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夏といえば怖い話。書かせてもらいます。
私は今朝寝坊してしまい、駅までバスで行くと間違いなく遅刻してしまうのでタクシーで出勤することにした。運転手に時間がないと頼んだらそのタクシーは住宅街に入って行った。運転手が言うには駅までショートカットができるのでよく使う近道らしい。15分ほど走っただろうか一軒だけタイムスリップでもしたような古びた木造アパートが私の目に飛び込んできた。しかしそんなことより私が気になったのは、そのアパートの一階の一番左の部屋にひとりの女性が入って行ったのだ。しかもその女性がびっくりするほど美人なのだ。私は生まれて今までこんなに美しい女性にあったことがあるだろうか?一瞬だったので細部までは良く見えなかったが、彼女には何かを引き寄せるオーラのようなものを私は感じた。
いったいどんな目をしているのだろうか?気になって仕方なかったが私も企業戦士サラリーマン。こんなところで道草をくってる場合ではない。後ろ髪を引かれながらもそのまま職場に急いだ。
19時。仕事が終わり帰りはバスにしようかと思ったが、どうしてもあの女性が気になる。誘惑に負け私はまたタクシーに乗ってしまった。
アパートの前につくと運転手には「何年ぶりかの知り合いなのでぜひ会いたい、挨拶だけですぐに終わるから待っててくれ」と、即席の嘘でごまかし彼女の部屋の前までかけて行った。
女性にはなんて言えばいいだろうか?セールスマンになりきるか?前に住んでたこの部屋の知り合い?こうなったら言い訳なんてどうでもいい。出たとこ勝負だ。
玄関の前に立ちチャイムを押す。しかし彼女はなかなか出ない。おかしい。留守か?3、4回押しても出ないので私は扉の中央よりやや上にある小さい覗き窓から中の様子を伺った。悪いことなのはわかっていたが、なにぶん古いアパートなので年期の入ったレンズは取れてしまい、部屋の中の様子は丸見え・・・のはずだった。
しかし私が覗いた彼女の部屋は真っ赤でそれ以外には何もなく。本当に赤一色だった。
きっと目隠しのために赤い布でも貼っているのだろう。と私はあきらめて、待っているタクシーの戻って行った。
がっくりと肩をなでおろした私を見て運転手が「いませんでしたか?」と聞いてきた。私はただ「はい」とだけ答えた。そしたら運転手が「美人な人ですよね」と言ってきたのだ。私はとっさに「知ってるんですか?」と聞いた。運転手は「ここらじゃ結構有名な人ですよ、美人なんですけど、アレがねぇ、気になっちゃうんだよなぁ」私はついつい「アレ?」と聞いてしまった。運転手は「お客さ〜ん知り合いじゃないんですか?」と怪しそうに私を見ている。私は言葉に困ってしまった。運転手はそんな私を横目にこう言った「目ですよ。真っ赤じゃないですか」 えっ・・・?
もしかしたら私が覗いた真っ赤な部屋に彼女はいたのかもしれない。
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