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恋人はサッキュバス!?

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独り

私は、もうずっと独りだ

学校に行く時も

朝のホームルーム前の時間も

休み時間も

昼休みも

放課後も

その後も

ずっと、ずっと独り

ここ5年、私はずっとそんな日常を送っている

誰かと話すことも

誰かに話し掛けることも

誰かに話し掛けられることも

それどころか、誰かと関わる事が全くない日常

これが、私の普通

かといって、別にいじめられている訳じゃない

テレビの中みたいに、トイレに閉じ込められたり、水を浴びせられるようなこともない

教科書は真っ白なままだし、靴を普通に下駄箱に入っていて、キズ一つついていない

ドラマの中のような出来事に遭遇した事なんて、一度もなかった

私は、ただ...そこにいるだけ

ただ、当たり前のように、そこにいるだけ

ひたすら、空気のように、そこにいるだけだった

子供の頃は、そんなことはなかった

みんなと普通に話していたし、普通にみんなと遊んでいた

夏休みには、日に焼けて真っ黒になるまで遊んだ

クリスマスには、パーティーを開いてプレゼントを交換し合った

友達の家に泊りに行った事もある

だけど、それは中学に上がる前までの話

キッカケは、なんだっただろう

もう、よく思い出せない

確かあれは、周りの男子に、やたらとからかわれ始めた時からだった

内容は、とてもくだらない事だったと思う

ただ、私は、そんなの全く気にしていなかった

バカな男子が、また変な事言ってるよ、くらいの認識だった

でも

気づくと、私は独りになっていた

周りの友達は、何故か私から離れていった

何が悪くて、何がいけなかったのか、私にはわからなかった

最初の頃は、みんなに聞いて回った

みんな、どうして私を無視するの?

みんな、どうして私を避けるの?

そう、ストレートに聞いて回った

でも、いつもはぐらかされて、用があるから、とか言って、私の前から去っていく友人達

理不尽に暴言を吐かれたり、とても高圧的な態度に出られたりすることもあった

私は、全然分からなくて

その内、苦しくなってきて

その内、悲しくなってきて

その内、何も感じなくなってきて

そして、そんな事を繰り返していく内に、いつしか...諦めていた

いつしか諦めて...本当に、独りになっていた

空気になってしまっていた

それからの私は、もう前の私ではなくなった

みんなと目を合わせないように、前髪を長くし

少しでも派手目に見える服は着ることをしない

メイクも整えず、いつも素のまま

アクセサリーなんて一個も持っていないし

髪を染める事もない

常に本を読んで、周りから距離を置き

いつの間にかそんな風に...自ら進んで独りになるようになっていた

私の普通が、普通でなくなり

普通でないことが、私...相坂 夢美(あいさか ゆめみ)の普通になっていた






『恋人がサッキュバス!?』






いつも閉め切っているカーテン

その隙間から街の明りが入りこみ、少しだけ暗い室内を照らしていた

明日も明後日も明々後日も、この部屋には、昼夜問わず、そんな光しか入ってこない

夜の11時50分

また、今日が終わろうとしていた

今日もいつも通り。独りでいた

学校が終わったらすぐに家に帰り、自分の部屋に閉じこもった

さっさと宿題と予習・復習を終わらせて

それが終わったら再放送のドラマを見て、昨日録画しておいた番組を見て

途中、お母さんの作ってくれた食事を食べて

それが終わったら、何冊かの小説を読んで

それも終わったら、長めに風呂に入って、すぐにベッドにもぐりこむ

本当にいつも通り

何の面白みのない、意味のない毎日

そして、この先も、ずっとそれが続いていく

ずっとずっと、こんなつまらない日常が続いていく

きっと...いつまでも...

