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「雪の階」 奥泉 光

  「雪の階」 奥泉 光 
  (2018年、中央公論社、2400円)

  昨年の各種書評で大絶賛されていた本です。
  ようやく予約順番がきました。

  小説は、昭和10年4月の、ある上流サロンコンサートで幕を開けます。
ドイツ人ピアニストの演奏を、華族階級のひとたちが楽しんでいます。
ひときわ目を惹く美しい令嬢は、笹宮伯爵家の長女惟佐子(20歳)です。

惟佐子は、親友の宇田川寿子 (東京帝大教授令嬢) が音楽会に顔を見せないことが気がかりです。
家に連絡しても不在がつづく寿子は、なんと数日後、富士樹海で心中死体として発見されます。

えっと驚く惟佐子。
親友寿子が陸軍士官と心中?   あり得ない!

このへんで、ああこの小説はミステリなのか と、ようやく気づきます。

冒頭100ページあまりが、昭和初期のきなくさい世相描写に割かれていて、
陸軍内部の 「過激思想」 やら、華族階級をふくむ政治家たちの権力闘争やら、
「はいはい、テーマは 『2・26事件』 なのよね、ちょっと今さらよね」 と、斜にかまえていたので。

小さいころ、惟佐子の 「おあいてさん」 (使用人の子が主人の子の遊び相手になる) だった牧村千代子という
女性カメラマンが、知り合いの新聞記者と共に事件の謎を追っていきます。
この謎解きが、なかなかのレベルで楽しめます。

ただの深窓の令嬢と思い込んでいた惟佐子が、その驚くべき存在感で読者を魅了 (?) するし、
本の終盤が 「2・26事件」 に収束するのは予想どおりとしても、そこに奇想天外なテロ計画がからんできて、
いやいやどうして、第一級のエンタテインメント作品 でした。
舌を巻きました。

文章はねっとりと豊穣。
谷崎の 「細雪」 を思わせる、というのが言い過ぎでも、水村美苗 「本格小説」 レベルには達しています。
  「長いお別れ」 
    中島京子 
   (2015年、文藝春秋、1550円)

  主人公 (と言っていいのかな?) 東昇平は、中学校教師として長年勤務したあと
   (定年退職時は校長)、 いまは悠々自適のリタイア生活です。

...が、かれは少しまえから認知症を発症していて、病状はゆっくりと進行していきます。
3人の娘たちは (40代と30代) すでに家を出ており、もっぱら妻がひとりで、認知症老人の日常を支えます。

えっ! 夫が認知症になるって! 何たる悲劇! (それほどの高齢ではないのに。)
もしわたしだったら、わたしだったら、ああもう、どうしたらいいんだろう!
と、やたらパニクリながら読みすすみましたが、この妻には少しも悲愴感がありません。

幼子のようになっていく夫を、 「ああもうしょうがないわねえ」 と平常心で見守り、
うんとたいへんな時は娘たちにSOSを出し、(娘たちもできる限りの助力を惜しみません)、
「やむをえないあたりまえのこと」 として淡々と過ごします。

自分の病気入院の際には、身をよじるように夫の身を案じ、一日でも早く夫の元にもどりたいと切望する妻。

<夫がわたしのことを忘れるですって?
ええ。ええ、忘れてますとも。わたしが誰だかなんてまっさきに忘れてしまいましたよ。...三人の娘をいっしょに育てたことも...家族、という言葉も忘れてしまった。
それでも夫はわたしが近くにいないと不安そうに探す。不愉快なことがあれば目で訴えてくる。何が変わってしまったというのだろう。...この人が何かを忘れてしまったからといって、この人以外の何者かに変わってしまったわけではない。...>

「認知症介護」 という重いテーマを、たくまざるユーモアをまじえて、みごとに描ききった小説でした。
妻の曜子さんにも、娘の茉莉さんにも菜奈さんにも芙美さんにも、しみじみの賛嘆を感じました。
  「わたし、定時で帰ります。」 
   朱野帰子
  (2018年、新潮社、1400円)

  <長時間残業による過労死> が後を絶たない世の中です。
  そんな風潮に、タイトルからして異を唱えているこの本、
  ジャーナリストのルポ本? それとも、実体験にもとづくエッセイ?
  いやいや、小説でした。 (やや意外)

