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WONDER-WORLD
私は失敗したのではない。1万通りの上手くいかない方法を見つけることが出来たのだ。(発明王エジソン)

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「いわおの顔」って、なんじゃア?と言う方のためにご紹介します。
原文はアメリカの作家、ナサニエル・ホーソン(Nathaniel Hawthorne)の ”Great Stone Face” です。

「大いなる岩の顔」という邦題もあります。
こちらのほうが有名かもしれません。でも私は、小学校の国語教科書に載っていた「いわおの顔」が一番しっくりします。
 
昭和23年発刊の児童文学書「人面の大岩」の前書きにはこんな文が載っていました。
「・・・・これから日本の国を立派な文化国に作り上げる土台となる少年少女。 良い本を読んで良く味わい、良く考え、清らかな魂の人となり、世の中の為に尽くさなければならない・・・・」
 
 
では、始まり、始まり〜。
(これからの文章は昭和43年度の小六国語の抜粋です。本文は小学生向けでしたので、多くのひらがなを読み易いように漢字に変換しています)


 
西の空を茜に染めて、今、太陽が沈む。
その夕映えの中にくっきりと浮き出た「いわおの顔」。
幼いアーネストは、母と一緒に、家の戸口で、じっとそれを見つめていた。
 
いわおの顔・・・・・それは、アーネストの家から数キロ離れた山のなかほどにあった。
大きな岩がいくつも積み重なってできたその顔は、近付けばただの岩の塊にすぎないが、遠く離れてみると、さながら生きた人間の顔に見えた。
しかもその顔は、限りない愛情と気高さをたたえて、静かに村を見降ろしているのだった。

母はやさしい目を向けながら、アーネストに言った。
「私たちの村にはね、大昔から言い伝えがあるのですよ。
いつか、村から、いわおの顔そっくりの人が現れる。
その人は、その時代で一番気高く、一番立派な人になり村を幸福にすると言う言い伝え・・・
だから、いく百年もの間、村の人たちは、その人を待ち続けてきました。
けれど、まだその人は現れないのです。」

アーネストは、無邪気な目を輝かせながら言った。
「おかあさん、僕は、きっと、その人に会えるね。」
 
そそり立つ山の懐に抱かれたその村は、静かな、平和な村だった。
何事もなく、いく年かが過ぎ、アーネストは、年ごとに成長した。
夕焼けの中で母から聞いた言い伝えを、アーネストは忘れなかった。
いわおの顔を仰ぐごとに、彼は、少年らしい希望と期待に、胸を膨らませた。
その希望と期待とが、アーネストの性格に明るい光を与え、彼は、やさしくて考え深い少年に育っていった。
 
やがて、誰からともなく、こんな噂が村中に広がった。
「小さい頃村を出て、都で大金持ちになって、近く帰ってくる人が、いわおの顔とそっくりだ。この人こそ、言い伝えの人だ。」

その日は来た。
だが、アーネストは失望した。
大金持ちの目鼻立ちは、なるほど、いわおの顔にいくらか似てはいた。しかし、その欲深そうな目つき、思いあがった態度は、いわおの顔のやさしく温かい表情と似ても似つかぬものだった。
アーネストは、ひとり歓迎の列を離れて、悲しげにいわおの顔を仰いだ。
すると、いわおの顔がこう言って慰めているように思われた。
「きっと現れる。心配するなアーネスト。きっとそのうちに。」
 
 
またいく年か経った。
今はアーネストも、立派な青年になっていた。
誠実で勤勉なアーネストは、村の誰からも愛された。
一日の仕事が終わると彼は、いつも、いわおの顔を仰いで考えにふけった。あの顔のような 誇り高く気高い表情を持った人物がいつ現れるのだろう・・・と。
 
このころまた、うわさが広がった。
「この村出身の大将軍が帰って来る。この人こそ、言い伝えの人だ。」
しかし、アーネストは、やはり失望した。
「違う。いわおの顔は、こんな冷たい厳格な顔じゃない。」
ため息をついて山を見上げるアーネストに、いわおの顔はささやいた。
「心配するな、アーネスト。きっとそのうちに。」
 
平和な村に、月日が、また、矢のように過ぎ、アーネストは、もう中年になっていた。
立派な身分でもなく、大金持ちでもなかったが、誠実な、考えの深い人として、村中に知られていた。
苦しい時、悲しい時、考えあぐむ時、人々は、アーネストに相談した。
すると、希望を取り戻し、解決の糸口を見つけることが出来た。
 
そのころ、三たび噂が広まった。
それは、やはり小さい時に村を出て、今ではある政党の指導者として、大きな権力を持つ政治家であった。その人こそ、いわおの顔そのままだという。
けれども、期待はまたしても裏切られた。
村に帰った政治家の顔は、形の上では、いわおの顔と良く似ていた。
だが、その顔に、いわおの顔の慈愛深いまなざしはなかった。
奥深い理想をたたえた微笑みはなかった。
 
アーネストは、いわおの顔の声を聞いた。
「アーネスト。心配することはない。私は、お前よりずっとずっと長い間待っているのだ。」
 

(後編に続く)
 

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    小学校6年生の国語で習いました。50年も前の事です。学校で習ったことのほとんどを忘れてしまいました。が、これだけは鮮明に覚えております。そして少しでも近づきたい。と言う気持ちだけは今も持ち合わせております。

    [ 杉野十兵事 ]

    2017/4/8(土) 午前 9:14

    返信する
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    杉野様、コメントありがとうございます。
    私も小6の時でした。
    お互い、夢に向かって頑張りましょうね。

    sadatsugu

    2017/4/8(土) 午後 8:51

    返信する

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