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松本清張

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◎「松本清張の残像」 つづき

著者 (早稲田大学文学部史学科卒業の、いかにもな才媛) は、どういうつもりでこの本を出したのか。

[1] 「昭和史発掘」 で、評価されるべきはわたしであって、清張ではない。
[2] とくに清張をおとしめるつもりはない。 編集者って、もともとそういう裏方仕事をするものだし。

聡明な藤井女史は、もちろん、 [2] の線で読まれるように、気をつけてはいます。
でも、それならなぜ、巻末の年譜のところで、平林たい子の、こんな、清張批判をわざわざ載せているのか。

<...朝から晩まで書いているんですけど、何人かの秘書を使って資料を集めてこさせて、その資料で書くだけですね。 ... それで、松本といえば人間ではなくて 『タイプライター』 です>

・・・・・・・・。
『タイプライター』 のような松本清張に、幻滅したか、というと、そんなことはありません。

一度に十数本の連載をかかえていたという、超売れっ子作家に、取材・資料収集など、できるわけもなく、
手元に用意された材料を、ただひたすら文章化していくしかなかったのであろう、松本清張。

それでも、あれだけの熱心な読者を獲得し、
死してのちもなお、つねにあたらしい読者を魅了しつづける、松本清張。

平林たい子の罵倒も (罵倒というほかありません)、
三島由紀夫の侮蔑も (『文学の名に値しない』 といって、清張を文学全集に入れることを断固拒否したとか)、
担当編集者 藤井女史の微妙な背信も、

もはや、松本清張の巨人性を揺らがせることはできない、 と思います。

◎「松本清張の残像」−−− 藤井康栄 (2002年、文春新書、700円)

8年まえの出版当時、かなり話題になったので、買って読みました。
今回再読して、8年まえと同じ違和感を感じました。

著者は、文藝春秋社で、30年にわたって (1961年〜清張の死)、 清張の担当編集者だった女性です。
のちには、北九州市の、清張記念館の設立にふかく関わり、館長をつとめたりもしています。

清張の知られざる素顔が、さぞ興味深く紹介されるのだろう、と期待して読むと、軽くかわされる感じがします。
前半は、 「半生の記」 を中心に、作家の生い立ちが話題になって、まあOKなのですが、
後半は、「昭和史発掘」 がテーマになっていて、ここが、違和感の正体 なのです。

「昭和史発掘」 は、昭和初期から二・二六事件までのできごとを、20くらいのテーマで取り上げて、
週刊文春 長期連載のかたちで、書きつがれたもので、清張代表作のひとつです。
膨大な労力を必要とする、たいへんな力作、とされています。 (わたしは読んでいませんが)

さて、担当編集者であった藤井女史は、その膨大な労力の部分、つまり、
<テーマを決めること>、
<取材をすること>、
<資料をさがし、ととのえること>、

は、すべて自分がやった、と書いているのです。 そして、その苦労話をえんえんと書いているのです。

つまり、清張がしたことは、
<すっかりお膳立てのととのった材料を、ただ文章にまとめただけ>、
ということになるのです。

これって、暴露本?
いえ、そういうふうには感じられません。
あくまで、 「昭和史発掘」 の成立事情を淡々と描いているだけ、というスタンスになっています。
でも...。  (次記事につづきます)

◎「松本清張傑作選 6」−−− 桐野夏生 選 (2009年、新潮社、1600円)

6人の選者による、全6巻の、清張傑作選です。
既出とあるのは、宮部みゆき選の文春文庫 (全3巻) ・ 清張自選の光文社文庫 (全11巻)、との重複です。

<発作> 既出
<鬼畜> 既出

<馬を売る女> 競馬の予想で金もうけをする女。 その金をねらう男。
<密教律仙人教> いかがわしい教義で新興宗教をおこす男と、それをめぐる女たち。

<赤いくじ> 既出


<馬を売る女> は、短編と言うより中編と言ったほうがよさそうな、かなり長い作品です。

ヒロイン (31歳) は、中堅会社の社長秘書ですから、いまの世なら、かなりのエリート女性のはず。
でも、清張作品では、『老後のために必死で金をためる、哀れなオールドミス』 という描かれ方です。

犯罪小説として、出色のできだと思いました。
ヒロインが、社長への電話を盗聴する場面など、スリル満点。
深津絵里あたりの主演で映画化したら、当たりそうです。

◎「松本清張傑作選 5」−−− 宮部みゆき 選 (2009年、新潮社、1600円)

6人の選者による、全6巻の、清張傑作選です。
既出とあるのは、宮部みゆき選の文春文庫 (全3巻) ・ 清張自選の光文社文庫 (全11巻)、との重複です。

<月> 学閥からはじき飛ばされた不遇の学者が、献身的な教え子の援助で、細々と研究をつづけ...。
<恩誼の紐> 父を犯罪者にしないために、9歳の子どもは先まわりをして...。

<入江の記憶> 父が叔母をなぐっていた記憶から、さまざまな事実がほぐれてきて...。
<夜が怕い> 父が、なぜ生家を出されて他家に養子に行ったのか。 考え込む息子。

<田舎医師> 暮らし向きの異なる親戚のあいだに、嫉妬と殺意が...。
<父系の指> 既出

<流れの中に> 父の人生を思いやる息子。 <夜が怕い> の同系列。
<暗線> これもおなじテーマ

<ひとり旅> 仕事であちこちを旅する男。
<絵はがきの少女> 写真絵はがきにうつっている、かわいらしい幼女。 この子の人生を追いかけて。

<河西電気出張所> 15歳で学校を終えた、清張の分身少年が、電気会社の給仕としてはたらく。
<泥炭地> 上の作品と、同テーマ、同内容。


自身の子供時代や、父の思い出などをモチーフにした作品が多く、地味でマイナーな選です。
あまり面白くはなかったけれど、全部読み終わると、ある種独特の、さびしいような、わびしいような、
現実感がうすれて、ボーっとかすんでいくような、ふしぎな気持ちになりました。

<月> は、不遇の学者ものですが、 <断碑> のような激しさがなく、ひたすらわびしいところがGOOD!
<絵はがきの少女> は、切なく、やるせない話でした。

◎「松本清張傑作選 4」−−− 佐藤優 選(2009年、新潮社、1600円)
※第3巻だけがなぜか、図書館に所蔵されていないので、やむなく、2巻から4巻にとびます。

6人の選者による、全6巻の、清張傑作選です。
既出とあるのは、宮部みゆき選の文春文庫 (全3巻) ・ 清張自選の光文社文庫 (全11巻)、との重複です。

<共犯者> 既出
<殺意> 既出

<捜査圏外の条件> 既出
<声> 既出

<腹中の敵> 既出
<群疑> 家康の家臣 石川数正は、家康の使者として秀吉に会うたびに、好意が増していくが...。

<山師> 既出
<点> 既出

<張込み> 既出


選者 佐藤優は、あの 「国家の罠」 の著者です。
かれの選は、かなりオーソドックスですが、 (そのため、9編中8編が既出となっています)、
海堂のマニアックな選のあとでは、かえって好感が持てます。 

あとがきにも力がこもり、じつに9ページも割いて、作品解説その他にあてています。
『清張ほどのひとの、選をまかされたからには、誠心誠意頑張ろう』 という、つよい意気込みが感じられます。

海堂尊にもぜひ、こういう謙虚な姿勢を、持ってほしいものです

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