でも、たまに思う

さっき読んだ小説みたいに、誰かと出会えたりしないかな、と

そんなご都合主義はありえないと思うけど

運命の出会いなんてものはないとは思うけど

それでも、誰かと、恋なんてできないかな、なんて

「ずっと、一緒に、いたいね...か」

小説の一節

駆け落ちを題材にした小説だった

そのお話の中の二人は、周りに反対されながらも、とても幸せそうな恋をしていた

若い身で、結婚の約束までしていた

ありえない、って思う

でも、それはお話の中

なんだかんだありながら、最後はちゃんと結ばれる

ホントご都合主義

だから、現実には、そんなことはありえない

でも、だからこそ、思ってしまうとも言えるかもしれない

「...何か...面白い事、ない、かな...」

明りの消えた部屋の天井を眺めながら呟く

でも、そんなこと呟いたところで、何かがあるはずもない

何か起こるわけでもない

世の中は、自分が何かをしなければ、何かが起こるなんて事ないのだ

現実とは、そういうもの

ご都合主義的な展開なんてないのだ

「なら。試してみるか?面白い事」

「えっ!!」

私しかいないはずの部屋に、声が響いた

バッと、ベッドから起き上がり辺りを見回そうとする

いや、見回すまでもなく、そいつはすぐに視界に入り込んでいた

「よっ。こんばんは」

そこには、黒のタンクトップと黒っぽいジーンズ

腕や指、首元には銀色の髑髏をあしらったリングやネックレス

そして、夜を照らすような、金色の瞳をした男が

閉め切っていたはずのカーテンを、ハタハタと揺らめかせながら、私の部屋の中に立っていた

「き...」

「あ、いや叫んでも...」

「キィヤヤヤヤヤアアアアアアアアァァァァァァァァ―――――ッ!!!!!!」

絶叫がこだまする

もう自分でも、どうしてこんな大声が出るのか分からないくらいの叫び声だった

「キィヤヤヤヤアアァァァァ―――――ッ!!!だ、だだだだだだだ誰か!」

私はすぐさまベッドから立ち上がり、ドアの方に向かう

そして、ドアの鍵を開けて、部屋の外に...

「って、開かない!?」

ガチャガチャとドアノブを回そうとするも、外から何かで塞がれているみたいに開かない

「なんで!?なんで開かないのよ!!」

何度も何度も繰り返す

それでも、ピクリとも開く気配がない

「ねぇ!開いてよ!開いてってば!ねぇっ!ねぇっ!ねぇっ!!」

どうすればいいの?

どうすればいいのよ?

私どうなっちゃうわけ?

ねぇどうすればいいのか教えてよ!

頭の中がこんがらがってくる

突然の出来事に対応が追いつかない

そこで、後ろの男が気になって、開かないドアを背にしてバッと振り返る

と、そこには

「あ、終わった?」

とか何とか言って、別に何でもないように、私のベッドに腰をかけて小説を読んでいる男がいた

その態度は、やたらと落ち着いている

「あああああああああ、あなた!わわわわわわわたしの部屋で、ななな、何してんのよ!」

「いや、本読んでるだけだが...これ結構面白いな。貸してくれ」

「そ、そんなものなら幾らでもあげるから、さっさとこの部屋から出てってよ!!」

何?

何なのよ?

何で人の部屋でくつろいでんのよ!

何で人の小説勝手に読んでんのよ!

何を訳の分かんないことやってんのよ!!

「んな邪険にすんなよ?別に襲ったりしねぇからさ」

そんな言葉信じられるか

こんな突然の侵入者に何を言われても信じる事なんて出来るはずもない

「あ、一応言っとくけど、この部屋は空間ごと閉じさせて貰ったから、ドアからも窓からも出られないぞ」

「はっ!?」

何を言っているのよこいつは

訳分かんないわよ!意味分かんないわよ!どこのファンタジーの話よ!

小説の読みすぎじゃないの?こいつ!

「信じられないのは仕方ねぇし、そんなのどうでもいい」

どうでもよくないわよ

仮にその話が本当だとしたならば、私ってば見事に閉じ込められちゃってるのよ?

第一あんた何者よ!

そもそもなんで窓から侵入してくるわけ?

2階だから絶対に無理って訳じゃないけど、普通じゃないわよそれ!

「...色々考えてるみたいだけど、一々答えるの面倒だから、目的を単刀直入に言うぞ」

目的?

何が目的だってのよ?

って、やっぱり私をどうにかしようってんじゃ...

そりゃ見た目カッコいいし、綺麗な顔立ちしてると思うわよ?

背も高くてスタイルも良いし、そこそこ鍛えてるっぽい

こんなカッコいい人、今まで見たこと無いってくらいにカッコいい

けどそんなの私絶対嫌だしごめんだしとてもそんな気になれないしでもでもだけど...

ああ!もう!なんなのよこれ!!

