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アガサ・クリスティー

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ここまで、クリスティー42作品をご紹介しました。
「ミステリの女王」 に敬意を表し、
オススメ作品のみでなく、 『?』 という感じのものも、すべて紹介してあります。
未読作品がまだけっこうありますがここでいちおうのまとめをしてみたいと思います。
 (短編集は始めからパスしているし、長篇でも、いかにもつまらなそうな感じのものは敬遠。)


<わたしのクリスティー ベスト3>

「ナイルに死す」 が、ぶっちぎりのベストワンです。  
愛される者の得意と愛されない者の失意を、ひりひりと対比させつつ、
異国情緒あふれるナイル川観光をうまくからめて、 『おみごと!』 というできばえです。

2位と3位は もの言えぬ証人」「忘られぬ死」 です。


<わたしのクリスティー ベスト10>

4位から10位までは、以下7作品です。 (順不同)
「エッジウェア卿の死」 「鏡は横にひび割れて」 「葬儀を終えて」 「ゼロ時間へ」  
「ポアロのクリスマス」 「マギンティ夫人は死んだ」 「満潮に乗って」
  


このほかにも忘れがたい作品がたくさんあり、クリスティーの才能にはほんとうに脱帽です。
みなさんも、ぜひこの書庫を参考に、クリスティーの魅力をじっくりとたんのうしてください。
(ネタバレ記事はひとつもないので、ご安心を。)

クリスティーファンの方々と、ランキングを比べあうのも楽しそうです。
  「青列車の秘密」 アガサ・クリスティー   *1928年発表

  アメリカ人の大富豪が、愛するひとり娘のために、ある宝石を手に入れます。
  ロシアの女帝エカテリーナ二世が身につけたとされるルビーで、
  「火の心臓」 と呼ばれる、歴史的な逸品です。

  かれのひとり娘は、イギリス貴族と結婚していますが、その結婚生活は破綻寸前。
夫婦のあいだに愛はなく、夫にも妻にも愛人がいます。
父親の富豪は、しきりに離婚をすすめますが、娘は煮え切らない。
また、夫のほうは、貴族の爵位はあっても金がなく、いままさに破産の危機に瀕しています。

こんな夫婦が、互いにそれと知らぬまま、保養地リヴィエラ行きの豪華な 「青列車」 に乗りこみます。
なんと、それぞれの愛人たちも、たまたま同乗して。
そして、ああやはり。 列車内で起こります、殺人事件が...。

偶然乗り合わせていたポアロが捜査にのりだして...。
...と、クリスティーお約束の展開になっていくので、
フムフムと安心して読みすすむことができます。

数年まえの 「クリスティーまとめ読み」 からもれてしまった作品です。
先日図書館で見かけて、借りてきました。

楽しく読みましたが、すでにご紹介した 「わたしのクリスティベスト10」 に食い込むほどの作品ではない。
クリスティーとしては、平均的なできばえだと思います。
  「ねじれた家」 アガサ・クリスティ (1949年発表)

  前回ご紹介の 「ハロウィーン・パーティ」 は、クリスティ79歳の時の作品。
  今日ご紹介の 「ねじれた家」 は、59歳の時の作品。
  老いによるおとろえは、心配しなくてよさそうです。

  語り手のチャールズ・ヘイワードは、上流階級に育った好青年。
外交官としての仕事中に、ソフィア・レオニダスという美しい娘と知り合って、恋に落ちます。
いよいよプロポーズ・結婚、というときに、ソフィアの祖父が亡くなります。

アリスタイド・レオニダスは、けた外れの大富豪。
最近若い女性と再婚しており、一族のあいだで 「骨肉の遺産争い」 が持ち上がりそうな気配。
そしてさらに、老人の死が自然死ではないらしいことがわかって...、
クリスティミステリのおぜん立てが、すべてととのってきます。

ポアロもマープルも登場しない、 「ノンシリーズ」 というスタイルで描かれます。
クリスティらしい、危なげのない作品に仕上がっていて、安心して楽しめます。
  「ハロウィーン・パーティ」 アガサ・クリスティ (1969年発表)

  5〜6年まえ、クリスティの長篇ミステリを、数十冊まとめ読みしました。
  早川書房が、クリスティ文庫と銘打って2000年ごろから新装出版したシリーズが、
  とても読みやすくて (活字が大きい!)、すっかり気に入ってしまったのです。

    そのとき、図書館在館のものはほとんど読み切ったように思っていたのですが、
先日、読み残し本を2冊発見して、借りてきました。

著者分身のような、女流推理作家オリヴァ夫人は、知人宅のハロウィーン・パーティに招待されます。
パーティ席上で、12歳くらいの少女がとつぜん言います、
「あたし、前に人殺しを見たことがあるのよ」 と。
パーティが終わったとき、その少女は死体で見つかります。
動転したオリヴァ夫人は、友人ポアロを訪問し...。

というようなミステリですが、何と何とかったるい小説だったことか!

ミステリの女王クリスティにも、もちろん凡作はあるわけですが (ただし、その数はとても少ない)、
この作品を発表したとき、クリスティが80歳近い年齢だったことを思うと、
つまらなさの主因は 「老い」 だったのかなあと、ちょっと寂しいです。

借りてきたもう1冊の方 (次回ご紹介) は、これよりずっとましですが、それでも、
燦然ときらめく 「クリスティ、ベストオブベスト作品群」 には、遠くおよびません。


「春にして君を離れ」 アガサ・クリスティー (1944年発表)
 
すすめてくれる人がいて、読んでみました。
ごく若いころ読んで、 「なあんだ、ミステリーじゃないのね」 とがっかりした記憶はありますが、
ストーリーなどは、すっかり忘れていました。
 
主人公ジョーン・スカダモアは、40代後半の美しい女性です。
弁護士として成功している夫は、つねに穏やかで愛情深く、
3人の子どもたちはそれぞれ、順調に親元からの独立をはたして、幸せな家庭を築いています。
 
不幸や不運を、ほとんどまったく経験したことのないジョーン。
これまでの人生を振り返るたび、喜びと満足感でいっぱいになるジョーン。
 
しかしあるとき、ジョーンの人生観に、小さなゆらぎが生じます。
バグダッドに住む末娘の病気見舞いに行き、その帰路で、女学校時代の友人にぐうぜん出会ったときに。
 
見苦しいほどに老けやつれた相手を見て、同情と優越感を禁じ得ないジョーンですが、
おどろいたことに、話し始めると、相手はちっとも不幸そうでなく、むしろ陽気でいきいきしています。
そして、なぜか時おり、ジョーンを気づかうような、繊細でやさしい表情を浮かべるのです。
 
あの表情の意味はなに?
何かがジョーンの心に、とげのように引っかかります。
その後、天候の影響で、中東の小さな鉄道駅で、何日も足留めされるジョーン。
 
そこでジョーンは...。 ...という小説です。
 
誰も殺されないし、何の犯罪も起きませんが、
全体がたくみなミステリータッチで、さすがアガサ・クリスティー!と感心しました。
 
*栗本薫が解説を書いていて、そのなかで、 「夫のロドニーはいやなやつだ」 という、夫君の言葉を
 紹介していたのがおかしかったです。 (ちょっと、いや、かなり同感)

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