「神風戯言」

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「199×年 10月×日」

イメージ 1

※このスペースに書かれた内容はフィクションです。
また、映像は本文とは直接関係ありません。




++ ++




今週も終わった。 いつものように会社を出てから逗子寮には寄らず、そのまま愛車ハイエースを伊豆に向け走らせる。 サーフボード、ウェットスーツ、サンドバッグ、酒その他もろもろ必需品を載せた我が愛車はひとまず134号海岸線を西へ西へと突き進む。寝袋も2つ用意してある。 明日明後日は朝から晩までサーフィン三昧だ! 向かっている台風の影響で車は大きく揺れる。こんなじゃ熱海ビーチラインは通行止めかも。  


台風が北上中しかも二子玉、予定進路からみて伊豆は大荒れ間違いなし。 ワイパーの音を聞きつつ今後のシュミレーション、まず今夜は台風直撃だ。 進路下にある伊豆地方はモロ暴風圏内に入る。 通過は夜半2時頃だから明朝は台風一過で晴れ上がるだろう。 そして台風が掻きなでた海面はザクザクのボッコボコ状態、沖合で形成された爆弾のようなものすごいウネリが次から次へと押しよせる1日。 


ファンサーフ出来るのは昼以降あるいは午後からだろうか、午前中は決死の覚悟で海に入ることになろう。 あるいは全く入れないかもしれないけれど、それにしてもその間は


「団地が動いているような」


凄まじくデカイ波コイツを朝から存分に眺めることが出来る。 嬉しいじゃないか! 自然の脅威を目の当たりできる瞬間、体験できる瞬間を毎週ここで待ち続ける自分、今日が待ちに待ったその日なのである。 カレントを利用し隙あらば朝からコイツに真っ向挑んでやろうとか思うのだが、実際その怒りの海を見れば最初はやっぱり間違いなくヤバイ!と思うのである。 このUヶ浜は普段海水浴場でありサーフィンには適していない。 ドン深のこの浜はサンドバーの形成だのはあまり関係なくていつでもバクダンパーだ。 ひょいっ、と上がった次の瞬間爆裂する波。 普通サーファーには嫌われる波・・・。 


それでよい。


こんなデカ波があがる日を首を長くして待っているハードコアなサーファーがここにはいる。 普段は漁船を操りあるいは山で農業に営んでいる彼らは、暇を見つけてはこの海岸をチェックしている。 そこに自分がいるので自然と仲良しになる。 格好良く横に滑るなんてこと無理にしなくていい。 デカイ波の、一番上から真下まで「チョッカリ」で降りればよいのである。 だが波の大きさは、その日一番デカイのがいい。ただこの一本乗る「だけ」の為毎週3時間かけてここに。 冷たい海の中その1本「だけ」のために1日中待てる。 寒くなったらウェットの中でオ○ッコ攻撃じゃ〜(キタネ)。 海中にいるのは確かにひとりなのだが何故か全然寂しくない。 なぜだろう。   



一期一会。



Uヶ浜には1230到着。 すでに海岸は台風が間近に迫り物凄い状況、木々は弓のようにしなり荒れ狂う風雨。 こりゃかなわんと車内に戻り車の移動、海岸に向かって右側にある派出所の間に1台分をあけるのが自分の駐車位置。 フロントガラスのすぐ前に垣根があるが、昼間はその上から海を見渡すことが出来るのはハイエースだからだろう。 ただ今は真っ暗闇、海から聞こえるのは爆砕する波の音と轟々蠢くうねり音。 周りには誰もいない、自分ただ一人。 誰もこんな日こんなとこに来るわけもなし。 


運転席のシートを倒してまずは一献かたむけ、ほうっとため息をうちつつ明日の作戦をたてる。 この時が一週間の中一番うれしい。 0400起きで波をチェックして、隙あらば沖に出てやろうと画策する。 「辛口一献」500mlパックを傾け5杯、6杯重ねる頃には間もなく睡魔が襲い、後部フラットシートに避難。 あらかじめ準備してあるフカフカなシュラフの上にば〜んと寝そべり明日を想うこの嬉しさよ! 車外は物凄い状況、風雨は最狂車ごと横に倒してやろかの勢い、駐在所裏のトイレまでここから10mも無いがこりゃドアは開けられん。 そして間もなく夢の中へと。