「...お前...俺の話聞いてる?何か上の空だぞ?」

「うっさいわね!さっさと言いなさいよ!この変態バカ!」

とっさに暴言が出てしまう

刺激した!?と後悔するがもう遅い

でも、そいつは別に気にした風でもなかった

むしろ呆れた顔をしていた

「...お前、案外肝すわってんのな。もっと大人しい女かと思ってたけど、ちょっと予想外だった...」

「余計なお世話よ!」

ええ、自分でもそう思うわよ

もう訳わかんなくて、テンパリまくりよ

つか、ホントさっさと部屋から出てきなさいよ!

「まぁいいや。話が出来る分には助かるし」

そう言って、変態はベッドから立ち上がり私を見た

その金色の瞳からは、不思議と威圧的な印象は受けなかった

「でな?まず言っとくと、俺、悪魔なんだわ」

「............」

は?

何言っちゃってんのよこの人は

「ま、信じないとは思うけどこれホントな。でだ、俺はお前に一つ耳寄りな話を持ってきたってわけ」

なんなのそれは?

というより、この人の頭大丈夫?

どっかでトラックか飛行機にでもはねられたんじゃないの?

あ、そうか

それで意識が朦朧として、こんな犯罪行為に...

「............」

つい、可哀想な目で見てしまう

「...頭は別にヘンじゃないからな?」

うわ、考えてる事読まれた

さすが自称悪魔

(...ったく、これだから人間の女って奴は毎度毎度人をあぶねぇ奴をか思いやがって....グチグチグチ)

しかも、複雑そうな顔をして何か言ってるよこの人

「とにかく!俺は悪魔で、つまんねぇ人生送ってるお前にチャンスを持ってきてやったんだよ」

「なっ!」

「お前のその貧相極まりない腐れた人生に、俺から希望の花を添えてやろうと、わざわざこうして出向いたわけだ。感謝しろ?」

つまんねぇ人生?腐れた人生...ですって?

あげく、感謝しろ?

そりゃ、確かに、自慢できるような人生じゃないわよ

いつも独りの淋しい子よ

誰かと付き合ったこともない女よ

でもね、頭のおかしい自称悪魔になんか言われたくないってのよ!

そんな奴に、つまんないだの、貧相極まりないだの、腐れただのと...

あ、何だか、怒りが込み上げてきた

全然、こいつの言ってる事が理解できなくて意味分かんなくてすっごく腹立ってきた

「あ、あんたねぇ!さっきから何よ!急に私の部屋に入り込んできて、私を部屋に閉じ込めて、あげく自分のこと悪魔だとか言いくさって、そんな頭いかれてる奴の分際で私の人生にケチつけようっての!?」

「は!?なんだてめぇ!人間の分際で俺様に楯突こうってのか!?」

「そうよ悪い!?私はあんたみたいな電波入ってるようなバカに付き合っていたくないのよ!さっさと出てきなさい変態悪魔かぶれ!」

「こ...このやろう...ホントいい度胸してやがんなぁ...」

「ええ、もうあんたなんかに無駄に時間使いたくないの!早く寝たいの!だからとっとと頭のおかしいお仲間のとこにでも帰ればいいでしょうが!」

「や、やかましいわ!てめぇ何様のつもりだ!?腐れ人間のくせにこのルシエ様に歯向かってんじゃねぇ!」

「俺様?ルシエ様?はっ!お笑いぐさね!何自分を讃え敬ってるのよバッカじゃないの!もう一度言うわよ。バッカじゃないの!!」

「こ、こんの野郎...人が下手に出てりゃいい気になりやがって...」

「下手?どこかよ!そんな偉そうにふんぞり返っててどこが下手よ!しかも野郎?私は野郎なんかじゃないわよ!もう一度、その腐った頭を幼稚園からやり直して方がいいんじゃない!?」

