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<ディック・フランシス まとめ>
[1]シリーズ44作品中、オススメ紹介をしたのはつぎの24作品です。 (緑色のもの)
1.興奮 2.大穴 3.重賞 4.本命 5.度胸
6.飛越 7.血統 8.罰金 9.査問 10.混戦 11.骨折 12.煙幕 13.暴走 14.転倒 15.追込 16.障害 17.試走 18.利腕 19.反射 20.配当 21.名門 22.奪回 23.証拠 24.侵入 25.連闘 26.黄金 27.横断 28.直線 29.標的 30.帰還 31.密輸 32.決着 33.告解 34.敵手 35.不屈 36.騎乗 37.出走 38.烈風 39.勝利 40.再起 41.祝宴 42.審判 43.拮抗 44.矜持 第1作〜第40作まではすべて読み、わたしの基準で <すぐれている> と思ったものを取り上げました。
第41作以降は、読まないことに決めました。 フランシスのラスト作品は 「再起」 にしておこうと...。 [2]わたしの独断と偏見による、フランシス ベスト5作品は、以下の通りです。 (順不同) 第 1作 「興奮」 第 2作 「大穴」 第 8作 「罰金」
第12作 「煙幕」 第26作 「黄金」 取り上げた24作品すべてが、ほんとうにすばらしいオススメ本なのですが、
<とりわけきわだっている5作品> という意味です。 ※亡くなったあとまで長く読みつがれる作家 (クリスティーのように) というのは、そう多くはありません。 フランシスはどうなのでしょう。 かれの才能と魅力が、同時代人だけにしか楽しまれないとしたら...、 とても残念だし、もったいないです。 |
ディック・フランシス
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「再起」 つづき
6年ぶりの新作に、フランシスが登場させたヒーローは...。
ああやっぱり...。 シッド・ハレーでした。 ハレーは、チャンピオンジョッキーとして人気を博していたときに、、不運な落馬事故で騎手生命を絶たれ、
その後、私立探偵として、非凡な活やくをしている人物です。
シッド・ハレーに対する、作者のつよい思い入れが伝わってきますが、それは読者のがわも同じで、
競馬シリーズのヒーロー人気投票を行えば、かれが、ぶっちぎりの1位になることは、疑いなしです。 さて、ハレーはまたも、競馬界を舞台に不正をはたらく人びとと、するどく対峙し、
身の危険を感じつつも、ひるむことなく、悪を追いつめていきます。 しかし、今回、ハレーはわが身だけでなく、愛するものの安全も守らなくてはなりません。
そうです。 苦い離婚の傷がようやく癒えて、ハレーはいま、愛する女性と暮らし始めているのです。
つねにハレーをはげまし受け入れる、チャールズ (別れた妻の父親) の友情が、読んで心地よく、
やっと、ハレーに穏やかな好意を向けられるようになった、ジェニー (別れた妻) の心境がうれしく、 ハレーの伴侶としてふさわしい、恋人マリーナの魅力が印象深く、 ...平和であたたかな読後感となりました。 良い本でした。 86歳のフランシス、こころゆくまで楽しめました。
さて、30年以上、フランシスの翻訳者として活やくしてきた菊池光が、この作品の直前に亡くなって、
この本は、菊池光にながく師事していた、という女性が翻訳しています。 やや危惧していましたが、まったく違和感のない文体で、ほっとしました。 |
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「再起」 ディック・フランシス (競馬シリーズ第40作)
1年に1作ずつ、30年以上にわたって、コンスタントにシリーズ作品を発表しつづけてきた、フランシス。
前回ご紹介の 「騎乗」 (発表年1997年) のあと、 「出走」 (1998年)、 「烈風」 (1999年)、 「勝利」 (2000年)、 と、つづいたところで、作品発表がとぎれてしまいました。 フランシスは、すでに、80歳をすぎていたし、
執筆のよき協力者 (資料リサーチなど)、 メアリー夫人を亡くした落胆も、大きかったようです。 もう、競馬シリーズ新作は望めない...と、ファンがあきらめかけていたとき...、
