東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市で昨年11月、新しい在宅ケアのネットワークを作るための、初めての勉強会が開かれた。介護や看護、医療の専門家約100人が集まった。うわさを聞いた市民たちが、さらに50人ほど加わった。ぼくはこの勉強会に、ボランティアで講演を頼まれた。
町の復興とは、建物や商店街をつくるだけではない。「年をとっても安心」という在宅ケアのネットワークをつくることも大切だ。高齢者にやさしい町は、障害者にも、子どもたちにもやさしい町になる。在宅ケアを充実させることで、若者の雇用の機会も広がる。
勉強会の翌日、仮設住宅の巡回診療に行くと、
認知症で寝たきりの母親を、息子さんが介護していた。キャンプ場の管理人をしていたが、震災後、仕事がなくなった。やがて、介護施設で働くことになった。
息子さんが働いている時間は母親を見る人がいないため、娘さんが仕事を辞めて介護することになった。
娘さんの子どもは、震災後に不登校になったという。震災の傷は複雑で深い。それでも、介護と子育てに真正面から取り組んでいた。
新しい在宅ケアのネットワークは、こういう家族に寄り添い、身近なパートナーになってほしい。そう思った。
ところで、ぼくが陸前高田を訪ねたのは、勉強会で講演するためだけではなかった。実は、あるケアマネジャーの女性を応援したかったのだ。
彼女に会ったのは昨年夏。広島で開かれた日本ケアマネジメント学会で講演した際、楽屋を訪ねてきた。仕事を続けるかどうか、迷っている、という。
聞けば、3人の子どもを残して最愛の夫が津波で亡くなった。家も流された。眠れない夜が続き、仕事中に自動車事故を起こしてしまった。
7カ月入院。3回の手術を受け、右腕を失った。一度に多くのものをなくし、仕事に気持ちが向かわない−−。
ぼくは、あえて厳しい口調で言った。
「仕事を辞めてはダメ。仮設住宅で介護をしている人も、介護を受けている人も、つらい状況にいる。苦しい思いをしているあなたなら、困難のなかで生きる人たちの気持ちがわかるはず。苦しいだろうけど、仕事を続けていれば、回りまわって自分のためになる時が必ず来る」
もしも仕事を続けていたら応援に行く、と約束した。
その後、彼女が被災した要介護者のためにいい仕事をしていると知った。約束通り応援に行った。勉強会の後の懇親会で、彼女と再会した。
ハグをしたとき、義手に触れた。彼女はこの手で、悲しみを抱えた被災者の皆さんを支えているのだ。
エライなあ、と思った。
この町では、1500人以上の人が亡くなっている。行方不明や災害関連死まで入れると2200人近い。
みんな悲しみを持っている。勉強会を通じて、こうした人たちがつながることが大事だ。
企画したのは、市の保健師さん。彼女も被災者だった。家を新築し、あと1週間で引き渡しという時に、津波が来た。新築した家も、住んでいた家も流された。一度も泊まっていない新築の家のローンだけが残された。それでも負けていない。
勉強会後の懇親会では、県立高田病院の院長、石木幹人先生と隣り合わせになった。「諏訪中央病院の地域医療が、ずっと気になっていた。町の再生に役立てたい」と話してくれた。後で分かったが、石木先生も奥さんを津波で亡くしていた。
なんてことだ。みんな悲しみを抱えながら、歯を食いしばって生きているのだ。
仮設住宅の一角に、しゃれた建物を見つけた。昼はデイサロン。夜はみんなが自分でお酒を持ち込み、即席の「居酒屋」になる。仮設住宅に住む人たちの孤立化を防ぐ、地域の拠点だ。
外は荒涼として寒々しい。津波の爪痕がまざまざと残っている。でも、デイサロンの中からは楽しげな笑い声が聞こえる。のぞいてみると、おばあちゃんたちが10人ほど集まり、おしゃべりに興じていた。
あまりの明るさに、ついバカな質問をしてしまった。
「このなかで、家を流された人?」
すると、みんな一斉に「全員、全員」と笑い出した。
「家を流されなければ、ここにはいないのよ」
それはそうだ。でも、おばあちゃんたちは明るく、家を流されたことさえ笑い飛ばしている。
復興は遠いけれど、心は負けていない、と思った
毎日新聞くらしナビより掲載です。
こんな状況になっても皆さんは、前を向いて歩いて行かねばならないのですねぇ〜o(^-^)o
自分だけじゃないのだからと、もっと最悪な人もいるのだからと、思っているのかもしれないなぁ〜・・
いつ近畿にも来るかも知れない大地震であるけれど
↑の人達の様に対応できるだろうか。?
心が折れてしまうのでないだろうか?
それでも生きて行かねばならない。
辛い日々も開き直って生きるしかないのでしょうねぇ〜
どれだけの困難・苦痛・心身ともに
痛みが襲ったのだろうか。!?
と、考えると全国や世界の人々が差しのべた暖かい金品などを政治家たち政府機関や心もとない人達は、どう対処したのだろうか。?
人との絆・思いやりの心・痛みを忘れてはいけないと感じましたね。(*^^*)