「てめえ、言わせておけば...独りぼっち独走中彼氏いない歴年齢と一緒女が!」

「うるさいわね!あんたみたいな顔だけ君に言われたくないのよ!」

「そいつはひがみか?自分があんまりに貧相な面構えな分のでっかい被害妄想か?」

「違うわよ!私はあんたみたいな電波オタク変態バカになりたくないって言ってんのよ!このナルシスト!!」

「だ、誰が電波オタクでナルシストだ!この人生真っ暗根暗幽霊女が!」

「黙りなさい!!あんたのそのゴキブリが潰れたときみたいな声なんてもう聞きたくないのよ!!」

「まだ言うか!頭ん中でエロい妄想ばっかしてるくせに!」

「な、なんですって!!」

「んだよ!!」

――――3時間経過



「はぁ...はぁ...はぁ...」

「ぜぇ...ぜぇ...ぜぇ...」

「はぁ...はぁ...ちょ、ちょっと休憩にしましょう」

「そ、そうだな...」

互いに頷き合って二人して、その場に座り込んだ

時計を見ると、もう3時になっている

こいつが侵入してきたのが12時くらいだったから、かれこれ3時間くらい全力で罵り合ってたってことか

それは疲れるって...

「で?何よ?もう悪魔かどうかなんて、どうでもいいけど、私に何の用なのよ...」

もうホントどうでもいいから、さっさと用を済ませて出てってくれないかしら

「そうだな。俺も、これ以上、お前みたいな女と無駄な時間過ごしたくない...」

まったくよ

でもあんたに言われたくない

「で、さっきも言ったけど、俺はな?お前にチャンスをやりに来たんだよ」

「チャンス?何のよ」

「人生を面白くするチャンス。そうだな分かりやすく言うと、願いをかなえてやる、みたいなもんだ」

「願いを?」

なにそれ?

やっぱり胡散臭い話じゃない

あんたどこの宗教家よ

「疑ってるみたいだけど、この際無視するぞ?悪魔って言ったけど、正確には、俺はサッキュバス。夢の悪魔。夢魔だ」

「サッキュバス?人間の生気を奪って、っていうやつ?」

「まぁ、そんなもんだ。昔は眠っている人間から生気を奪って、自分の命を繋いでたみたいだな」

妙な言い方だ

まるで今はそうじゃないみたいな

「って、私は別にあなたがそうだなんて信じてないわよ?」

「だから、もうそれはどうでもいいって。俺は、ただ仕事に来ただけなんだから」

「仕事?何それ。生気を吸うって?止めてよね!そんな気色の悪いこと!」

眠っている間に、生気を吸い出すって言って、キスやら何やらされたら適わない

まして、気づいたら死んでるなんてのもゴメンだ

「いや、違う違う。んなことしねぇって。したくもねぇし。まぁ確かに多少は頂くが、死なない程度...全力で100m走ったくらいの分くらいか」

「何よそれ。何か意味があるの?」

「生気を頂くことには意味はないな。力の使い方上、どうしてもそうなってしまう、ってだけのもんだ」

昔の名残だな、と付け加える

「で、さっき言った通り、昔はそうだったみたいけど、今はわざわざ生気を吸うなんて面倒な事はしない」

「そうなの?だったら、何するってのよ」

「だから仕事だっての。後な?一々口を挟むな。話が進まん」

「あ、ごめん...って、なんで私が謝んなくちゃならないわけ!?」

「あ〜っもう!!マジ黙れ!!いいか?生気なんてのはな?今の俺達にとっては大して役に立たないんだ!それなら普通に食事した方がもっと良いんだよ!」

「食事?何?肉とか魚とかってこと?」

「そう。だから俺たちも働かなくちゃ飯にありつけないの。だからこうして仕事してんの」

「は、はぁぁ...」

つまりは何?

お金稼いで普通に買い物してるって事?

スーパーとかコンビニとかで

悪魔なのに?(自称だけど)

「まぁ、バイトもしてるんだけどな。それだけだと遊べなくてさ〜。だから、金がヤバイ時とかは、こうして夜にも稼いでるってわけだ」

「は、はあぁぁ...」

バイト?

金欠?

サッキュバスなのに?(自称だけどね)