明けて翌朝。 台風は明け方未明日本海へ抜けたらしい。 目前に広がる青空、だが海は、目前にある海はといえば、グツグツ煮えたぎる鍋の中みたいな状態。 水平線ははっきりせず、こんもり盛りあがっているのだが、海岸線から500メートル前後のところで7列くらいの「山脈」を形成、モリモリ押しよせてくる。 


予報によれば南伊豆は波高7メートルとのことだが、沖の沖で砕けているのはもっとありそう。 ハイエース車内からは水平線が全く見えない。 この状況を前にして確かに恐怖は感じるのだが、なんだか懐かしい友人が遠方よりわざわざ来てくれたという錯覚に陥るのだ。 見た最初は確かに恐怖を感じるのだがそのうち次第に顔がほころび笑みさえする自分、牙をむき咆哮する山脈が一瞬穏やかな表情、やさしく自分に言い寄る。



”そんなとこに突っ立ってないでホラホラ〜、早く来なよう ”



”OK ”



ディスチャージの名曲「DOOM’S DAY」をかけテンションをあげつつウェットスーツに着替える。 滾るアドレナリン、足の裏は地につかず。 山脈の向こうにはもう朝日が登っているのだろう、だがまったく見えない。 逸る気持ちを抑えつつ、しかし何処か冷静な自分。 昨夜呑みつつ塗りたくったボードの表面のワックスの具合をしっかり確認、爆裂する海をみて沖に出る最良のルートとタイミングをチェック。 

やはり駐在所前のカレントがいい。 気合いを入れるために空手道の挨拶「十文字」を切る。 リーシュコードをボードに巻き砂浜を歩く。 10分ほどセットの間隔を計測して沖出のタイミングを最終確認しつつ、カレントを見つける。 ブレイクポイントはうねりの大きさにより岸から50m、80m、150mのところだ。 一瞬の間を逃さず息を吸いこみドルフィンスルー開始。 逝くぜ!



”また、逢えたね! ”




(おしまい)

閉じる コメント(4)

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命の懸け具合が違いますが、パラグライダーをやっていた自分を思い出しました。
このシリーズ好きです♡\(◎o◎)/!

2009/10/8(木) 午後 9:08 [ JIRO@そろそろヒルクライマー ]

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ぎゃはは〜、このフィクション主人公やっぱり変ですねえ(笑)。26歳から30半ばまで毎週こんな暮らしをしてたようです、しかもたった独りで(笑)。デカイ波に乗り損ない、波の直上からポロリ海底に叩き潰されたのち、海中でグルグル洗濯機状態になるのがまたイイとか言ってたみたいです(笑)。

2009/10/8(木) 午後 10:10 [ 「幸浦雷撃隊」&「工房神風」 ]

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今朝の鎌倉由比ガ浜はすごかったですよお!
まさに神風さんのフィクションのとおり数メートルの高さの波が何列も並び、高潮と相まってあの砂浜がまったくない状態でした。
一部では道路の上まで波が洗い、帰り道では土砂やら木の枝やらが路上に散乱していました。
昨日の朝はサーファーたちがずいぶんと海に出ていましたが、さすがに今朝の波のなかには人影はありませんでした。

2009/10/8(木) 午後 11:39 [ ask**174 ]

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S澤様おはようございます!おおお、由比ガ浜はそんなでしたか!逗子海岸にある幾つかのシークレットポイントの波はチューブが巻いてました!(一瞬でしたけど)それと、開成高校から一番近くの海岸への出口は押し流されたゴミと大量の砂で50センチほどかさ上げとなり、かがまないとトンネル(134号)を越せません。それに海岸トイレは使用禁止です。いや〜自然の脅威すさまじいですっ。私のウサギ小屋は辛うじて無事でしたっ(笑)。例会はどうぞ宜しくお願いいたします!

2009/10/9(金) 午前 8:48 [ 「幸浦雷撃隊」&「工房神風」 ]


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