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ハードカバーのよしもとばなな、読んでみました。
これは曰く付きの小説で、実は母が、母の友人に
『王国』の主人公に似ていると言われたらしいんです。
そこで早速(というほど早速ではなかったけれど)二人で読んでみました。
これが全然どこが似ているのか分からない主人公だったのですけどネ。
何はともあれ、「その1」「その2」を一気に読んだ感想を書いていきましょう。
よしもとばななは、神がかった力を持つ人がいることを、
何も疑わないで、もしくは疑わないかのように書いてしまう作家ですが、
これも、そうした作品群の一つに分類されるでしょう。
おばあちゃんの作ったお茶は人々の傷を癒し、
楓の占いは、その人の所持品に触れることで、細部までをもはっきりと見てしまう。
主人公の雫石にもちょっとした力(特に嗅覚の力)が備わっている。
私の日常からしてみたら少し離れたところにいる人たちのお話にも見えるけれど、
抱えている不安や喜びは同質のもので、
だから彼らが持つ力も、私達がこれが少し得意、といった程度のものに思えてきます。
この小説は雫石のおばあちゃんが作る薬膳茶のようなもの。
読み終わったときにほっとして、体の奥深くに、暖かく火が灯ります。
感動したり、興奮したりするたぐいのものではなくて、
淡々と流れる日々の中の小さな幸せに心が満たされる感覚です。
また、山から都会へと降りてきた雫石が感じる違和感や陥ってしまう罠には、
私達が生活する中で忘れがちなことが多々あり、
いちいちはっとさせられるんです。
この『王国』はシリーズもの。
今年中に「その3」が出るということ。
もちろん楽しみは楽しみなのですが、
この『王国』は先が読みたくて仕方がない!というような、
シリーズものに付きものの感じが全くないんです。
今、こうして、「その3」の発売を待つ間も、
雫石はどこかの町で、お茶を入れているんだろうなあ。
おばあちゃんはマルタ島でサボテンを育てているかなあ。
と、なんだかこちらも気長に待ててしまうのです。
気持ちがささくれだっている時、優しい気持ちになれる1冊です。
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