「えっと...それで?何してるわけなの?」

「そう!!って、はぁ...やっとここまで辿り付いたぁ...」

もう心底疲れたうんざりだという感じ

でもそれはお互い様よ

「さっきも言ったとおり、俺は夢の悪魔サッキュバス。俺達の力は、人に夢を見せて、それを魔力で現実化できるってものだ」

「はい?」

意味分かんない

あんた達の常識なんて知らないわよ

どんなおとぎ話よそれ

「あ、正確には俺が思ったとおりの夢を見せられる訳じゃない。あくまで夢を見るのはあんた本人だからな?」

「いや、その、それよりも、夢を現実化するって、聞こえたんだけど...」

「いや、その通りだ。夢が現実になるんだ」

「............」

「どうだ?面白いチャンスだろ?」

「......バカじゃないの?」

素で言った

「くっ...まぁ、予想してたよこの野郎」

「はぁ、もう何でもいいわ。とにかくさっさと出てってくんない?疲れちゃった」

自称悪魔を放っておいてベッドに入ろうとする

もう相手をする気も起きない

あ〜、朝起きれるかな?心配

「あ、あと人のこと襲おうだなんて考えないでよね」

色々と面倒だが、これだけはハッキリ言っておかないと

「だからしねぇっての!」

「そう?ならいいわ。さっさと出てけ」

「お前は...」

この「暴言吐きが」とか聞こえたが、もういい

本当に疲れた

相手にするのもバカバカしい

「...でもいいのか?多分二度と来ないぞ?こんなチャンス」

ベッドに入る手前で、声をかけられる

「いいわよ別に。興味ないもの」

「夢が叶うんだぞ?」

「だからいいって、すっごく嘘臭いし」

「もう、独りでいる毎日じゃなくなるかもよ?」

「............」

つい、ベッドの前で止まってしまった

てか、何でそんなこと知ってんのよ

「上手くお前が、いい夢を見られれば、それが現実になるんだ。目が覚めたらすぐに」

「............」

「まぁ、夢を見るのはお前だし、絶対に上手くいくとは限らない。でも、見た夢がそのまま現実になる。つまり夢によっては本当に際限がない」

「............」

「ちなみに、今までにも、欲しいものが手に入るのは当然に、他にも女優になったり、中には億万長者になったりした奴もいた」

「............」

「ほとんどの奴が、大なり小なり望みが叶っている」

「...........,」

「そりゃ夢だ。悪夢だってある。さすがに死んだ奴はいないが、事故った奴とか色々いる」

「うっ...」

「でもな?ある程度は、眠る前に考えていたことが繁栄されやすいってのもある」

「ぁ...」

「基本的には、そいつ次第だが、それでも8割近い確率でいい目にあってる」

「............」

「確かにリスクはある。でも、そこまで低い確率じゃない。なのに普通じゃ叶わない夢すら叶うんだ」

「............」

「考え方は宝くじと何ら変わらない。むしろ願いが叶うっていう幅広さがある。可能性も高い」

「............」

「どうだ?別に悪い話じゃないと思わないか?」

「...なら...あんたが自分でやればいいんじゃないの?」

それならすぐにお金持ちになれるでしょう?

あんたの問題、万事解決じゃないの

「そうだな。本当なら、俺もやりたいところだが、自分の夢を現実化できない。というより俺自身は夢を見られない。だが、もし可能なら絶対にやってる」

「............」

「まぁ、別にお前がやりたくないんだったら、それはそれで構わない。別の奴のところに行くさ。もう3時過ぎだが、それでも夜の間に相手は見つかるだろ」

「............」

「でも、その中でお前は選ばれたんだよ」

「............」

「...どうする?試してみないか?」

「............」

確かに、悪くない

全部を全部信じるつもりはないが、もしこいつの言ってる事が本当なら

夢が、そのまま叶うっていうなら

ちゃんと、上手くいけば...

「もう一度訊くぞ?どうするんだ?」

口車に乗っているのも分かっている

でも、ついこいつの言っている事に惹かれてもしまっている

「あの...」

「なんだ?」

「どう、すればいいの?」

「ん?何だって?」

こいつ...絶対ワザとやってるでしょう

「ほら、もう一度、ハッキリと大きな声で」

「くっ......どうすれば、夢が叶うの?」

私の言葉に、ふっ...と何だか勝ち誇ったような顔をするそいつ

気に入らない

すごく気に入らない

気に、入らないけど...

「教えなさい。私はどうすればいいのよ?」

その問いに、そいつは手の平を私に向けた

ものすごくムカツク笑顔を浮かべながら

「5万」

「ごまん?」

「金だ金。現金。マネー。日本銀行券。あ、ドルでもポンドでもいいぞ?」

「なっ...」

お金?

夢叶えるのにお金?

いや、これって言うなれば悪魔との契約でしょう?

それが、お金?

生贄とかコウモリとかじゃなくて、お金?