ヒロインは、断固たるポリシーで定時退社をつらぬく、32歳の会社員。

彼女の見るところ、残業まみれの社員というのは、
①仕事ができるひと 
②仕事ができないひと
の2タイプに分かれるらしい。

①タイプの社員は作業能力が高いため、時間内で仕事を終わらせることはもちろん可能。
だが、こういう有能なひとには概して仕事が集中するし、本人もそれを歓迎する。

②タイプの社員は、単に要領がわるいだけ。
効率的な仕事ができず、残業時間中も、とにかくダラダラしている。

この二極のあいだに、 「なんとなく帰りづらい」 的な 「つきあい残業社員」 が存在するらしい。

さて、ひとりのトンデモ上司のせいで、ヒロインとそのチームは過大なタスクを押しつけられます。
ヒロインも、心ならずの苛酷な残業を強いられ、心身がヘトヘトに...。

面白かったです。
TVドラマ化したら話題になりそうです。 (主演は新垣結衣あたりで。)
昨年10月期の彼女のドラマ 「獣になれない私たち」 は、恋愛部分はイマイチだったけれど、会社ドラマの部分がとても面白かったので。
  「じっと手を見る」 窪美澄 (2018年、幻冬舎、1400円)

   ヒロイン日奈は、富士山の見える地方都市で、介護士としてはたらいています。
  幼いころ両親を事故でいちどに失った彼女は、祖父に育てられますが、
  その祖父が最近亡くなったので、今はひとりぼっちになってしまいました。

  寂しさの中でつき合い始めた、介護専門学校時代の同級生。
しんから日奈を想ってくれるやさしい青年でしたが、つき合いは長くはつづきません。
介護現場の取材に来た東京のカメラマンに、日奈は恋してしまうのです。

かなり年長で、不和とはいえ妻もいるこの男を追って、いっしょに暮らし始める日奈。
しかし、何となく破局がきて、もとの町にもどる日奈。
ふたたびひとりぼっちになった日奈を、温かく迎える元の恋人。

...みたいな話が、地味にほの暗く描かれます。
ヒロインは、いかにもな薄幸感がただよう 「守ってあげたい」 系の可憐な女性。
何かねえ...。

初めて出会った作家。
スッと読めて読みやすかったけれど、あまりわたしの好みではありませんでした。
書評でとてもほめてあったので、迷いつつご紹介します。

  「夜明けの雷鳴」 吉村昭
 (2012年、文藝春秋、1524円)

  幕末期に実在した医師高松凌雲を描いた歴史小説です。

  一橋家に仕える凌雲は、1867年、
  幕府の欧州歴訪団 (団長は15代将軍慶喜の弟) に随行する栄誉を得ます。
  パリ万博に圧倒され、フランスの最新医療に鼓舞される凌雲でしたが...。

このころ日本では大政奉還が行われ、
もはや幕府に、欧州歴訪団を支える資金力はなく、一行は志半ばでやむなく帰国します。

さてこのあと、
<明治維新の混乱のなか、最新医療を庶民に提供する医師凌雲> という展開になると思いきや、
意外にも、波瀾万丈な人生が凌雲を待っています。
彼は、榎本武揚を総大将とした擁幕軍に参加し、品川沖から太平洋沿岸を北上するのです。

当初8隻あった堂々の軍艦が、砲撃をうけてほぼ半減し、
同盟をあてにしていた北陸・東北の藩がつぎつぎ官軍に帰順するなか、
かれらはついに、蝦夷 (北海道) にたどりつきます...。

そうこの本は、あの有名な五稜郭の戦いを、反官軍の立場から描ききったものなのです
激しい戦闘、従軍医師としてのかつやく、降伏にいたるひとびとの逡巡、などなど...、
息づまる思いで読みました。

この作家の、
ドキュメンタリーと見まごうような、簡潔でかわいた文章。
それでいて、味気ない印象どころか、読者を終始前のめりにさせるドラマチック。
いつもながら、その力量にはおどろかされます。

数年まえ、 「長英逃亡」 「生麦事件」 で始まった静かな吉村昭フィーバー、
今もわたしの胸のなかで持続しています。

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