ポケットにミステリを

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 新年1冊目は昨年買って放置してたもの。第31回横溝正史ミステリ大賞受賞作で、同時期に店頭に並んでいた乱歩賞よりこっちが面白そうかなと思って買ってみた。放置している間に『このミス』でも高評価が伝えられ、軽く焦ってしまった。

 椎名が通う女子バスケットの名門校・藤野学院高校はお洒落な制服も人気の的である。ネットオークションのためか盗難が相次ぎ、憤った放送部員・樋口は侵入路に隠しカメラを仕掛けた。
 ある日、椎名はバスケ部のスター選手である女子生徒・網川が校舎の屋上から転落しているのを発見する。駆け寄った椎名は何者かに昏倒させられ、目覚めたときには網川の姿はなかった。カメラには運び出される網川の姿は捉えられていない。彼女は何処へ?

 あのトリックが使われているんだろうな、というのは誰でもカンづくだろう。ただそれでもなお全貌を見破るのは難しい。著者の悪ふざけの域と判断されかねない念の入れようなのである。終盤なんどか読み返さないとスッキリ情報が処理できなくて、活字を読むのをさぼっていた自分の頭の鈍りを反省した。やたらに美形ばっかり出てくるから「こりゃジャニーズ×スターダストプロモーションの連ドラかい!?」なんて悪態が口をついたものの、活字で楽しむだけの理由がある作品。
 相変わらず巧いと思うのは噺のネタを伏線として取り込む手腕。噺そのものは知っているのが多いから、なぜ気づかなかった!と悔しく思わされる。

 ただ今回は、馬春と福の助夫婦が福島の秘湯に雪隠詰めにされるにあたり、この悪だくみが自然条件で予想外のほうへ進むことを馬春は考えてなかったのか?という点に疑問は残る。高座を大事に思っているであろう馬春が、到着できなくなり穴を空ける危険を犯すものかどうか。結果的に一同大笑い、騙されたほうも嬉しさのあまり怒りが引っ込む大団円ではあるのだろうけれど。

 作中何度も地震があったり、秘湯が福島にあったり、先日の大震災を意識して書かれたとしか思えないエピソードが盛り込まれている即時性に驚き。

 

ピカデリーの殺人

 「もうひとつ」と言って予告したのはこのアントニイ・バークリー氏で、『毒入りチョコレート事件』で活躍(?)したチタウィック氏が主人公の作品である。

 ピカデリーホテルのラウンジで“人間観察”にいそしんでいたチタウィック氏は、たまたま注目した年配の女性の連れの男に憎悪の眼差しを向けられて興味を引きつけられてしまった。しばらく席を外したチタウィック氏が戻って来た時には男の姿は無く、女性がひとり眠っているばかり。起こしてあげようと近づいて、彼は女性が死んでいることに気づく。

 これも外さなかった〜!

 「こうなんじゃないかな?」と推理させては「と思ったでしょ。それはひっかけだもんね〜」とすり抜けられる展開の繰り返しでだんだん自分のボルテージが上がるのがわかる。全然カッコ良くない、むしろ鈍重な人間のように描写されているチタウィック氏が時折キラリと鋭いところをのぞかせることにギャップ萌え。「もっさりしているけど賢い」キャラの探偵役って大好きさ。

猿来たりなば  ☆

 以前エリザベス・フェラーズ氏の『私が見たと蠅は言う』を読んだ時に皆さまが薦めて下さった同氏の代表作。シリーズものの第4弾だそうだが本邦未訳もあるシリーズらしいし、ここから読んでも可というお仲間さんの言葉を信じて敢えてのチャレンジ。
(ちなみにこれは書庫を片付けて「これは要らないなー」と思った数十冊をBKOFに持って行った代わりに買ってきたもののひとつ。他に一緒に買ってきたものも読んでいる途中なので近日登場予定。結局\105ではないやつを2冊買って若干のおつり、という感じだった)

 トビーとジョージがロンドンから遠く離れたイースト・リート村まではるばる出向いたのは、連続誘拐未遂事件の調査を依頼されたからである。ふたりは駅に出迎えているはずの“娘を守るために必死の外国人”を探すが見つからず、諦めかけたころ彼の娘当人がやってきた。「あなたはわたしがアーマだと思っていたのね? 攫われたのはチンパンジーよ!」しかし彼らが屋敷に着くと、そこには胸にナイフを突きたてられ血まみれのチンパンジーが横たわっていた。

「さっすが皆さまわかっていらっしゃる!」が最初の感想だった。事件の真相におけるチンパンジーの絶妙な配置と言い、真相への手掛かりにスポットを当て、また逸らすテクニックの巧みさと言い、探偵役とワトソン役の微妙な力関係と言い、ことごとく好みのツボ。いつもながら好みを見抜かれてるよなぁ、こんなミステリに会いたくて街を彷徨っていたんだわよ、と即☆進呈。

 凄く蛇足だと思うのだけれどどうしても言っておきたいので補足。この探偵コンビ、開始早々にトビー=綾部くん、ジョージ=又吉くんに脳内で変換されてしまった。ジョージは「ちびでぶ」だと後のほうに出てくるけれど、雰囲気としてはぴたりじゃない?

琅邪(ろうや)の虎

 丸山天寿氏の“秦の国”シリーズ(←適当)第2弾。『琅邪(ろうや)の鬼』がなかなか楽しめたので読んでみた。

 お話が進んでも「虎」の意味するところがいまひとつ見えて来なくてもどかしい思いだった。しかし前作同様、終盤に「探偵役」が登場するあたりでそこまでに提示されたあまたの謎が整理されるところが圧巻。いかに謎だらけの展開だったのかが改めて解る。これにことごとく用意された回答が、説明口調ではなくするするとほぐれるように明らかになる書きようがまたカッコいい。

 ただ比べれば第1作のほうが念が入っていたのにという残念さは拭えない。この路線で続くのであれば目新しさが必要かも。

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