「言ったろ?仕事だって。俺だって労力を支払うんだ。ギブ&テイクだぜ?」

「わ、分かったわよ...でも5万円なんて、な...」

「ないってのか?嘘付けよ。お前みたいなお金の使い道=貯金みたいな奴が持ってないわけないだろうが」

「う...失礼ね。それはまぁ、持ってるけど、でも、たか」

「高い?夢が叶うのに高い?それマジで言ってんのか?」

「ぐっ...」

確かにそうだ

夢を叶えられるかもしれなくて、それが5万でなら、安いといえる...かもしれない

「で、でも!絶対に上手くいくわけじゃないんでしょう?それにアンタが嘘をついているかもしれないんだし」

「なるほど?」

「そもそも、アンタが悪魔だって信じてる訳でもない!それなのにそんな夢物語に5万円なんてやってられないわよ!」

「夢物語?大いに結構じゃないか。もしこれが夢なら、別に損はないだろ?現実的に考えれば、部屋から出られないのなんて夢なんだからな」

「そ、それは、そうだけど」

こいつの言っている通り、確かに部屋からは出られなかった

窓は開いているのに、どうやっても外に出られない

叩いても何しても、手も足も、窓枠を全く通過しないのだ

窓の外は、いつもの風景なのだが、一歩も前に進む事が出来ない

そんな非現実が、私の前にはあった

「で、でも...」

「でも、じゃねぇっての......まぁいいぜ?ならすぐにでも他の奴のところに...」

「わ、分かったわよ。払えばいいんでしょう?払えば」

こいつ...本当にムカつく

すごく腹が立つ

だけどもう、何だか色々と面倒だった

もう訳の分かんないことだらけで、疲れてしまっているんだ

いい加減解放されたい

それに無事に済むのなら、それでも良いかと思ってしまった

私は、溜息を吐きながら、財布と貯金箱から一万円札を5枚取り出す

「ほら、これでいいんでしょう?」

そいつは、さっと私の手からお金を奪い取る

「ふむ、1,2,3,4,5枚。確かに」

慣れた手つきで5枚を数える

何から何まで詐欺臭い動きだ

「なら、とっとと出て行ってくれない?私もう眠いのよ...」

「ああ、分かった分かった。まぁ、せいぜい良い夢みるんだな」

「知らないわよ。むしろこれが、ただの悪夢であることを望むわ」

「そうかい。じゃ毎度あり〜」

そう言って、自称悪魔は指をパチンとならした

すると、少しだけ部屋の印象が変わったような気がする

「って、え?」

そして次の瞬間には、男は私の前からいなくなっていた

もう影も形も見えない

ただ窓は空いたままになっていて、カーテンが風に揺れているだけだ

私は、ついその窓の外へ手を伸ばす

手は、普通に窓枠を超えた

さっきまでの、通ることのできない不思議な感触はない

全身も当然のようにベランダに出ることができた

「...なんだったのよ。あれ」

やっぱり夢だったのだろうか、と思ってしまう

でも、時計の針は、3時40分を指していた

間違いなく、時間は経過している

「...まぁ、いいか...とっても疲れた...」

分からない事は、朝考えよう

もう十分に寝不足なのだけど、少しでも疲れが取れればいい

それに、どうせ考えても分からない事だ

きっと、本当に疲れていたから、ありえない夢か何かを見たのだろう

ベットに入り横になる

眠気はすぐに襲ってきた

ふと、さっきの自称悪魔の顔が浮かぶ

夢が叶う...か

「ま、悪い夢だけは見ないようにしよう...」

そう呟いて、深く考えることなく眠りについていた

桜が舞っていた

彼は、すぐ側にいた

ずっと...一緒に、いようよ

私は、彼にそう言って、そっと彼の唇に...




ジリリリリリリリ!!

「う...」

時計だ

時計が鳴っている

...うるさい

でも、寒い...

冬の冷たい空気が部屋の中を思いっきり冷たくしていた

つい寒さに負けて、布団の中に包まったまま、手をうんと伸ばして、そのう騒音を止める

そして、また暖かい布団の中で...

って、それじゃ遅刻しちゃう...

ああでも気持ちいい...

このまま眠っていたい...

ああ、ダメ...それじゃ...遅刻...

