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「197×年 6月×日」

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※このスペースに書かれた内容は全てフィクションです。
また映像は本文とは直接関係ありません。




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この円形の塔を僕たちは「おおづつ」と呼んでいる。




漢字にしたら「大筒」。通う中学校からおよそ4kmほどのところにあるこの「おおづつ」、どうやら浄水に関連したものらしい、という事まではわかっているけど、まあ結局のところそんなのどうでもいい。



「ただ、大筒を登るのみ」




塔の大きさは直径15mほどで高さもやっぱり15mほど、かなり大きい。 コンクリート製で表面はザラザラかなり粗い質感だ。 所々コンクリがポロリ欠け落ちていて、その断面部には3センチほどの石の頭がゴロゴロ突出してるがこれ、芯材みたいな役割なのだろうか。 塔(いや筒か)の壁面はサビサビの梯子が1つだけかかっている。 それは塔の株から頂部まで達しているのだが、全体的に朽ちてかなりボロボロ。 所々脚をかける横の鉄棒まで朽ち落ちているので(腐食だろう)頂部まで登るとなればそれなりの覚悟と勇気(?)がいる。 何しろこの高さだから、まあ、落ちたら死ぬだろう。 

横の鉄棒「2本飛び」の箇所が、その途中に2箇所ある。 夏になると塔の周囲全面にツタが生い茂り、大筒はよりミステリアスな雰囲気となる。 戦車好きな自分から見たらココ、殆ど要塞、なんかのダイオラマにでてきそう(秘密基地みたい!)。 そういえば一昨日Iちゃんに見せてもらった九七式戦車のプラモはホントにカッコよかったなあ〜。 でもタ○ヤの1/35は自分にとっては高いし、ちょっと大き過ぎ。作ったら母親は怒るだろうし。 僕は見るだけにし〜ようっと。



暇つぶしに入った部活。 ほとんど体育館に入った試しなし。 



まるで帰宅部、サボリの常連。 だって、つまんないんだもん。 本日も最後の授業がとどこおりなく終わり、事前にしめし合わせたブーさんやT君、I君、ひ○あき(彼はT君と同じ名前なのだが、T君は彼を自分と同じ名前で呼ぶ。なんか変な感じ)が中庭に集まる。 これがレギュラーメンバーだ。あとは日ごとメンツが変わる。 僕たちは授業を終えると部活の活動場には当然向かわず、体育着を着たまま大筒を目指して歩き始める。 そこが別にどうというわけでもないのに。 

中学校の校門を出て、T坂を登りS公園を目指す。 途中の砂利道をあ〜だこ〜だ言いながら進むのだが、相変わらずこの道は閑散としていて寂しい。 車も殆ど通らないから、女子はこんなとこ夜危なくて歩けないでしょう。 しかしまあホント静かだな・・。 やっぱりウチはイナカなんだろうなあ。 とぼとぼ進みながらあれこれ思案。 来年は3年生だし、高校の事とか進路を真剣に考えなきゃいけないんだろうけど、でもやっぱり今は考えるのは、いいや、ヤメタ。 皆も同じ気持ちなんでしょう、そんな話題はぜんっぜん出ない。 今みんなの目的はただひとつ、



「ただ、大筒を登るのみ」



砂利道を進むと、途中広々とした畑となる。 そこから大筒までは目と鼻の先だ。 そうそう、トボトボ歩いてきたこの路は、毎年開催される持久走コースの一部になっている。 持久走に関しては得意でもないのに変なリキが入る自分、やはり親父の影響だろう。 今年もあわよくば自分とM、それにSとIとで、表彰台の一番高いところ目指して戦いたいところだが、昨年はMにゴール手前800mほどでスッパリさされた。 チクショー。 我が学年最速、サッカー部の彼は、噂では最近になって夜練習を開始したらしい。部活が終わってからまた走るなんて全く信じられないけど、何しろピュアで男気を感じるいい奴だから、それはあり得るだろう。 だが自分は夜走るのはダルいから朝練しようっと。



S公園の西側を突き抜けると、ようやく大筒。 



登ってもし落ちたら死んじゃうわけだし、皆その不安を払拭したいのでしょう、ベラベラ多弁になってきた。体育館の端から端までバック転できるジャッキー・○ェン好きのブーさんも少しずつ興奮してきた油ようだ。 大筒まではあと30メートル、筒の威容を目の前にして皆、再び寡黙となる。やっぱり遠目で見るより高さがあるなあ。 こええ。 思わずたじろぐけどまあ、とにかく目的を果たそう。 

ボロボロの梯子の下に到着。 皆の意思をここで確認、全員「登ろう!」。 まずはブーさんから。 軽々とクライム開始、そして2番目に自分、次にI君、T君、ひ○あきの順だ。 高所と閉所の恐怖症の疑いがある(とみなに言われた)自分はクライム中、極力そのそぶりを見せぬよう努める。 内心では毎回登るたびに心臓バクバク、口からビョッと飛び出しそうである。 登り始めの部分と中間地点に例の2本飛びセクションだ。 鉄棒懸垂のようにして何とかクリアする。 下を絶対に見ないように・・。 はあはあ。 どうにか今回も登頂成功〜! 



「ただ、大筒を登るのみ」



筒の丁部。 筒の外壁の厚みが確認出来て50センチ近くもある。 かなり頑丈なつくりだ。 筒の内部はたっぷりと水がなみなみと。 内部壁面には一応梯子も掛けられてはいるが、泳げない者は落ちたらおそらく黄泉の国だ。 この危険な状況に得も言えぬ達成感を得る僕たちはひょっとして「マ○」なのかもしれない。「○鹿は高いところが好き」、それは間違いなく僕たちの事だろう。 



「ただ、大筒を登るのみ」



慎重に大筒から降りた。
明日も多分、ここに来るだろう。




(おしまい)

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