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「...ご、ごめんなさい。わ、わたしその、他に、好きな人がいて」
「そ、そう、か...」
「その、だから、ごめんなさい!そ、それじゃ!」
彼女は、俺をその場に残し、いそいそとその場を去っていく
俺は、その可憐な後姿を、名残惜しそうに見送ってしまう
つい、追いかけたくなってしまう衝動をこらえ、拳を握り締めながら、その場に立ち尽くしていた
そして、彼女の姿が完全に見えなくなると
がくっ
俺は、崩れ落ちていた
「また...か...」
また、フられてしまった
「さようなら...俺の12度目の恋...」
もう、これで12度目
あの、好きな人がいる、という言葉もこれで12度目だ
みんなして、なぜに同じ言葉を、と思わずにいられない
そんなに、俺は間が悪いのだろうか
常に、誰か別の奴を好きになっている人しか好きになれないのだろうか
一応、人づてに、彼女はフリーであると聞いたのだが、結果はこのザマだ
「...切ない」
心の中に、冷たい風が通り抜けていくようだ
今度は何が悪かったのだろうか
やはり、急な告白いうのは無理があったのだろうか
もっともっと雰囲気というものを考えた方がいいのだろうか
それとも告白の内容が酷かったのだろうか
でも「あなたのことが好きです。ずっと好きでした。俺と、付き合ってください」なんて言葉だけでは、センスのかけらも無いのだろうか
或いは、あまりに唐突でキモいとか思われたんだろうか
「ああ...俺の春は...どこに?」
未だ、俺の心の季節は真冬のままだった
男子校!神代学園生徒会 〜キョウ君の苦難〜
次の日の教室
俺は、自分の席で暗くなっていた
「はぁぁぁぁぁ...」
盛大な溜息
当然だが、まだ立ち直れていない
だってだって男の子なんだもん!
しかも、落ち込んでしまい夜も眠れず、告白前と告白の一日前の一昨昨日から、もう3日も寝ていない
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ...つらい...」
「おやおや〜?どうしんだいキョウ。そんな景気の悪い溜息なんてついてさ?」
不意に、俺の横に一人の男子が現れる
どことなく、柔らかい物言い
見た目も切れ長の瞳の美少年
きっと、こいつにはちゃんと彼女がいるんだろうな〜、などと邪推してしまう
そして、そいつは、気にすることなく俺の机の端に腰をかけた
「おや?目の下に大きなクマができているね。さては、また女の子にでもフられたのかい?」
「ぐはっ!!」
思わず胸を抑えてしまった
今の、かなりグサッっときた
まるで、キズ跡がえぐられるような痛みだ
「おっと、これはこれは、見事に図星、大命中だったわけだ?」
男はくつくつと控えめに笑う
そのやたら綺麗な外見に相応しくない笑いだ
だが、人をコケにするには十分に嫌味な笑いだった
「ヒ〜カ〜ル〜...」
こいつ、人の不幸がそんなに楽しいのか?
こんなにも人が傷ついていると言うのに!
「お〜、怖い怖い。そんなに怒っていると、その可愛い顔がいつか、一昔前の頑固親父のような顔になってしまうよ?」
「黙れ!俺は男に向かって可愛いなんて言葉を使うな!」
もう何度もそう言われてきて、いい加減うんざりだ
しかも、男に言われても、マジ嬉しくない!
つか、なんだその例えは!
俺は断じてちゃぶ台をひっくり返すような野球人間にはなるつもりはないぞ!