6年の空白のあとで、この作品が発表されたのです。 その名も、 「再起」 という邦題とともに。 2006年末の、あの、翻訳ミステリ界の興奮を、なつかしく思い出します。
図書館で借りる、という発想はなく、すぐに購入しました。 (早川書房ハードカバーで1900円)
ミステリファンの故児玉清が、巻末に、熱くて長い解説文を載せていました。 何となく、そのまま大事にしまっておいて、実際に読んだのは、ごく最近です。 作者86歳のミステリ作品...。
大丈夫でした! 期待は裏切られませんでした! うんちくと思い入れが長すぎて、すみません。
作品そのものの紹介については、次記事をごらんください。 |
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「騎乗」 ディック・フランシス (競馬シリーズ第36作)
フランシスの競馬ミステリ・シリーズ中、最年少主人公の登場です。
ベネディクト (ベン) ・ジュリアード、17歳。 やっと高校を卒業したばかりのかれは、アマチュア騎手をめざして、日々、訓練にはげんでいます。 ある日、ベンは、父親 (成功した実業家。 最近、政界進出を考えている) に呼び出され、
<アマチュア騎手のことは忘れて、わたしの選挙運動 (下院議員) を手伝ってくれないか> と、頼まれます。
父ジョージは、30代半ばをわずかに過ぎたところ。 (20歳になるかならずで、ベンを生んだのです!) この父子が、悪質な妨害を乗り越えて、選挙の勝利をめざす、というのがメインストーリーです。
イギリスの議会選挙のようすがうかがえて、とても興味深いです。 父も息子も、フランシスの典型的なヒーローです。 (知的で、勇敢で、ストイック。)
とくに息子ベンの、17歳と思えない成熟ぶりにおどろきますが、 77歳の作者が造型しているわけだから、ま、当然といえば言えますかね。 くっきりきわだった文章が、あいかわらずすばらしい上に、
今回は、第一級のカッコイイ男性が、ふたりも (10代と30代) 鑑賞できることが、 かなりのお得感です。
さて、数年ごしに、ながながご紹介してきた、ディック・フランシス 競馬シリーズ。
このフランシス書庫で (このブログで) 取り上げるのは、あと1作品のみ、となりました。 次記事で、つづけてご紹介します。 |
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「不屈」 ディック・フランシス (競馬シリーズ第35作)
フランシスの主人公はみな (ひとりの例外もなく)、 タフでストイックで、聡明でもの静か。
およそ、実際には存在し得ないような、カッコイイ男性です。 これらの男性をうっとりと鑑賞するのも、フランシスを読む大きな楽しみなのですが...、 主人公のタフさを強調するために、フランシスは、
すべての作品の終盤で、主人公が、大きな肉体的苦痛に見舞われるように、 ストーリーを組み立てます。 この部分がわたしは嫌いで、できれば読まずにすませたい。
(必ず助かるとわかっているのが、救いですが。) さて、数ある作品のなかで、とくにこの本の暴力シーンが印象にのこっているのは、
暴力がとりわけ激しい (読んでいて、思わず手にじっとりと汗をかくくらい) というだけでなく、 暴力にたいするイギリス人の反応が、興味深かったからです。 悪漢たちがとらわれ、
何が起こったか (主人公がどれほど激しい暴力に遭遇したか) をひとびとが知ったとき、
かれらが主人公にたいして感じるのは、当惑です。 (興奮・賞賛・好奇心、でなく) 主人公がかれらにたいして感じるのも、当惑です。 (興奮・自慢・勝利感、でなく) 直接そのことにふれる者は誰もいず、みな、目を伏せてきまりわるそうにしています。
まるで、とんでもないセックススキャンダルか何かのようです。 節度と中庸を重んじる、イギリス人気質。
何でもかんでもワォー! っと大さわぎするアメリカ風より、はるかに好ましく感じられました。 それはともかく、主人公 アリグザンダー・キンロック (29歳、画家)、 ほんとうにカッコイイです!
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