「はっ...」

いかんいかん、そのまま眠ってしまうところだった

「......ぅぅ......眠い」

どうにか起き上がるものの、頭はボ〜っとしている

寝不足だ

気のせいか少し体もだるい

それに昨日は、あんまり眠れなかった訳だし

「...なんでだっけ?」

何か忘れている気がする

「あ、そうだ」

くだらない夢を見ていたんだった

自称サッキュバスがやってきて夢を叶えてやるだのと言ってきたのだ

しかも、何時間も言い争いをしていた

我ながらバカな話だと思う

「...そういえば、その後はどうなったんだっけ?」

思い出せない

何か別の夢を見ていた気がする

「...まぁいいわ。夢なんてそういうものだし」

気を取り直して、学校へ行く支度をする事にした






階段を下りる

すると、お母さんが朝食を作っているのか、お味噌汁と焼き魚の匂いがした

「にしても...眠いよ〜」

まだ、目がショボショボする

今一つすっきりしない

変な疲れがたまっているっぽい

「なんだ?随分と間抜けな顔だな。夢美」

廊下で、すれ違いざまに声をかけられた

「うっさいわね!低血圧なのよ!ほっといてよ!」

「そうかい。ならさっさと顔洗って来いよ。朝飯だぞ?」

「言われなくてもそうする...ってあんた誰よ!!」

ウチに父親は居ない

現在福岡に単身赴任中だ

兄や弟もいない

この家にいるのは私とお母さんだけで、男なんて一人もいない

「お前...反応鈍いな」

「なっ!!」

驚いた

しかもすごく驚いた

いや、そんなもんじゃなく、真剣に心臓が止まるかと思った

「あ、あんた...ななななななな...」

「驚いてないで、飯にするぞ?俺腹減ってんだ」

「何で夢の中の悪魔が、まだここにいんのよ!!」







「というわけで、夢前ルシエ(ゆめさきルシエ)君よ」

ニコニコと、隣の不信人物を紹介するお母さん

気のせいか、とっても機嫌がいい

しかも、朝からメイクをバッチリ極めている

服もお出かけ用のものだ

「何がというわけなのよお母さん」

お母さんの隣にいる奴を牽制しつつ、努めて冷静に訊く

あ、こいつ気にせずにご飯食べてるし

しかも、どこで手に入れたのよ、そのウチの学校の制服は

「夢美こそ何言ってるのよ?前から言ってたじゃない。ウチにフランスから留学生がホームステイしにくるって」

フランス?留学生?ホームステイ!?

「な、何よそれ!私全然聞いてないわよ!?」

「あら言ったわよ〜。一ヶ月前くらいに」

「いや、でも全然覚えてないし!」

「そうなの〜?おかしいわね〜」

いや、そんな、困ったわね〜みたいに首を傾けられても

それに困ってるのは、むしろ私の方だってば!

「でもこうして来ちゃってるんだから。ね♪」

「ね♪って言われても...第一なんで男なのよ!私のうちは女二人なのよ!?そこにどこをどう考えれば男を入れようとか思うわけ!?」

「あら、別にいいじゃないの。私としては男手があるととっても助かるわ〜。ね〜ルシエ君♪」

「あ、いえそんな...こちらこそよろしくお願いします。遥さん」

何をそんなにフレンドリーに!!

つか、お母さんを名前で呼ぶんじゃない!

それに、さっきと口調違くない?

「ああもう!ツッコミ所が多すぎる!!」

頭をかき回してしまう

かなり混乱しているらしい

「とにかく私は反対よ!絶対反対!いい?」

バンッとテーブルを叩き反対をアピールする

「そうは言っても、もう手続きとか色々済んじゃってるし、変更なんてできないわよ?きっと」

「いや、きっと...って、お母さん別に調べたわけでもないんでしょう?」

「え〜...そうだけど...でも、そうなるとルシエ君が可哀想じゃな〜い?」

可哀想なんかじゃない

むしろ可哀想なのは私だ

それに何なのよ。そのめっちゃ余所行きの声は!

すっごく嘘臭いのよ!

「そんな、僕の事なんか気にしなくてもいいんですよ?確かに女性お二人の中でお邪魔するのは気が引けますし」

ボク――っ?

コイツがボク――!?

すっごく似合わないって!

しかもなに?そのフェミニストっぷりは!

めちゃくちゃ気持ち悪いわよ!

「あ!いいのいいの!ルシエ君が夢美の言う事ことなんて気にしなくても!」

「あの、気にしてよお願いだから!!」

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