ポケットにミステリを

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静かな炎天

若竹七海氏の葉村晶シリーズ。文春文庫の作品では第4弾なのかなあ(『プレゼント』は中公だったり、光文社の短編集にバラで入ってたりする)。

暴走トラックによる多重事故現場に居合わせた晶は、後日目撃証言を求められた。巻き込まれて死亡した小型車のドライバーの持ち物が行方不明だという。現場でそれらしきバッグを持ち去った人物を見たのを思い出した晶に、遺族は捜索を依頼する。(「青い影」)

誰がどう見てもイヤな人間が出て来る“イヤミス”は“イヤ〜な感じ”はするけれど通り越していっそ可笑しくなってしまう。だけれど若竹氏の作品にある怖さは、ごくごく普通の、特別悪気のない人物の振る舞いが晶に災難となって降りかかってくるところにある。事件を直接構成する人物が我が身可愛さに隠し事をしたり、他人を出し抜いたりというところではもちろん、それ以外の人物がちょっとしたワガママを押し付けることによって次々とさんざんな目に遭う晶の運の悪さは、年をとるにしたがってよりワラエナイ域へとエスカレートしていく。

全体に面白かったところあえてイチオシ訊かれたら『副島さんは言っている』か表題作。

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ささやく真実

ヘレン・マクロイのウィリング博士もの。巻末のリストに依ればシリーズ第3弾だそう。原題“The Deadly Truth”、発表は1941年。

型破りで豪華な暮らしぶりでパリの社交界を賑わせた実業家の未亡人・クローディアが戦禍を避けて3番目の夫と共にニューヨーク郊外へやってきた。彼女は自分に気のある化学者から研究中の自白剤を盗み、自宅のパーティ客に飲ませて混乱を引き起こす。それが文字通り自らの首を絞めることになるとも気づかずに。

文学的表現かと思いきやそれがガチな手がかりだったりして“華麗なる本格”というキャッチコピーが浮かぶ。手がかりの提示はフェアだし、論理がすんなり納得いくしで読後感◎。

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禁断の魔術

ガリレオFILE8にあたるらしい。長編と短編集とで通し番号つけちゃう横暴。

さっき「前回の酉年には何やってたんだっけ」てブログ遡ったら本読んでぱかりの日常でした。その年のマイベストが『容疑者X』で、他に挙げてたのが『犬どこ』と『館島』。ホノブさんもアツヤさんもこの間に立派になられて。ただ“今年の作家”てホノブさんと同時に挙げてたヒウヒウは遅れをとってしまわれましたなあ。

本題に戻る。
出れば買う加賀刑事シリーズと違ってハードカバーで買ったのは『容疑者X』までなガリレオもの、今回も文庫化されて相当経ってる。いつの頃からか妙にテレビドラマっぽい雰囲気になってきた気がしてそうなってしまった。使い勝手が良さそうな若い人物を中心部に据えるとか。

面白いには面白いのだけど、ルポライター簡単に殺され損だな(この人にだって人生があったのにね)とか、とってつけたような政治家擁護のためにお姉さんをこう描くって相変わらず東野さんは女にキツいとか、結局ガリレオの見せ場がいちばん大事なのかなとか、どうも読後感がなあ。

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米澤穂信氏の古典部シリーズ最新作。
『王とサーカス』を貸したら母親が大のホノブファンになり、図書館で借りては読んだらしい。新刊はなかなか順番が回らないからそのうち「アナタ買わないの!?」て言われると思い、買っておくことにした。

収録作品は掲載誌が複数だし、発表順と収録順が違うしでなんとなく人間関係とか個々人の成長の度合いとかに統一感がない感じなのが気になる。

神山市出身の童謡作家・江嶋にちなんだ市民合唱祭に参加するはずのえるが本番前の会場から姿を消したという。手がかりを探す奉太郎はえるが歌うパートの歌詞から彼女の気持ちを察し、手をさしのべようと決意する。(表題作)

本格ミステリとして読んでいる方には済まないが、特に表題作はそういうもんでもないだろうから盛大にネタバレ。
私、このタイトルの意味を完全に読み違えていました。お父さんのセリフだと思ってたよ。
「願わくは自由の空に」
「いまさら翼といわれても許さん、お前はこのまま籠の鳥だ」
そこでホータローである。省エネを旨とするホータロー。世界を股にかける姉に臆するでもなく、残り物を活かした焼きそばや冷やし中華や卵トーストをひとりで作ってもそもそ食べながら、本の世界に遊べるホータロー。えるが空へ飛び立とうというなら、蔵いっぱいしまい込まれているのであろう家の古文書でも虫干しながら、広い庭先を掃いたりして悠然と過ごしてくれそうなベスト婿養子ストなんじゃないの。
なんたって「後は任せろ」だもんね。

なんて思ってたよ。

どこから間違ってたんでしょう。気になるから以前の作品を読み返したほうが良いかなあ。

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さよならの手口

2014年には出ていたそうです。その時点で13年ぶりの登場だったらしい、若竹七海氏の葉村探偵もの文庫書き下ろし長編作品。

探偵稼業を休業しミステリ専門古書店に勤めた晶は遺品整理の依頼で出向いた先で建物損壊の事故に遭い、しかも大量のカビでアレルギー性肺炎を起こし入院を余儀なくされた。めでたく退院した日、同室だった元女優・吹雪に失踪した娘の捜索を依頼される。

晶さん満身創痍。若いときはともかく、四十路を過ぎてこれでは治りも遅かろう。捜査の目の付け所や発想は良いがこうして怪我が続くなどしてハッピーエンドに届きにくいのは、やはり人間性になんらかの問題があるのだろうか?

謎の本筋に至るまでのくだくだしくさえ思えるエピソードの連続が本題の謎を解くためのヒント、というのは当然わきまえるとして、数本の謎物語をわざと絡め合って本筋がどれかわかりにくくするやり口がちょっと京極風というか。最後の最後まで読み切るとすべての謎が解明されることになるあたり、さすが謎の残存を許さない若竹氏らしい律儀さ。

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