「ふふっ、相変わらず気にしているね。僕からみれば十分に長所だと思うんだけど」
「やかましい!俺は一度足りとこの顔を長所だなどと思ったことは無い!」
「ふむ、そうなのかい?決して悪い顔ではないと思うんだがね?」
「お前に俺の苦労なんてわかるもんか!」
昔から、背が低くて同年代のみんなよりも3歳くらい下に見られ、
クラスの男子からは、事あるごとにバカにされ
女子達からは、散々可愛いね〜と、こねくり回され
あげく、女装までさせられたことすらある
今もあの時のことはトラウマだ
それに、人よりも声もトーンが高くて、高校生にまでなっても、未だに女に見られてしまうことがある
「そういうものかい?でも、その顔なら、さぞや年上の女性達からモテているのだろう?」
「んな夢みたいなことあるかよ。俺に近づいてくるのは、人のいい爺ちゃん婆ちゃんくらいさ」
「そうなのかい?」
「そ〜だよっ...切ないからこれ以上言うな...」
「...ふむ...ま、そういうものか」
ヒカルは、やや訝しげだったが、とりあえず納得したようだった
「でも、保健室には行っといたほうがいいね。かなり悲惨だ」
「...あ、そうだな。そうするよわ。やっぱキツイ」
なんだかんだ眠気が襲ってきている
睡眠不足のおかげで、やはり体調も芳しくないようだ
「大丈夫かい?悪かったね。からかったりして」
「気にしてねぇよ。いつものことだ。それより心配してくれてありがとな」
「ふふっ、いやいや、こちらこそ。キョウもお大事にね」
「ああ」
後ろ手に挨拶をし、保健室に向かおうとする。と、あら?
何かちょっとクラクラするな
「うっ...」
壁に手をついて、少し落ち着かせる
急に立ち上がったせいだろうか?
それともフられたショックがデカ過ぎるのだろうか?
「ん?難波、どうかしたのか?」
俺に気づいたのか、委員長が話し掛けてくる
背の高くスタイルもいいので、ちょっと俺的に恨めしい奴でもある
「調子悪いんだったら、保健室に行ったほうがいいぞ?」
「ああ、すまない、時田。そのつもりだったんだけどな、ちょっとな」
委員長は心配そうに俺を覗き込んで、顔色を確かめてくる
「なんだったら、付き添うか?お前何だか危なっかしいぞ?」
まったく、心配性な奴だ
心配してもらえるのは素直に嬉しいと思う
委員長いい奴だ
今後は考え方を改めようと思った
「いや。もう大丈夫だ。心配してくれてありがとな時田」
だが、これ以上は心配かけまいと、笑って言った
「っ!!!」
ズッキュー―――ン!!!
ん?なんだろう?
今、妙な音が聞こえた気がしたぞ?
例えるなら、銃で相手を撃ちぬいたかのような
それでいて、これ以上深く考えてはいけないような
むしろ深く考えたら負けのような、そんな音
「うっ...その上目、遣い...と、ほほえみ、は...」
見ると、委員長の顔がこれまた妙に赤い
しかも、なんとなくフラフラしているのが見て取れる
「お、おい。大丈夫か?時田の方が、相当に顔色まずいぞ?」
心配になって、手を時田の額に当てる
「!?!?!?」
普段から、やや病弱な弟の面倒を見ているので、この手のことは得意だった
というか、うちのバカ兄貴が全く役に立たず、俺がやる羽目になっているだけなのだが
「熱は、ないみたいだけどな...」
そっと、時田の額から手を放す
「て、て、ててて、てが...」
「ん?ああ、急に悪かった。子供扱いだったかな?」
「き、き、き、気にするな...俺は、普通だぞ?」
「...声、裏返ってるぞ?」
「だだだだ、大丈夫なんだ!!」
「お、おう...分かった」
何だか凄い迫力だな。おい
こいつってこんな奴だったっけ?
つい心でお大事に、と思ってしまう
「ん?」
すると、他にも幾つかの視線がこちらに向いていることを気づいた
気づけば、クラス中の男子が、俺達を気にしているようだった
それに気のせいか、みんなして赤い顔して呆けている
ただ、ヒカルの奴だけが、あのクツクツという嫌な笑みを浮かべていた
なんだろう
妙に居心地が悪い
「じゃ、じゃあ俺、保健室に行ってくるな」
いや〜な感じだったので、さっさと退散する事にした
「あ、ああ...でも、ホントに、保健室まで付き添わなくても大丈夫か?」
顔の赤いままの時田は、心配そうに聞いてくる
お前こそ大丈夫なのかと問いたい
「あ?ああ、大丈夫大丈夫。また、あとでな時田」
にぃ〜っと笑って手を振った
「ぐっ!!」
すると時田は、何か鼻の部分を手で覆って、かなりうろたいていた
ホントどうしたんだろうあいつ?
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