当だけどそれって本気でマジなのか!」

「ああもう、一々うるさいわね。殺されるのあなた殺されるのよ、このまま行くと今晩中に」

「はいぃっ!?今晩!?って、いや、あの、ちょ、ちょっと待ってよ。何で?何で僕がまた殺される目に合おうとしてるの?しかも殺人集団?何それ?何の冗談?何かの撮影とかって意味?んなバカな事がある訳ないじゃん!そうだよな。良かった冗談か安心したよ怖い事いうなよご主人様〜」

「何を勝手に自己催眠になんてかかっているの?全部本当の事よ」

「嘘だっ!!」

「ひぐらしはいいわよ。いい加減もう使い古しよそれ」

「いやいやいや違う違う!ひぐらし鬼隠しじゃなくて!だって、だってだよ?なんで急に突然そんな事になる訳?いきなりお前に殺されかけたのもアレなのに、なんでその当日に、僕が殺人集団になんて狙われてることになってるの?ねぇ、どうして?てか、なんでお前がそんなこと知ってるの?なぁ頼むよ答えてくれよ!」

「はぁぁぁ...仕方ないわね、慈愛の権化たるこの私が、全世界の生物無機物が、お礼のしるしにと全財産金目の物を差し出したくなるほどの恩情をくれてあげると」

相変わらず、自分自身を世界の中心においている奴である

実は、せかちゅうの語源を、海外のSF作家だということを知らず、むしろエヴァの最終回だと思っているくらいの知識しかない奴が

「知っているわよ。アメリカのハーラン・エリスンね」

「む、合ってるけど」

くそ〜、一度でいいから、こいつをギャフンと言わせてみたい

「そうやって話を振って置けばコイツなら言うだろう、なんて思わない方がいいわよ。私はあなたの嫌がる事が大好きなのだから」

「ひねくれ過ぎだ!!」

「これは酷く簡単なことなのよ」

「突然間を無視するな。空気読めないにも程があんぞてめぇ!!って、でも、え?そう?そうなの?簡単に済ませられるの?」

それは、その会話の間なんてどうでもよくなるくらいにありがたい

簡単

イージー

なんていい言葉だ

今の僕には、天の助けくらいにありがたい

「ええ、だって、私が、組織の連中にチクッたんだもの」

「...........」

え?あ、はい?

この人は、また何と?

「この私が、かつて所属していた、殺人集団を育成していて、かつ派遣活動をして利益を得ている、名称もないけど、日本中に幅を利かせている殺人組織ってとこに、『私があなたに接触して、私と組織の存在が、あなたにバレてしまった』と組織に電話してチクったのよ。どう?これならあなたのカラカラ音のなる頭でも理解できるかしら」

「............」

「ふぅ、脳みそなしに教えるのって、こんなに疲れるものなのね。一つ勉強になったわ」

「............」

「ああ、喉が渇いたわね。スレイブ?お茶」

「...........」

「スレイブ?聞いているの?お茶を入れなさい。ご主人様が、この世に存在する全ての鳥よりも美しくさえずる喉を潤したいと言っているのよ?」

「って、お前のせいかあああああああああああああああああああああっっっっっ!!!!!!」

やっぱりやっぱりやっぱりやっぱりやっっっっぱり貴様が悪の根源かあああああっっ!!

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